崩落する日本製造業?


俯瞰工学研究所の松島克守のメルマガです。第15号を送らせていただきます。


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせて頂いております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出を下さるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見を頂ければ幸いです。過去の俯瞰メールは俯瞰工学研究所のHPの「俯瞰メールのアーカイブ」にあります。http://www.fukan.jp/また、ご友人、ご家族に転送して頂くことは大歓迎です。


皆様

◆季節のご挨拶◆
新年度が始まって、また一年の活動が始まりました。 秋入学の話題ありますが桜満開の入学式はいいですね。駒場の桜満開のあの日を思い出します。毎年桜を見ると走馬灯のようになぜか昔の好い思い出だけが甦ります。


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・崩落する日本製造業?
・自主ゼミ「俯瞰経営学」を今年も本郷で始めます
・原発再稼働の議論をもっとオープンに
・補助金では産業は育たない
・高付加価値という言葉の罠
・プラチナ構想ハンドブックのTwitter
・ビジネスモデル学会盛況で開催
・四足は食べるなとは科学的
・頭のよくなるクッキング
・デジタル書斎の構築8
・書評 : 「アンチエージング」
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◆崩落する日本製造業?◆

「シャープがEMS世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業と資本業務提携を決めました。鴻海はシャープに約10%を出資して筆頭株主となり、世界最大のガラス基板を使う堺工場(堺市)で液晶パネルを共同生産する。」というニュースが3月28日にありましたが驚きませんでした。鴻海はAppleの生産で有名です。まだ幾つか、ある日、日経新聞のトップニュースになっていい企業はあります。日本の製造業はずっと前から崩落の日をただ待っているようにも見えます。シャープはその崩落現象の一つでしょう。


Apple になれなかったソニー、現代(ヒュンダイ)に抜かれたホンダ、トヨタもあっけなくGMに首位を奪還されました。三洋の家電はハイヤールに売られ、日本市場攻略の先陣になっています。ITのNECの苦境も連日報道されています。パナソニック?


日本企業はこの10年単なる延命治療で凌いできましたがそれもこれまでという感じです。まさか以前の某IT企業のトップの名言「社員が悪い!」などと言う言葉は出てこないと思いますが、隠しようのない経営者の責任というか、資質の問題だと思います。10年近くトップをやって結果が出ないこと自体、資質の無さの証明です。多くの企業が大幅な若返り人事をしましたが、これも10年遅かったですね。


米マサチューセッツ工科大教授 マイケル・クスマノ氏は3月19日の日経新聞グローバルオピニオンで「世界を見渡して、苦境にあるのは日本企業だけではない。欧州ではスマートフォンで出遅れたノキアの株価が急落、電機の独シーメンスもかつての勢いはない。巨大な内需の恩恵を受けている中国企業も、技術革新の面では立ち遅れている。ただ、日本企業には固有の課題がある。一つは「古い世代」が会社を支配する構造だ。コンセンサス重視の経営のもと、若い世代に与えられる権限は極めて限られている。」と指摘しています。


同じ10年でもIBMのパルミサーノは史上最高益、史上最高値の株価で10年の治世を終えました。同じこの10年のグローバル経済の中でこのギャップです。


◆自主ゼミ「俯瞰経営学」を今年も本郷で始めます◆

今年も単位が付かない自主ゼミ「俯瞰経営学」を本郷の技術経営戦略学専攻の学生と4月13日から開催します。単位が付いた現役からは9年目です。自主ゼミは4年目です。


本年度は「日本製造業の新生のモデル」を追求することにしました。多分5人のチームが5つになると思いますので、「Appleになれなかったソニー」、「現代に抜かれたホンダ」「台湾資本のシャープ」、「何を選択したのかNEC」、「どうするリコー」、「生き残れエプソン」を各チームは一つ選んでもらい「苦境の本質」を分析し、それを踏まえて「新生のモデル」を考察してもらう事にしています。ご興味ある方参加しますか?


この自主ゼミは「ヤングライオン」の育成が目的ですが、例年、雌ライオンのほうがたくましいです。


Apple Sony
(第13回)アップルとソニー その差はどこにあるか(1) -
誰も言いたがらない「Sony が Apple になれなかった本当の理由」
SonyとApple


世界新車販売台数ランキング
世界新車販売台数ランキング2011


シャープ
シャープ、通期2,900億の赤字に。液晶など業績改善策

NEC
NEC大規模リストラに社員悲鳴 「安泰だと思ってたのに!」「東京出たくない!」「白石に引っ越しとか出来ない…」

リコー
リコーの業績は?
リコー[7752] - 業績・経営状態 | Ullet(ユーレット)

リストラと闘うリコーユニオンのブログ

エプソン
セイコーエプソン[6724] - 業績・経営状態 | Ullet(ユーレット)
通期連結業績予想の修正および特別損失(単体)の計上に関するお知らせ


◆原発再稼働の議論をもっとオープンに◆

全ての原発が運転を停止し、この夏の電力をどうするかいよいよ決断をする時になりました。怒る人がいると思いますが、安全が確認された、絶対的な安全はあり得ません。原発を稼働する決心をする日が来ると思います。この夏の話と、今後は全く別の議論です。無論最大限の節電は大前提です。


シェールガスの開発が進んで化石燃料が、少しゆとりが出てきましたが、今年には間に合いません。旧式の火力発電所も改修と効率化も進んでいるようですがまだ途上です。再生エネルギー、これもこの夏には間に合いません。停電?日本経済が持ちません。ただなし崩し的に原発再開へ意見集約していけば、日本の中に深い亀裂を残すと思います。


総合資源エネルギー調査会は3月27日に原発比率0-35%の5案を提示したようですが、これが決まらないと、今年のことが議論できないでは困ります。大飯原発再開の政府の決断も苦渋の決断でしょうが、結局政府側より電力会社側の方が知識があるわけですから、政治判断しかできません。これはこの夏の決断の話ですから、地元と丁寧な話し合いをしていくだけです。


中長期は時間を掛け、技術的課題、技術革新の可能性、経済性、国際情勢を俯瞰する議論が必要ですから、中長期を今決めるのは拙速にもなると思います。


一方、4月3日の報道ステーションで放映された元東京電力社員の証言の様な電力会社の内部の腐敗構造もこの議論テーブルに載せないと議論の説得力が得られません。九電力体制の刷新こそがこの議論の出口の一つですから。


幸い、先月に比べると地熱発電に関しては進捗がありました。非常識な、国立公園の外からななめ掘り、でなく熱源の上から垂直掘りが可能になったようです。温泉業界が反対?海面埋め立ての時の漁業補償の様な、ドロドロの状況に持ち込むのでしょうか。以前アイスランドのレイキャビックに旅行しましたが、地熱発電所のすぐそばに、湖の様な巨大な温泉が開かれ、素晴らしいリゾートになっていました。発想を前向きに変えていかないと地域経済は発展しませんよ、補償金では。


アイスランドの温泉 ブルーラグーン
アイスランドの青い温泉、ブルーラグーン 写真21枚 国際ニュース : AFPBB News
Blue Lagoon アイスランドの温泉


◆補助金では産業は育たない◆

独太陽電池メーカー大手のQセルズは4月2日倒産しました。同社は太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ちましたが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥ってしまいました。追い風とは政府の補助金です。追い風が無くなると行き詰りました。同じ4月2日日付でカリフォルニア州でメガソーラー開発を手がけるソーラー・トラスト・オブ・アメリカが倒産しました。2011年には、オバマ米政権の「グリーン・ニューディール」政策の象徴だったベンチャー企業の米ソリンドラも破綻しています。ドイツでも、2011年12月にゾロンなど中堅2社が相次ぎ倒産しています。欧米では太陽光発電事業の見直しが進んでいます。(欧米、陰る太陽光発電 2012/4/4付日本経済新聞)


日本でも高値で買い取りという補助金で、再生エネルギーのビジネスが成長していますが、先はドイツや米国と同じになるでしょう。経済合理性のない事業が続くわけがありませんから。筋肉増強剤を飲んで記録を伸ばす運動選手と同じで、あとはボロボロになった身体が残るだけでしょう。


太陽発電のジレンマは、価格が大幅に下がらないと普及しないが、低価格になるとメーカーがもちません。中国の太陽電池のメーカーが世界中に低価格で太陽電池を供給するのは困るのでしょうか。採算割れの価格競争でライバルを潰し、市場を支配した後、利潤を確保する、という古典的な重商主義的資本主義でしょうか。先進国の太陽光発電の買取制度は、中国メーカーへの支援となり、結果は地球全体の低炭素化に貢献するのでしょうか。難しいですね。


問題は10円以下のLNG発電の4倍以上の太陽光発電の買い取りは、差額が電気料金に転嫁され、それでなくても国際競争力のない日本の電気料金を押し上げ、結果は製造業の海外移転を推進し、国内経済の弱体化を推進します。それも20年の買い取り保証を要求しています。20年間高利回りの資金運用をして巨額の利潤を手にする人は誰でしょう。浮利を求めて動いている人達です。これに自治体が協力するのでしょうか?因みに中国も買い取り制度ありますが1元(13円)です。40円で甘やかされる日本の企業は国際競争力無しです。またガラパゴス化の産業育成ですか。


風力発電も補助金即ち「シャブ」が切れて動けなくなったものもあるようです。残されるのは借金です。ただこれらの事実は自分で確認していません。


自治体にこのリスクをとらせたメガソーラーの計画がありますが、最終的な付けは納税者に来ます。過去にも沢山ありましたね。それが自治体の巨額債務として負の遺産になっています。リゾート・・・・


自治体の方々には、再生エネルギーの事業計画にはぜひ経済合理性があり、かつ継続可能性のあるビジネスモデルをお願いします。


エコで赤字
エコで赤字!? 〜特別会計の実態〜


「欧米、陰る太陽光発電」
欧米、陰る太陽光発電 独大手に続き米でも破綻 買い取り価格が左右


◆高付加価値という言葉の罠◆

太陽電池は高付加価値の製造業だったのでしょうか。最近の液晶パネル、プラズマの国内生産の崩壊を見ていると、二つの仮説が湧いてきます。まず高付加価値であるが高コスト生産で、結果として低収益の事業を国内で死守して、中国、韓国、台湾企業の価格競争の攻勢の前に救いようのない赤字に追い込まれ崩落していく日本の電子産業というシーンがあります。もう一つは、先端技術は高付加価値という思込ではという仮説。さらにDRAMやTVパネルが先端技術かという事です。


一方国内生産でも好調な企業の代表は、ファナックとコマツです。失礼ではありますが、いわゆる最先端技術の製造業というイメージではありませんが、高収益です。経済合理性で持続可能なビジネスモデルでしょう。


今、製造業が何を日本に残せるか、残せないか、キチット分析的にビジネスモデルを精査したいと思って研究プロジェクトを立ち上げました。結果をいつかご報告します。共同研究のご希望あればぜひご一緒にしましょう。


低落する日本の技術力
技術よりも経営の革新を 小川 紘一[東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員]に聞く


◆プラチナ構想ハンドブックのTwitter◆


プラチナ構想ハンドブックのTwitterを立ち上げました。編集局からの情報発信で す。適時情報を発信しますので、ぜひフォローしてください。


機会見てご案内しますが、プラチナ構想ハンドブックの編集に参加を希望する方、ご 連絡ください。ネットワーク上での編集作業です。内容はキーワードを広いハイパー リンクで解説をつけたり、コンテンツにリンクを張る事です。また、地元の取り組み を紹介する通信員の機能も。これはプラチナ構想ハンドブックのサイトからお願いし ます。


PlatinumHB
プラチナ構想ハンドブック


◆ビジネスモデル学会盛況で開催◆

ビジネスモデル学会は3月31日124名の参加を得て東大の工学部講堂で盛大に開催されました。テーマは「アジアに展開する日本の生活産業」です。

基調講演は経済産業省の政策局長の石黒憲彦さんで、産業構造の変革を核とした成長戦略で極めて高い水準で組み上げられた戦略で説得力があります。


続いて3件の特別講演ですが、まずアサヒビールホールディングの古田土俊男取締役から、アジアに積極的な事業展開と戦略、そしてその3つのビジネスモデルが提示されました。


次に中国を中心に素晴らしい事業展開をされている資生堂の中国事業部の大亀雅彦さんから現地化を文化のレベルからじっくり浸透させ、中国全土に、見事なブランド戦略に基づいて販売網を構築していったプロセスを伺いました。


さらにアジアビジネスの現場を知り尽くした、「アジアビジネス探究者」の増田辰弘さんから生々しい現地での事業展開の実態と事例を伺い、アジアでの事業の真髄に近づくことができました。


引き続き、会員研究論文の発表が3件ありましたが、いずれも社会人博士の研究論文で極めて水準が高いものでした。これは、MOTの研究に適切な発表と議論の場を作りたいというビジネスモデル学会設立の趣旨に沿うものです。


実況中継的ドキュメンタリー ・http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm120406.html
ビジネスモデル学会は ・http://www.biz-model.org/


◆ウィスコンシン大学のサル◆

周囲の方々に、ビジネス書もいいが、ぜひ栄養学の書籍も一冊は読んだ方がいいですよ、と薦めてきました。私自身は20-30冊読んだでしょうか。問題は、ビジネス書が説く経営戦略や手法と同じで、各自独自の流派を起こして道を説いていて、どれが正しいか、いやどれを取り入れるべきか判断できません。米国はBMI 25以上が人口の68%と世界最悪の肥満国で、その為健康法、主としてダイエット法が花盛りで参考になりますが、真偽が怪しいものも少なくありません。最初に仮説というか思い込みがあって、それに都合のいいデータを集めますので評価しようがありません。ただ、全てに共通している事もあります。


カロリーを減らすと長寿になる、動物性の油脂は体に悪い、マーガリンは食べてはいけない、砂糖は毒だ、精製した穀物ではなく全粒粉を取る事、動物性蛋白でなく植物性蛋白を取る事、野菜を沢山、取分け緑黄野菜を取る事、塩を減らす事、です。


カロリーを減らすと老化が抑えられる事は昔から知られていたようですが、テレビで放映された、米国ウィスコンシン大学の研究結果は衝撃的です。下記のYouTubeで。一見の価値あります。腹7分!!


栄養学でこれまで困惑していた事は、幾つかの信頼できる書籍に乳製品は体に良くないから控えるようにとありましたが、はっきり根拠が示されていませんでした。何しろ牛乳で人間の子供を育てていますし、子供のころから卵と並んで優良食品の筆頭にされてきましたから。コーネル大学名誉教授の栄養学者T.キャンベル博士は、動物性蛋白は癌の成長を促進する、と学術的な研究成果を示され、その実験の動物性蛋白は牛乳の蛋白「カゼイン」であったという事に非常に衝撃を受けました。そして、長年健康に良いと信じてきた、朝のヨーグルトは止めました。動物性脂肪、動物性蛋白と癌の関係も学術研究が多くありました。乳がんと動物性脂肪摂取量の相関係数は0.8-0.9です!


「すべての癌は、遺伝子によるものはわずか2-3%に過ぎない」と言明されています。あとは食生活と運動という生活習慣です。博士の China Study参考になります。


乳製品なし、動物性脂肪なし、動物性蛋白は控える、これからどんな料理を作るべきか、頭がよくなるクッキングの新生を図ります。取り敢えず豆乳の手作りを始めました。出来立ての温かい豆乳は美味しいですよ。今後は禅宗の精進料理が参考になりそうです。


世界の肥満ランキング 
サルの実験
牛乳の蛋白カゼインが癌を成長させる
上記の本論文は俯瞰工学研究所のHPに置いておきます。


乳がんと脂肪摂取量の相関


China Study
http://webarchive.human.cornell.edu/chinaproject/index.html


◆頭のよくなるクッキング2◆

というわけで近所の図書館、実は蔦屋のTサイトを利用しています、で健康、食、料理の部屋に行ってみました。因みにTサイトは、週末はお縁日状態で人があふれています。意外と動物性脂肪と癌の関係などの本が見つかりません。食と料理の本は山のようにあります。長寿食の本もいっぱいですが、やはりxxx流(式)の解説書が多いですね。


見ると野菜料理の本は、たくさん平積みです。時代は、賢い人々は、既に動いているのでしょう。いろいろ見て直感で下記の本を選び出し、立ち読みもできませんので購入してきました。全て目を通しましたが、いずれも良いですよ。


1.「やさい流」有元葉子、ウー・ウェン、島崎とみ子、高梨尚之、岩月明、菊池美升朝日新聞の土曜版連載のMOOKで、いずれも料理の達人です。永平寺精進料理の高梨尚之さんのレシピは特に興味深いです。


2.「ウー・ウェンのおいしい野菜」ウー・ウェン 朝日出版社
中華料理ですが日本料理の神髄を取り入れたレシピで、以前からファンです。鍋も考案していて「ウー・ウェンの中華鍋」は愛用しています。炒める、焼く、茹でる、煮る、蒸す、燻蒸なんでもこれ一つで出来ます。IH対応でテフロン加工ですので、我が家で一番出番が多い鍋です。


3.「野菜料理の365日」 宮本しばに 旭屋出版
長野の山荘で長く暮らしている方で、本に挿入されたご自宅と思しき写真にきっと心惹かれるでしょう。豆腐料理は素晴らしです。乳製品は所々使っています。


4.「内田悟の野菜塾(春夏)」内田悟 メディアファクトリー
内田さんは料理のGeekですね。ものすごいこだわりですが、新鮮でクリエイティブな記述が満載です。一度お会いして、お話を伺いたいと思います。これは「頭がよくなるクッキング」の教科書になります!


Tサイト http://tsite.jp/daikanyama/


◆デジタル書斎の構築8◆

情報の収集の手段について。既に情報源として日経新聞の電子版が有効ですとお勧め しましたが、これは記事のスクラップが直ぐできる事が一番のポイントでした。その 方法は幾つかあります。電子版にある保存機能を使っても良いのですが、問題は日経 新聞のクラウドに保存され手元に残りません。さらに困ることは、パソコンで保存し た記事とiPadで保存した記事がなんと別に保存されていて、iPadで保存した記事がパ ソコンで見えません!もしかしたらできるのかもしれませんが。いずれにしてスクラ ップ記事は何かの時に参照したいのですが、思い出して日経新聞のサイトにアクセス するのも大変です。


お奨めは、これも既にお奨めしたEvernoteのクリップ機能を利用する事です。なにが 凄いかというと、Google検索をしたとき、Evernote中まで検索してくれますので、情 報(宝)の持ち腐れが防げるからです。 ただ画面には広告が多くただページをクリップすると余分な広告もクリップしてしま います。EvernoteにはClearlyというツールが用意されていて、記事だけを抜き出し てくれます。これをクリップすると、きれいな記事だけのスクラップになります。 ClearlyはEvernoteのサイトからダウンロードできます。


◆書評◆

今月のご紹介は、「ヘルシーエイジング」アンドルー・ワイル(角川書店2006)で す。


著者のアンドルー・ワイルは統合医療の専門家です。統合医療とは西洋近代と補完代 替医療、即ち漢方や食事療法を組合わせた全身医療です。ともかく圧倒的な知識を俯 瞰した、解り易く納得できる解説ですから、改めて自分の生活習慣を反省することに なるでしょう。


本書は2部構成で、第1部は老化という現象の解説で、第2部はその老化現象を緩和す るアドバイスです。既に60歳を超えたシニア、そしてその前の壮年の方にも一読の価 値はあります。取り分け第2部はヘルシーエイジングを可能にする、食の科学として 重要な知識です。早く始めるほど良いことですから。今なら間に合う?


秦の始皇帝で有名な不老不死からはじまります。細胞レベルの研究から人間の寿命は 細胞分裂が約50回というヘイフリックの限界を紹介されていまが、無限に分裂できる ヒーラ細胞という話に繋がり、その研究からテロメラーゼというDNA上の染色体の発 見になります。これがヒーラ細胞の不死を可能にしているのです。潜在的に人間細胞 の中にある不死の細胞をいかに制御し管理するかです。


「細胞の生活は、DNAを損傷する力と、修復する力の戦いだ」とありさらに「環境の 厳しさ、DNAにエラーをさせる力の多様性を考慮すると、人間が現在の寿命まで生き ていること自体が驚異だ」ともあります。現代医学は、健康は維持できないが寿命は 伸ばすという事態にまでなっているといいます。


何よりも「不老不死を求めるの?」という問いかけが重いですね。細胞に不死と癌は 同一です。さらに「死という脱出口を塞がれ苦痛の中に幽閉されたいのですか」とあ ります。本書の冒頭にあるレナード・ヘイフリックの「森羅万象は老化する」が不老 不死への答えでした。


長寿については、よくコーカサスなどの長寿村の話があり、自家製の果物、野菜、肉 そしてヨーグルトがその秘密という事になりますが、実はこれは風説で、その何れの 村も信頼できる戸籍がないという事ですので、ヨーグルトをきっぱり止められます。 確かに長寿村と言われている村では、生涯を通じた農牧の作業という運動と、社会関 係、知的活動の継続が共通する特徴で、著者が高く評価している沖縄の長寿とも共通 しています。


ジョージア大学の研究も凄いです。百歳を超える長寿者に「典型」はなく全て例外で あると、さらに特定の食事、サプリメント、薬物などが100歳以上に貢献している事 を裏付けるデータはないとありますので、この後の話に繋ぎづらいですね。


著者はそのあと沖縄のゴーヤ、ウコンは評価しています。何より長寿者を「地域の生 きた宝」として社会活動に参加させる社会を評価しています。


アンチエイジングの医学については現在のところ存在しないという立場です。そして アンチエイジングの医学を標榜している人々は、「加齢に伴う疾患と加齢というプロ セスを区別出来ていない」という事です。


温血動物の寿命を延ばす唯一の方法は「適切な栄養によるカロリー制限」という摂取 カロリーの制限だけだそうです。これは既に紹介した、ウィスコンシン大学のサルの 実験で納得済みです。見ましたか、あの皺がなく元気な老猿を。ただこれも人間にあ てはまるかはまだわかっていないといいます。このサルの実験ではレスペラトロール というブドウの皮に生じる抗酸化物質が注目され、不老の遺伝子を活性化するとし て、既にサプリメントして日本でも販売されています。最近、私は買いました。まだ結果 は感じていませんが出ればご報告します。


介護に頼らず自立した生活をおくれる期間を、健康寿命というそうです。日本は76歳 で世界一です。スイス75歳、イタリア74歳、アイスランド74歳が続きます。韓国は71 歳で24位、アメリカは70歳で26位、中国は66歳で39位です。 (今どき 健康学2012/4/8付日本経済新聞朝刊)


老化を伸ばした超高齢化社会の社会・政治に関する問題が気になるともあります、こ の懸念に対する答えの一つが、今推進しているプラチナ社会構想に共通する認識で す。


この後「人はなぜ老いるのか」、「老いを拒絶する心」、「老いの真価」とさらに深 い考察が続きますが、老化を抑えるアドバイスの第2部に行きましょう。


まず体重、血圧、心電図・・の管理をせよですが、日本には人間ドックというとても 良い制度がありますのでこれは使いましょう。


第1部では、加齢に伴うプロセスは、蛋白質と糖質の結合によるカラメル化、細胞中 のリポフスシンの蓄積、酸化ストレスの毒性作用ですが、なぜこれが起こるかは不明 とのことです。以下はこれを起こさないようにする「摂取食物中の物質」のコントロ ールについてのアドバイスです。


即ち身体を傷める細胞の炎症を防ぐために、炎症を促進する悪い脂質、糖化という老 化メカニズムを進める悪い脂質、炭水化物の解説があります。そしてサプリメント、 運動のアドバイスが続きます。早く結論を言って下さい?


以下に簡単にまとめておきましょう。でも読んで何故か、を理解したほうが長生きす るでしょうね。まず油脂にはオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸という2種類の多不飽和 脂肪酸があり適切な割合で摂取する必要があります。炎症を抑えるオメガ3脂肪酸は 摂取が少ないのでこれを増やすやす必要があります。まず種子(クルミ、亜麻、麻の 実)、植物油(大豆、キャノーラ)、海草、魚(サケ、イワシ、ニシン、サバ、ギン ダラ、ムツ)です。


食べてはいけない油は、菓子に使われるショートニング、マーガリン(絶対食べては いけない)、酸化しているファーストフードの揚げ物です。紅花油、ひまわり油、コ ーン油、ごま油、大豆油は、オレイン酸入り以外は控える事。今市販されている大手 のものはオレイン酸が含まれているも製品が多いと思います。むしろ自然食品の店の 製品のほうが含まれていないかもしれません。さらに高温にした油、したがって天ぷ ら・フライの後の油は捨てる!お勧めはエキストラバージンのオリーブ油です。


次に炭水化物はグリセミック指数の小さいもの即ち、ゆっくり糖として吸収されるも のをとる事です。従って摂ってはいけないモノは、砂糖、特に白砂糖、パン、ポテ ト、菓子、ケーキ、スナック、白米(うどん、ソーメンは粉食のため白米より悪い)・・ ・・を取らず、全粒の穀物、例えば玄米、豆類、そして野菜、果物(熱帯性よりも温 帯性のベリー類、チェリー類、リンゴ、ナシ・・・)をとる事です。


蛋白質については動物性蛋白を避け、肉より魚、魚は食物連鎖の上を避ける事と、底 魚を避け、PCB、ダイオキシン等の毒物を摂取しない、出来るだけ植物性蛋白にす る、即ち大豆、豆類をとる、です。何しろ既に紹介したように、牛乳の蛋白はがん細胞を 活性化しますし、動物性油脂は乳がんとの相関係数が0.8-0.9ですから。


(◆ウィスコンシン大学◆参照)


微量栄養素をとるために、もっとたくさんの果物と野菜をとる事、アントシアニン、 カロテノイドをすくむ赤、紫の果物です。ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリ ー、さくらんぼ、ブドウ、ザクロ、赤キャベツ、ビート・・。ここでホットします ね、赤ブドウ即ち赤ワイン飲んでいいようです!日本にはもっと多様な果物がありますの でこれ以外の果物もいいでしょう。野菜は全ていいのですが、カテロイドをとるの に、ほうれん草、トマト、カボチャ、サツマイモ、人参と緑黄野菜ですね。チョコレート も砂糖なしのダークチョコレートは許されるようです。あと白茶、緑茶、ウーロン茶 もポリフェノールの供給源です。


最後にウコンと生姜のクルクミンは抗消炎作用があるのでもっと料理に使った方がい いと言ってますから、生姜を入れたカレーは如何ですか。ただ白米ライスは悪いので つけ合わせるなら玄米ご飯か、全粒粉のパスタとの組み合わせですか?だんだん私の 助言になりつつあります。私はもう30年くらい毎朝野菜ジュースを絞って飲んでいま す。基本は人参1本、セロリ1本、レモン1個です。キャベツやリンゴを入れること も有ります。夏はゴーヤの種を取ってジュースにして時々飲みます。苦い?我が家で はこの味を「滋味深い」という言葉で表現しています。これはやってきてよかったと 思います。効果は実感しています。


サプリメントにつても貴重な助言があります。飲むなら、飲まないなら、いずれにし ても一読の価値あります。私は長年愛用しています、量的に野菜から取りきれません から。ただその中でも良いサプリメントと、でないモノの解説があります。


この後は運動やストレッチという体を動かす習慣について書いてあります。最後の最 後は、極めて常識的に、明るく楽しく暮らししてストレスから逃れ、穏やかな心理状 態で暮らすのが大切といっています。


最後まで読むと統合医療という事が理解できたように思います。ではお元気で!




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◆俯瞰 MAIL 0015号(2012年3月11日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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