第87回 水産養殖におけるEMの活用(2)
日本に限らず、官の出す情報は信頼の上に成り立っている。前回は江戸川区と港区で、EMで海がきれいになったので人々が勝手に泳いでいると記したが、このような場合、水泳が不適であれば、官から中止の指導が行われるというのが一般的である。中止の指導がなかったということは泳いでもいいというレベルまで大腸菌の数が減少し、水質が良くなってきたということに外ならないのである。
遅きに失したが、その裏付けが必要となり、調べてみると港区区役所から、期間限定の水泳チャレンジの案内が出ていたのである。本件に関しては日本経済新聞7月26日夕刊の9面とサンケイスポーツ7月27日の27面でも報ぜられたとのこと事である。
参考までに港区の公報を紹介したい。
上海ガニの養殖におけるEMの活用事例
中国は世界一の水産養殖国であるが、この分野においても、様々な形でEMが使われている。中国における水産分野のEMに関する論文は2000件余ともいわれ、山東省を中心に全域に広がっているが、御多聞にもれず、偽物大国である。
@上海ガニ
EMの活性液の作り方を公表しているため、誰でも、らしきものは作れるため、元手も要らず、その気になると、商売したくなるのが人情である。当初は、汚染大国中国で「らしきEM」でも環境浄化に役立てばと思い放任したら、たちまち数千社、中には「比嘉教授直伝」として私の写真を使ったものや、「比嘉教授の開発したEMを上回るEM」という本家がかすんでしまうくらいの勢いであった。
残念なるか、EMの活性液は時間の経過とともに効果が減少し、PHが3.7以上になると、他の菌の汚染が始まり、4.0になると汚染が更にひどくなり、EMとは全く異なったものとなり、腐敗を誘発する菌相(叢)に変化する。それを、EMだと思い込んで使った場合は最悪である。お陰でEMの評価は賛否両論となったが、中国の人々も、この原因は偽物のEMによるものと判断するようになり、正当な大手企業は、本家のEM研究機構の直接的な指導を受けるようになっている。今回の上海ガニもその1例である。
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A当初はボートの中央部に手動でEM活性液を投入 | B養殖池全体に投入 |
とは言え、当初は様々な噂から、養殖現場ではカニが死ぬのではないか、水が更に汚れるのではないかという不安が発せられたのである。「それなら水槽に養殖場の水とカニを入れ、100倍くらいになるようにEM活性液を入れて様子を見てください」ということになり、その結果、7haの養殖池で試すことになったのである。
本来なら、それでメデタシメデタシとなるところであるが、養殖の中期に大量のカニが陸に上がってきたということである。通例ならば、水質汚染がひどくなり、失敗ということになり、陸に上がったカニの大半も病気で死滅するものである。一時、大騒ぎとなったようであるが、よくよく観察すると水はきれいで臭気がなく、陸に上がったカニは元気いっぱいであったとのことである。担当者はエサが少なくなったのでカニが陸に上がったものと判断し、エサの量を増やしたら、カニは池に戻り、再び上がることはなく、死亡率はゼロどころか、投入数以上のカニが収穫されたとのことであった。このカラクリは稚ガニは3〜5%程度多く入れる習慣によるものである。
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C面積が拡大するにつれポンプで注入 | D現在は高圧ポンプでEM活性液を投入 |
この成功を受けて120ha、200haと拡大し、三年目で1000haに達している。上海ガニの養殖面積は5万ha余、すべてEM化するのも時間の問題である。5万haといえば東京湾の内湾よりも大きな面積である。
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