第85回 5年目をむかえた海の日のEM投入活動



 2008年、8月8日、8の重なる日を選んで、マレーシアのペナン州で国際EMダンゴ記念日と称し、100万個の余のEMダンゴが投入された。州知事を先頭に州環境部を中心に2万人余のボランティアが参加した官民一体のEMによる環境浄化活動である。


 この行事の取組に当たっては、州政府とEMボランティアが数年にわたる現場での実証を行い、汚泥の分解、水質浄化、魚貝類の激増、生態系の著しい改善効果を確認し、万全を期して行われたのである。


 この大々的なイベントは、マレーシアの大手のマスコミすべてが取り上げた為、例によって環境専門家と称する大学を中心とする識者から、生態系を乱すとか、効果が疑問、海を汚す等々のコメントが寄せられた。


 EMダンゴ投入後、海岸や河川の悪臭は数日で消え、半年もすると、ヘドロだらけの沿岸に砂地が現われ、小魚が大量に群れるようになってきた。泳げなかった湾でも、泳げるようになり、野鳥や水鳥が増え、今では、ペナンの海や河川はマレーシアで最もクリーンで魚貝類の豊かな州としてアピールできるようになってきた。例年の8月8日の記念日には、EMボランティアによる小規模なEMダンゴの投入が続けられているが、以来、ペナン州政府は、環境対策や水産業や畜産、農業にも積極的にEMの活用を行っており、海や河川の再汚染の懸念は全くなくなったのである。


 この大々的な成果を参考に、我が国でも、海の日に河川や湖沼、海をきれいに豊かにする意識を高める為に、ボランティアによる国民的な運動の一環として、全国でEMダンゴやEM活性液の投入が行われるようになったのである。もちろん、アイデアのもととなったペナン州のEMダンゴ100万個投入イベントは、10余年も前から、日本の各地で行われているEMダンゴやEM活性液の投入による河川や湖沼や海の浄化の成果を手本として実施されたのである。


 例年の海の日の目標は、EMダンゴが100万個、EM活性液が1000トンである。このレベルになると、数万ha以上の汚れた海を浄化することが出来、特に三河湾、伊勢湾、東京湾、有明海東南部や諫早湾等々で多大な成果が認められるようになってきた。その活動に批判的な学者やマスコミ人は、インターネット上で反対の声を大にしているが、このような人々が現場を検証した例は皆無である。



ついに現われた名古屋市堀川と日本橋川の川床レストラン


 先月、NHKのニュースで日本橋川に、これまでのレストランを川面に広げ、親水の川床レストランがオープンしたことがくり返し報道され、新しい地域活性化のチャレンジとして期待される旨が述べられていた。今では、日本橋川は、神田川と隅田川を結ぶ遊覧船が行きかい、臭気も全くなく、水もきれいになり、魚が跳ねまわる東京の名所となっており、スカイツリーの水上見学の人々を驚かせている。


 平成18年、EMダンゴやEM活性液投入以前の日本橋川は、悪臭が酷く、アオコや魚が浮いて、ヘドロが巻き上がり、遊覧不可の川であり、川に面したレストランは川側の窓を密閉し、悪臭の対策に苦慮していたのである。


 EM投入後、半年で例年なら、区役所に寄せられていた日本橋川と神田川の悪臭に対する多数の苦情の電話は全くなくなり、1年後には魚が群れる川に変身したのである。日本橋川のEM投入は、今も続けられ、本DND第15、16回と第72と73回に述べたように、この成果は、東京港はもとより、東京湾まできれいで豊かな海に変身させてたのである。


 6月下旬NHKは「ダーウィンが来た」(日曜夜7:30)という番組で2回にわたって東京湾がきれいで豊かになったことを報道したが、EMを完全に無視し、三浦半島側に大量のアサリが発生し、東京湾は自然にきれいで豊かになったとしか言えないような説明を行っていた。


 NHKが報じた三浦半島の辺りは、10年ほど前は、アサリが全く取れず、アオサが堆積するきたない海であった。ボランティアによるEM投入や横須賀市が河川浄化の為に大量のEMを長期にわたり投入しており、三浦市でも多量のEMを活用し続けた結果、河川がきれいになり、海も浄化され、アサリが大量に取れるようになったのである。


 愛知県では、5年前から海の日に名古屋市の堀川にも、EMダンゴとEM活性液が投入されたが、例によって、専門家の意見は否定的であった。2年目には悪臭が著しく減少し、3年目から小魚が群れるようになり、水質検査の結果も改善傾向となり、4年目には著しい改善効果が認められるようになった。


 写真1は、その成果である。このオープンテラスは、今年になって始まったのでなく、臭気のなくなった数年前から活用され、今では予約席のNO.1となっている。写真2-1と写真2-2は、このレストランの隣接地の松重閘門の奥でのコノシロ釣りの成果である。この成果に先立つこと10年、悪臭がひどく、ドブ川であった大阪の道頓堀川がEMやEMダンゴの投入できれいになり、今では多数の親水レストランが並んでいる。三重県津市の堀川にも、かつては臭気がひどく、川面の窓が開けられなかったレストランがあったが、ボランティアによるEMダンゴやEM活性液の投入できれいになり、今ではテラスを活用する親水レストランとなっている。



写真1



写真2-1



写真2-2


 現今の、名古屋市の堀川は、どこでも釣りが出来る状態になり、日本橋川並みに遊覧船が航行できるレベルにあり、市民の釣堀として、また名古屋の新観光資源として大きな潜在力を秘めるようになってきた。幸か不幸かEMダンゴを投入しなかった新堀川は、依然として臭気のひどい汚れた川であり、EMダンゴの投入を待ち望んでいるが、この問題は名古屋市の責任であり、ボランティアはボランティアである。


 陸上に発生するすべての汚染は、最終的には、海に集約されることは改めて述べるまでもない。海や河川や湖沼が汚れていることは、陸上が汚れていることを意味するものである。したがって、水系の汚染を浄化することは、陸に住む者の義務である。前号のシリーズで述べたように生態系を豊かにし、生物多様性を守る農業やEM生活に徹し、人間の生産活動や生活のあり方が他の生物の積極的な保護や繁栄に結びつくものでなければ、人類の生存の本質的な解決は不可能である。


 嫌気性菌と好気性菌がPH3.5以下で安定的に共存し、自然界の微生物相を善玉菌化するというEMの効果は、従来の微生物学では、ありえないことである。また、放射能対策を含め、その万能性は、現代科学のミステリーとかエセ科学と思っている識者がゴマンといることも承知しているが、EMの成果は、すべて現場で実証し、くり返し確認し、積み上げてきた結果であり、極めて再現性の高いものであり、科学の基本的条件は、すでにクリアしているのである。


 そのポイントは、EMの密度を高め、環境や生体のマイクロバイオームを善玉菌が優占するレベルに管理することにある。EMのノウハウ集には、それらのことをすべて公開しており、EMを使って失敗したという事例はすべて、この観点が欠除したものばかりである。要はEMの密度を高めるための考え方と管理能力次第であり、EMでうまくいかない場合は、その力量が低レベルであったということである。マイクロバイオームの重要性やそのコントロールは、今や応用微生物学の先端的な知見であり、EM効果の科学的根拠となるものである。




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