第31回 「虎」を含む四字熟語、そして新年挨拶!



 さて、いきなりで恐縮ではあるが、今年の干支である「虎」という漢字を含む日本語の四字熟語はいくつご存知であろうか。例えば「猛虎伏草」、「狐仮虎威」、「燕頷虎頸」、「羊質虎皮」、「竜攘虎搏」、「竜盤虎踞」、「竜行虎歩」、「竜吟虎嘯」、「虎嘯風生」など、枚挙にいとまがない。


 いうまでもなく、四字熟語は漢字4文字で作られた「日本語」の熟語である。中国語で「成語」とよぶ慣用語の内、最も比率の高い4文字から構成されるもので、故事や漢文から作られる場合が多い。一説によれば、岩波書店の『広辞苑』には第5版まで「四字熟語」の項目はないが、第6版ではじめて「四字熟語」の項目が新設され、「漢字四字の熟語や成語」といった定義が行われているという。


 中国語の慣用語である「成語」から来たものであれば、「虎」という漢字を含む中国語の成語はどれほどあるかなぁと、筆者は少し興味が沸いてきた。「談虎色変」、「猛虎下山」、「調虎離山」、「龍争虎闘」、「龍騰虎躍」、「虎頭虎脳」、「虎頭蛇尾」、「騎虎難下」、「生龍活虎」・・・、ぱっと考えたら、このような成語が続けて浮かんできた。


 ついでに、中国『成語辞典』で調べてみたら、なんと、「虎」を含む「成語」が200を超えている。これと同時に、以下の点に気づいた。


 第一に、中国語の成語から日本語の四字熟語になる際、微妙に変身している例が少なくない。例えば、虎と竜が争う喩えから英雄が互いに激しく争うことを表す四字熟語「竜攘虎搏」は成語「虎超龍驤」から、外見は立派だが実質が伴っていないことを表す四字熟語「羊質虎皮」は成語「虎皮羊質」から、竜が淵の底深くわだかまり、虎がうずくまるように、地勢の堅固な要害の地を表す四字熟語「竜盤虎踞」は成語「虎踞龍盤」から、強いものに、さらに勢いをつけることを表す四字熟語「為虎添翼」は成語「猛虎添翼」からきたものである。


 第二に、「虎」を含む成語には「龍」(日本語ではいまよく「竜」という)も含まれる例が多い。前出した「竜攘虎搏」(竜と虎が互いに払いのけ、撃ち合う意味から、2人の豪傑が激しく争う様子)、「竜盤虎踞」(前出)、「竜行虎歩」(竜のように行き、虎のように歩く。威風堂々とした歩き方のこと)、「竜吟虎嘯」(同じ考えや心をもった者は、相手の言動に気持ちが通じ合い、互いに相応じ合うこと)以外、成語「龍騰虎躍」は龍と虎が沸き躍るという意味で世間が勢い良く動き回っていることを表し、成語「生龍活虎」は元気一杯でイキイキしていることを表している。


 第三に、当たり前ではあるが、中国の成語はもともと日本語の四字熟語ではないことから、四文字からではなく、四文字以上か以下でなる成語も色々とある。例えば、「笑面虎」とは笑顔の仮面の下に恐ろしい本性を持つ人のことを言い、「二虎相闘、必有一傷」とは二頭の虎が争うとなれば必ずどちらかが傷つくことになることを言い、「九牛二虎之力」とは大変な労力を意味し、あることに力を尽くしてやっとできたという意味を表す用語である。


 ところで、今年の元旦、対中向けの新年挨拶は以下のように書いた。「消極悲観走向死路、冤天尤人没有出路、尽心負責堅固生路、務実創新開拓新路」これを日本語に訳すと、概ね以下のようになる。


 「消極的また悲観的に考えれば『死路』(末路)しかない、環境や人のせいにするだけなら『出路』(出口)は現れて来ない、責任や心を持って頑張れば『生路』(生きる道)が継続され、地に付いたイノベーションを通じて『新路』(新しい道)を拓く!」


 とのことであるが、みなさん、いかがでしょうか。


 いろいろと随想のまま書いてしまったが、この大競争時代を生き抜くためには、言うまでもなく「馬馬虎虎」(成語。真剣に努めず適当にやる意)では絶対だめであり、「不入虎穴、不得虎子」(成語。虎の洞の入っていかなければ虎の子を得られないことから、リスクを負わずに成果を得ることはない意も)の気持ちで、「生龍活虎」(成語)になるよう、皆さんとともに元気一杯で成功物語の創作に粘り強く取組んで行きたい。


 今年もぜひ、よろしくお願い申し上げます。



<了>



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