◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2010/06/02 http://dndi.jp/

退陣表明!鳩山劇場8ケ月の幕切れ

・一蓮托生、小沢一郎さんの苦衷
・怒・乱・涙−鳩山さんへの恨み節
・参院選で民主『30』割れの危機
・第4期科学技術基本計画に意見募集
〜コラム・連載・異論・反論〜
・黒川清氏コラム『Doha, Qatar』
・橋本正洋氏連載『失敗3題噺』
・塩沢文朗氏連載『専門家の責任』
・比嘉照夫氏連載への異論・反論

DNDメディア局の出口です。鳩山降ろしが、風雲急を告げて小沢さんが凄い 形相で退陣を迫る。その短い会談を終えた後の鳩山さんの表情は、いったいな んだったのでしょうか。七変化のカメレオンっぽいが、最後までしっぽを出さ ないところがこの人の宇宙人たる所以かもしれません。まあ、ポスト鳩山に菅 直人副総理・財務相が浮上しているという。


文章にすれば、わずか10文字足らずのことだけど、一瞬途切れた言葉の間合 いと、テレビに映し出された表情のこわばりから察して最初は、これで極まっ たと思った。が、その2回目の会談を迎えたきのう1日は、一転、笑顔で親指を 立てるなど、続投へ意欲との憶測も飛んで、ここ数日は実にその表情を読み解 くのに苦労をした。そして、今朝鳩山さんは、小沢さんを道連れに退陣を表明 しました。


政権交代から8ケ月の鳩山劇場は、女房役の小沢さんとの"密室の暗闘"の末 の衝撃的な幕切れで、それも刺客に動いた小沢さんの首を逆に取ってしまった。 鳩山さんは、「クリーンな民主」を強調しました。小沢さんの幹事長職の辞意 は、その引き替えというから、いやあ、なにもそんな舞台であらためてダーテ ィーな印象をかぶせなくてもよかったのではないか。晒しものにされた小沢さ んが、少し気の毒でした。が、その表情にその無念さのかけらも見せないが、 内心はどうなのか。あくまで裏方に徹している風なのですが…。


さて、代表の表紙を代えたら、その危機をもたらした要因の解決に向かうの だろうか。そんな疑問がわいてくる一方、政治という舞台は、その人の歴史上 の役割を終えたら容赦なく葬り去るものかもしれません。首相の退陣劇に絡む 小沢さんの政治的スタンスに、なにか因縁めいたものを感じます。


5月31日、読売新聞の朝刊3面に「鳩山降ろし」の見出しが小さく出ていまし た。そんなに煮詰まっているとは、驚きでした。その夕刻、小沢さんが、側近 を伴ってあの難しい顔で廊下を走りぬけていました。官邸に向かう姿は、まる で東映映画の健さん。ひたすら我慢し、あと10分で終わるというところまで我 慢するのが、この映画のクライマックスです。ついに仲間が殺され決意して立 ち、白刃をコートの下に隠して敵地へ、一ちゃんは官邸へ。高倉健が演じる主 人公と、小沢さんがダブってくる。


さしずめそこで、いよっ、「健さん、待ってました!」。わっと拍手がわい て、掛け声がかかる。民主参院の改選組から、声援があがったか、どうか。テ レビ中継のその模様は、民主の参院選候補者を元気づけたにちがいない。鳩山 さんを退陣に追い込めるのは、一ちゃんこと小沢さんしかいない。


健さんが、敵の親分と対面すると、「命はもらうぜ」と渋くいうと、場内か らわっと歓声があがる。それから派手なチャンバラになって、「健さん、後が 危ない」などの声も飛ぶ。が、健さんは、負けるはずがない。毎日新聞元記者 の杉山康之助さんのこの映画評によると、要は、一瞬に決断し、すべてを捨て て出発する男の潔さである、という。一ちゃんには、作っては壊し、なんでも 捨ててしまう癖があるが、その潔さは天下一でしょう。


一ちゃんは、きっとこれ以上我慢がならなかったのかもしれない。このタイ ミングしか、なかったというべきか。普天間問題をめぐる首相の迷走と社民党 の連立離脱は、小沢さんにとっても誤算でした。朝日(1日付)によると、小 沢氏は周囲に「おれには相談がないんだ」と漏らし、首相の「独走」に危機感 を募らせていたらしい。側近の輿石東参院議員会長は、普天間問題が緊迫する につれて、20日と26日の2回にわたって官邸に入り、社民党との連立維持を談 判し、周囲に「官邸は社民党をなめている」と不満を漏らしていたという。


この辺から鳩山降ろしがくすぶり始め、世論調査結果も最悪になってくる。 普天間の迷走と沖縄県民への裏切り、それで内閣支持率が危険水域の10%台と いう下落ぶり。社民党首の罷免と連立離脱による選挙協力が崩れ、郵政改革見 直し法案の参院での成立も危ぶまれるとなると、せっかくこれまで積み上げて きた今夏の参院選の苦労が台無し、選挙情勢は極めて危い。あの「やわらちゃ ん」の金メダルに傷をつけられない焦りもでる。改選組から「討ち死に」との 悲鳴がささやかれ、民主内部から上がる鳩山退陣のうねりは、もうどうにも止 められない状況でした。


5月31日夕刻、鳩山さんが会談を終えてぶら下がり会見に臨んだ時でした。 早口の女性記者から「総理の続投について確認したということで、よろしいで しょうか」と促されて、「それは‥当然であります」と答えたのです。口は、 固く真一文字に結んでいました。が、まん丸の目は見開いたままで、まばたき ひとつありません。


鳩山さんが、小沢さんから自らの続投を確認した、という鳩山さんの話を聞 いて、小沢さんの側近の一人、高嶋良充筆頭副幹事長は、そんなことがあるも んか、というようなひきつった表情で「総理がそんなこと(続投)を言ってお られるのですか?」と問い直し、「幹事長はそんなことは、これから決めるこ とだと言っておられた」と総理の続投について否定的な見方を示しました。総 理の退陣の件について、そんなことという言い回しでした。鳩山さんは、ここ でウソを言ってメディアを撹乱する。もうこの時点で小沢さんが鳩山さんに退 陣を迫ったことは間違いありません。わざわざ官邸に小沢さんが足を運ぶので すから。


鳩山さんと向かい合った時、小沢さんと同席した輿石さんは、参院選の厳し い情勢を説明した。すると、鳩山さんが、「そんなに厳しいのですか?」と他 人事のように言うから、輿石さんがそのところは20日に言っているではないで すか、と語気を荒げたという。


さて、一ちゃんは、健さんが悪の親分を1回で仕留めたようには行きません でした。その翌日、つまり昨日夕刻の鳩山さんの表情は、いつになく晴れやか でした。鳩山さんが笑顔をのぞかせたのは、何ケ月ぶりでしょう。すっかりや られましたね、あの左親指のサインは、何だったのでしょうか。私が退陣する のと引き換えに、「小沢さんも幹事長の職を引いていただけませんか?」と切 り返したに違いありません。周辺の情報では、今朝、電話で小沢さんに伝えた、 というけれど、昨日に決着していた、とみる。鳩山さんは、"心の師"のどなた かにそのタイミングを相談し、急きょ、今朝10時という段取りを急いだのでし ょう。


鳩山さんは、退陣のタイミングを計っていたのではないか。一蓮托生、辞め る時は小沢さんと一緒と決めていたにちがいない。小沢さんとて、刺し違えて も退陣に追い込む覚悟だったと思います。


皆さんは、どう思いますか。考えてみれば、31日の夕刻に、鳩山さんが退陣 を口にしたら、その直後に小沢さんが記者会見でその辺の動きを明らかにして いた可能性があります。追い込んだのですから、勢いそのまばゆいばかりのス ポットライトを浴びて、総理の退陣を伝え、そして一ちゃんは私も総理の不始 末の責任を取って辞職する、とやれば、カッコ良かった。が、その手順が裏目 にでてしまった。鳩山さんから逆に刺し違えられてしまった。


いやはや、窮鼠猫を噛むの喩通り、鳩山さんは最後の力をふりしぼって土俵 際でうっちゃりを見せた。土俵下に転がる小沢さんの手を引きあげて、これま で「政治とカネ」の批判の中で、貴方をどれほど擁護してきたか、ご存じでし ょう、それなのに私にこういう形で退陣を迫るのですか、と言いたげな目をす るが、そんな恨み節は口にださない。


政権発足から8ケ月、考えれば民主党は連立政権発足時から、民主党はふた つの顔を持っていました。前原誠司さんや原口一博さん、枝野幸男さんら清新 で若い閣僚を取り込む「政権政党」が表とするなら、どす黒い闇から目を光ら せる「小沢政党」が裏の顔といえるかもしれない。その小沢さんが、鳩山さん の失態による参院選の危機感から止むにやまれず、のそり動いて凄い形相で表 舞台に出てきたから、さあ、たいへん、鳩山さんは驚いて金縛り状態になって しまって、つい言葉が、またいつものように滑ってしまった印象を持ったのだ が、いやあ、政権発足時のデビューと、幕を下ろすフィナーレは、鳩山さんら しい華やかさが感じられました。大変な8ケ月でした。


もうひとつの退陣に追い込んだアクセルは、社民党の存在です。なんだか罷 免されてさらにパワーアップした福島さんが、街頭の辻立ちで壊れたレコー ダーのように鳩山批判を繰り返し、一回しか罷免されていないのにもう百回以 上、「罷免」、と「裏切り」を叫んでいます。そして、テレビでは途中辞任を 「本当に申し訳ない」として目頭をぬぐえば、辻元清美副大臣は、「辞めるの は寂しいし辛いです。泣いたらあかんやん」と、大粒の涙を浮かべました。


しかし、何があっても女性を泣かせたり、悲しませたりしてはいけません。 沖縄県民、徳之島町民の「怒」、仲間からの「乱」、そして女性の「涙」、こ れらみんな鳩山さんのオウンゴールとなってしまった。とくに、女性の「涙」 にはどうにもなりませんね。あれよという間に選挙近い参院側の不満は沸点に 達し、改選組の一人は「5月末まで我慢しようと見守ってきたが、もう許せな い」と怒りをあらわにします。小沢氏の側近も「もう幹事長も参院側の不満を 抑えられなくなった」という状況に追い込まれていったのです。


民主党が5月中旬に実施した党独自の参院選情勢に関する世論調査結果が明 らかになりました。その一部が31日付産経新聞「参院選で民主『30』割れ危 機」の見出しで報道されました。深刻な数字が列記されています。これは極秘 扱いで、世論調査結果に独自の情報を加味して算定した議席獲得予測という。


その結果を知る党幹部によると、「最も良くて40議席台後半だが、最悪の場 合は29議席」と述べたという。


選挙区では関東や中国、四国、九州の西日本で特に劣勢が目立つ。全国に29 か所ある1人区の選挙区で、民主党が確実に獲得できそうなのが岩手、奈良な ど数議席にとどまった。平成19年の参院選では、当時、与党の自民の安部首相 が6勝23敗、トータルで37議席と惨敗してその9月に辞任に追い込まれた。が、 今回の民主党の調査は前回参院選と逆の傾向を示し、2人区に2人を擁立する激 戦の選挙区は福島などを除き、共倒れが「続出」、5人区の東京でも1議席しか 獲得できない。比例代表は、民主党は19年の参院選で20議席だったが、今回は 「最悪で10議席」に落ち込む可能性もあるという。


この調査結果の実施時期よりいま現在の方がさらに事態は悪化しています。 が、今週4日の民主の代表選が行われます。新しい体制は、この参院選の危機 を救うことができるか、どうか。


◇           ◇           ◇


◇第4期科学技術基本計画に意見募集
総合科学技術会議がパブリックコメントを募集(締め切り6月7日)
〜新たな時代に相応しい科学・技術・イノベーション政策へ〜
詳細は→http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/kihon4/bosyu.pdf


科学技術のどんな分野に投資し、それでどのような未来を実現するか、皆様 とご一緒に練り上げる−総合科学技術会議は、政府の科学技術政策の指針とな る「第4期科学技術基本計画」(平成23年から5ケ年)の基本政策策定に伴う方 針を示しながら、さらに一歩進めてより開かれた内容にするため、意見を募集 しています。


所管の内閣府大臣政務官の津村啓介氏は、この基本計画策定にあたって、霞 が関の常識を覆すような斬新なアイディアや改革的なテーマも盛り込むように 指示しました。議論のプロセスを公開し、新たな時代にふさわしいより良い科 学・技術を国民参加型で作り上げたい、と抱負を語っています。


その主な内容は、上記のURLをご覧ください。その4ページに基本方針のポイ ントが整理されています。冒頭、特筆すべきは、その基本理念に掲げた現状認 識で、グローバルな世界の変化と我が国の危機への処方を急ぐとするなど、 「日本の危機」を打ち出しているところです。この課題解決に向けて、従来以 上のスピードでイノベーション実現が求められるとし、イノベーション・シス テムがオープン、グローバルで、そしてフラットなものへと構造が変化してい る点から、「国際的、学際的、セクターを超えた知のネットワーク」の構築が 重要と述べています。


国家戦略と銘打った柱は、グリーン・イノベーションによる環境先進国の実 現であり、ライフ・イノベーションの推進による健康大国の実現で、「環境」 と「医療・福祉」を2大テーマに据えています。


本文を読むと、ところどころ「P」の文字が目立ちます。全部で33ケ所あり、 この箇所は検討中ということで、今後、多くの方々のご意見なども参考にしな がら一緒に作り上げていく、という姿勢の表れという。どうぞ、大学関係者、 ベンチャーや起業家の皆様、ご専門の立場から忌憚のないご意見をお伝えくだ さい。これまでに170件のコメントが寄せられているそうです。


【コラム】黒川清氏の『学術の風』は、「Doha, Qatar -1: Museum of Islamic ArtとQatar Foundation」です。「いまからドーハです」と電話をいただいた のは関空から、いま出発直前でした。いやあ、世界的建築家I・M・ペイ氏の作 品が紹介されていました。ルーブル美術館のガラスのピイラミッドが出世作で すが、もう20年前、友人の丹下健三氏が世界文化賞を受賞されたお祝いの席で、 友人として奥様とご一緒に明治記念館においででした。ロイドの丸眼鏡に愛嬌 のいっぱいのペイさん、令夫人はチャイナ服でスレンダーな品のあるご婦人で した。黒川先生のコラムの窓は、世界に通じていきます。磯崎新さんのお話も でてきます。


【連載】塩沢文朗氏の『原点回帰の旅』第65回は「専門家の責任」です。鋭い ところを突いてきます。政治家やプロフェッションの役割や使命とは、を考え させられます。どうぞ、塩沢さんの心の中で脈打つ「静かな炎」に触れてくだ さい。前回のメルマガで「信州・上田の塩田平」の話を書きました。ここは塩 沢さんの原点というべき本籍地です。ぜひ、ゆっくりその「信州の鎌倉」をご 案内したい、という申し出があり、気持ははやそちらに飛んでいます。


【連載】橋本正洋氏の『イノベーション戦略と知財』の第21回「失敗からのイ ノベーション」です。橋本さんは、今年が初代特許庁長官の高橋是清が策定し た専売特許条例の公布から125年という節目に当たり、特許庁の企画で希代の 発明家達にリレー形式で次世代へのメッセージをいただくという取材のため、 京都の島津製作所にノーベル賞の田中耕一さんの訪ねた時の取材余話です。
 田中耕一所長は、自著「生涯最高の失敗」で述べられていますが、ノーベル 賞受賞のきっかけは、混ぜる試薬を間違えたことです。この失敗した試薬を 「もったいない」として使ってみたところ、その後の大発見につながるのです が、これは偶然のことではない、というお話しです。田中氏がおっしゃるには、 失敗をおそれずに挑戦すること、専門家ではやらないようなことをやってみる こと、その背景には「失敗はあたりまえ」、「成功すればめっけもの」という 何事にもチャレンジする空気が島津製作所にはあるのだ、という。イノベーシ ョンの要諦もそんなところにあるのでは、と橋本さん。「失敗学」といえば、 畑村洋一郎氏、そして京都への帰りに京都大学理学研究科の藤吉好則両先生の 研究室を京大で学ぶご子息と一緒に訪ねた時の様子も綴られています。
 つい先日、NEDOが発表した、東北大学出澤真理教授らによる「ES細胞、iPS 細胞に次ぐ第三の多能性幹細胞」であるMuse細胞の命名者が、実は藤吉先生で、 先生はこのMuse細胞発見のエピソードとして、「失敗」のお話をしてくれたの だという。「失敗」三題噺という内容です。


◇          ◇            ◇


※比嘉教授の論文「EMによる口蹄疫対策」をめぐる異論、反論!

【連載】比嘉照夫教授の緊急提言『食と健康と地球環境』の第27回は、宮崎県 の口蹄疫問題が種牛の殺処分にまで発展し、宮崎県、政府が懸命の対策が取ら れていることを受けて、新たにEMの独自の視点からのアプローチで「EMによる 口蹄疫対策」です。
 今回は、全国からの関心が高く、ユーザーのお一人の難波亮丞氏から比嘉教 授への質問と、それに対する比嘉教授のご回答の一部をそれぞれ紹介します。 爆発的に拡散する口蹄疫被害は、市民生活にも影響を与えています。国の対応 の遅れや、感染が判明しても関係者の受け止め方は、楽観的だったかもしれま せん。が、近所の農家の手伝いに来てウイルスを体に付着させ自分の農場に持 ち帰った可能性もあり、消毒徹底の指導が足りなかったーとの指摘もあり、感 染源とされるウイルスの流入防止は難しいとされるが、まず被害農家の補償や 救済策のとりまとめを急ぐべきでしょう。
 比嘉教授は、宮崎県や関係の農家からの相談を受けて、具体的なEM活用の処 方を示されています。また比嘉教授はもう20数年前からアフリカや南米、国内 外の農業現場におけるEMの実践的知見を持ち、現在でもその処方を伝えて大き な成果をあげております。
 さて、難波氏は、記事は不穏当で、記事を取り下げるか、注意書きをするか 対処してほしい、とDNDメディア局への善処を求めています。さらにEMの論拠 などを具体的に質しています。なお、難波氏は、IT企業に勤務するかたわら、 独自にブログhttp://d.hatena.ne.jp/rna/を主宰しているという。


質問(要約):難波というものです。
比嘉照夫氏の緊急提言 第27回 EMによる口蹄疫対策
http://dndi.jp/19-higa/higa_27.phpを読ませていただきました。
大変不穏当な内容だと思います。EMの抗ウイルス作用は公式には認められてい ない。EMXも医薬品としては認可されていないと聞いています(中略)。
口蹄疫は感染力の強い伝染病です。効果が十分に証明されていない防疫手段を 薦めるのは感染拡大を助けることになりかねません。現在の危機的な状況で安 易にこのような記事を載せる事は極めて不適切だと思います。
仮にEMに効果があったとしても国際獣疫事務局(OIE)のルールに従い清浄国に 復帰するには、それで殺処分を逃れられるものではありません。
また、台湾の事例についての記述は疑問です。
豚の被害ですので1997年の発生を指すものと思われますが、この時の対応は発 生農場の全頭殺処分と全国的なワクチン接種で、「地域全体が処分の対象」と いう対応はとられなかったのではないでしょうか?いずれにせよ発生しなかっ たのがEMの効果なのかどうかを知るにはEMを使った農家がいくつあったかがわ からなければなりません。1997年の発生では発生戸数約6000戸に対して台湾全 体の養豚場の戸数は約26500戸だったようです。
「一頭も被害が発生していなかった」養豚場が8割近くあるわけですから、EM がそのくらい普及していたのでない限り、単に運が良かっただけ、という可能 性が高いのではないでしょうか。


参考資料:
http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/old/taiwan-j.html
http://www.pref.akita.jp/komachi/nousei/133/nou133-9.htm


回答:私(比嘉教授)の緊急提言に対する指摘に対し、その背景を説明します。


Q1:EMの抗ウイルス作用は公式には認められていないと思います。


A1:EMの中心的役割を果たしている光合成細菌には抗ウイルス作用がある ことは、かなり以前から明らかになっており、多数の文献にも明記されていま す。またEMの補佐的役割を果たしている乳酸菌や酵母が免疫を高め、抗ウイ ルス的作用を有することは、今や常識となっています。


Q2:EMXも医薬品としては認可されていないと聞いていますが、記事ではは っきり効用をうたっており、薬事法違反の疑いもあります。


A2:薬事法では商品の販売に当たって、認可されていないものに効果効能を うたってはならないとなっています。EM・Xゴールドのラベルや商品説明に は、このようなことを書いておりません。EM・Xゴールドの効果は、医科大 学等などで確認され、EM医学会議等などで公になったもので、公式な批判に 耐えられるレベルのものです。また、このような情報を、EMを販売するため のパンフレットや情報誌に載せることは薬事法で禁止されていますが、論文投 稿のDNDサイトの場合はそれに該当するものではありません。


Q3:口蹄疫は感染力の強い伝染病です。効果が十分に証明されていない防疫 手段を薦めるのは感染拡大を助けることになりかねません。現在の危機的な状 況で安易にこのような記事を載せる事は極めて不適切だと思います。
仮にEMに効果があったとしても国際獣疫事務局(OIE)のルールに従い清浄国 に復帰するには、それで殺処分を逃れられるものではありません。畜産業を守 るという意味ではEMを使う事は全く無意味です。


A3:EMは長年にわたって、畜産分野にも使われている微生物資材で、その 成果は現場で無数に確認されています。したがって、EMを使うか使わないか は農家個人の守備範囲に属するものであって、OIEのルールに従う必要はあ りません。
 清浄化されたか否かは病疫の検査結果で判断することでOIEのルールに従 っても病気が残っておれば無意味です。酢を散布するとウイルスの拡大防止に 効果があることは今や常識となり、多くの人が酢を散布していますが、これは OIEで決められたものではなく、使うか、使わないかは個々の農家の判断次 第のルールを無視したものではありません。
 私のこの提案を実行した宮崎のある地区では感染拡大が止まっており、現在、 県による清浄化確認が行われています。


Q4:台湾の事例についての記述は疑問です。


A4:1997年での台湾は、ワクチンを使用せずに発生地から10km以内 は、すべて殺処分されました。EMの活用は口蹄疫に感染した豚にEMを使用 したら、その症状が消えたため、それを確認した畜産関係者が他の養豚場で使 った結果です。その地域も汚染地域であったため、不幸にしてOIEのルール が適用されました。「当局がその違いを確認し、防疫対策に活用すれば、農家 レベルの口蹄疫対策に役に立ったはず」という無念の思いがあります。安全地 帯でEMを使って運が良かったという話ではありません。


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