◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2009/05/07 http://dndi.jp/

法人化5年の「大学発VBに挑む」

 ・東京で「第6回全国VBLフォーラム」の期待
 ・福井で「第7回産学連携学会」の初舞台
 ・京都で「第8回産学官連携推進会議」
 ・東大・スタンフォード大共催シンポ29日
 ・丸の内で「日印クラブ」発起会開催
 ・経産省の石黒憲彦氏の133回「影の獄にて」
 ・塩沢文朗氏の51回「さしすせその科学談義」

DNDメディア局の出口です。細い雨が街の若葉に潤いを与えています。やや 肌寒く東京は3月の春先の気候です。長いゴールデンウィーク明けなら、適度 におしめりがある、このくらいの天候の方が気分の切り替えにいいかも知れま せん。


さて、大学発ベンチャー設立や産学官連携をめぐるイベントが毎年この5月、 6月に集中します。そのテーマがどういう考えで設定され、その趣旨が事前に 行き届いているか、PRや告知は首尾よく展開されているか、主催側の側に立っ てみれば、あれこれ準備に追われ、GWといっても心休まる時間はなかったかも しれません。


まあ、イベントの成否は「人選と動員」というのは確かで、けだし明言です。 それなので、登壇するプレゼンターは、この混迷の世界環境や経済状況をにら みながら、自らの言葉でどんなメッセージを伝えるか−が次に重要になってき ます。ただ、それも回を重ねれば、その内容がどんなに魅力的だとしてもその 都度マンネリ批判はついて回るものだし、なんらかの意図で苦しい人選を余儀 なくされる裏事情も見え隠れするものですが、こちら側からも例えば時の人や 旬の人、本物を探す努力も必要です。よーくプログラムを眺めていると、ただ ならぬイノベーターの登壇も用意されています。


□「第6回全国VBLフォーラムin Tokyo」の挑戦

「大学発ベンチャーの新たな挑戦−法人化5年を経た大学発ベンチャーの課 題と可能性−」というテーマを掲げたのは、第6回全国VBLフォーラムin Tokyo で今月15、16の両日、東京大学本郷キャンパスで開催されます。VBLは、ベン チャー・ビジネス・ラボラトリーの略で、大学からのベンチャー起業支援やネ ットワークづくり、研究成果の実用化の促進、起業人材の育成などを主な役割 とし、大学発ベンチャーの創出と育成に成果を出しています。参加申し込みが 延長になって、締切が明日5月8日です。詳細は以下の通りです。
http://www.iml.u-tokyo.ac.jp/vblforum_6th/program.html


そのホスト役が東京大学で、「in Tokyo」という訳なのですね。ポイントは、 そのテーマにあるように、2004年4月の国立大学法人化は大学発ベンチャーに 何をもたらしたか、大学が法人化を転機としてどう変わったか、そして新たな 課題に挑む、という趣旨でしょうか。


まあ、金融危機のあおりで投資マネーが冷え込んで、なんとも大学発ベンチ ャーもご多分に漏れず、その先行きに暗雲が垂れこめているのも事実です。が、 いまここで原点に還り、そもそもなぜ大学発ベンチャーが大学に求められるの か、その使命はどういう根拠に基づくものなのか、を問う機会になることを期待したいものです。プログラムからその登壇者の顔ぶれを拝見すると、いやい や大学発ベンチャー支援に実績がある実力派で、それぞれの大学を代表する論 客ぞろいでした。2日間のセッションでは、それぞれ本質に迫る前向きな議論 が期待できそうです。


初日は保立和夫・実行委員長の開会宣言、京都大学VBL施設長の松重和美氏 や文部科学省の田口康氏の基調講演が予定されています。メーンのパネル討論 は、「法人後の5年間を振り返って」と題して以下の5氏がその「成功と失敗の 教訓」を明らかにするかもしれません。


登壇者は、以下の通りです。
 坂本剛氏(九州大学)、澤田芳郎氏(京都大学)、高木栄氏(東京工業大 学)、高橋幸司氏(山形大学)、各務茂夫氏(東京大学)。


坂本さんは、九州大学を中心に福岡の各種専門の起業支援ネットワークと連 携し、自らもその中心的な立場で動く知財部門の責任者です。明るいし、面倒 見がよく、常に前向きなチャレンジャーですね。澤田さんは、京都大学の論客 の一人で産学連携本部の「ベンチャー起業講座」を立ち上げました。また産学 連携学会の重鎮として設立当初から関わり、とくに「産学連携学」のあり様を 示した方です。高木さんの東京工業大学は、大学発ベンチャーの取り組みに熱 が入り、昨年12月から月1回ペースで「Start-up Station」を開催し、例えば 事業が拡大局面にある東工大発ベンチャーの飛躍の処方はどこにあるか、を専 門のメンターらを交えて盛んな意見交換を展開しています。高橋氏の山形大学 は、このVBLの第5回全国フォーラムのホスト校で、成功裡に終えた昨年の大会 の勢いを持ち込んでの登壇となるのですね。


各務さんは、東京大学産学連携本部の事業化推進部長で、弁舌の歯切れがよ く、人気があり、東京大学の起業・大学発ベンチャー支援の各種メニューを総 括する要的存在です。その全体像をお聞きすると、「法人化以降に設立された ベンチャーは、大学の体制が充実してきたため特に質のいい大学発ベンチャー が誕生し、今後も続々と多くの成功を生むことでしょう」と明るい見通しを語 っていました。東京大学専属のファンド「東京大学エッジキャピタル」や東大 TLO、それにインキュベーション施設「東京大学アントレプレナープラザ」、 学生起業家の啓発プログラム、東証との共同研究などがスムースに連携し、 着々と成果を挙げています。大学発ベンチャーの成功を生む、つまり各務氏の 言葉を借りれば"ベンチャーのぐるぐる回り"の新しいモデルが徐々に確立しつ つあるようです。


この国立大学の法人化から5年、その課題と可能性を大学発ベンチャーとい う切り口で掘り下げるという試みはとても意義深い、と思います。個人的な印 象で言えば、特許や技術の可能性やTLO事業の成否などについて、これまでの トライ&エラーの蓄積が、ベンチャーの成功確率を高めているのではないか。 ベンチャー設立のその第一歩からその後のEXITまでの道筋を描けるプロが大学 の中に育ってきているのもその一因といえるでしょう。それぞれの大学が、独 自に培ったノウハウを持ちよってそれを惜しみなく披露する、またその成長の 過程でぶつかる新たな課題に対して知恵を絞る、そういう場が形成されている ことはこれからの大学発ベンチャーの行く末を占う意味で、とても心強いこと と思います。


続く2日目の16日は午前9時のスタートです。報告T「大学発ベンチャーの 支援モデル−資金調達・インキュベーション」のセッションには、兼松泰男氏 (大阪大学)、郷治友孝氏(東京大学エッジキャピタル)、江刺正喜氏(東北 大学)の3氏、報告II「大学発ベンチャーの支援モデル−知財マネジメント」 には、石田正隆氏(関西ティー・エル・オー)、石田智朗氏(東京大学 TLO)、 伊藤伸氏(農工大ティー・エル・オー)の3氏、午後に入っての報告III「大学 発ベンチャーの支援モデル-起業教育/アントレプレナー教育」では、各務氏、 三枝省三氏(広島大学)、田村明弘氏(横浜国立大学)の3氏が報告します。 特別講演には村口和孝氏(日本テクノロジーベンチャーパートナーズ)の登壇 が予定されています。


□福井県で「第7回産学連携学会」開催

次に、今年で7回目を迎える産学連携学会(会長・佐竹弘徳島大学教授)は、 産学連携が伝統的にうまく機能している福井県福井市の福井商工会議所を会場 に5月28、29の両日開催されます。プログラムなどは以下からご覧になれます。
http://www.j-sip.org/annual_meeting/7th_fukui2009/program.pdf


大会会長は福井大学長の福田優氏、実行委員長は長年地元企業との付き合い が深い産学共同研究センター長を務めた現在、福井大学産学官連携本部長の高 島正之氏です。その昔、福井大学と産業界との交流会「FUNTECフォーラム」に ご招待いただきました。あれから、もう3年余り、思いだせば、その場でご一 緒したのが、当時の文科省地域科学技術振興室長の真先正人氏、近畿経済産業 局地域経済部長の山城宗久氏でした。山城さんとは、その縁でDND連載「もっ と!関西」を執筆していただきました。これを機会にバックナンバーを開くと、 その6回目が「福井の産学官連携は面白い」でした。山城さんによると、福井 の産学連携がうまくいっているのは、「県庁本体と県工業技術センターの連携 が良く取れている。その理由の一つに、相互の人事交流がある」と分析し、続 いて、優秀な企業が多いこと、そして福井大学の共同研究センターの熱心な活 動ぶりを賞讃していました。
http://dndi.jp/10-yamasiro/yamasiro_6.php


初日の28日は、招待講演に文部科学省産学連携推進課長の田口康氏、経済産 業省大学連携推進課長の谷明人氏のお二人がゲストで、引き続いてお二人を交 えた意見交換の場が予定されています。


一般講演では、福井県の北陸・地銀三行の連携など地元からの積極的な発表 が目立っています。若狭湾エネルギー研究センター、福井県工業技術センター、 勿論福井大学からも新技術に関連した発表があります。福井工専からは、注目 の(株)Jig.jpの福野泰介社長の名前もあり、テーマが「子供向けプログラミ ング教材の評価と検証」でした。福野さんは今年に入って新宿に本社機能を移 し、業務拡大に向けて着々と足場を固めている注目株の大学発ベンチャーです。


内容をもう少しのぞいてみましょう。2日目の29日の産学連携論の会場では、 前回の「第6回の産学連携学会アンケート」を基にした「もっと詳しく知りた い講演」というテーマで、産学連携学会の重鎮の山口佳和氏、前会長で北大教 授の荒磯恒久氏らが発表します。同じセッションでは島根大学の北村寿宏氏が 「共同研究の推移から見る産学連携の実情と課題」と題して発表します。また、 東京農工大学の技術経営研究科から日刊工業新聞の山本佳世子さんが「日刊工 業新聞・産学連携面における6年間の記事分析」をテーマに発表します。産学 連携が勢いづいたこの6年間の動向は興味深いですね。指導的立場にある東京 農工大学大学院技術経営研究科長の亀山秀雄教授の名前もありました。ぜひ、 その報告内容を後日読ませてもらいましょう。


「産学連携のしくみ2」で座長を務める、日本立地センターの研究員でこの ところ産学連携学会の"顔"となりつつある林聖子さんも活躍です。ざっと10を 超えるセッションに100余り発表が予定されています。佐竹会長は、最近の産 学連携が多様化の傾向にあるのだが、大学もどちらかといえば、総花的な対応 から的を絞り込む集中型に変わり、「産学連携への期待の高まりとあわせて、 いっそう難しくなりつつあります」と話していました。私も産学連携学会の会 長顧問という立場にありながら、なんにもお手伝いしていないのは心苦しい限 りです。ご盛会を心からお祈りいたします。


□東京大学(産学連携本部)・スタンフォード大学(STAJE)共催シンポジウム「日本のアントレプレナーシップを考える」。

いまこの時間になって飛び込んできたのが、上記表題のシンポジウムです。 今月29日に開催です。ゲストスピーカーの豪華な顔ぶれとその内容は、一押し です。【日時】2009年5月29日(金)13:00−18:00


【会場】東京大学 医学系研究科 教育研究棟14階 鉄門記念講堂
【プログラム】
12:30-13:00 開場・受付
13:00-13:10 主催者歓迎の辞
		各務 茂夫氏、(東京大学教授 産学連携本部事業化推進部長)
		ロバート・エバハート氏(スタンフォード大 STAJEプロジェクト・ディレクター)
13:10-13:30 開会にあたり
		ウィリアム・ミラー氏(スタンフォード大学名誉教授)
		黒川 清氏、(東京大学名誉教授 内閣府特別顧問)
13:30-14:15 「日本のアントレプレナーシップ」
       −研究、ビジネス、政策のそれぞれの視点から見たアジェンダ
	[論文]
	ウリケ・シェーデ氏(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)、 
	[討論者]
	パトリシア・マクラクラン氏(テキサス大学オースチン校准教授)
	[モデレーター]
	伊佐山 建志氏(カーライル・ジャパン会長)
14:15-15:15 アントレプレナーシップとイノベーションのためのマーケット創造
	[論文]
	ロバート・エバハート氏(スタンフォード大学)、"日本のベンチャーキャピタル・システム"
	石倉 洋子さん(一橋大学教授) "我が国におけるオープンイノベーションシステムの構築に向けて"
	[討論者]
	郷治友考氏(東京大学エッジキャピタルマネージングパートナー)
	冨山 和彦氏(経営共創基盤CEO)、
	[モデレーター]
	アレン・マイナー氏(サンブリッジコーポレーション創業者CEO)
15:15-15:45 休 憩
15:45-16:45 パネルディスカッション:
       アントレプレナーシップは教育できるか?
	[パネリスト]
	リチャード・ダッシャー氏
	(スタンフォード大学 アメリカ・アジアテクノロジーマネジメントセンターディレクター)
	各務 茂夫氏(東京大学教授)
	ウィリアム・ミラー氏(スタンフォード大学名誉教授)
	大江 建氏(早稲田大学教授)
16:45-17:45 アントレプレナーシップを育む環境
             −日本における起業の機会とチャレンジ
	[論文]
	チャーラ・グリフィーブラウン氏(ペパーダイン大学准教授) "女性アントレプレナーと日本のIT革命"、
	坂田 一郎氏(東京大学教授) "日本のイノベーション・クラスターのネットワーク分析"
	[討論者]
	大原 慶子さん(神谷町法律事務所 弁護士)
	クリステーナ・アメ―ジャン(一橋大学教授)
	東出 浩教氏(早稲田大学 教授)
	[モデレーター]
	林 良造氏(東京大学 教授)
17:45-18:00 閉会のことば
       ウィリアム・ミラー氏(スタンフォード大学)
       ロバート・エバハート氏(スタンフォード大学)
       影山 和郎氏(東京大学 産学連携本部長)

【申込方法】
下記URLより▼
http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/090529symposium/subscription.html
または、ご氏名、ご所属(ご役職)、連絡先のメールアドレスと電話
番号を記載の上、下記までメールにてお申し込みください。
 seed@ducr.u-tokyo.ac.jp

【お問い合わせ】東京大学 産学連携本部 事業化推進部
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1


□京都を舞台に「第8回産学官連携推進会議」

もうひとつの重要なイベントは、全国から約4000人の関係者が一堂に会する 第8回の産学官連携推進会議です。お馴染みの京都の国立京都国際会館で6月20 日(土)、21日(日)の予定で開催されます。テーマは、いくつかキーワード を散りばめて、「オープンインベーション型の産学官連携による新たな挑戦」 で、サブタイトルに「環境・資源制約など世界が直面する様々な制約への対応 を成長の糧に」と、その狙いをいれ込んでいるように感じられました。が、ち ょっと長めで、ビシッと焦点が絞り切れないところが、逆に多様化する産学官 連携の難しさを表現しているように思いました。


この会議の大事なところは、全国の大学や研究機関などがブースを並べる展 示会場での交流と、初日午後の5つの分科会です。分科会のセッションといえ ば、そのテーマそのものがその今日的な課題を浮かび上がらせているように思 います。そして、誰がその主査を務め、パネラーに選ばれるのはどんな顔ぶれ か、に関心が高まります。本年も、多彩です。その詳細は、以下からご覧になってください。参加の申し込みもこちらから 可能です。
http://www.congre.co.jp/sangakukan/program.html


分科会に触れる前に、初日の午前中のプログラムに目を向けて見ましょう。 冒頭の基調講演は内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の野田聖子大臣です。 続いて今日的課題に切り込んだテーマが並びます。「低炭素社会の実現に向け た産学官連携」(三菱重工業の佃和夫会長)、そして地元の京都から堀場雅夫 氏が「クオリア時代」を、元シャープ常務で東大先端研の客員教授の富田孝司 氏が「太陽電池産業の育成と日本の成長戦略プラン」という具合です。


その中で、おやっと強く興味を引いたのが、東京大学特任教授(知的資産経 営)でNPO法人産学連携推進機構理事長の妹尾堅一郎さんの、そのテーマです。 流石ですね。「イノベーションイニシアチブ:日本を救う処方箋を考える」と いう。「日本を救う処方箋」というのですから、このテーマを第8回会議の統 一スローガンに仕立てたいほどの大きなテーマだと思います。妹尾さんの講演 といえば、つまりその最初から終りまで論理的に一貫し、加えて実感として心 に響いてきます。その風貌も個性的なら、講演は面白く聴衆を飽きさせないと ころが凄いです。なかなかの人選だと思います。さて、妹尾さん、今回はどん な裏技を見せてくれますか。イノベーションを先導するしかるべき仕組みをい かにして構築するか、そのために意識的にどう仕掛けを始動させるのでしょう か。期待大です。


妹尾さんは、昨年度の知財功労賞を(経済産業大臣表彰)を受賞しました。 その時の主な業績としてこのように紹介されていましたので再掲します。

<妹尾堅一郎氏・受賞理由(功績)>
・知財人材育成のパイオニアとして、内閣官房知財戦略本部専門調査会委員、 特許庁知財人材育成調査研究委員長、知財人材育成推進協議会幹事等を通じて 知財立国における知財人材育成戦略に貢献。
・「互学互習」による実践的な方法論を知財界に導入するなど、多くの新しい 知財人材モデルやその育成モデルを創出。
・東大先端研「知財マネジメントスクール」や日本弁理士会「知財ビジネスア カデミー」等、数多くの教育プログラムをプロデュースするとともに自らも講 師として数多くの知財専門家の育成に貢献。

さて、ここからは少し急ぎ足で分科会の紹介に入ります。分科会の1は「低 炭素社会に向けての産学官の新しい潮流」で、主査は東京電力(株)顧問の桝 本晃章氏が務めます。パネラー6人のひとりにメディアでお馴染みの多摩大学 学長で日本総合研究所会長などの要職にある、寺島実郎氏が名を連ねています。 世界に先駆けて低炭素社会を実現するために、産学官連携はどうあるべきかー を主な議題に据えています。


次の分科会2が「プロパテントからプロイノベーション時代へ〜競争力強化 に資する知財マネジメントの意味が変わる〜」。妹尾さんが主査を担当します。 グローバル競争を勝ち抜くにはどんな知財マネジメントが必要か、国が抱える 問題点を抽出し、今後の方向性を探る、という。やはり、妹尾さんのセッショ ンには緊張感と具体性が同居し、すぐ役に立つような内容が期待できそうです。 パネラーとして常連の元科学技術政策担当大臣で参議院議員の松田岩夫氏が参 加します。


分科会3は「ナノテクイノロジー 多様性と集中の戦略〜世界的ナノテク拠 点形成と産学官連携の強化〜」。主査に東京大学大学院教授の橋本和仁氏。わ が国が強みとするナノテクノロジー分野の世界拠点形成のための討議、課題の 抽出、戦略のあり方を問う、という。橋本さんは、秋のイノベーション・ジャ パンで開催のイノベーションをテーマにしたパネルでその考えの一端をお聞き していたのですが、いやあ、その穏やかな風貌に似合わず、今日の研究開発に おける予算の配分をめぐって鋭い指摘をしていました。直言の人ですから、き っとエキサイティングなセッションになりそうです。


分科会4は「新しい社会を拓く高度理工系人材の育成」で、主査は、味の素 (株)技術特別顧問の西山徹氏。イノベーションには人材が鍵といい、求めら れる人材像に触れて、留学生や外国人教員を含めた人材の多様化に焦点を当て る、という。熊本大学の谷口功学長がパネラーに参加します。いやあ、古くて 新しいテーマですが、これまで繰り返しこの種の議論を行ってきました。その 成果が現実的にどう生かされたのか、過去の分科会の討議の提言などを振り返 って、総括してみることも必要ですね。


最後の分科会5は「元気な大学・中小企業・ベンチャーが牽引する地域活性 化」。世界に通用するイノベーションを地域からどう創出していくか、がテー マです。


主査には、九州大学副学長で産学連携センター長、知的財産本部長の安浦寛 人氏です。世界に地域に、と精力的に行動していらっしゃいます。今年1月下 旬に九州大学VBLが開いた、シリコンバレーを築いた伝説の印僑、カンワレ・ レキさんを招いたシンポジウムの席でご一緒しました。大学の地域貢献という 役割を語るなら、第6回全国VBLフォーラムの紹介のところで触れた、九州大学 VBLの地域への関わりは出色です。


パネリストに土井尚人さん、インキュベーション事業を手掛けるHCM(ヒ ューマン・キャピタル・マネジメント)の代表の傍ら、北海道大学との連携で バイオベンチャー「イーベック」を設立し、その社長も務める活躍です。昨年、 ドイツのメガファーマとのアライアンス契約の成功が話題になった"旬の人"で す。土井さんは、5500万ユーロのビッグマネーも凄いのですが、北海道と大阪 の地域企業の交流の場をつくり成果を上げているところも注目です。さて、土 井さんは、その持前のアイディアに溢れた提言をどこまで伝えきれるか、そこ がポイントかもしれません。

土井さんに関しては昨年11月にこのメルマガで紹介しています。
「アライアンス戦略のEXIT考〜「大企業と争わない」:HCMの土井社長に学ぶ 〜」
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm081126.html


多様な課題に多彩な顔ぶれ、それを串刺しにして浮かび上がる新しいキー ワードは何か。産学官連携推進会議のもうひとつのクライマックスは、5つの 分科会終了後、メーンの大会議場に舞台を再び移して開催される「全体会議」 です。そこでは、各分科会の報告、フロアとの意見交換が行われます。そして、 提言の取りまとめを行う座長は、総合科学技術会議議員の相澤益男氏で、コメ ンテーターに衆議院議員で元科学技術政策担当大臣の尾身幸次氏、総合科学技 術会議議員の奥村直樹氏です。そして「産学官連携功労賞」の受賞の顔ぶれとその先端的な業績も楽しみなところです。


◆その他、各種イベントが目白押しです。それは、DNDの「産学官連携情報」に一覧にして掲載していますので、ご参考にしてください。
http://dndi.jp/dndinfo.html
◆「日印クラブ」発足:
 この21日は、東京の新丸の内ビルディング10Fの「東京21cクラブ」で、日本 とインドの交流を促進することを目的に設立し、その発起会が開かれます。 中心的な役割を担うのが、東京21cクラブ内に事務所を持つ、株式会社サンア ンドサンズアドバイザー代表のサンシーヴ・スィンハさん(Mr.Sanjeev Sinh a)で、今年1 月29日に米国シリコンバレーに本拠を持つ起業家ネットワーク、 TiE(The Indus Entrepreneur、インダス起業家協会)の東京支部を立ち上げ たばかりで、その理事長も兼ねています。
 精力的なスィンハさんは、1973年生まれの35歳、1996年人工知能研究のゲン テック社に入社するため来日、それから12年。昨年、日本とインドを結ぶコン サルティング会社を設立するなど活動の幅を広げて、インド工科大学の日本同 窓会を2003年に創設し、20 07年秋開催のIIT卒業生の集いに、伝説の起業家、 カンワレ・レキさんを招いたのもスィンハさんで、TiEの設立に続いて、今回 の「日印クラブ」の設立も日本とインドを結ぶ技術、人材、情報のプラットフ ォームを目指す、という。
◆連載は、経済産業省官房審議官の石黒憲彦さんの「志本主義のススメ」は第 133回「影の獄にて」。GWのお休みを使っての、いつもの文章とは違ってどち らかというと(最後まで読めばわかるのですが)なかなかの野心作で、どんな 結末が待っているか、その構成の妙に余韻を引きづります。内容はといえば、 ご本人の説明によると、こうです。
 〜L.ヴァン・デル・ポスト作、由良君美・富山太佳太訳、「影の獄にて」 (思索社、1982年)です。大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」の原 作というとイメージが沸く方もおられるかも知れません。(中略)原作につい ては、小説としてのストーリー性にも感動しましたが、著者が南アフリカの ボーア人(オランダ系植民地人)の家系でありながら、イギリス軍に入隊し、 西アフリカでの対独戦車戦に戦功を立てた後、ジャワに転戦してゲリラ戦を展 開すべく部隊を指揮中に日本軍に捕らわれ捕虜収容所に2年間収容された実体 験から、ノンフィクションとして日本人がどう見えていたかが描かれ、一つの 日本人論としてとても興味深い内容でした、という。
 確かに映画は観ましたが、原作を読むということは考えもしませんでしたね。 読書家を任じる石黒さんらしいアプローチで、石黒さんの文章に触れて原作を 読んだ気になってしまいます。
◆連載は、塩沢文朗さんの「原点回帰の旅」の第51回は「『さしすせそ』の科 学」です。塩沢さんは、奥様を伴って京都、奈良へ。その旅の途中、京料理の カウンターでの板前さんとの調味料に関した科学談義に花を咲かせます。まず、 冒頭、その「さ(砂糖)」、「し(塩)」、「す(酢)」、「せ(醤油:せう ゆ)」、「そ(味噌)」の順序の理由はご存知?と疑問を投げかけながら、そ のいわく因縁を掘り下げているのです。その一問一答に蘊蓄があって面白いス トーリーになっているのです。
 悠久の歴史を持つ社寺、奥様の希望をも受け入れて、京都、太秦の広隆寺、 奈良、斑鳩中宮寺の弥勒菩薩像と見て回り、そして、「小さな暗いお堂で蝋燭 の火に照らされて座られていたこれらの仏様が、防火建築の宝物蔵に納められ ていたのには少しホッとする一方で、時の流れを感じたものです」と述懐して いました。塩沢さんの原点回帰の旅は、まだまだ続きそうです。
◆前回、クリント・イーストウッド主演、監督の映画「グラン・トリノ」を紹 介したところ、多くの読者からその感想を寄せてもらいました。ありがとうご ざいました。「感動」を共有できて、とってもうれしく思いました。

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