第50回 「この底力を活かして」の巻


 今年も残り僅かとなってまいりました。今年も身の回り、国内、世界において、さまざまな楽しいこと、悲しいこと、勇気づけられること、落ち込んでしまうことが起こりましたが、今年最後のコラムについては、やはり新しい年への希望を込めつつ書こうと思います。


 私が現在勤務する経済産業研究所では、毎月一回ランチタイムに、藤田昌久所長(ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授の共同研究者で、空間経済学という新分野を開拓した高名な経済学者)の部屋で、研究所に在籍する研究員から話題提供をしてもらって議論するという内輪の勉強会を行っていて、私も欠かさず参加しています。今回取り上げるのは、夏まで在籍した米国人研究員が、この勉強会で語ってくれた話です。彼の話で最も印象に残っているのは、「日本のメディアは、日本の大企業が直面している課題にばかり焦点を当てて報道するが、サクセスストーリーについてはほとんど報じない。なぜだか自分には分からないが。」という言葉でした。私も親しくなったメディアの方には、かねてより、「バブル期のように日本人が天狗になっている時に、社会の木鐸として警鐘を打ち鳴らして頂くことはメディアの重要な役割だと思うが、一方、近年のように日本人が下を向きがちな時には、明るい話、希望が持てる話を見出してきてそれを取り上げて頂くということが大切だと思う。」と申し上げているので、彼の話には非常に共感できました。


 今月4日に、今年の「TOP 100 GLOBAL  INNOVATORS」が発表されました。日本は、昨年のランクイン企業が7社外れ、5社が新規にランクインし、25社がランクイン。昨年より2社減ったものの、依然としてトップ100の4分の1を占め、しかも、単に2社減ったというのではなく、入れ替わりがあっての2社減ということに日本企業の底力を感じました。ちなみに、米国企業は7社増で47社がランクイン、3位のフランスも2社増で13社のランクイン。昨年も意外に思ったのですが、ドイツは昨年4社だったのが、今年は僅か1社のみのランクイン。アジアでは、韓国も頑張っていて、昨年から3社増の7社がランクインしていることに加え、新規ランクインした組織が、いずれも大学や研究機関という点が要注目です(日本はランクインした組織の全てが企業)。日本企業25社の中では、例えば、今年、困難に直面しているという取り上げられ方が多かったシャープは2年連続ランクインですし、その他のエレクトロニクス系の企業のいくつかも2年連続組です。コーポレートガバナンスの点では大きな批判の的になってきたオリンパスも2年連続ランクイン。是非、各企業が正すべき点は正しつつ、こうした底力を活かしていく経営をして行って頂ければと期待致しますし、韓国の例なども参考にしつつ、国、大学等でも思いを新たに力を合わせて、末永くグローバルイノベーターを多数輩出し続けられる日本を築いてゆきたいですね!それでは皆様、佳いお年を。



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