第45回 EM技術による東日本復興計画への提案2


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1.地域全体を更に高いイヤシロチにするためには

 前回は津波や地震等によって汚染された土地をEMで浄化し、イヤシロチ、すなわち、すべての物を癒し、健全にする土地にした後に、建築に入ることの重要性について述べたが、人間が生活し、生産活動を盛んにすれば、ごみや生活雑廃水、洗剤はもとより、様々な化学物質の汚染が増え、時間の経過とともに、ケガレチとなり、元のモクアミとなるのが通例である。


 また、東北の豊かな漁場をきれいにし、更に豊かな海にすることも、今回の復興の重要な課題である。陸上のすべての汚染は、雨により、または、生活や生産の場の排水システムから河川に入り、その結果、河川や海を汚染し、水系の生態系を破壊し、河川や海の資源を貧弱なものにする構造的な欠陥をかかえている。


 この問題の根本的な解決には、本DNDの「第30回 EM技術による自前でできる危機管理」でも述べたように、行政が中心となって、大量のEM活性液を作るシステムの構築が先決であり、現在のような、ボランティアを中心とする活動には限度がある。


 安価で大量に作られたEMを農業、畜産、養殖、ごみ処理、下水処理に徹底して使うだけでも、河川は浄化され、きれいで豊かな海を数年で取り戻すことが可能である。当初は、従来の化学肥料や農薬または化学物質を使用する一次産業や、ごみ処理や下水処理場でも、その技術を変更することなく、EMを併用する方法からスタートする。この併用的な方法でも、化学物質や、生産や活動の際に発生する様々な汚染を、かなりのレベルまで解消することが可能である。


 EMの扱い方が習熟するにつけ、化学物質の使用量は自然に減り、地域全体のイヤシロチ化が促進されるようになる。同時にDNDの本シリーズでくり返し述べたように、トイレ、洗濯、掃除、野菜や食器洗いや室内へのEMの噴霧等々を行う、EM生活を徹底し、生ごみの高度リサイクル等々に、EMを活用することである。


 コスト的に見ると、これ程に安全で安価なものはなく、「EM生活」に徹している人々は病気知らずである。災害時に健康を害することは、不運と言えば、それまでであるが、「EM生活」で予防できるのも、また確かなことである。避難や復興に当たっての精神的、肉体的な過労は、今後の健康という面で、様々な負荷に変わる悲観的な要素でもあるが、「EM生活」により、その大半は解消されるものである。


 医療費の増大が、必然的な状況にある被災地では、各々の自治体の深刻な負担となるのは必至である、また若い人が少なく、高齢者の多い地域では、行政側の限度は明らかであり、住民の身のまわりに起きる環境問題や健康問題は、住民自身で解決できる方法を実行してもらうことが先決である。更に進んで、EMをキーワードに、住民と行政が積極的に協力し、種々の問題を解決する仕組みを作る必要がある。詳しくは、すでに述べた本DND「第30回 EM技術による自前でできる危機管理」を参考にし、EM研究機構の技術支援を受けることをおすすめしたい。


2.未来型の一次産業の創造

 ここで強調したい事は、お金をかけて新しいタイプの最先端の技術を実施する一次産業ではなく、必然的に一次産業が地域社会全体とリンクし、時間とともに豊かになり、活性化するための提案である。具体的には、前項で述べたように社会全体が、EMを水や空気の如く使う仕組みにし、それに伴う各種の工夫を組み合わせれば、安全で快適、低コストで高品質で時間とともに豊かになり、関連産業を更に発展させる未来型の一次産業の創造ということである。


 詳しくは、本DNDの第19回第20回のEMによる漁業振興および第21回〜24回の食と健康と環境を守る農業の未来像で述べた通りである。


 

 今回の被災地は、阪神淡路大震災と異なり、一次産業部門の比重が極めて高く、高齢化が進み、従来の方法で復旧し、維持すること自体も困難な例もある。そのため、これを機会に、大規模農業への再編成も視野に入れた様々な案が実行されることは、それなりの意義のあることであるが、海外の農業を真似する必要はない。


 ここで、強調したいことは、一次産業にどのように付加価値をつけ、地域全体の活性化の基本にするかということである。結論的なことを言えば、EMを活用した化学物質や抗生物質を使わない高度な自然循環型の一次産業である。当初はモデル的に特区を作り、5〜10年で全域に広げることを視野に入れ、積極的に推進する必要がある。


 化学物質(農薬や化学肥料、ホルモン剤等)を使わない多収高品質の農産物や抗生物質等を使用しない良質な畜産品は、最良の輸出商品である。私は、10年以上も前から日本の農業を、EMを活用した高度の自然循環型農業に変え、巨大な輸出産業にすべきであることを主張し続けてきた。今回の、福島第一原子力発電所の事故で浮き彫りになったことは、日本の農産物が、想像以上に海外に輸出されていたことである。DNDの第21回では、将来における日本農業の輸出潜在力は10兆円余と主張したが、その数値は、現在の農業生産額に8.5兆円を上まわるものである。


 技術的には、高齢者が楽にできる小規模のものから、20haを超える大規模にいたるまで、また、畜産や水産にも多数のモデル的事例は事欠かないが、要は地域全体の自然循環的なシステム化を確立することである。具体的には、前項でも述べたように本DND「第30回 EM技術による自前でできる危機管理」での提案を国や県が助成し、市町村で徹底して実行することである。


 無農薬栽培のイナワラや作物残渣は、EMで発酵すれば最良の飼料となる。生ごみや水産廃棄物も、EMで発酵すれば、安価で高付加価値の高い機能性飼料となる。下水処理も流入口で固液分離し、固形物はEMで発酵して良質の有機肥料とし、下水処理もEMで行い、その排水をリサイクルしたり、河川や海の浄化源にすると同時に、動植物プランクトンを大量に発生させる巨大な自然養殖資源として活用することも可能である。


 EM発酵飼料を使い、EMを飲水や飼料に添加すれば、口蹄疫やトリインフルエンザ等の病疫は完全に予防することが可能であり、その廃棄物は最良の機能性有機肥料となる。その結果は生態系を豊かにし、生物の多様性が必然的に護られるようになり、かつてのような沿岸漁業を復活させられるのである。


都市計画

 多くの専門家から様々な案が出されると思われるが、要は産業の振興と地震や津波や洪水、台風等々の災害に強いまちづくりである。今回、犠牲になった方々の大半が老人や病人、同時に安全だといわれた地域や、せっかく避難した避難所が津波に呑み込まれてしまったという事例である。


 また、一部地域を除いては、少子高齢化が加速する状況にあり、徹底した守りの体制が必要である。そのためには、高齢者がリハビリをかね、創造的な活動が出来る、EMによる生ごみリサイクル自給菜園の設置は不可欠である。高台に居住地を移すことも、それはそれなりの効果もあるが、高齢化が更に進み、老人ばかりになった地域は、必然的に限界集落になるという危機も考慮する必要がある。


 地域の振興は、産業が健全に発展し、若い人達が定住し、代々継承されねばならない。前項で述べた未来型の一次産業は、その条件を満たしているが、それを実行するには源資も人間も決定的に集約することである。


 先ず産業振興上、最も重要な場所に一集落がすべて入り、役所、スーパー、病院、介護施設も併設できる10〜15階建てのEMビルを建て、屋上に風力発電、壁面は太陽光発電、雨水はEMで浄化し飲水へ、下水は固液分離し固形物は有機肥料またはバイオガス原料とし、EMで浄化した中水は、半永久的にリサイクルが可能となる。降雨が多い時期には、中水を全部入れ替えてもよく、その排水は農業や漁業の極めて大きな潜在資源となる。ガスも安全な階におきユニット方式とする。


 間取りは家族、個人等と多様化し、高齢者は救助者がいなくても、安全にいられる階、配偶者や家族がいなくなった高齢者も、維持管理の便利な個室に移動できる自由度も考える必要がある。


 すなわち、いかなる災害にあっても、ライフラインが完璧であれば、下層階に多少の犠牲が発生しても、今回のような壊滅的打撃を受けることはない。特に1〜2階部分は津波用のシャッターを強化する。間取りは誰でも住みたくなるような広さと機能性を持つことが前提条件である。当然のことながら下水処理場やごみ焼却場は不要である。EM技術を活用したごみ資源化は、高機能な農業資材、ダイオキシンを発生させない固形、または、液体燃料各種の基盤材等を極めて低コストで造ることが可能である。


 巨大で機能的な統合ビル群を作った後に残る広い空地は、高度の学校や公園、自給菜園はもとより、雇用効果が高く、周年稼動する、ハウスを中心とする無農薬の高度な有機園芸用地を造成する。そのまわりは、生態系を考慮した災害に強い森林を作り、安全柵を兼ねた、津波用の塀を建築する。地盤が著しく沈下した区域は陸上養殖の場として考えるのも無益なことではない。


 港湾や水産施設は、従来よりも、更に安全で高度化したものにして、すべての水産廃棄物は、EMで処理し、高度な有機肥料や飼料とし、有機農産物残渣を活用して、畜産薬品を全く使用しない各種の有機畜産団地を作り、世界的なモデルとする。EMは、口蹄疫やトリインフルエンザに対し、決定的な予防効果があり、家畜の疾病のあらゆる分野に応用が可能である。


 アイデアとしてはおもしろいが、コストはどうなるのかということである。建築資材の大半は容易にEM化できるため、建築費は従来と大差ないレベルとなる。EM建築は様々なテストの結果、300年以上、メンテナンスの方法によっては半永久的である。またコンクリートにEMを混ぜることは私的、公的にも違法性がないという判決が出されている。


 シンガポールのデベロッパーであるダナステラ社は、先月から、マレーシアのジョホール州にすべてにEMを活用したEMモデルタウンを着工した。使用されるコンクリートは125,900m3、添加される建築用のEMは1,133トン。下水も、ごみ処理も、すべてEM仕様となるため、EM建築の世界的なモデルになるものと期待している。


 本DND「第31回 EM技術による居住環境」でも述べたように、EMを活用した建築物は、耐用年数が著しく長いばかりでなく、そこに住む人や働く人々の健康に顕著な効果が認められている。医療費が半減するのは当たり前で、EM生活を実行すると10分の1になったという例もある。下水処理場やごみ焼却場も不要で、自然エネルギーの売電も可能となり、冷暖房費が30%内外も節減できる利点も併せて考えると、銀行をベースに信託的に経営することも可能である。


 また高齢者の救急等や、その他のケアーを含め、社会的コストの低減を考えると、極めて効果的である。


 「地域全体が、巨大なファミリーのような形式となって各々が補い合い、助け合って、安心で楽しい生活が出来る。」再開発に当たって、忘れてはならない視点である。



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