第19回 EMによる漁業振興
新しい年をむかえました。COP15の合意は得るに至らなかったが、いつの間にか地球環境問題はCO2一色になった感である。確かにある意味で人類の未来のエネルギーへの転換力として様々な課題を突きつけており、命にかかわる問題ならば、先送りできず、解決は困難なものでもない。しかし、CO2は人体にとって有毒な存在ではなく、太陽のエネルギーを有機体として保存する地球規模の資源であり、この問題の解決には、別の視点も必要である。
すなわち、温暖化にかかかわる要因をすべて洗い出し、その収支で判断することである。例えば、農作物を投入エネルギーと固定された炭素量から収支を図り、CO2取り引きの対象とすることも可能であり、水田や湖沼や畜産から発生するメタンガスの抑制実績や農業や工業から発生する窒素酸化物等々、CO2の量に関わらず、温暖化に影響を与えるものをすべてチェックする必要がある。この件については機会を改めたい。
これまで、第15回から第19回まで、EMによる河川や海の浄化の実績について紹介したが最終的な決着点は漁業の振興である。先ずは真珠で有名な三重県の英虞(アゴ)湾の浄化の成果である。この報告は、前回の三河湾と同じく、愛知万博の際(H17年)に発表されたものであるが、現在は更に成果が上乗せされている。
本プロジェクトのそもそもの始まりは平成12年当時の三重県の北川知事の要請によるものである。知事いわく「真珠で有名な英虞湾の汚染が深刻で何とか解決したいが、三重県は貧乏でお金がない。EMの河川や海の浄化の実績は広島県の内海町(現福山市)の結果で十分承知しており議会の関係者もEMを活用することに賛同している。成功払いで英虞湾をきれいにすることはできないか」ということであった。
私は二つ返事でOKし、議会もそのことを承認し、費用すべてEM側で負担し、私が指導の責任を負うことになった。現地を調査すると、遠目にはきれいだが、よくよく観察すると海草は極めて貧弱で、うすくにごり気のある錆びた海であった。私は、当初は3年で浄化出来ると考えたが、5〜10年の長期戦になることを覚悟し、旧界M総合ネット(現界M生活社)にこのプロジェクトの協力をお願いした。
次の年に悪臭の消失、海草の発生、アサリの復活など、海にたずさわる者ならなら、誰でも理解できる成果が認められたが県側には生態系の調査項目はなく、CODやSSのような水質検査のみで、EMは効果がないと判断されるようなコメントが出た。私は、水がいくらきれいになっても、生物が生きられない水は意味がなく、生態系重視の調査をお願いしたが、調査法の確たる方法論がないとして、十分な協力が得られず、生態系については当方と漁業組合で行ったいきさつがある。
EM投入から三年目、EMが拡散した水域では、これまで見たこともない立派な真珠が獲れるようになり、アコヤ貝が元気になりすぎて、押入した真珠の核をはきだす現象も認められた。(この件に関しては貝を弱らせて戻すことで解決)今回の成果は平成17年までのものであるがEMの効果は明確に現れている。英虞湾は、入りくみの激しい広大な湾である。その中には、EMが拡散していない地域もあり、EMを活用した地域とは、格段の差異が認められている。北川知事は、本プロジェクトの評価が定まらないうちに転身してしまい、成功払いの請求書は宙に浮いたままである。
市民塾の報告「英虞湾浄化活動(三重県)」
その次は、大阪市漁業協同組合が行った淀川のシジミの復活である。この件に関しても、賛否両論に分かれたがシジミの漁獲量がすべてを物語っている。この大阪市漁協の成果から、兵庫県を含む環大阪湾の漁協の協力体制が広がり、多くの環境ボランティアも参加し、大阪湾の浄化と漁場の復活にEMを活用した様々な取り組みが行われるようになってきた。広大な大阪湾をきれいで豊かな海にするためには、現在のボランティアを中心とする活動では限界がある。その打開策として、下水処理場でEMを使うことを大阪市に提案したが、ことごとく拒否された。その提案の背景には、千葉県の伊勢エビの成果がある。
すなわち、千葉県内主要9漁協の平成12までの年間水揚げ量は250〜270トン程度であったが平成13年には、突如として400トンを超え、14.15年には700トン前後に達したのである。私は平成9年に守谷市(茨城県)の下水処理場でEMを活用することが決まった時に、利根川の水が広がる房総の海域は豊かな海になるが、それは千葉県の努力によるものではなく、守谷市の下水処理場のお陰である。守谷市は千葉県に将来、漁業振興協力費を請求出来ると話したが当時は誰も信じていなかったのである。日量3〜4万トンのEM処理水を放流していたのである。その3年後、これまでの常識を覆す結果となり、私はそのことを当時の堂本知事に話したが千葉県側は、何かの偶然として片付けてしまったのである。その後守谷市の下水処理場のEM活用も、いろいろな圧力や妨害で中止に追い込まれた、私はそのことを世紀の大実験として歓迎した。それから数年後、千葉県の伊勢エビは急速に衰退し、昔の状態に戻ったのである。結論的なことを言えば日本中の下水処理をEMで行うと近海漁業の復活は極めて容易であり、コストはあって、無いようなものである。
市民塾の報告「大阪湾浄化活動(大阪府)」
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