DNDメディア局の出口です。初雪の便りがあり、本日はこの冬一番の寒さだという。もう年の暮れ、さて、どんな1年でしたでしょうか。DNDサイトのコンテンツの主軸となる、産学官連携のフィールドなどに関した連載企画の執筆陣に、今年新たにシリコンバレーからご帰還の氏家豊さん、東大先端研教授で知財のエキスパートの渡部俊也さんが加わり、埋もれていたデータや動向の緻密な分析で、どこよりも早い最新の情報が蓄積され、さらに充実した良質の論文や原稿がお届けできたのではないか、と自負しているところです。
本日、ご案内する連載は、渡部俊也さんの『新興国の知財戦略』の第4話、≪政府と企業が連携した「韓国オープンイノベーション知財戦略」の切れ味≫です。最新のデータや分析を加えながら、とてもわかりやすい内容です。控え目な筆者からは、「どうも字数が多くなる傾向ですが、すみません」とのメッセージが寄せられましたが、読み手とすれば、長さは少しも気にならず、もっと読みたい、そんな衝動にかられるほどです。
第4話のタイトルに「切れ味」とあるので、切れ味が鋭いのは、渡部さんの分析と文章力と感じた次第です。連載開始のご挨拶にあった、「企業と政府の連携、スピーディーな対応」について、いよいよそのご宣言通り、韓国の事例で政府と企業の敏感に反応する動きが捉えられていました。読みながら、わがニッポンは、どうしたの?との不安がよぎる。またこの原稿は、ギクリとさせられる連続でした。
特許プール、標準の必須特許登録の競争が熾烈で、知財と標準化の統合戦略が底流を占め、加えて未来を拓く国際知財人材の育成を惜しまない。e-learning教材の開発とその実践的な中味も驚きです。これらすべて韓国政府が企業と尖鋭的に進めている実際なのです。わがニッポン政府も指を加えて傍観しているはずはなく、内閣官房の知人に問うと、着々と、「知財と標準の混合戦略は、現在、国際標準化戦略タスクフォースで秘策を練っている」というから少し、胸をなでおろしました。これは必読です。新興国などの知財から、国家の戦略が透けて見え、国家と企業のシステマチックで敏感な動きが浮かび上がってくるのです。この事実に鋭く迫る野心的な取り組みが、渡部さんの真骨頂なのです。最近は、朝日新聞などメディアにも多く掲載され始めています。
もう1本、常連で経済産業省商務情報政策局長の石黒憲彦さんの人気が高い『志本主義のススメ』は第156回「ベンチャーこの10年を振り返る」が届きました。≪この10年間で、ベンチャー政策としては、直接的な支援措置は相当手厚いものになり、制度的な隘路もほぼなくなったと言っていいと思います≫が、それでもなぜベンチャーが輩出しないか?とのメディアの突っ込みに、真摯に答えているのです。
まあ、個人的には、この10年の懸命な制度改革や取り組みは、将来の根雪となるいくつもの成功事例を積み重ねたと思う。もう少し、メディアには、不祥事ばかりをトップ記事扱いで喧伝するのではなく、それらを正当に評価する姿勢が望まれるのではないか、と思います。せっかく上昇ムードのベンチャー業界が、2006年新年早々のホリエモン強制捜査劇で、いっきに信用が瓦解した。
それは個人的な感想です。ベンチャーこの10年の総括は、石黒さんならではの実感のこもったいい原稿です。注目は、この文中に登場する人々です。どんな方々かご存じですか。余談ですが、もし仮に"ベンチャー版検定"があるとすれば、この方たちの所属を以下の欄から選択せよ、という問いがあってもいい。
「高田康裕氏、吉田正順氏、郷治友孝氏、小城武彦氏、湯崎英彦氏、北地達明氏、伊原智人氏…」。
◇連載企画は本年1年で117本をアップ
こんな具合に、ですね、毎回メルマガで紹介してきました。今年1年で皆様にご案内しサイトにアップした原稿は、ざっと117本に及びます。大変なボリュームです。どの原稿が印象深かったでしょうか。それぞれのランキングを公表します。ランキングは、これまでの連載のすべてを対象にし、その中で今年一番アクセスが多い順を意味します。
今年、最多回数の22回を記録したのが、『イノベーション戦略と知財』の特許庁審査業務部長の橋本正洋さんでした。中でもご自身の体験をベースにした「社会人博士の取り方」シリーズは好評でした。続いて、『一隅を照らすの記』で、東大キャンパス周辺を独自の目線で点描した東京大学産学連携本部副本部長の山城宗久さんが20回、経済産業省の石黒憲彦さんが18回、以上が上位3人。さしずめ、『甦れ!食と健康と地球環境』の名桜大学教授、比嘉照夫さんが17回、『原点回帰の旅』の塩沢文朗さんが13回でした。
≪連載企画ランキング2010年、個別編≫
【石黒憲彦氏の「志本主義のススメ」】
1位:第139回 電子立国の危機
2位:第141回 解決策の視座その2−新興国市場を攻める
3位:第138回 産業革新機構
4位:第147回 スマートコミュニティ
5位:第144回 医療・介護関連産業は成長産業になるか?(その1)
6位:第142回 縮む中間層と今後の方向
7位:第143回 情報経済革新戦略
8位:第140回 解決策の視座その1−情報通信コストの劇的低減
9位:第145回 医療・介護関連産業は成長産業になるか?(その2)
10位:第146回 サービス産業は成長産業たりうるか?
【服部健一氏の「日米特許最前線」】
1位:第46回 特許出願では日本は依然として世界のリーダー、しかし陰りがある
2位:第37回 日本は大国か、小国か?
3位:第47回 恐るべきアメリカ訴訟のディスカバリー
4位:第33回 アメリカのヌードクラブでどこまで脱げるかは連邦最高裁判所が決定する
5位:第1回 世紀の発明王レメルソンの歴史的敗北
6位:第43回 620億円で和解のブラックベリー訴訟の余波
7位:第34回 激変する米国特許制度
8位:第11回 アメリカ特許訴訟
9位:第28回 先願主義へ移行する米国特許法改正案提出される上院、下院共に同一案という異例の発表
10位:第54回 「バッシングは一流への道か」
【橋本正洋氏の「イノベーション戦略と知財」】
1位:第5回 イノベーション・ネットワークの重要性
〜UNITT(産学連携実務者ネットワーキング)2009〜
2位:第18回 特許審査官としての職業
3位:第20回 商標審査官としての職業
4位:第12回 イノベーション政策学
5位:第13回 イノベーション政策学 その2
6位:第22回 MOTと若者
7位:第15回 イノベーション政策学 その3
8位:第21回 失敗からのイノベーション〜田中耕一所長と藤吉好則教授
9位:第16回 中央線の車中にて
10位:第30回 社会人博士の取り方
【塩沢文朗氏の「原点回帰の旅」】
1位:第20回 日本の歴史は地震の歴史
2位:第17回 奴奈川姫とヒスイ峡
3位:第55回 「世界は分けてもわからない」
−動的平衡にある自然と人間の静的な理解−
4位:第18回 「生物は原子・分子の流れの中のゆらぐ淀み」
−「生物と無生物のあいだ」の描く生物観− "
5位:第33回 星糞峠に行きました
6位:第65回 専門家の責任
7位:第69回 朝鮮族の中国(吉林省をあるく その1)
8位:第67回 軽薄な都会と「おごっそう」の山里
9位:第61回 国東半島と「昭和の町」
10位:第64回 「謎の鳥の正体」と総合力
【古川勇二氏の「技術経営立国への指標」】
1位:第7回 DND通信緊急提言 イノベーション
2位:第9回 日本学術会議からの勧告を巡る議論について
3位:第8回 イノベーションとは言えない、ささやかな私の経験
4位:第2回 テクノグローバリズム
5位:第5回 テクノグローバリズムとIMSの提案
6位:第1回 テクノナショナリズムの時代
7位:第4回 日本の競争力維持に向けて「イノベーション加速に総力結集」
8位:第6回 金澤一郎先生、学術会議の新会長に!
9位:第3回 エポックメイク、忘れることなき産学連携!
【渡部俊也氏の「新興国の知財戦略」】
1位:第2回「Great Wall IP Strategy(万里の長城知財戦略)」
2位:第3回中国「万里の長城知財戦略(Great Wall Patent Strategy)」続編
3位:第1回 「アジア・新興国の2010年:知識社会の覇者を臨む知財戦略」
4位:第4回 政府と企業が連携した「韓国オープンイノベーション知財戦略」の切れ味
【比嘉照夫氏の「甦れ!食と健康と地球環境」】
1位:第27回 EMによる口蹄疫対策
2位:第28回 EM技術による気象災害対策(1)
3位:第21回 食と健康、環境を守る農業の未来像(1)
4位:第25回 EM技術の立脚点
5位:第30回 EM技術による自前でできる危機管理
6位:第31回 EM技術による居住環境改善
7位:第22回 食と健康、環境を守る農業の未来像(1)
8位:第1回 大変革のスタート 平成21年
9位:第16回 EMで甦った東京の日本橋川(2)
10位:第15回 EMで甦った東京の日本橋川(1)
【張輝氏の「中国のイノベーション」】
1位:第31回「虎」を含む四字熟語、そして新年挨拶!
2位:第3回 武漢が拓く!中国における光産業の未来
3位:第33回 中国各地域の2009年GDPとイノベーション力
4位:第20回 上海タイフーン、上海ガニ、上海万博
5位:第24回 中国ハイテク産業、ハイテク企業、及びハイテク分野
6位:第12回 温故創新、日中の掛け算関係の構築へ(上)
7位:第7回 同じように漢字を使っても(1)同字異義
8位:第26回 第4回中国中部投資貿易博覧会に参加して
9位:第39回 「早く死ぬか、精彩に生きるか」〜感動を呼ぶ劉偉さん
10位:第32回 間もなく日本上陸!中国から42の大学が東京に結集
【山城宗久氏の「一隅を照らすの記」】
1位:第14回 「ハンさんの餃子」の巻
2位:第16回 「妖精たちの願い」の巻
3位:第23回 「やまとだましい」の巻
4位:第25回 「金曜日の君たちへpart2」の巻
5位:第24回 「市ヶ谷にて」の巻
6位:第20回 「歴史を学ぶ」の巻
7位:第30回 「楽しき休日出勤」の巻
8位:第15回 「O Canada」の巻
9位:第17回 「春は夕暮れ」の巻
10位:第18回 「7丁目の夕日」の巻
【氏家豊氏の「大学発ベンチャーの底力」】
1位:第1回 チャンス到来:日本経済、大学発ベンチャー
2位:第2回 大学発ベンチャーのポジション
3位:第5回 体験的な研究開発フェーズ話2- 製品開発・事業化産業化T-
4位:第6回 体験的な研究開発フェーズ話3- 製品開発・事業化産業化U-
5位:第4回 体験的な研究開発フェーズ話1- 科学・技術編 -
6位:第3回 政策当局のリーダーシップ
7位:第7回 イノベーション・エコシステム形成へのアプローチ
8位:第8回 産学連携のフロンティアー大学機能の新展開
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≪連載企画ランキング2010年、総合編≫
今年の5月にアップしました。宮崎県の農家を襲った口蹄疫問題で、比嘉先生は、EMによる実践的な処方を示しました。これに対して、内外から否定的な意見や、それに対する反論が展開され、他のツイッターなどで取り上げられました。これまでユーザーがこのページにアクセスした回数、ページビューが8万7600件に及んでいました。宮崎県におけるEM散布の作業は、まさに格闘の連続でした。現地に入って陣頭指揮をされた比嘉先生に頭が下がります。EM散布で病原の拡散を抑え、悪臭が消えるなどの成果で農水大臣から後に表彰されました。
2位:服部健一氏の第46回「特許出願では日本は依然として世界のリーダー、
しかし陰りがある」。
昨年4月の時点の原稿です。「特許出願は技術開発のたまものであり、各国の特許出願数はその国の技術水準を示す1つの指標ともいえる」として、2007年の特許出願が最も多いのは、相変わらず日本企業の約33万件であるが、徐々に減少し、次いで2位の米国企業の約24万件で毎年増加し、日本に肉薄しつつある。そして、3位の中国企業の約15万件、4位の韓国企業の約13万件となっている‐との動向を読み解いていました。アクセス回数が、1万8800件。
石黒さん7ケ月ぶりの投稿ということで世間の関心が高まったのでしょうか。そのタイトルが示す通り、ご担当のエレクトロニクス・IT・コンテンツ・サービス関係の分野が、大きく様変わりしている現状に驚きつつ、「産業政策的な視点からの現状と課題について整理できた」内容を報告していくことをお伝える、再開第1弾。「擦り合わせ集積の危機」、「ブラックボックスとオープン化」、「激しい設備投資競争とグローカラゼイションによるボリュームゾーン戦略」、そして、「解決策はあるのか」という流れでした。
その象徴的なエレクトロニクス産業の変化を読み解き、次にどうしてこうなったのか―の分析を加え、こういった現状に対しにて、どんな活路があるのか、そのために政府は何をすべきか、それが4月ごろまでに「産業構造審議会情報経済分科会」で有識者に議論されることになることや、石黒さん自身は、「信頼性の高い社会システムを支える制御技術や精緻なものづくり技術は、まだ健在でもう一度、その強みを確認して、それをどう生かして戦うか考えたい」とその方向性を示した意欲作でした。アクセスが1万1500件。
4位:張輝氏の第31回「『虎』を含む四字熟語、そして新年挨拶!」
本年1月の新年早々の原稿で、「虎」に関する日本語の四字熟語を≪干支である「虎」という漢字を含む日本語の四字熟語はいくつご存知であろうか。例えば「猛虎伏草」、「狐仮虎威」、「燕頷虎頸」、「羊質虎皮」、「竜攘虎搏」、「竜盤虎踞」、「竜行虎歩」、「竜吟虎嘯」、「虎嘯風生」など、枚挙にいとまがない」≫と紹介し、その上で「虎」という漢字を含む中国語の成語はどれほどあるか。「談虎色変」、「猛虎下山」、「調虎離山」、「龍争虎闘」、「龍騰虎躍」、「虎頭虎脳」、「虎頭蛇尾」、「騎虎難下」、「生龍活虎」などの成語が続けて浮かんだ、という。さらに、中国『成語辞典』で調べてみたら、なんと、「虎」を含む「成語」が200を超えている、とその具体的中味に触れていました。アクセス回数が1万1400件で石黒さんに肉薄でした。
5位:橋本正洋氏の第5回「イノベーション・ネットワークの重要性」〜
〜UNITT(産学連携実務者ネットワーキング)2009〜
2009年9月29日の原稿が、いまだ読まれ続けているのですね。アクセス回数は9800件。産学連携の各フィールドで実践的な活動を展開している実務者らのネットワークとして知られているUNITTの紹介でした。東大教授の渡部俊也さんや、東大TLO社長の山本貴史さんらが創設したこの研究会も回を重ねて年々充実している様子が感じられます。全国から500人を超える産学連携の関係者が集まった、というのですから驚きです。橋本さんは、産業再生機構の西山圭太執行役員(前経済産業省産業構造課長)のご講演の後の質疑の様子や、モデレータの山本社長の差配の巧みさを"実況"し、参加者の顔ぶれを細かく紹介していました。また、産業革新機構の英語の読み方が、Innovation Network
Corporation of JapanだそうでUNITTのネットワーキングと重なっているのです。前東京医科歯科大学の技術移転センター長だった前田裕子さんが転身されたところが全国イノベーション推進機関ネットワークで、いまや「ネットワークばやりなのでしょうか」と自問し、そこからネットワークモデルの理論に言及されていました。なかなかうまい導き方でした。固有名詞がたくさんあると、検索に有利なのかも知れませんね。
以上が上位5位まで。
6位:石黒憲彦氏の「第141回 解決策の視座その2−新興国市場を攻める 」
7位:石黒憲彦氏の「第138回 産業革新機構」
8位:石黒憲彦氏の「第147回 スマートコミュニティ」。
9位:服部健一氏の「第37回 日本は大国か、小国か? 」
10位:比嘉照夫氏の「第28回 EM技術による気象災害対策(1)」
以上、アクセス回数が7000台です。
11位:比嘉照夫氏の「第21回 食と健康、環境を守る農業の未来像(1)」
12位:橋本正洋氏の「第18回 特許審査官としての職業 」
13位:塩沢文朗氏の「第20回 日本の歴史は地震の歴史 」
塩沢さんがここで登場しました。2007年12月の原稿がいまだに読み返されています。
14位:橋本正洋氏「第12回イノベーション政策学」
15位:比嘉照夫氏「第1回 大変革のスタート平成21年」
以上、アクセスが5000件から6000件台です。
以下、アクセスが4000件から2000件台です。
16位:橋本正洋氏「第13回イノベーション政策学 その2」
17位: 渡部俊也氏「第2回「Great Wall IP Strategy(万里の長城知財戦略)」
18位:塩沢文朗氏「第17回 奴奈川姫とヒスイ峡 」
19位:山城宗久氏「ハンさんの餃子の巻き」
20位:山城宗久氏「妖精たちの願いの巻き」
以上でございます。
◇ ◇ ◇
■【DNDコラム】クリスマスがやってくる!
虹色のイルミネーションで彩られる街から、ジングルベルの鈴の音が流れてきます。今年は、全国津々浦々、イルミネーションの新名所が誕生したようです。色は鮮やかですが、うすぼんやりした提灯の明りとは対照的で、どこかクールで、ツ〜ンと澄ましたような印象を受けます。つい先日、藤棚で知られる足利のフラワーパークを訪ね、その幻想的な「光の庭」を歩いてみると、その広大な敷地が一面「光の花の庭」でした。その数130万球と関東最大規模。
関東近県から車がドッと押し寄せて、ゲート付近は長蛇の列でした。
30年ぶりでした。記者時代、何度がここを訪ねていました。麦藁帽子に長靴という出で立ちで、遠くを見つめながら額の汗をぬぐっていた2代目、早川慶治郎さんの寡黙な姿が浮かんでくる。その早川さん、先月、地元足利商工会議所の会頭に就任しました。凄いですね。かつて「早川農園」というお花畑が、幾多の変遷を経て、文字通り花開いた格好です。樹齢140年の藤の巨木を移設した、女性樹木医の第一人者、塚本こなみさんの存在が、クローズアップされています。ほの暗い庭園内で、腕を組んだり、手をつないだりしている、ときめきのカップルが多かった。
さて、イブの夜は、誰とご一緒しますか。おじさんらは、もう関係のないことかもしれないが、クリスチャンでもないのに、その最愛のパートナー探しにきっと悲喜こもごものドラマが待ち受けているでしょうね。親とて、年頃の娘のスケジュールや帰宅が気にかかるから心穏やかじゃないかも知れません。恋人がいるならいるで、いないならそれまたいないで、イブは1年でもっとも悩ましい夜になる。今年は金曜日というから、さぞ、騒々しくなるに違いない。
が、巷間、底なしの就職難に、リストラの嵐、その余波で深夜、「松屋」あたりでトマトカレーを注文する若者をみかけるかも知れない。若者といっても、男性とは限りません。どんな事情があってのことか、分かりませんが、それでいいのですよ、これから、これから、未来はこれから、と、そんな場面に遭遇すると、つい声をかけたくなってしまいます。
クリスマスといえば、どんな歌を連想しますか?というテレビ局の質問に、道行く人のうち、何人かが山下達郎の「クリスマスイブ」を挙げていました。僕らと同じ年配の方でした。やはりこれは何度聴いても新鮮です。ちょっと切ないが、もう30年以上も繰り返し流れる。〜雨が雪に変わる頃、きっと君はこない。心深く、秘めた思い。適えられそうもない〜。
国道沿いの喫茶、その窓に雪が吹きつけている。ツリーの点滅が一層、寂しさを誘う。そんな時、山下達郎のこのメロディーを聴くともなしに耳にすると、ぐっとこみあげるものがあるのでしょうか。きっと君は来ない、ひとりきりのクリスマスイブ…。来ないことをわかっていながら、何時間も待ちわびる〜。
そんな感傷に浸っていると、テレビでマイクを向けられた3歳ぐらいの坊やが、「あわてんぼうのサンタクロース」を口にして、歌い始めた。あわてんぼうのサンタクロース、クリスマスの前にやってきた。急いでリンリンリン…。気がついて帰っていく。プレゼント忘れないでね、って呼びかけるのですが、これがなんとも微笑ましい。
その昔、やはりテレビでカッちゃんこと、勝俣州和さんが子供の頃のクリスマスの思い出を語っていた。おやじにね、ねぇ、ねぇ、お父さん、家にいつサンタクロースがやってくるの、ねぇ?と、せがんだら、そのお父さん、さっき、聞いたら、サンタクロースさんは今晩、そっちに行けないって…、えっ、お父さん聞いたの、何んで?、サンタさん、今晩、忙しいってさぁ〜。
カッちゃん、えぇっ、詰まんないの、と言いながら、それでも納得していたらしい。サンタさんが忙しいらしいことは子供心に理解できる。が、サンタクロースの存在を信じられたのは、いったい何歳までなのだろうか。
我が家に男の子が3人、彼らが幼い頃、寝静まった部屋に忍び足で畳を踏むと、奥の方から無邪気な三男坊が寝たふりしながら、クスクス笑ってお兄ちゃんに叱られていた。起きていると、サンタさん帰っちゃうよ!って。
クリスマスの夜は、なかなか眠られない。