◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2010/03/31 http://dndi.jp/

DNDメルマガ月間ランキングの意外性

 ・「上場予備軍は死なず」がなぜ1位か
 ・大学発ベンチャー大健闘、上場28社
 ・先端走る群馬大学、重粒子線治療開始へ
 ・「ハイテク・スタートアップ国際比較」
 ・山城宗久氏のコラム「春は夕暮れ」
 ・塩沢文朗氏「身近に見た古代人の息吹」
 ・比嘉照夫教授の提言「農政の構造的矛盾」

DNDメディア局の出口です。


光る水か濡れた光か燕(つばくら)か     高野紗希


この一句。凄味あると思いませんか。名刀の切れ味すら感じます。読売新聞2面の下段に常設のコラム「四季」(30日付)からの引用です。毎日、俳句と写真がセットで掲載されます。文と写真が競う。写真も秀逸で負けていません。こんな小さな窓から、次々と季節の風を吹き込んでいます。


その上段に、なにやら政局がらみの泥臭い亀や飛べない鳩の話が鬱陶しいから、まあ、ここは一服の清涼剤のような位置づけなのでしょう。そこに10行ほどの解説が加えられます。担当が俳誌「古志」主宰の俳人、長谷川櫂さん。


〜さっと宙をきって燕が飛ぶ。光のように水のように。(略)燕が宙を切るように、言葉で燕を切り取った〜との評。が、高野紗希さんの句は、ズバッと、より鮮烈です。このところ、ふるえるような寒さに身をすくめていたら、明日から4月、とっくにツバメが飛来していることを知らされました。


さて、お久しぶり。2週間お休みでした。やや指先がふるえています。遊んでいたわけではありません。その分、ビジネスに動いていました。この前回のメルマガでも上海への出張をはさんで東へ西へと書きました。あれから再び日光へ、そして名古屋へさらに熊本へと連続していました。


忙中閑あり。人情にもろく義理がたい。そんな熊本、いいですね。地酒に馬刺しは格別でした。早朝、散歩がてら熊本城の咲きだした桜をひとり見て歩きました。桜の下には、ブルーシートを敷いて若い男性らが立って陣取っていました。夕刻から花見の宴なのでしょう。熊本城は、広大な敷地にあって鋭角にせり上がった石積みが見事でした。広く深いお堀を配し、清楚な佇まいを見せていました。


お城の御幸橋付近の公園に、うっそうと茂る楠木の巨木は、見上げるとその枝ぶりに息をのみました。昭和初期の植樹という。一陣、ざわーっと風が吹くと、青い空が嵐のように音をたてて揺れているようでした。


城と桜。といえば信州の松本、津軽の弘前の風景が目に浮かんできます。熊本から松本、そして弘前へと、ほぼ一ケ月、北上しながら美しい日本をめぐる桜紀行、そんな準備に入っている方がいても不思議じゃありませんね。ご一緒する相手がいなくても、それなら大丈夫でしょう。


雨にたたられた名古屋では、元松下電工のエンジニアで、人柄の江崎忠男さんに久しぶりでお会いし、行きつけの小さなお店を案内され、そのカウンターで一品一品、息が合ったご夫妻の丁寧な家庭料理を堪能しました。雪の日光では、旬のフキノトウのてんぷらが美味でした。なんだ、食べてばっかしじゃん、と陰口をたたかれそうです。


その間、留守部隊のスタッフは日夜、サーバーのメンテナンスやリニュアルに奮闘していました。数ある企画提案の中で、新たに取り入れたのが、『DNDメルマガ』の月間アクセスランキングでした。集計してみると、予想外の結果が出ました。その動向から、顧客のニーズが少し顔をのぞかせているように感じました。連載コラムのアクセスランキングも随時、実施する予定ですので、ご期待ください。


まず、『DNDメルマガ』月間ランキングです。3月中で最もアクセスの多かったベスト10は、以下の通りです。


          タイトル              配信日
1位:Vol.327 「上場予備軍は死なず」           09年5月27日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm090527.html
2位:Vol,362 『されど、愛しきソニー』           10年3月 3日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm100303.html
3位:Vol,361 「Sorry won't be last word」         10年2月24日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm100224.html
4位:Vol,363  鳩山政権発足6ケ月、その凋落の原因  10年3月10日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm100310.html
5位:Vol,336 「国富を担う」産業革新機構が始動      9年7月29日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm090729.html
6位:Vol,233  世界最強の炭素繊維‐その誕生秘話    7年7月11日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm070711.html
7位:Vol,337 東武浅草で靴磨き60年目の危機        9年8月5日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm090805.html
8位:Vol,164 重粒子線治療への期待:沖縄からの報告  6年2月22日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm060222.html
9位:Vol,215  美しい季語                    7年2月28日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm07022802.html
10位:Vol,326 大学発VB20年度調査報告         9年5月20日号
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm090520.html

なぜ、こんな順位になるのでしょうか。ここを読み解かなければなりません。2位の『されど、愛しきソニー』(3月3日号)、3位の「Sorry won't be last word」(2月24日号)、4位の「鳩山政権発足6ケ月」(3月10日号)は、最近の配信なので当然かもしれません。

ウェブの活用は、必要な時に欲しい情報を選んでアクセスするものです。ふ〜む。そうすると、1位の「上場予備軍は死なず」は、昨年5月の配信なのに、どうして今頃になってアクセスが急増するのか。ここを調べると、面白い事実が浮かび上がってきました。


ここのメルマガの主題となったのが、「ミログ」でした。ご記憶に残っているでしょうか、当時の記事を拾うと、140文字程度のテキストや写真で投稿ができます。日記より簡略なミニブログ、それを「つぶやき型」と称し、日常生活を綴る新しい機能のSNS(ソーシャルネットワーキング)という。

なんだか今流のツイッターっぽい。が、その特徴は、今日はよく寝たなあ、体重が3キロ増えちゃった―などと、つぶやく(打ち込む)と、それを自動的に「睡眠時間」やダイエット用の「体重」のログに残し、そんないくつもの生活情報や感情をも解析してグラフ化する、という人工知能が働くのです。


しかし、先月19日、突然、「ミログ」事務局から残念なメールがありました。「今日までサービスを続けてきたミログですが、誠に勝手ながら、運営会社の都合により、2010年3月31日をもちまして、サービスを終了することが決定致しました」と。本日で事実上の閉鎖という手順を踏むが、若き創業者が抱いた「感覚的な表現の知を体系化し、グーグルを超える世界企業を目指す」という夢は、捨てほしくはありません。これで潰えたわけではない、と再々チャレンジを期待するものです。

そもそも、メルマガの記述を追うと、このミログのデビューは、東京工業大学の産学連携本部が一昨年暮れに立ち上げた、大学発ベンチャー創出のプログラム「Start-up Station」の第3回の研究会でした、とありました。

昨年の2月17日夕刻、東京駅サピアタワー8Fの東工大オフィスは、創業前夜のある種の熱気に包まれていたそうです。当時、東大3年の城口洋平さん、そして東工大3年の高畠裕二さんが登壇し、 VCや事業会社、支援機関からのプロを前に、このSNS「ミログ」の事業計画を初めて発表しました。プログラムには、「モバイル×ヘルス2.0」(起業準備中)とあり、その内容は、「つぶやき型ライフログSNSを軸とした日常の生活情報を抽出し、ヒトの感情、生活情報を可視化することによる価値創造を試み、広告モデルに依存しないWeb2.0noビジネスモデルに挑戦する」と明確だったはずでした。


その翌18日から本格始動し、その4月に東大現役の4年となった城口さんが代表となって東工大の院生ら15人と晴れて起業にこぎつけて、正式に大学発ベンチャーの株式会社ミログ(東京・文京区)を立ち上げていたのです。


その後の事情は、知るところではありません。が、この景気、大手メディアも四苦八苦する広告環境なのですから、この試練は決して無駄にはならない、と思います。この「ミログ」のサイトの閉鎖が、検索の引き金となって『DNDメルマガ』にアクセスが殺到したのか、どうか。


もうひとつの手掛かりは、「ミログ」の記事の後半に紹介した「大学発ベンチャー20選の特徴と評価」にあるのかもしれません。経済産業省が調査した、将来有望な技術を持ち、確かなビジネスモデルの大学発ベンチャー20社を取り上げたのです。これが、実は、もうひとつの『上場予備軍』だったわけです。
その20社をもう一度、紹介しましょうか。



@ 北海道大学発ベンチャーの株式会社イーベック(札幌市、土井尚人社長)、医品グレードの完全ヒト抗体のライセンス化で大きな成功を収めました。
A 音や振動を電気に変える、慶応大学発ベンチャーの株式会社音力発電(藤沢市、速水浩平社長)。最近、メディアによく登場します。
B マイクロ集光型球状シリコンという、シリコン球を素子とした太陽電池開発を事業化する株式会社クリーンベンチャー21(京都市、室園幹夫社長)。
C 酵素の応用で非食糧からのバイオエタノールの抽出に成功した岐阜大の高見澤一裕教授のその事業化を急ぐ岐阜大学発ベンチャー株式会社コンティグ・アイ(岐阜市、鈴木繁三社長)。
D 高精度のゲノム解析技術の株式会社ジナリス(横浜市、西達社長)、で関連大学が奈良先端大、東大。世界的規模の民間ゲノムセンターで、世界最大手の受託DNA配列決定企業である米国のAgencourt社と提携。
E 「クモの糸」の世界初の実用化を試み、ゲノムDNAにデジタルデータを書き込む技術を持つ、慶応大学発ベンチャーの株式会社スパイバー(鶴岡市、関山和秀社長)。
F 東京女子医科大学関連のベンチャーで、世界初の「細胞シート工学」の技術で再生医療支援の株式会社セルシード(新宿区、長谷川幸雄社長)。
G 創薬支援のための新しいタンパク質結晶化というバイオの極め技術でリードする阪大発ベンチャーの株式会社創晶(大阪市、安達宏昭社長)。三菱商事と営業支援で提携。
H ネットワーク通信、ソフトウエア分野で実績を上げる筑波大学発ベンチャーの代表格、ソフトイーサ株式会社(つくば市、登大遊社長)。
I 昨年3月26日にジャスダックNEOの株式公開したテラ株式会社 (新宿区、矢崎雄一郎社長)。東京大学医科学研究所の研究成果で、独自のがん治療技術・ノウハウである「アイマックスがん治療 (免疫最大化がん治療:mmune ma ximizing therapy for cancer)」を契約医療機関に提供する。
J スマートな事業展開で評判の株式会社ナノエッグ(川崎市、大竹秀彦社長)。
新規DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)技術など先端的な"S kin Science"のテクノロジーによって、皮膚の自己治癒力を高める商品化に成功した、聖マリアンナ医科大学(神奈川県川崎市、青木治人学長)のバイオベンチャー。
K バイオマーカーによる機能性食品の開発支援の株式会社バイオマーカーサイエンス(大阪市、内田景博社長)、日テレの"世界一受けたい授業" に出演など人気の京都府立医科大学の吉川敏一教授の存在が創業のきっかけになっているようです。
L 医薬品候補の探索技術で複数の国内外大手製薬会社とアライアンスを結ぶ株式会社ペプチドリーム(千代田区、窪田規一社長)。シーズは東京大学先端科学技術研究センターの菅裕明教授が開発した「スーパーフレキシザイム技術」がコア技術。
M 東工大学発ベンチャーの株式会社光コム(千代田区、興梠元伸社長)。光周波数コム発生器の意で、説明によると、数百テラヘルツの光を電磁波としてその位相や周波数を制御、高速で高精度な計測器を実現し、光の周波数や波形を任意に制御できる、という。
N 世界最先端のメタボローム解析技術を持つ慶応大学発ベンチャーの ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(鶴岡市、菅野隆二社長)。
鶴岡市にある慶応大学先端生命科学研究所との6年に及ぶ共同研究を通じ、9 00種以上の代謝物質データベースを構築。創業時から、この技術評価で、味の素など大手食品、製薬会社とのアライアンスに成功したのが強み。
O CMOS集積回路、イメージングセンサの開発の株式会社ブルックマン・ラボ(浜松市、松山武社長)。社名「川(ブルック)人(マン)・研究所(ラボ)」が表すとおり、静岡大学電子工学研究所・川人祥二教授が文部科学省のプロジェクト「知的クラスター創成事業」の中で研究開発した成果等を活用している。
P 業務用アミューズメント機器むけの2足歩行ロボットのメカトラックス株式会社(福岡市、永里壮一社長)。福岡の地域人的ネットワークが生きて、綾水会、九州大学知財本部が支援しています。
Q 風力発電システムの開発、設計をてがける株式会社MECARO(秋田県・潟上市、村上信博社長)。関連大学が東大、秋田県立大、足利工業大、秋田高専、工学院大学等)。
R 株式会社メドジェル(京都市、浅原智彦社長)。京都大学再生医科学研究所の田畑泰彦教授が発明した「生理活性物質を生体内で徐放させる生体吸収性ハイドロゲル」の実用化を目指し、「プラスミドDN A」や「siRNA」などの核酸物質を生体内で徐放するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)基材「MedGel microsphere E50)」を製品化し販売する。
S 「創造」と「革新」を社是に掲げて、イメージング・テクノロジーの創造集団を名乗り、いま最も注目度の高い株式会社モルフォ(文京区、平賀督基社長)。画像処理に優れ、特に手ぶれ補正の技術は、携帯電話の市場に多く採用されています。社長の平賀氏は、東京大学大学院 理学系研究科情報科学専攻(博士課程) 修了、博士(理学)。


ざっと駆け足で、一押しの大学発ベンチャー20選を列記しました。この中のF東京女子医科大学関連のベンチャーで、世界初の「細胞シート工学」の技術で再生医療支援の株式会社セルシード(新宿区、長谷川幸雄社長)が、この3月16日にジャスダックNEOに上場しました。おめでとうございます。


この「セルシード」の上場で、株式公開した大学発ベンチャー数は、累計で28社http://dndi.jp/cooperation/trif.co.jp/images/ipo080911.gifとなり、昨年3月上場の「テラ」から、この1年で5社が上場したことになります。大学発ベンチャー大健闘、ということですね。なにより、そのビジネスモデルが、いずれも未踏の分野であり、一貫して社会貢献企業である、そしてこれに携わる研究者らの高い志に着目してほしいものです。余談になりますが、政府は、いまこそ、この分野の強い支援を急ぐべき時がきていると思います。


さて、メルマガアクセス1位の『上場予備軍は死なず』は、「セルシード」の株式公開と「ミログ」の閉鎖、その明暗を分けたふたつの大学発ベンチャーの動向が、関心を読んでアクセスが多くなったものと推測されます。新聞は、あの分厚い朝刊だって昼がすぎれば、キヨスクの店頭から消えてなくなります。が、ウェブは、昨年配信のメルマガでさえ、繰り返し検索され読まれ続けます。ウェブは、生き物なのです。


さて、私がこのランキングをみて、感心したのは、8位の:Vol,164 「重粒子線治療への期待:沖縄からの報告」(6年2月22日号)でした。これは、「切らずに治すがん治療の最終兵器」といわれる、重粒子線(じゅうりゅうし)がん治療の最前線の報告を取り上げたものです。

こんな感じです。


〜悪性のがんだって、ふらっと病院へ行って治療し、夕方には何もなかったかのように元気になって遊びに行ける、そんながん治療が現実的になっている、と説明したら、「風邪を治すようなものですね」って返すから、いやいや風邪引きより早い、って言うと、腰を抜かすような驚き様で目を白黒させていました。

これって、いったい何、何が起きているのでしょうか?もう60分近い持ち時間をしっかりした口調で、その先端的ながん治療の核心をわかりやすく説明し、時計を気にしながらもその後半に大きな山場を迎えていました。それは、本邦初公開となる、実際の患者の治療実績でした。次から次と続く、そのいくつもの驚きの症例に会場はシーンと静まり返り、参加者はその片言隻句に固唾を呑むように聞き入っていました。


講演に立っていたのは、(財)医用原子力技術研究振興財団の常務理事、(独)放射線医学総合研究所顧問、そして東京大学名誉教授で、この先端的ながん治療の開発に人生を捧げてきた平尾泰男さんでした。


平尾さんの講演をベースにこれらの解説などを引用して要約すると、発端は83年当時、中曽根首相の発意で実施された第一次の「対がん10ケ年総合戦略」でした。平尾さんは、その4年前に提案していたそうです。10年間で1024億円を投下して先進国との対がん医療技術の交流を行う一方、326億円を投じて千葉県千葉市稲毛区の放射線医学総合研究所(以下、放医研)に世界初の重粒子加速装置「HIMAC」を完成。その規模は、横120メートル、縦65メートルのサッカー場がそっくり入る巨大な施設です。


HIMACは、「Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba」の意味で略称がハイマック。重イオン(炭素イオン)線を利用するのが特長で、その命中精度は誤差1ミリのピンポイント、陽子線はやや劣って誤差が1センチだが、従来の放射線と違って皮膚や組織への影響を極力少なくし、患部にエネルギーを集中させることができる、という。


そうでした。千葉市稲毛区の放射線医学総合研究所に続いて、建設が急がれていた群馬大学でいよいよ重粒子線治療が開始される予定です。鈴木守前学長らが先頭にたって、全学挙げて推進体制を整え、国、県、地元産業界など幅広く協力を取り付けていましたから、どんなお気持ちでしょうか。開始時期は、施設の整備状況と合わせてお知らせする、とHPに書かれていました。詳細は、重粒子線医学センター・外来、電話相談(027−220−7891)まで。


まあ、実際、どんな治療が行われるのか。そのいくつかの事例をそのメルマガで紹介していました。


≪15歳の少年。整形外科。仙骨の骨肉腫。手術で切れないところに腫瘍ができていて、「やってあげなければ、死ねということ。何としても、やってあげなければならないわけです」と平尾さん。あれから22歳に成長し、骨は見事に再生していた、という≫。


≪50歳代の女性。直腸がん、激痛が襲う日々だったが、ビームの照射を受けた後にもらした感想が、「人生で一番、快適な時間でした」だった、と平尾さんはその女性の感激の言葉を伝えていました。痛みも傷もない。これは、魔法のメスかもしれない≫


≪。71歳の男性。肝臓がん。野球のボール2個分のがん、直径11.2センチ。4回の照射で消えた≫。


このミラクルな治療が、重粒子線治療です。もう3000近い成功の事例を積み重ねている。がんは、怖くない時代が、もうすぐそこまで来ているということかもしれません。治療代は、300万円前後が見込まれています。なお、群馬大学では、白血病、悪性リンパ腫、胃がん(原発部位)、大腸がん(原発部位)は、現在対象になっていない、とお断りしています。


DNDで紹介したメルマガ『重粒子線治療への期待』は配信してからもう4年も経っているのに、いまになってもアクセスが途切れない、というのは驚きでした。この群馬大の重粒子線治療の開始という動きが、引き金になっているのかもしれません。ここだけで、ひとり平均のアクセス滞在時間は、9分43秒にのぼっていました。一般的には、ひとつのコラムに20秒も滞在していれば、まあまあなのですから、DNDメルマガはしっかり読み込まれている、という証ですね。単にメルマガの分量が長いから、そういう結果を生むのでしょう。それにしても、忘れかけていた昔の記事が、こんな風に読まれていると知って、素直にうれしい。

ウェブまかせ、風まかせ。ユーザーがそれぞれの都合で、こちらの意図とは関係なく勝手に活用を始めるのですね。ウェブは眠らない。そして、サーバーが動き続ける限り、『DNDサイト』は、不滅です。


ところで、メルマガVol,1からVol,361までに登場した人名は、ざっと2000人を超え、2056人を数えました。ウェブ上の個人名は、宇宙に遍満する星のように、いつまでも輝き続けてほしいものです。


最後に、事務局からリニュアルに関するお知らせです。
工業調査会と連携した『先端技術と製品情報M&E@Web』がリニュアルしました。デザインに工夫を凝らし、すっきりした「新着情報」が、より見やすくなりました。モノづくりに関するイベント情報のコーナーも新設しました。また、業界動向がわかる、雑誌編集長による『編集だより』も必見です。進化する『M&E@Web』にご期待ください。



■              ■            ■
【一押し情報】
◇「ハイテク・スタートアップの国際比較」講演会
 4月7日午後18時から20時15分。法政大学市ケ谷キャンパスボアゾナード・タワー26階スカイホールを会場に、シリコンバレーなどのケーススタディを報告します。また、同タイトルの出版記念も兼ねての内容の濃い講演が期待されます。ベンチャー研究の一助として、実際のベンチャー回りを担うキャピタル関係も必見です。定員100名、参加無料。
 主なプログラムは以下の通り。
○米国―シリコンバレー地域(法政大学、田路則子教授)
○英国―ケンブリッジ地域(明星大学、露木恵美子准教授)
○台湾―新竹地域(専修大学、鹿住倫世教授) ○日本―アカデミック・スタートアップ(大阪市立大学、新藤晴臣准教授)
○日本―民間スピンアウト(九州大学VBL、五十嵐伸吾准教授)
 以上のラインナップで開催されます。
 http://www.hosei.ac.jp/fujimi/riim/100407.pdf
◇【連載】山城宗久氏の『一隅を照らすの記』第17回は「春は夕暮れ」。春はあけぼのなのに、夕暮れとはいかに…と、ぼんやりしていると、山城さんの術中にはまります。このところの山城さんのコラムは、油断なりません。
題材は、あるシンポジウム。私も参加予定でした。山城さんが報告してくださって、ほんと助かりました。
大阪大学産学連携推進本部と東京大学産学連携本部とが共催したもので、テーマは、"大学発ベンチャーによるグリーンイノベーション"。それぞれ2社の計4社の中で、山城さんが注目したのが東京大学発ベンチャーの(株)ユーグレナでした。このユーグレナは、ある微生物の学名(Euglena)をそのまま社名にしており、その学名は、ラテン語で、美しい眼という意味を持つ。その微生物とは? 正解は、ミドリムシなのです。単細胞の微細藻類で、植物のように光合成を行うと同時に、動物のように細胞を変形させて動き、植物と動物の両方に位置する非常に珍しい生物だそうです。出雲充(株)ユーグレナ代表取締役によると、ユーグレナの光合成による生産効率は稲の80倍で、また、食品としてみた場合、栄養価が高く、ユーグレナの粉末10gに、トマト9個分のベータカロテン、ホウレンソウ1束分の鉄分、納豆1パック分のタンパク質が含まれているとのこと。また、ユーグレナの体内成分の3割は油脂なので、バイオ燃料にも使える可能性があり(単位当たりの油脂分の生産量はトウモロコシの約350倍の由)、さらに、高濃度の二酸化炭素の環境下でも成長していくので、発電所や製鉄所等の施設から排出される二酸化炭素を活用して、二酸化炭素の排出削減とユーグレナの大量培養とができるということです。
いやー、あっぱれミドリムシ!春は、ユーグレナ。ねっ!だから油断ならないのです。出雲さん、懐かしいですね。お元気なによりです。今度、お誘いしてグレナ〜。

◇【連載】は、塩沢文朗氏の『原点回帰の旅』第63回「身近に見た古代人の息吹」です。塩沢さんのご自宅周辺で進められている、古代遺跡の発掘調査にまるわる随筆風のコラムです。
 縄文から弥生、奈良、平安と続く遺跡の数々を実際に眺めながら、その時代時代の特徴を丹念に綴っています。まるで、その視点は、考古学者の思慮深さに似ています。竪穴住居への興味と、構造的問題への疑問、かまどの位相から読み解く家族の風景…。
「発掘跡を見ると時代を超えて同じ場所に、思い思いに家が建てられた跡があることから、ある時期は家が建ち、そして、その家が朽ちて前の時代の記憶が忘れられたころ、再び、同じような場所に家が建てられたという歴史をこの土地は繰り返してきたことが分かります。前の時代の家と後の時代の家の間には、どんな空白期間があったのでしょうか?そして、何故、そのような空白期間が生まれたのでしょうか?発掘調査はもうすぐ終わり、やがて、その土地では老人用マンションの建設が始まります」。 これは塩沢さんの、もうひとつの原点回帰なのかも知れません。

◇【連載】は、比嘉照夫教授の『緊急提言、甦れ!食と健康と地球環境』の第23回「食と健康と環境を守る農業の未来像(3)」です。
 まあ、言葉に、魂魄を留めるという。この項は、緊急提言というよりは、比嘉先生のやむにやまれぬ叫びが迸っているように思います。日本の農業の不振の原因について、冒頭、「農民を保護するために作られた数々の法律が、構造的な自己矛盾を引き起こし、同時に合理化された海外の安い農産物と競 争を強いられているためである」と喝破されています。 この指摘に、さて、どういう立場の誰が答えを返してくれるのでしょうか。
 論説は、アナログとデジタルを対比させながら、「現在の資本主義は、デジタルの世界である。そのため、デジタル以外は、法に触れなければ、何をやっても勝てばいいという人間 の良心に反するようなことを平気でやる人々を増産し、犯罪を含め様々な社会不安を引き起こす、負の含み資産を持っている。この負の含み資産が増えると、社 会は不安定となり、人々の不幸をメシの種とする職業が繁栄することになり、資本主義、すなわち、デジタルの限界と自己矛盾が明確に現れてくる」と断じているのです。また、役所を疑問視し、「自分では行動せずに、常に他人の情報を集めるようになり、データ化されていない住民の善意をすべて否定し、悪代官化するのである。その上、問題が発生すると、活用した他人のデータのせいにする『勉強好きの無責任』ぶりを発揮し、この現象はすでに社会のDNAとなっている」と容赦ない批評を展開しています。どうぞ、このところ視聴率の高い、比嘉先生の論説をじっくりお読みくださることを期待します。
   以上


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