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「検証 報道被害・朝日新聞とツイッター」
 -そこまでやるか、EM叩き- 


第16回 美しいEM団子づくり、石岡の「光風荘」
・「光と風と歌と」-その2
・「ボラ感」の歌が胸をうつ


 茨城県石岡市内にある盲重複障害者施設「光風荘」(須賀田毅理事長)にEMづくり専用の建物がある。ここでは土日をのぞく毎日、施設の利用者さんらが順番で班ごとに分かれてEMボカシ、EM団子づくりに励んでいる。どこよりも美しいEM団子を作る、と評判の「光風荘」を訪ねてすぐ、復興ソング「花は咲く」のサプライズがあったことは前回のメルマガ「光と風と歌と」で報告した。
 バンドのみなさんが歌をひとつマスターするのに平均で7ケ月の時間を必要とする、と聞いた。新しい曲になると、1年余りもかかるというのだから、涙ぐましい。今回は、EM団子づくりにまつわるエピソードを紹介したい。団子ひとつ丸くこねられるまでには、どのくらい時間を要するか、その体験を聞いてまた驚いた。丸い団子、その丸いという形を連想するのが難しいらしい。
DND編集長、ジャーナリスト   出口俊一



:EM団子づくり、丸く仕上げるのには、やはり時間がかかる

◇光風荘のEM棟
入口をくぐると、発酵した匂いだろうか、EM独特の匂いが漂っている。そこで利用者さん十数人が作業台を囲んでいた。「カムカム」バンドでシンセサイザーを担当していた長身の男性が数人と一緒にボカシづくりの作業台にいた。米ぬかともみ殻をEMに混ぜあわせているのだ。右に左に散らしては再び戻し、それを繰り返しながら良質のボカシに仕上げていく。
 このボカシは、ボカシ肥料と言われ菜園や畑の土壌改良に使われている。効率よく、それもローコストで作れるため、国内ばかりか世界各地で作られているそうだ。特別な特許も縛りがないのは、考案者でEM開発者の琉球大学名誉教授、比嘉照夫氏が安全で安心でしかも環境にもよい土壌改良資材を多くの人にお届けしたい、という強い思いがあるからだ。「BOKASHI」のネーミングで欧米をはじめ、アフリカ、アジアなど各地で普及している。
さて、その作業を見てまわった。
 どうですか?とシンセの彼の肩に手を添えたら、「ハイ、指を動かしていると、気持ちがいいです!」という。「指を使うシンセサイザーと、ボカシづくり、そのどちらが楽しいですか?」と聞いた。「ハイ、シンセの方がやはり…」と言って笑った。そうだよね、愚問でした。そばにいた理事長の須賀田さんが、彼はベテランでよくやってくれています。食堂のホールでは朝と、昼と、晩の一日に3回、シンセサイザーで生音楽を聞かせてくれているのです、と教えてくれた。
 一番奥の作業台では、利用者さんら4人が丸い団子状のものを作っていた。丸く捏ねた団子は、いったん、その端に立つ職員の手にわたり、量りで一個一個均一の重さにならされて次々と大きな箱に並べられていた。褐色の土は、米ぬかにEM活性液を含ませたEM団子の材料となるもので、褐色の団子は数ケ月もすると、菌が表面を覆いEM団子という完成品になる。EM団子は、主に全国の河川の浄化に役立てられている。








◇1年がかりの団子
 私の取材に同行してくれた施設のEM担当である山口せつ子さんは、最初、利用者のみなさんは、まず丸い形というのが理解できないのです。そのため、作業の脇に見本として丸い団子を置いて触らせた。これが丸い団子の形だよ、と教えた。それを触らせながら、丸い形を憶えさせるのです。そうですね、丸い団子の形をマスターするのには、ほぼ1年かかっています、という。

 作業台の男性に聞いた。
 上手にやりますね、もう何年やっているのですか?
「2から3年になります」
 丸くこねるのは難しくないですか?
「ハイ、一応、手ほどきしてもらうのですが、前は、いくらやってもヘビのような格好になったり、ジャガイモだったり、なんだかわからない形になって、うまくいきません。いまのように丸くできるまでには、結構、苦労しました。いまはもう慣れました」

   私もやってみた。いやはや、これがうまくいかない。土が柔らかいために力の加減が要領を得ず、ジャガイモのようないびつな形になってしまうのだ。1年がかりとは気が遠くなるような話しだ。丸い形をイメージしても丸い形に整えるのは容易じゃないのである。

 団子は1個240gと決めている。女性で230gだったり、手の大きい男性では280gといろいろだが、成型の過程で土を足したり削ったりしながら最終的には240gに整える。EM団子は箱詰めされて乾燥し、発酵ののち一個150gの製品となる。
 「光風荘」でつくるEMボカシは、1キロ300円で、園芸用品店や市役所の即売コーナー等で販売されている。月に200袋ほど売れる。大口の注文も入るという。販売先に、作った利用者さんらを同行させることもある。販売先から、「いつもありがとうね」とか、「いいものができたね」などと励ましの声をもらうと、みんな嬉しそうに照れながらも御礼を述べ、次にまた行きたいと自分の順番を心待ちにするのだそうだ。




◇年間2万個の製造
その一方、EM団子の方は、これも年間2万個余り製造する。一個30円から40円で引き取られているうえ、茨城県や近隣の河川の浄化のために利用者さんらとEM団子を投入している。全国の社会福祉法人や授産施設、作業所の多くで、このようなEMボカシ、EM団子づくりを行っているEMボカシネットワークを作って応援している。

 山口さんは、利用者さんらこの取り組みについて、
「丸い形のイメージがつかみにくいのだが、丸か、三角か、形の識別ができたとしても丸い形を作る、となるとこれがまた難題で、幼少のころから泥んこ遊びなどの経験がないため、手のひらは頼りないくらい薄く、指といえば細く白かった。EM団子づくりを始めると、やがて男性の指は節くれて力強くなり、女性はしなやかなに変化してきているんです」と胸を張った。

 「光風荘」の開設当初から理事として活動している鈴木せつ子さんは、EMボカシ作りを始めた頃を述懐した。
「平成9年ごろですが、当時、施設運営にお金がない、お金がない、と耳にするので、それならEM(有用微生物群)でボカシを作って売ればお金になるじゃない、とうことでボカシを作ることになったんです。」
ボカシは、EMと米ぬか、もみ殻を発酵させたもので、これを生ごみに混ぜて発酵させたものを土に返すという循環型の社会の一端を担ってきた。が、鈴木理事の提案でそれを販売したら、好評だった。自分たちの作ったボカシを地域の方々が使ってくれるということになった。「利用者さんらの精神面の充実と作業を通じての生きがい作りの一助になっているんですね」という。加えて、EMボカシ、EM団子づくりには、地元から、石岡市ボランティア連絡協議会(会長、井坂日出代さん)はじめ、大勢のボランティアの方々が日々、応援してくれている、という。


◇自立のために…
 自立には、社会との接点を結ぶ、ということがなにより大切だ。まず日常的な仕事に就けるか、どうか。何か、いい仕事はないだろうか、とそこを最重要の課題としている。施設の運営に携わる責任者は常にそのことが頭から離れないものらしい。
 日本一美しいEM団子を作る光風荘を訪問-というコメントを写真入りでフェイスブックにのせたら、多くの反響があった。中でもニュージーランド在住の女性から、それだけきれいなお団子を作るのであれば、本物の団子を作って販売したらどうか、というメッセージが入った。そのことを控えめながら「そんなことは無理ですよね」という意味の否定的な説明を加えて、須賀田さんにお伝えした。
 すると、
「いやいや、ひょっとしてそれもいいかもしれませんよ。団子づくりの応用というか、本物の団子をつくるのですね。いいアイディアだと思います。わたしたちは、利用者さんらに何かいい仕事はないか、と日々、考えているのでどんなアイディアでも喉から手が出るほどいただきたい。みなさんの自立の一助になればこれほど喜ばしいことはないのです」と喜んでくださった。
利用者さんの作業といえば、これまで割りばしの袋詰め、メンコの束ね作業、ティシュの袋入れといった請負の内職作業が多かった。飾りのクラフト制作、陶芸といったものが、一般的だった。とくに内職は、材料や製品の受け渡しに車で運んだりしないといけないので対価のわりには負担が多いのだ。クラフトや陶芸については材料費がかさみ作品とてそう売れるものでもない、という。


◇足利のこころみ学園、川田園長の願い
  余談だが、栃木県・足利のワイナリーで知られる「こころみ学園」の創設者、故・川田昇園長が、ワインの本場フランスに行って、そこでシャンパンの製造を目撃しその製法を聞くに及んで、「うちでシャンパンを作ればこれでまたひとつ園生に仕事が与えられるじゃないか」と小躍りしたというエピソードをメルマガで紹介した。
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm101102.html  

 さて、その作り方といえば、発酵を終えて仕上がった瓶詰めのワインに乾燥酵母と餌になる砂糖を入れて再び発酵を促す。その瓶の中で二次発酵するから瓶内二次発酵方式と呼ぶ。この発酵によって澱がたまるため、どうにかして澱を処理しないとせっかくのシャンパンに濁りがはいる。その濁りを除去するために瓶を逆さまの状態で回転させながら酵母の澱を瓶の口元に集めて、澱を取る。気が遠くなるようなこの作業をルミュアージュ(動瓶)と言う。
 が、ルミュアージュは、日に2回、1回の回転が45度で、100日連続でやり続けなければならない。毎回45度の狂いない角度で回し根気よく100日続けられるだろうか。その独特の製法を習熟したのが、自閉症の園生だった、というのは驚愕でした。彼のその才能を見出した川田園長も並ではない。
 スパークリングワインの製造はこれで終わらない。瓶の口に澱が溜まった瓶をそっと抜いて、マイナス20度の不凍液で口の部分を凍らす。栓を抜くと、勢いよく澱をためたところが鉄砲玉のように飛びだしていく。さらに量を調整しコルクを打って、ワイヤーで固定するという手順をふまなければならない。
 このココ・ファーム・ワイナリーの名前を一躍有名にしたのが九州沖縄サミットでした。ここのスパークリングワイン「NOVO」が、夕食晩さん会の乾杯に使われた。このシーンをテレビの前でかじりつくように見ていたワイナリーの関係者から歓声があがったことは容易に想像できます。ココ・ワインが世界にデビューした瞬間だった。


◇涙でかすんだボラ感
 さて、光風荘の訪問から、まもなく一週間余り過ぎた12月20日に再び訪ねた。年に一度の「ボランティア感謝の集い-クリスマス会-」。この日も好天で、光風荘に穏やかな光が差し込んでいた。やはり午前10時の集合時間より早めに着いて駐車場で待機していたら、鈴木さんから声がかかった。ホールには、利用者さんらが席についていた。ステージの最前列には、ボランティアの方々が座っていた。ホールには、利用者さん、職員、それに保護者のみなさま、そして理事ら来賓の方々が招かれていた。
 午前10時半、利用者さん代表による「始めの言葉」で開演し、理事長の須賀田さんが挨拶を述べ、来賓として地元の今泉文彦市長が激励した。う-む、突然というか、予期せぬ事態と申しましょうか…。
 続いて来賓として呼ばれたのが、金沢工業大学客員教授でジャーナリストの出口さま…」と紹介された。迷わず、壇上に上がったものの、スピーチの用意はなく、少し戸惑いながら、先日の「カムカム」バンドの「花は咲く」で泣かされたことを”告白“した。壇上に立ちながら胸にこみ上げるものがあった。
 ボランティア感謝の集いは、通称、「ボラ感」と呼ぶ。ひとつひとつが丁寧に進行していった。施設長の須賀田さんが来賓の皆様を紹介し、次に司会を務める和合さんが、保護者を代表して挨拶にたった。ボランティアの方々が「親代わりになって子供たちに接してくださって本当にあり難いことです」と感謝の気持ちを伝えたあと、その前日に福島で歌手のさとう宗幸さんが歌った「あ・り・が・と・う・の歌」を引き合いにボランティアの皆様に「ありがとうございました」を繰り返した。この真心のスピーチに心打たれた。後日、YouTubeでこの歌を聴いたら、心が揺さぶられてたまらなかった。
 利用者でつくる自治会の代表として挨拶にしたのが、あのキーボード奏者で、美しいEM団子を作る、さとみさんだった。立派でした。ボランティアのみなさんは10数団体に及んでいた。「ぽこあぽこ」、「むつみの会」、「さつき会」、「はくつる会」、「たんぽぽ」などで、読み聞かせのボランティアだったり、手を貸すボランティアだったりだが、その大半はEMのボランティアに携わっていた。それぞれを紹介し、ステージで記念品を贈り、代表が挨拶した。
 午後は、土浦から軽音楽の演奏が入った。土浦ウィンドアンサンブルの軽快なリズムに合わせて体を揺らせたり、踊ったりする子もいた。演奏も後半に差し掛かった頃、「花は咲く」の演奏が始まった。すると、職員が近くにいた「カムカム」バンドのボーカルの女性二人をステージのそばに案内し、マイクを持たせた。歌は、演奏の途中から飛び入りした格好だ。いやあ、なんとも…。演奏がひと段落したら、アンコールが起こった。アンコールには「花は咲く」が選ばれた。
 今度は、最初から最後までフルで歌い上げていた。私の席の近くに、「カムカム」バンドの男性ボーカルの姿が目に入った。彼は、職員から腕を支えられるようにステージに呼ばれたが、どうしたのだろうか、彼はその招きに躊躇した。行けばいいのになあ、と思いながら、ほら、行って、行って、存分、その甘い声で歌ってきなよ、と小さく声をかけた。腕を組んだまま、彼は頑なな様子だった。
 ほら、君の出番だよ、みんな待っているよ、と、また声をかけた。すると、スーと立って職員の肩を借りて、ステージの方へと向かったように見えた。
 歌は伸びやかで、心に響いてきた。その一部始終を見届けながら、こんなドラマが現実に起こりうるものか、と。それが夢のステージのようでもあり、夢なら覚まさないでほしいと思ったら、また涙があふれた。


   

◇世の中に大切なこと
 ハンディのある人を日夜、表に裏に支えていく。また身近に寄り添いながら自立を手助けすることは、とても尊いことだ、と教えられた。時間をかけてもできるまで待つことの大切さを学んだ。光風荘でみたEM活用に関わる方たちのやさしさに心を打たれた。私は、その笑顔と歌声を心に刻んだ。この麗しい絆を守っていかなければならない、と心に誓った。 みなさま、ありがとうございました。

 ≪次回に続く≫

「検証 朝日新聞とツイッター」-そこまでやるか、EM叩き-
第1回:「ニセ科学」糾弾の急先鋒
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第2回:大阪大学、菊池氏に汚された口蹄疫感謝状
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第4回:浮かぶEM根絶やしの構図(大阪大学・国立天文台・朝日新聞)
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