第83回 EMによる創造的な農業生産(4)



 これまで3回にわたって、EMを活用した技術革新的な農地の効率的な利用や限界突破的な事例を紹介した。要は、規模の大小を問わず、EMの特性を活用した方法論の組み合わせである。どんな大きな規模でも軌道をセットすれば、既存の農機具よりも、かなり効率的にすることも可能であるが、従来の農業生産方式を固定し、その仕組みの中でEMを上手に使うという考えでは限界がある。

 創造的と言えば省エネや技術革新的なレベルと同時に、その生産過程における付加価値の評価も極めて重要なポイントである。すなわち、コストと品質以外に環境汚染に対する影響、人間の健康や生態系および生物多様性はもとより、地球温暖化防止への関与のレベル等々まで評価する必要がある。

 更に付け加えるならば、現存する社会問題に対し、どのレベルで解決的な対応が可能であるかについても考慮した上で、その創造性をチェックせねばならない。

 この観点から、化学肥料、農薬、大型機械を中心とする伝統的な現在の農業は、第一次の評価基準であるコストという面においては可としても、それに伴うエネルギーの浪費、自然環境の汚染や破壊、特に生態系や生物多様性の破壊はもとより、人間の健康に対しても数々の問題点をかかえている。

 このシステムは、人糞尿や畜産廃棄物、多量に発生する農業残渣や自然の有機物を効率的に循環させられないという致命的な欠陥を持っている。確かに、人口の爆発的な増大に対し、現存する技術は、それなりの歴史的必然性を持っているが、その行きつく先は、改めて述べるまでもなく、遺伝子組み換え作物を中心とする遺伝子操作の世界である。本件については、数々の問題点が指摘されているが、放射能における低線量被曝の評価に対する賛否両論に類似した様相となっている。


 

EM技術の展開による真の創造的な農業生産の基本

 これまで、いろいろな機会に、EMの持つ抗酸化作用や非イオン化作用や有害なエネルギーを触媒的に有用なエネルギーに転換(整流)する効果の本質についても述べたが、農業や環境、人間の健康や生態系や生物多様性等々を支配しているのはマイクロバイオーム(微生物相(叢))であることは疑いの余地のないものとなってきた。

 すなわち、環境や体内がEMと類似の善玉菌支配となれば、すべてが健全となる。したがって、これまでの対症療法的な技術はすべて不要になるということにもなり、医学における医療技術の大半、農業における耕転、病害虫対策は不要となる。その上、マイクロバイオームのレベル次第で放射能や重金属や化学物質を完全に無害化することも可能である。

 30余年にわたるこれまでの研究や応用の結果、EMは使い続けることによって、すべての分野でマイクロバイオームを善玉菌に変え、その密度を高めることが明らかとなっている。EMによる福島県内の放射能対策(40余ヶ所)は、確たるものになっており(表1)、ダイオキシンの分解や重金属の不活化による無害化は、すでに実用技術になっている。遺伝子組み換え技術がいかに発達しても、このような問題の解決は不可能である。


※本調査は2011年、原発事故の年に行われたものであるが、EMを活用し続けている圃場においては、その後も全く放射性セシウムは吸収されない事が確かめられ、市場での信頼は確たるものとなっている。



 去る3月16日付の「Nature Materials」誌に、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが植物のエネルギー生成構造にカーボンナノチューブを組み込むことで、光合成能力が30%高く、細胞を損傷させるフリーラジカルが3割少ない「スーパー植物」を生じさせられたとの発表があった。

 EMの主要菌である光合成細菌のエネルギー伝達系は、カーボンマイクロコイルよりも更に微細であり、EMの葉面散布や土中施用を続けると比較的容易に植物体に取り込まれる性質がある。図1の結果は拙著「微生物の農業利用と環境保全」のP82に示した発酵合成微生物(EM)処理が温州ミカンの光合成能力に及ぼす影響である



 1987年のことである。本結果は無処理を100とするとEM区は150ということになる。同一品種で5%以上の差はあり得ないというのが常識であるが実験方法に誤りがなく、再現性が得られたために、敢えて発表したものである。

 すなわち、EMを徹底して活用すると、すべての作物において遺伝子組み換えの必要がなく、普通の品種をスーパー品種に変えられるということである。このことは別の視点から考えると、EMの活用によってCO2を30〜50%も多く、資源(生産力)として回収することを意味するものである。同時に、EMは、水田や畜産等々で発生する各種の硫化水素や炭化水素や窒素酸化物を資化(エサ)する能力がある。それらの物質は、すべて地球温暖化の大きな原因となっており、根本的な対策は不可能とされているものである。

 このような背景を考えると、現今では、解決不可能とされる放射能汚染対策や地球温暖化対策は、EMの活用によって可能になるということである。その上、EMにより、マイクロバイオームが望ましい状況に改善されれば、すべての場が蘇生的となり、病気になる人も極端に少なくなり、構造物の耐久性や大気や大地の汚染も防止することが可能となる。


未来型農業へのプロセス
 先ず、汚染を放出する技術は、すべて止めるという覚悟が必要であり、地球全体のマイクロバイオームを善玉菌化し、人糞尿や畜産廃棄物や自然に発生する有機物の残渣をEMで処理し、大地に戻すことから始める必要がある。

 そのためには、現在、韓国で行っているように、政府が助成金を出し、各地にEMの大量培養システムを設置し、一次産業分野に無償に近いレベルで供給するシステムを作るべきである。

当面のプロセスとしては、畜産、下水、堆肥工場、水田等々、個別の分野から始め、最終的には、自然発生的な、あらゆる有機物を自然の炭素循環の系に組み込むことである。

 これを基本に、EMの持つエネルギー整流力を高度に活用すると、すべて高効率の生産力となり、炭酸ガスは立派な資源となり、予測される最悪な人口増大に対しても十分に対応できるものとなる。

 欲を言えば、旅客機に1回フライトごとに1〜10トンのEM散布を義務づけることである。このことは世界中の大気の汚染、微生物汚染、海洋汚染対策、森林や原野の光合成能力を高め、鉱物資源を最少にし、自然資源を確たるものとする道に直結するものであり、人類の未来を開くものである。

 EMは、嫌気的な性格が強く、現在の酸素条件では絶対にメジャーになれない弱点をもっている。したがって、人間がシステム的に汚染源にEMを増やし浄化源にしたり、汚染の管理技術の一環としてEMを施用し続けられる仕組みを作る必要がある。このような背景を考えると、EMをいかに大量に撒き散らかしても、施用を中止すれば自然の酸素によってコントロールされ、マイナーになる必然性を持っている。したがって、いくらEMを使っても、地球がEMだらけになるというマンガチックなことが起きることはない。という確証がある。




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