第80回 EMによる創造的な農業生産
旧聞になるが1昨年、サンマーク出版社から「新・地球を救う大変革」という本を出版した。1993年に出版した「地球を救う大変革」(サンマーク出版)の進化本である。
その著作の270〜271頁に「日本の農業は後継者も不足し、かなりの農地が荒れはてています。EM栽培の無農薬の農作物は、国民の健康と環境と生物多様性を守り、立派な輸出商品にもなります。すでに述べたようにタイで行なわれているようなEMのトレーニングセンターを各県につくり、短期間で効率のいい研修を行い、使わなくなった農地を公的な活用の場として生かすように法を整備すれば500万人以上の職場を作ることも可能であり、自給率の向上と輸出の振興にも大きな力を発揮するようになります。」と書いてある。
このようなことは、従来の農業の常識ではあり得ないことであり、誇張ではないかと疑問に思っている人も少なくない。この疑問に答えるためには、永続性のあるモデルを作り、公開する必要がある。そのため、数年前からEM研究機構の協力を得て、「創造的なEMモデル農場」作りに取り組んでいるが、完成度がかなり高まり、一般公開が行えるようになったため、本年度から、本技術の社会化に取り組む予定である。
改めて述べるまでもなく、「地球を救う大変革」には、人類のかかえる食料、環境、健康、資源エネルギーの問題を解決すると同時に、生物の多様性が積極的に守られるという大前提がある。そのためには、次に述べるハードルを常に意識する必要がある。そのハードルとは、安全で快適、低コストで高品質で善循環的持続可能という本物技術のチェックポイントである。商品経済に慣れ親しんでいる一般の消費者は、商品に対する責任は、すべてメーカーにあり、お客様は神様であるという思い込みがある。EMに対する様々な批判は、その思い込みから発生している。すなわち、生き物を扱う場合は、それを扱う人の力量次第であるという常識の欠如によるものである。
EMは、目に見えない生き物であり、それを上手に増やし、その効果が現われるような管理をするのが使い方の基本である。その結果、EMと類似の自然界の善玉菌の密度が高まり、その機能があるレベル以上に達した場合にのみ、その力を発揮するということである。乱暴な表現をすれば、効くまで使い続けるという事であり、すべてが使う側の責任ということである。すなわち失敗したという人は、失敗した使い方をしたにすぎないのである。EMに効果がないとする公的機関の試験結果も同じカテゴリーである。
農業の限界突破
工業分野における技術革新は、様々な分野で限界突破を行い、社会全体を情報化しつつあるが、その技術が本物か否かのチェックポイントは、すでに述べた「安全で快適、低コストで高品質で善循環的持続可能」という視点である。したがって、いかに安く便利であっても、二次被害や環境や健康等々に悪影響を引き起こす場合や(現在の電磁波公害も含む)、本質的に汚染を発生する場合は、不完全技術として対応する必要がある。
このような視点から、従来の農業や植物生産工場を見ると、経済性はもとより、その存在そのものが浪費であり、破壊的である。農業を創造的な本物の技術にするためには、その生産様式を本物技術の条件で厳しくチェックする必要がある。
その第1は、農の基本は耕す事にあり、施肥や病害虫や雑草対策は不可欠であるという迷信である。その解決のために、現われたのが大型機械、化学肥料、農薬、除草剤である。その結果は土壌を劣化させ、環境を汚染し、健康被害はもとより、生物多様性を根本から破壊する状態に陥っている。農業に限らず、化学物質の習慣的な活用は、すべてが環境汚染に直結したものとなっている。
その本質的な解決は、表層に1〜2cmの浅耕か不耕起にすること、有機物の合理的な循環と化学物質を必要としない病害虫や雑草対策技術をシステム的に成立させることである。ヒナ型的な簡単な方法については、「新・地球を救う大変革」の88〜101頁に述べた通りであるが、その結果を踏まえて、完成したのが、EM研究機構が主導する第6次産業認定の農業法人「サンシャインファーム」である。この農場を開く前は、排水不良の洪水常襲地で、ごみの不法投棄の山となっていた場所である。
水イモを作ったり、アイガモを飼育できるように水田状の幅の広い排水システムを作り、EM技術による農業の限界突破のモデル作りに取り組んだのが3年前である。大型トラクタの何台にも及ぶ不法投棄ごみを片付け、大雨の後の水の流れを見て圃場の設計をし、当初だけはトラクターで整地し、その後は不耕起、無農薬、無化学肥料、無除草剤に徹している。畑地の空いている空間は、雑草が生えないように果樹や観葉植物、草花、ハーブ等を植付けている。
この農場の有機物の循環は、EMホテルすなわち、EMウェルネスリゾート・ホテルコスタビスタ沖縄から出る生ごみ(1日200〜300kg)と泡盛の廃液および道路や公園管理に発生する有機物のチップである。
生ごみは、EM活性液を添加し液肥にし、不足分を泡盛廃液を同様な方法で活用するが、最近では、生ごみをEMで発酵させ、ニワトリやアイガモ、豚などの飼料とし、EMの密度の高まったそれら家畜の廃出物を有機肥料として活用するようになってきた。
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写真1、生ごみEM発酵飼料を活用した島ブタ | 写真2、生ごみEM発酵飼料を活用した、産卵鶏(1日200個) |
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写真3、生ごみEM発酵飼料を活用しているアイガモ(年間200羽) |
農業は意外なくらい労働不適日数が多く、労働生産性の大きな低下要因となっている。すなわち台風や大雨、高温や低温等々である。また、台風や大雨の後に晴天になっても、重粘土壌では、数日の間、畑に入ることは極めてやっかいである。通路は泥の溝と化し、作物は汚れ、働く人も疲労困憊となる。
サンシャインファームでは、この対策のため、ホテル等の絨毯の張替えに発生する古い絨毯やタイルカーペットを通路に敷いて畝の保護はもとより、雨が降っても泥まみれにならないように万全を期している。ごみ焼却場へ行くと、古い絨毯やカーペットは山ほどあり、その活用で通路の雑草対策も完璧である。
写真4、通路にタイルカーペットを敷き詰め、雑草を完全に抑制し、雨天でも周年作業ができ、植物工場なみに連続栽培が可能である。ハサミで収穫し、直にその株間に次の苗を定植する。残根は地力となる。
有機物は、堆肥にすることなく表面に敷きつめて、その上からEM活性液やEM液肥を施用するのみである。野菜のくずはすべて飼料となる。このような方法だと、雑草が出る間はなく、野菜の作付けローテーションも収穫後の2〜3日で次の苗を定植する。従来のように耕起、土壌改良、土壌消毒などは、全く不要のため、作付けのローテーションは数倍も高まり、まるで植物工場なみである。
極めつけは、収量はもとより、その抗酸化作用の突出した効果で、野菜はまるで超美味の薬草である。かつては大雨が降ると表土が流出し、ドロ水だらけの洪水となったが、今では、200〜300mmの大雨が降っても表面から清流が流れ、降雨の大半は地中に浸透し、洪水は止まり、地下水が豊かになっている。
その結果、農場の下流の河川は浄化され、その水は北中城漁協の漁場を浄化したため、漁協もEMの活用に熱心である。
写真5、無整枝で摘芯型のフルーツトマト
ハウスのトマトも、写真5のように整枝せずに出しっぱなしである。そのため着果枝が多くなり、収量は2倍以上となっている。収穫残渣は全て土の表面に敷きつめ、更に、有機物を多用し、肥料の不足分は、EM発酵鶏糞等で補っている。このハウスは、写真にも見られるように当初は黄化葉巻ウイルスが発生したが(右側の黄化した葉)、EMの徹底的な活用により感染は止まり、今では全く消失した状態となっている。このウィルスはフルーツトマトの致命的な病気で発生したら最後、薬剤散布や土壌消毒を徹底しても完全に抑制することは困難である。
サンシャインファームは、6次産業モデルとして発展途上であるが、技術は全て公開しており、研修生の受け入れも行なっており、地元の北中城村の農業振興にも積極的な役割を果たしている。
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