◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2012/12/15 http://dndi.jp/

小選挙区で当確28という民主惨敗の現実

 ・自民過半数越えの勢い、公明30議席、維新50議席か
 ・第3極が三つ巴の潰しあいで自民が漁夫の利
 ・それでも民主で生き残る候補の底力

連載&コラム
■黒川清氏の学術の風
「国会事故調の意味、「立法府」国会の意味、選挙の意味 ほか」ほか
■塩沢文朗氏の「原点回帰の旅」
第95回 2030年に向けたエネルギー政策への期待
■滝本徹氏の「つながり力で地域活性-戦略と実践-」
第22回 酒蔵ツーリズムの創造に向けて
■山城宗久氏の「一隅を照らすの記」
第50回 「この底力を活かして」の巻

一押しイベント情報
通商産業政策史完成記念シンポジウム:来年1月29日
「グローバル化と産業政策の転換」

DNDメディア局の出口です。こんな寒空の下で、連日連夜、お願い行脚はどれほど大変だったことだろうか。泣いても笑っても残すところあと数時間でフィナーレを迎える師走選挙、さて、喧伝されるようなメディアの当落予測の通りになるのだろうか。


数日前の夕刻、最寄りの駅を下りたら、ロータリーでマイクを握っていたのが大学のゼミの先輩でした。地元の名門で県議6期のキャリア、県会議長を務めた地元のエースだが、国の形を変える「維新」への鞍替えで国政に挑んだのだ。


やや長めの演説が終わった。この寒さだもの、立ち止まる人はいない。拍手は、わずかだった。近づいて激励の握手をした。先輩の手が氷のように冷たかった。表情は修験者のようにこわばっていた。寒さのせいなのである。これが候補者の現実なのだろうか、と頭が下がる思いだった。先輩から少し離れたところで奥様が静かに頭を下げていた。


有権者は、投票にさいして何を基準で選ぶのか、まあ、経済政策とか、脱原発とか、反TPPとか政策課題に違いはあるにしろ、政策で選んだりはしない。信用できぬ口先だけの政治家がひしめいている現状では、どんな看板を掲げてもそれらを鵜呑みにするわけはないからだ。党や組織を超える、大切な人、そんな人を応援したいという気持ちは、きっと今も昔も変わらないように思うが、どうか。


先輩の街頭演説につきあったためではないが、その夜から38度を超える熱が出て寝込んでしまった。頭痛が襲うし、お腹辺りもはっきりしない。体の節々が痛い。食欲がない。これは水分を補給して寝るしかない、と決めて丸2日間、臥せっていた。今朝がたから汗が出てシャツを3度変えたら、熱が見る見る下がった。手元に新聞や週刊誌を取りよせて、衆院選の予測を眺めながら、ある奇妙な違いに気づいた。



それは、たとえば、『週刊ポスト』の「ぶち抜き全28ページ大特集、最終完全版」によると、世論は自民党ブームに沸いているように見えぬが、本誌の分析では自民圧勝246という結果になった、と各選挙区の候補の当選の可能性を◎、○、▲、△、無印、でその詳細を示した。まあ、よくある手法ですよね。


12月から編集長の交代で少しはまじめになった印象の『週刊朝日』は、「衆院選300小選挙区+比例当落予測決定版」と題した特集にベテラン評論家の森田実氏、田ア史郎氏のお二方を登場させて分析を加えた。それで、やはり自公305議席、「自民の単独過半数は堅い」と読む。原発再稼働容認派の民自公維を合わせると430議席と言う結末は、脱原発を望むひとにとっては悪夢だろう、と論じた。


もうひとつ、12・16ニッポンの運命完全予測・最終決定版「衆院選300小選挙区の当落」と銘打ったのが『サンデー毎日』だ。それによると、自公で300議席越えどころか、自民は小選挙区231議席と圧勝、比例区の47議席を加えて278議席と予測、現有議席118の2.5倍近い大勝と見込む。


自民が単独過半数を超えて280議席になる、という予測は朝日新聞の中盤選挙情勢など各新聞が伝えているところだから、いまさら驚くべきことではないかもしれない。


「維新や未来、みんなの第3極同士が競合する小選挙区が86に及び、第3極の潰しあいの結果、政党支持率が高く、候補者の後援会組織がしっかりしている自民党が有利となっている」(サンデー毎日)。さらに、千葉5区、神奈川3区、同5区、東京1区など"三つ巴争い"が12選挙区を数え、まさに第3極のバトルロイヤルなのだという。また、民主党を離党して第3極に鞍替えした候補者に対して、民主が候補者を立てる内ゲバの様相が見られ、そこでも自民党がまんまと漁夫の利を得る選挙区もある。


選挙は勢いが大事というのはわかる。わーわーやって、小選挙区は1人区なのだから、誰をターゲットに戦うのか、その辺の調整がまったくないのだ。交戦的だが、戦略的じゃない。これじゃ、地盤の自民候補に勝てる道理がない。まして投票率に関係なく公明の組織票が自民に+されるのだから。



さて、説明が長くなったが、「ある奇妙な違いに気づいた」という点に触れましょう。それは、民主党の獲得議席の予測が各誌にずいぶんと開きがある、ということなのだ。


民主の小選挙区と比例区を合計した数は、『週刊ポスト』が、68と35で103議席(99から122の幅があり)、『週刊朝日』が64と31で95議席(森田実氏、田ア氏は合計で77)というもので100の大台を割る見通しだ。新聞各紙は、80台割れもという数字が飛び交っているが、驚くべき結果は、『サンデー毎日』の予測で、小選挙区19、比例38の合計57議席と出た。小選挙区の19議席は、維新の会の23議席に及ばず、野党第1党にもなれない懸念もはらんでいるのだ。


民主党が、300ある小選挙区でいくつ勝ち取れるのか、『週刊ポスト』の68議席か、『週刊朝日』の64議席か、『サンデー毎日』の19議席か、朝日新聞の中盤情勢だと、小選挙区は最低が34、中心が41、上限が49という見通しだ。



そこで、新聞の各紙の情勢にある取材網を駆使して、ぼくなりに選挙区を個別に分析して民主党の小選挙区での獲得議席予測を試みた。いわば、もうひとつの「出口調査」なのだが、これが恐ろしい結果となってしまった。分析の方法は細かくは触れないが、たとえば接戦で猛追、追いあげている2番手の場合、無党派層からの支持が2割から4割に拡大、あるいは6割を超えているという候補については「当確」扱いとしたものもある。


それでも、である。民主の小選挙区での「当確」は28議席、「当落線上」に18候補がしのぎを削っているということが浮かび上がった。最低で28、上限でも46議席。あくまで非公式の、出口編集長調査なのだから、あてにはならないが、ちらっと読んで忘れてくれればよい。


ぼくが当確と予測した民主の小選挙区候補は、以下の通りです。数字は年齢と当選回数です。


岩手3区黄川田徹59、前4◆宮城5区安住淳50、前5◆福島3区玄葉光一郎48、前6◆神奈川9区笠浩史47、前3◆千葉4区野田佳彦55、前5◆茨城5区大畠章宏65、前7◆埼玉5区枝野幸男48、前6◆東京1区海江田万里63、前5◆東京3区松原仁56、前4◆東京7区長妻昭52、前4◆新潟4区菊田真紀子43、前3◆長野1区篠原孝64、前3◆静岡2区津川祥吾40、前3◆静岡5区細野豪志41、前4◆静岡6区渡辺周51、前5◆愛知2区古川元久47、前5◆愛知3区近藤昭一54、前3◆愛知13区大西健介41、前1◆三重2区中川正春62、前5◆三重3区岡田克也59、前7◆兵庫11区松本剛明53、前4◆兵庫12区山口壮58、前3◆京都2区前原誠司50、前6◆京都3区泉健太38、前3◆京都6区山井和則50、前4◆大阪11区平野博文63、前5◆奈良1区馬淵澄夫52、前3◆佐賀1区原口一博53、前5。


激戦区で当落線上の見通しの候補は次の通りでした。


福島5区吉田泉63、前3◆東京2区山中義活67、前4◆東京21区長島昭久50、前3◆千葉9区奥野総一郎48、前1◆栃木2区福田昭男64、前2◆埼玉1区武正公一51、前4◆埼玉6区大島敦55、前4◆神奈川16区後藤祐一43、前1◆新潟2区鷲尾英一郎35、前2◆長野3区寺尾義幸59、新◆愛知5区赤松広隆64、前7◆愛知8区伴野豊51、前4◆岡山4区、柚木道義40、前2◆大阪12区樽床伸二53、前5◆滋賀1区、川端達夫67、前8◆滋賀4区奥村展三68、前3◆和歌山1区岸本脩平56、前1◆大分1区吉良州司54、前3。


こうみると、民主劣勢が伝えられながらも、地元にしっかり食い込んでいる候補はやはり若手でも結構、強い。それだけ信頼を勝ち得ている証左だろう。いくつもの嵐をくぐりぬけてきた民主候補の底力を見る思いがしてくる。また閣僚経験やテレビの露出多い候補は知名度があがり人気なのだろう、と思う。


週刊朝日の誌面上で田アさんは、有権者が自民党政権に戻したいわけではないけれど、民主党は余りにダメだと思っている。第3極は乱立してまとまりに欠ける。消去法で自民党に入れるしかないという選挙になりつつある、と分析して、自民党274議席、公明党31議席、あわせて305議席。民主党は77議席と惨敗し、維新の会は51議席、未来の党は34議席、みんなの党は17議席と予測する。この辺がまともなところだろうか。


付け加えると、青森は自民が総取りしそうで、宮城は、安住以外は自民が優勢、山形1区は鹿野道彦が劣勢という情勢分析もある。栃木1区は船田元が復活しそうで、民主の牙城の埼玉は、自民がかなり盛り返し、民主退潮を象徴する地域となりそう、と田アさんらは解説を加えていた。もうひとつ注目は、東京18区の菅直人前首相が苦戦を強いられているが、比例で復活するのは間違いなさそう。新潟5区の田中真紀子がやや劣勢、民主は大阪が壊滅の危機、九州では全敗の可能性も否定できない情勢だという。



関東は、曇天で終日、冷え込んだ。午後からは小雨まじりとなり、いっそう厳しさを増してきた。まもなく選挙運動が終わる。衆院選投開票前夜、気になるのが投票率だが、ども候補も寒い中、大変、お疲れ様でした、とねぎらいの声をかけてあげたい。


みなさんはどんな思いでこの選挙に1票を投じますか。明日の夜、8時の投票を締め切り時間直後に、テレビ各局の選挙特番は、自民過半数越えの勢い、民主歴史的敗北の可能性…という騒ぎのようなテロップが流れるに違いない。


さて、どこが勝利したとしても財政や景気といった国政や円高、領土問題など内外の政治情勢は厳しいままだということを忘れてはいけない。





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