◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2012/12/05 http://dndi.jp/

日光の森、その序章

 ・肉体の機能回復に効果あり
 ・仲間が続々と助っ人に参戦
 ・チェンソーを購入し本格的に
 ・【師走選挙FB余話】

連載&コラム
■黒川清氏の学術の風
「AAASのScientific Freedom and Responsibility 受賞の知らせ ほか」ほか
■石黒憲彦氏の「志本主義のススメ」
第190回「中国経済をどうみるか 」
■比嘉照夫氏の「甦れ!食と健康と地球環境」
第63回 「福島におけるEMによる放射能汚染対策に関するフォーラム(2)」

一押しイベント情報
■比嘉照夫教授講演会(青森)

DNDメディア局の出口です。書斎を飛び出して、外で体を動かすことが多くなった。寒い日でもたっぷり汗をかく。快感ならぬ快汗なのである。その汗を流すのだが、温泉に浸ったあとで、またはシャワーの後でさえ、疲れ切った体を横たえると睡魔が襲ってくる。全身に血がめぐるのだろうか。酷使した体がじっくりと回復のプロセスに入っていくのだ。いい夢を見ているような心地よさだ。


酒と煙草、深夜に及ぶ慢性的寝不足の異常生活だった記者の時はとくにそうだが、それ以降もノルマと競争、クライマーズハイの悪夢だったから。考えれば、社会に出てこんな豊かな時間があっただろうか。手や足を、肩やひざを動かし続けていると、肉体がその機能を取り戻し、自然を捉える五感がにわかに鋭くなってくるのがわかる。河原に足を踏み入れて足元から森の稜線に目を移すと、うすぼんやりした風景が見えてくる。見ているつもりが、実は、ぼくの網膜に映るのはほんのわずかだったということに気づかされる。森を捉えて俯瞰する能力がすっかり失われているのだ。


目の、視神経に鞭打つような液晶の、白い光の一点に没入する電脳生活から、緑の森の中で流れゆく雲をながめていたら、というピュアな衝動がぼくの心身を突き抜けていくらしい。脱か、卒か、どちらでもよいのだが、超高速で遠大なデジタルの世界から少し離れて、落ち葉を踏む黒土のぼくの森へ。還暦のせいなのだろうか、3・11のショックが尾を引いているのだろうか。


 日光の森


 これから伐採をじっくり


ぼくの森、そう、ぼくが日光に所有する約1500坪あまりの山林で、その大半が樹齢50年を超える杉林だ。その杉林を自然の森によみがえさせられないだろうか、と夢がふくらむ。山小屋やデッキ、それに薪小屋があればいいね、伐採した杉の樹を薪にすれば、ストーブとか、かまどの燃料に役立つ自然のエネルギーだ。薪割りに大ナタをふりおろせば、このなまった体を鍛え直すことができそうだ。森の中での作業だから、ストレスはないし免疫力はグーンとアップするはずだ。


この山林をどうやって森にしようか、そんなことを考えながら、紅葉真っ盛りの日光にあしげく通った。おびただしい落ち葉、杉の小枝、針のような葉で地面は、歩くのもままならないほどふかふかだ。葉っぱの下は、真っ黒な山土だ。岩が転がる渓流に日が射すと、野鳥が囀りながら現れて飛び去った。ここは野鳥の宝庫でもある。こんな山林があったとは驚きだ。


この薄暗い杉林を風が通る豊かなEMの森にできないだろうか、と相談したら、東照宮の杉並木の樹勢回復を長年試みている(株)EM生活の若い伊藤学さんが、知人の川原武美さんを伴って4トントラックで乗り付けた。伊藤さんが土をひとつまみつかんで鼻先に近づけると、肥沃で微生物が豊かな黒土ですね、と言った。落ち葉が積もって質の良い腐葉土となっているらしい。


荷台のタンクからポンプを使ってホースを引き込み、EM活性液を山の上から斜面に向けて撒いた。なんだか清々しい空気に一変した。放射能の除染の効果も期待したい。やがてこの地方特有の男体おろしが吹いたら、厳しい冬の訪れだ。このEM散布は来年春から続けることになる。


この伊藤さんは得難い人でした。かつて信州・上田の森林組合に従事していた経験があり、間伐など山の手入れに詳しい森のソムリエのような存在だ。うれしいよね。こんな風に、山好きが続々と集まってくる。


数日後、東照宮の林務部に40年務める山の管理のベテランの渡森さんが、どれどれ、みせてみんなよ、って親しみを込めた栃木弁でいう。晴れた日に案内した。すっと立っているように見えても枯れた木、あるいはやがて枯れる木がひと目でわかるらしい。つるが這って巨木にからんで木が苦しみ抜いているようだ。あれを、これをと伐採する木を指示してくれた。これはいい木だ、憶えきれないと知ると、今度、目印をつけてやっから、とぶっきら棒に言って、いい森になるわ、と杉林を眺めまわしていた。お墨付きをいただいたようでうれしかった。



 森の助っ人、左から川原さん、伊藤さん、岡田さん

その翌日、今度は、日光の自然を守る会の事務局長で、さくら博士、故・久保田秀夫さんに師事した山下正和さんが、ぼくの森に入った。山下さんは、ぼくより5〜6歳先輩だが身のこなしが若々しい。山林の間伐を手伝ってくれるという。


軽トラックの荷台からチェンソーとナタを手にすると、颯爽と山に入った。ひと通り周辺を見回してから、思い立ったようにチェンソーのエンジン音を高鳴らせた。倒れた杉の巨木の枝を払うため崖ギリギリのところで作業を続けた。藤の木のつるが、杉の幹にグルグルと巻いて先端にまで這っていた。どんな巨木でも絡まったら最後、絡まった木が倒れるまで執拗につるを伸ばしていく。大蛇みたいな藤の木もあった。



 午前中は、下流から日が差し込む。
 せせらぎの音に野鳥の声


 森の入口にシンボルのケヤキ


 大蛇みたいに絡む藤の木


 腐葉土、ゆたかな黒土


 森の管理のベテラン、渡森さん


さすがの山下さんも手こずったのか、チェンソーが杉の幹に挟まってしまった。すると、軽トラックに戻ってもう一台、やや大型のチェンソーを持ち込んだ。二台のチェンソーを器用に動かしながら、陰っていた周辺をスカッと開いた瞬間、風と光が入ってきた。


遠望の丘、と名付けようか。これで明るくなったでしょう、見晴らしがよくなった。初夏には薄紫の藤の花が天から降ってくるように咲くよ、この山ツツジが崖を縁取るように咲くのもその頃でしょう、と山下さんが目を細めてた。


山下さんにぜひ、山を見てほしかった理由は、この山林にどんな樹があり、地表にどんな植物が生息しているか、それを教えてもらいたかった。入り口に大きなケヤキが天を突く。樹齢100年は超える樅の木の巨木も確認できた。ブナやコナラ、ヒノキやアカマツなどはぼくでも判別できた。狙いは、山桜があるかどうか、だ。山下さんは、サクラの新種を訪ねて師匠の久保田先生と全国の山を行脚した経験がある。さて、ぼくの山にサクラはあるのだろうか。秋はモミジ、春は水辺にサクラ、そんな森にしたいものだ。


森は、東側に面したなだらかな斜面で段々畑のような平らな窪地がある。不思議な土地の形状だ。昔は畑だったのだろうか。手が加えられている形跡がみてとれる。段々は川に向かって約4段、100坪から数百坪の土地が6〜7面確認できた。そこにぎっしり杉が植えられているのだ。全国どこでもそうだが、戦後の植林の名残をとどめていた。午前中は、V字に開けた下流方向から日が射しこむ。日が落ちると頂上付近を西日が照らした。日が入るのは、幸いだった。それは植物の生育を約束するものだからだ。


まず手にしたのが白くつるりとした木でアオハダだという。これは珍しい。そのすぐ下に川に向かって伸びる高さ3mぐらいの木が丁字サクラだという。花を横から見た形が丁字の形をしているから、そう呼ぶ、と解説する。


サクラは、その他、川沿いに上溝桜、中腹に霞桜を確認した。木を見てこれは何で、地面を向くと、それが何と次から次と植物や木の名前が口をついて出た。凄いなあ、なんでも知っている植物博士だ。記者なんて、実は、桜と梅の花の区別がつかない猛者もいる。だから、知ったかぶりして、名もない花が咲いていた、なんて記事にして読者から、名もない花なんてありませんよ、と怒られたりする。


山下さんの植物の名前あては、淀みなく一寸のためらいもない快刀乱麻ぶりには驚きだった。ウメモドキでしょう、カエデはわかるね、イタヤカエデもある。ハナイカダは葉の中央近くに小さな豆粒のような実がなるのよ、これはミツバウツギで若芽は食用、材は箸や木釘になる。独特の香りと苦味のウコギ、真っ赤な実がなるガマズミ、初夏に房のように垂れ下がる白い花のオオバアサガラ、羽子板の羽のような緑の実をつける突羽根、茎の先に細く白い線形の小花をつける唐松草、川べりにキダチ杉苔、平らな窪地には龍のヒゲが密生していた。



 アオハダの木を見つけて、珍しくという快刀乱麻の山下さん


 木立杉苔


 山下さんが、これはサワフタギで龍のヒゲと同じような瑠璃色の実をつける、と教えてくれた。カヤノキもあれば、コマユミもあった。


楽しみですね、春になれば、もっとたくさんの花を見つけられるはずだ、と言った。


山下さんが、一段低い平地に向かって山を下り始めた。



 チェンソーを操る山下さんは最強の助っ人

山下さんの豊富な知識には感心した。コマユミといえば、この秋に道東の根室界隈でマユミの木のピンクのタネを拾った。そして中標津に近い養老牛温泉のご主人からはホウノキの赤いタネをもらった。空港近くの山でハマナスのタネを採取して持ち帰り、それぞれプランターに撒いていた。春に芽が出たら、それをこの森に植えようかなあ、と思っていることを山下さんに打ち明けた。


山下さんは、いやあ、芽が出てから植えるより、最初からタネを山に撒いておけばいい、とアドバイスしてくれた。翌日、タネを持参してさっそく撒いた。どうなるだろうか。わくわくするこの昂揚感がわかるだろうか。



 川原付近の大地

森は、日光市内からわずか1キロと近い渓谷にそった杉林で、10月中旬に購入し先月、日光市役所に森林所有者の届け出を終えた。そして、山男の武器となるノコギリとチェンソーを購入した。山に入ったら、すみずみをみてまわる。行くたびに新しい発見があり、それが感動につながる。森づくり、その先の明確な計画はまだない。亡父の遺した鉢を日光に返そうと考えている。日光に住んでいた家から、越谷の家に運んだ鉢は、アジサイやアザレア、桃、姫りんごの木などの相当の数にのぼる。偶然にもぼくの森は父が住んでいた家の上流で200mも離れていない。この場所にいきついたのには不思議なめぐりあわせを感じる。お蔭で気構えは日々、充実し、仲間も集まり始めた。


来年の春ごろには、仮設の電気を引き込んで山小屋を作る。伐採して杉の丸太を切りそろえて並べるマキ小屋も欲しい。40年来の友人で材木屋を営む岡田正さんに相談したら、出口さんのためならトラックで積んでなんぼでも持っていってあげな、と協力を申し出てくれる材木問屋がいる、という。大工さんの手配もしてくれるそうだが、ただ、チェンソーはやめな、危ないからやめな、と再三注意されている。



 川原は気持ちがよいら


 最強の武器をGET、マキタのチェンソー


師走に入ってすぐに犬小屋をつくった。亡父が可愛がった愛ちゃん13歳のためだ。ノコギリやハンマーを持ち替えて3時間余り、不器用な日曜大工だったが、家人は、どういう風の吹きまわしだろうか、といぶかった。新築一戸建ての愛ちゃんの家、寒くなるので小屋があれば喜んでもらえると思ったら、そうはいかない。数日、小屋の背後で少し怯えた目をこちらに向けていた。が、さすがに朝夕の冷え込みに耐えきれず、のっそりと真新しい床板に体をあずけていた。これで完結した。小さな喜びである。


この変容ぶりをどう表現しようか。いや、愛ちゃんじゃなくて、ぼくの生活姿勢のことだが、原点回帰、人間復興とは大げさにしても、こうして久しぶりにパソコンに向かっているのだが、キーボードをたたく指の動きもちぐはぐだし、どうもしっくりいかないわ。


便利この上ないパソコン、その液晶画面の白い光とにらめっこして日に10時間余り、週に1度とはいえそれを10年も続けてきたことを思うと、いささか背筋が凍りつくようなおぞましさをぬぐいきれない。そろそろデジタルな生活に終止符を打とうかなあ、と、そんなことをつらつら考えなくもない。それでもメール送受信や検索、facebookやLINEといったSNS上での交流や、メモ書きや写真撮影の記録の多くは、スマートフォンに頼っているから完全なる脱デジタルというわけにはいかない。


が、デジタルな電脳生活のお陰で膨大なボリュームのこのメルマガもウェブ上にあげていつでも閲覧が可能になっているのだが、さて、どうだろうか。神経をすり減らすのよね、視力を極端に悪化させもした。長時間、画面に向かっているからますます猫背になった。頸椎が重苦しい。このままだと、機能としての肉体が退化の一途をたどって足腰がたたなくなる懸念があるのだ。


森づくりは、誰のためでもない。自然や環境を守るとか、社会貢献とか、そんなことでもない気がしている。森に入れば、だれもが森が好きになる、と山下さんが教えてくれた。ぼくもそう思い始めている。


美しい森の学び塾ってどうだろうか、みなさんもどうですか。ぼくの森物語は、今始まったところです。


【師走選挙ですね】
 維新旋風、みんな、未来の第3極の浮沈は5%以上の投票率アップいかん

師走選挙、お寒い中、関係者のみなさまは、大変、お疲れ様です。ちょっと他人事みたいな感じですが、政治談議は繰り返すと血圧が高じるから、控えめにした方が無難なようです。さて、選挙結果が出る前から、選挙後の政権の枠組みが焦点なのですね。そうだろうか。しかし、どう組んでも脱原発やTTPの扱いは、切れ味よくスパッといかないでしょう。ぼくのように森の住人になって薪ストーブで暮らすならまだよいのだが、原発をやめてその影響を精査しないまま、ほんとうにやめられるのだろうか。年間6000人以上も事故死している車社会で、車を止めるようなものじゃないかしらね。勢いやムードと、その現実的な問題とのギャップが悩ましい。エネルギーミックス、脱原発に向けたソフトランディングのシナリオを描くのは誰なのだろうか。


脱原発の問題は、またの機会に譲ってさて、選挙の焦点は、維新や未来など第三極がどこまで躍進するか、ですか。それに総理や閣僚経験がある有名議員の当落にも関心があるでしょう。投票翌日の朝刊社会面は、当落の明暗が載る。が、総理経験者が落選したら、これは1面扱いだろうが、今回は、その可能性が噂されていますね。菅さんとか、野田さんとか、ね。岡田さんは大丈夫と思うが、どうだろうか。


そんなことをFBに投稿したら、いろいろなご意見をいただいた。未来はどうか、とか。


それに対してこんな所感を述べたので紹介します。ひと昔前までは、選挙分析に定評があったし、三度の飯より選挙予測が好きだった。と、それは過去の話し、政権交代の欺瞞と3・11の政治的対応のお粗末さを見て知って感じたのは、政治のウオッチは、時間のムダということでした。まあ、それでも時節柄、選挙について少しは語らねばならない責任があるような気がするので、こんなFBに投稿したコメントを紹介して終わりにします。



【大阪や近畿圏、都市部での維新の会は、台風の目でしょう。国の形を変える、この一面突破の破壊力は、たぶん、相当なものさ。未来は、嘉田さんが際立ちますね。日本語がきれいで品があるわ、信頼性が高い、和製サッチャーみたいよ、やんちゃな真紀子さんとは、いや失礼…比べてはいけないかな。が、相当、出遅れていますね。残念ながら内部の亀裂も漏れてくる。うまくやってほしい。まあ、嘉田さんによる、小沢さんのフォローはいまのところ絶妙ですね。気持ちがやさしいのよ。


注目は比例でどこまで得票するか、でしょう。


選挙区は、投票率が平凡なら自民+公明のタッグで自民の圧勝という予測以上の先祖返りをみることでしょう。まあ、投票率が4?5%アップすれば、維新か、みんなか、未来かに旋風が巻き起こる可能性は、ある。維新旋風は、もう西から吹いている。注目ですね。街頭の動員力は、半端じゃないでしょう。橋下兄ちゃん、自称、暴走老人の石原爺やの二枚看板は、メディアがいくらこき下ろしても最強よ、テレビ慣れしているし、言葉がいきています。歳末の大売り出しムードのようで、維新の動きはバラエティより面白いのよ。


選挙は、発信力だから。既存政党や野田さんのメッセージは新味がないでしょ、自民批判は政権交代の時と同じ論調のように聞こえます。やっぱり泥臭い野党根性が抜けない。労組の政党になっちゃたら、旧社会党の復刻版だもの。その旧社会党は、消費税反対で山が動いた。今度は、山が崩れるのだろうか。野田さんの言葉は確かに街頭では力強いが、もはや信じられないものさ。選挙戦略を考えるなら、細野さんあたりに首を変えて、世襲批判一本でよかったかもね。


冬だから 懐寒い、将来に不安を抱える無党派層にどこが浸透するか、高齢者層の心を捉えるのは、どこでしょうか。選挙はお年寄り票がとんでもないパワーを発揮するのね。要は投票率、投票率アップ5%のミラクルがおこるかどうか、ここがすべてでしょうか。


と言う、具合でした。みなさま、12月16日は、投票にいきましょうね。





記憶を記録に!DNDメディア塾
http://dndi.jp/media/index.html
このコラムへのご意見や、感想は以下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
DND(デジタル ニューディール事務局)メルマガ担当 dndmail@dndi.jp