第14回 「ハンさんの餃子」の巻


 出口編集長の中国初体験記後編を読んだ当日、私も久々に中国人の方々と交流する機会がありました。北京大学・東京大学起業教育学生交流会議歓迎レセプションがそれです。東京大学では、2005年度から、産学連携本部が主催する形で、学生起業家育成教育プログラム(東京大学アントレプレナー道場と称しています。)を運営していて、これまでの5年間で800名を超える学生が参加しているのですが、昨年度から、北京大学との学生交流プログラムが始まり、両大学がそれぞれ行っているビジネスプランコンテストで上位になったチームの学生が、双方の大学を訪問して議論等を行い、交流を深めています。今回、北京大学校務委員会副主席の王(WANG)先生をヘッドとする10名の同大学教職員及び学生からなる代表団が来られました。皆さん、今回が初来日のようで、ちなみに、レセプションで向かい合わせになった路(LU)さんに第一印象を訪ねると、「日本はとてもクリーンだし、日本人はとても親切だ。」とのこと。この路さん、名前まで含めると路鵬(LU Peng)ということなので、かつての中国首相(李鵬(LI Peng)氏)にそっくりのお名前ですねと言ったら、はにかみつつ喜んでらっしゃいました。


 このレセプション会場になったのは、工学部2号館にある松本楼です。松本楼本店は、霞ヶ関から目と鼻の先の日比谷公園にあり、何回か行ったことはあるのですが、松本楼が中国と深い縁があることは、今回初めて知りました。現在の松本楼社長夫人の御祖父は梅谷庄吉という方なのだそうですが、梅谷氏は、辛亥革命中亡命を余儀なくされた孫文と深い友情を築き、孫文を支援されたのだそうです。一昨年、胡錦濤国家主席来日時の福田首相主催夕食会が松本楼で行われたのも、こういう歴史的事実を踏まえてのことなのでしょう。ところで、この工学部2号館、大学3年及び4年の時に通っていた、私にとっては思い出深い建物なのです。当時は、現在の大規模な増改築前で、松本楼もありませんでしたが、安田講堂に面した入り口は当時のままです。今回のレセプションの締めの挨拶で、この建物での思い出を以下のように語りました。


 "この工学部2号館の2階に私の属していた研究室がありまして、そこに中国からハンさんという研究員の方が来られていました。ハンさんは、私が初めて親しく交流した中国の方でしたが、長身・骨太で笑顔の素敵な方でした。特に思い出に残っているのは、研究室でやった餃子パーティです。ハンさんに指示された材料を研究室仲間で買ってきて、それをハンさんが手際よく調理して、ものすごい数の水餃子と焼餃子を作ってくれました。皆でワイワイ言いながら、その美味しい餃子を平らげたのを懐かしく思い出します。残念ながら、ハンさんが現在、どこで何をされているか存じませんが、今でも中国で大きな自然災害が起こるとハンさんは無事だろうかと思い、また、北京五輪のようなイベントの際には、ハンさんは楽しんでいるだろうかと思います。これまでの人生で、色々な国の方と知り合いになりましたが、ある国の方と知り合いになると、その国について親しみが湧き、その国についてもっと知りたいと思うようになりました。ぜひ、今回の交流プログラムが、お互いがお互いの国について親しみを感じ、もっとお互いの国について知ろうというきっかけになることを心から期待しています。皆様の今回の訪日は東京だけですが、次回は東京以外の地域にも訪れてみて頂ければと思います。謝謝。再見。"




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