第63回 福島におけるEMによる放射能汚染対策に関するフォーラム(2)
前回は、フォーラムの目的について述べたが、先ずはEMによる放射能対策を進めるようになったEM研究機構による確たる実験の成果を紹介したい。
福島県飯館村におけるEM技術による放射能低減化試験(経過報告)
1.はじめに
福島第一原子力発電所事故に由来する放射性セシウムによる農地の汚染が福島県を中心に深刻な問題となっている。政府主導による除染が開始されているが、汚染された農地の面積は広大であり、除染が完了したのはまだ一部である。特に高濃度に汚染された農地の除染については表土の削り取りが最も有効な手段とされているが、仮置場の確保や除去土の保管方法及び、除去コストが除染を進める上で大きな課題となっている。表土の削り取りを行わずに放射能汚染を軽減する技術が開発され、実用技術として確立することができれば、福島県の農業復興に大きな貢献が可能となる。
放射能汚染対策に有用微生物群(EM)を用いる試みは、1990年代後半にチェルノブイリ原発事故で被災したベラルーシ共和国にて行われ、EMを土壌に散布すると土壌中の放射性物質の農作物への移行が抑制されることが報告された。さらに、EMを土壌に散布した農地では放射線線量が減少したという事例も認められた。
このような過去の経験の下に、昨年平成23年5月より福島県飯館村の果樹農家の理解と協力を得て、EMを活用した農地の放射能汚染の低減化を目的とした実証試験を開始した。
2.試験方法
約20aのブルーベリー農園内に、EM活性液を散布する「EM区」及びEM散布に有機物施用を組合せた「EM+有機物区」を設定し、EM区とEM+有機物区に隣接する場所に何も散布しない「対照区」を設定し試験を実施した。EM区では、光合成細菌(EM3号)を添加したEM活性液を週に2回、10a当たり100Lを散布した。平成23年7月下旬以降は、散布を週に1回に変更し、平成24年4月以降は10a当たりEM活性液500Lを2週間毎に1回散布した。EM+有機物区ではEM散布に加えて有機肥料を現在までに4回、一回当たり約200kg/10a施用した。
試料とする土壌の採取は、文部科学省の環境試料採取法及び農林水産省の通知に従い、処理区毎に事前に設定した5カ所から深さ15cmまでの土壌を採取し、よく混合したものを土壌試料とした。土壌中の放射性セシウム濃度(134Cs, 137Cs)は、鞄ッ位体研究所にてゲルマニウム半導体検出器により測定した。
3.結果及び考察
EM区では試験開始直後の土壌の放射性セシウム濃度は1kg当たり約20,000Bqあったが、2ヶ月目の7月には約5,000Bq/kgまで大幅に減少した。すなわち、放射性セシウム濃度はEM散布開始後2か月間で約15,000Bq/kg(約75%)低下した(図1)。EM+有機物区でもEM区と同様に放射性セシウム濃度の減少を認めた。その後、EM区、EM+有機物区ともに放射性セシウム濃度は冬に一旦上昇したものの、4月からは再び減少し約5,000~6,000Bq/kg付近で推移している。
EM区に隣接した対照区においてもEM区と同様に放射性セシウム濃度の減少が認められた。この減少はEM区に散布したEMの拡散による影響が原因と推察されることから、EM区に隣接しない県道を挟んだ対面に位置するブルーベリー圃場の土壌を調査したところ、土壌の放射性セシウム濃度は約15,000Bq/kg と依然として高い数値が計測された(調査日:平成24年9月6日)。
昨年5月から7月にかけての放射性セシウムの大幅な減少は降雨により放射性セシウムが土壌深部に浸透・流出したのが原因ではないかと考え、15~30cm深さの土壌を採取し分析したところ、放射性セシウム濃度は300Bq以下と低く、降雨による土壌深部への浸透・流出は認められなかった(表1)。この測定結果は、放射性セシウムは土壌中の粘土粒子等と強く結合し耕起していない圃場の場合には表面から2.5cmの深さに95%が留まるという農林水産省の報告とも合致していた。しかしながら、自然に土壌中の放射性セシウムが2ヶ月間で75%近く減少することは考え難いことから、EMの働きにより土壌中の放射性セシウムが低減したと考えられる。
現在は、更なる低減化に向けての技術開発とそのメカニズムの解明に向けて様々な試験を実施している。
図1.EM区における土壌中放射性セシウム濃度(Cs-134, Cs-137)の推移
表1
果実が実ったブルーベリー
EM活性液散布の様子
改めて述べるまでもなく、飯舘村は避難地域である。この実験の注目すべき点は2ヶ月で75%もの放射能が低減していることである。当初は、EMを散布していない2M内の隣接地も散布した区と同様に低下したが、物理学の常識に反するため、EMの波動作用によるものと説明を試みてきた。そのポイントは伏線の部分の意味することである。すなわちEMを散布すると隣接地の放射線量も低下するという事実である。本件については、本DND第61回で野田市のスポーツ公園の例で、すでに述べた通りであるが、今回の調査は、その再確認のために行われたものでサンプリング地点は、散布区から50Mくらい離れた場所である。その結果、放射線セシウムは15,000ベクレル/kgで自然減を加味したまわりの地域の数値に類似したものになっている。
それらの結果に基づいて、各地でかなりの数のEMによる除染が行われるようになり、散布量がある一定量になると、例外なく、放射線量は自然減をはるかに上回る減少率が得られている。その代表例として、いわき市の「EMとじょうろの会」の久呉宅の結果を発表いただいたが、その結果は図1と図2に示す通りである。図2の結果は8月30日の外部との比較であるが10月5日には図1に示されるように宅地内の放射線は着実に減少しているのである。
図1
図2
その次は、田村市の都路の避難指示準備区域のコズモファームの例である。その取り組みの経緯と結果は図3と図4の通りである。本結果は空間線量で示されているが10月の調査では地表線量が空間線量よりも低くなっており、時間の経過と散布量の増加に伴って加速度的に低下していることも確かめれている。
図3
図4
コズモファームでは山林を含めた広い範囲の除染に取り組んでおり、週30トン以上の活性液散布が行えるようになっており着実な成果が広がっている。
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