第7回 早稲田の杜とイノベーション



 早いもので、早稲田大学に奉職して、もう一か月がたとうとしています。想像を超えて忙しい日々です。まだ授業も始まっていないというのに。




「イノベーション政策を進める」
 先日は、筆者の職場のひとつである、早稲田大学ナノ理工学研究機構において、定例の懇話会を開催していただきました。産学の関係者に多数お集まりいただき、今後のイノベーションの進め方についてさまざまなお話をしました。


 話題提供は、我がナノ理工学研究機構長の逢坂哲彌教授です。このコラムでもご紹介した「ものづくり大国の黄昏:蓄電池は日本を救えるか」のご講演をいただきました。


 逢坂先生は、電気化学会の会長を歴任され、来年からは米国電気化学会会長という要職につかれるというこの分野の碩学のおひとりです。参加者は理工系の方だけではありませんでしたので、ちょっと難しかったかもしれませんが、蓄電池の開発をめぐる直近の状況を整理してご披露いただきました。内容についてはこちらをどうぞ。


 そして、不肖、筆者より、イノベーションのための新しいプロジェクトフォーメーションのアイデアについてご説明いたしました。今後関係者とも議論を深めて、真のイノベーションの実現を支援していきたいと考えています。早稲田の杜からイノベーションを起こせるといいですね。


「安倍新総裁に期待する」
 イノベーションといえば、折しも、新しい自民党総裁に安倍晋三氏が返り咲きました。中立的な大学の教員としては、政治向きの話は避けなければいけないのかもしれませんが、筆者としては感慨深いものがあります。安倍氏は、日本の総理で初めて「イノベーションの重要性」を説き、イノベーション25の取りまとめを黒川清先生に自ら指示した方だからです。詳しくは、DNDのバックナンバーをご覧ください。ここにもあるように、安倍さんの突然の辞任以降、一国の総理が声高にイノベーションを進めるようにと演説することはなくなりました。もちろん、総理施政演説などには、「グリーンイノベーション」「ライフイノベーション」といった言葉が躍ることもありますが、読んでいる(失礼!)ご本人がどこまで本気でイノベーションを理解し、進めようとしているかは伝わってきませんでした。


 経済成長にも、雇用の拡大にも、企業の競争力強化にも、イノベーションが重要なことは明らかです。問題は、それを本気で進めようとするかどうか、です。安倍新総裁、一市民としてそのリーダーシップに期待してもよろしいでしょうか。


「いよいよ、講義が始まります」
 さて、早稲田の杜では、筆者の講義が、10月から細々と始まります。社会人でも受講できるように、火曜日の夕方(6時限)に設定しました。講義名は「ITと技術革新学概論」ですが、ITの技術の話が中心ではありません。広くイノベーションに関する基礎的な知見を紹介するものです。技術経営学の一環と考えていただくとわかりやすいでしょう。現在鋭意講義の準備を進めております。文字どおり、ビギナーの教授ではありますが、早稲田の学生さんの聴講をお待ちしております。講義の概要は、この欄でも適宜ご紹介できればと思っています。なお、学生以外の方の聴講はお待ちしておりませんのであしからず。(特に関係者。筆者が若いころ、新ポストに異動して二週間目に行った講演で、会場の一列目にその分野の関係者がずらっとならんでいたことがあります。彼らは、それまでの二週間でその産業の状況、戦略、技術を、日夜手取り足取り教えていただいた恩人たちなのですが、まるでそれまでの講義の卒業試験のようでとても緊張したのを思い出します。。。)もちろん、講義終了後の懇談は、歓迎します。


それでは、乞うご期待、ということで次号へ。



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