第9回 EMで国造りを目指すコロンビア(1)



 南米の頭部に位置するコロンビアは農業を含め潜在的な可能性が極めて大きな国です。コロンビアといえばコーヒーと麻薬で名をはせていますが現大統領の徹底した取り締まりと福祉政策により国の情勢は大幅に改善しつつあります。かつて中南米の国々では汚職防止のために大統領は1期のみという憲法がありますが、先に述べたコスタリカの大統領のように私心を捨て国民の為に尽力するリーダーが現れ、そのため国民からの要望で憲法を変え2期はできるようにする国々が増え始めています。


 コロンビアの現大統領も同じケースで現在2期目に入っていますが福祉や環境や地域の自立活動における大統領夫人のリーダーシップは国民から絶賛されています。全く私欲がなく、大統領の再選にも反対したようですが国民の強い要望に応え、暗殺の危険も覚悟の上で2期目に同意したとのことです。


 コロンビアへのEMの導入も前に述べたアース大学の卒業生の尽力によるものです。小児マヒを患い体に大きなハンディキャップを持った卒業生の女性が父親の農場でEMを実証的に使い、驚異的な成果を上げたことから多くの人々が注目し始めました。特に生ごみを活用した有機栽培の成果は目を見張るものがあり、ごみ問題で困っているボゴタ市をはじめ、農業や環境問題にEMは急速に広がり、その女性のアース大学の卒業生(モニカ)は、農業大臣の技術顧問に指名されたのです。


 もちろん、その他の多くのアース大学の卒業生が一致して協力してくれましたがその卒業生達のバイブルは私の書いた「地球を救う大変革」のスペイン語版です。このようなことから、コロンビアのアース大学の卒業生会の活躍が注目され、その活動の成果を積極的に取り入れたのがM&Dというカトリック系の福祉財団です。


 この財団は腐敗し混乱し困窮し切ったコロンビアを自力で改善することを決意した1人の神父さんの信念で始められたものです。その財団のMは1分間、Dはいいことを意味します。すなわち1日に1分間でもいいから社会や他人に対しいいことをしましょう。行動できない場合は1分でもいいから、いいことを想ったり、社会や他人にいいことがあるように祈りましょうという原点からスタートしたものです。


 現在は2代目の神父さんに変わっていますが2000年以降、私は2〜3年に1回コロンビアを訪ねていますがM&D財団の活動は政府を巻き込んだ国家レベルのものに成長しています。


 コロンビアはオランダにつぐ園芸王国ですがM&D財団の理事の中には世界有数のカーネーションやキクの切花経営者もおります。数年前、その現場を見せてもらいましたがEMが完全にシステム的に活用され世界NO.1の有機の花栽培の生産者として評価されるようになっており、日本にも輸入されています。


 M&D財団はコロンビア全土にボランティアを中心とする組織網を確立しており、各地域の学校を拠点にEMによる環境、リサイクル、生ごみを活用した野菜や花づくりの活動を行っています。EM技術が一定レベルに達した中学生にはEMインストラクターの資格を与えています。そのため、自発的に地域を良くする活動に参加したり、自給自足のレベルを上げ余った野菜を売って家計を支えている子供達が多数育っており、EMによる自立ビジネスも生まれています。


 M&Dには、大きな小中高校もあり、各地の学校や教育機関にも積極的な支援を行っていますが、EMで国造りが必ず成功するという象徴的な事例があります。それはM&Dが大学を創設した時点で農業の普及事業も行っていたことです。その中に微生物の応用の分野もあり基礎力もかなりしっかりし、ある程度の実績もありました。


 私は、この状況とM&Dのゆるぎない方針と実績を高く評価し、コロンビアのEM普及をアース大学の卒業生会とM&D財団の協同化で進めることを決めEMのノウハウをすべて伝授することにしました。


 M&Dは私の要望を入れ、微生物研究所を強化し、コロンビア全土にEMを供給する体制を作り、各地でEMのモデル事業を展開してくれました。数年前にはEMをベースに農業や環境を専門に教育する学部を作ってくれました。


 この学部の実質的な開校式で私は学生に次のような話をしました。「EMのエキスパートになるにはEM語が話せなければなりません。言葉は使わないと絶対に上達しません。EMを生活の中や生産のあらゆる場面で空気や水の如く使うようになると、自然にEM語が話せるようになります」「コロンビアはある意味では困難といわれる状態にありますが、皆様も知っているように素晴らしい大統領がおります。その大統領が最も期待しているのが国造りに協力するEMのリーダー達です。EMを通し自分の人生が自分自身はもとより、他人を幸福にし社会を良くし、環境問題を解決することができるようになれば、この国は世界がうらやむ素晴らしい国にすることができます」「世界で本格的なEMのリーダーを養成し、国家的な立場で、この人材を活用するシステムを確たるものとしたのはコロンビアが最初であり皆さんは、その歴史的な局面におり、このような人生を選択できたことを真の意味で神からのプレゼントとして受け取り、本気でEMを勉強してください。そうなればコロンビアは世界で最も幸福度の高い国として評価されるようになります」


 コロンビアのEM活動は普及システム、人材育成、研究システムが三位一体となっており、その成果は他国の範となっています。この頂点に行政側の代表として、大統領夫人がおり、農業や環境省はもとより、土木建築、医療、社会福祉などあらゆる分野の省庁がEMに取り組み始めており、タイ国とは異なるEMによる国造りを着々と進めています。



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