第79回 第2回環境フォーラム『うつくしまEMパラダイス』



 前年の成果を受け2013年11月9日に福島県教育会館にて第2回環境フォーラムが開催された。参加者は400人、半数は福島県外の参加者であった。開催に当たっての私のあいさつ文は以下の通りである。


本フォーラムは「2011年3月11日に起きた東日本大震災によって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所の事故によって被災した福島県を、EMの活用によって、放射能汚染問題を解決し「うつくしまEMパラダイス」にする目的で開催されるものです。
 昨年の第1回のフォーラムでは、2012年までに得られた成果をチェルノブイリ原発事故の被災国であるベラルーシ国立放射性生物学研究所の研究成果の発表やベラルーシの子供達の内部被爆対策の成果やEMの多様な活用法について発表してもらいました。
 その内容を総括すると、

  1. 有機物を投与し、EMが十分に活動できる条件を整えて、EMの密度を高めるような栽培管理を行った農地では、作物による放射性セシウムの吸収は完全に抑制される。同時に作物の収量や品質が向上した。
  2. EMを活用した酪農では、畜舎の衛生問題をすべて解決するとともに、その地域の汚染牧草を給与しても、牛乳中の放射性セシウムは5ベクレル以下となり(国の基準は50ベクレル)、その糞尿(スラリー)を散布した牧草地の放射能レベルが低下し、牧草の放射性セシウムの吸収も抑制されることが認められた。
  3. EMの活性液を散布し続けた場合は、例外なく放射汚染レベルが低下しているが、降雨等で土壌水分の多い条件下で散布すると、より効果的である。
  4. EMやEM・Xゴールドを活用すると電離放射線の被曝障害を完全に防ぐことが可能であり、内部被曝対策にも万全を期することが可能である。
  5. EMは、今後問題化すると予想されている放射性ストロンチウムの作物への吸収抑制にも顕著な効果がある。
  6. EMを散布された周りの数メートルから数十メートルの放射線量も低下する。


 以上の成果を、福島県を中心とする低線量汚染地帯で実施すれば、放射能汚染問題を根本から解決することが可能であるといえます。とはいっても、これまでの放射能に関する常識ではあり得ないことですので、この成果が公的に活用される可能性は限られており、当NPO法人地球環境・共生ネットワークのボランティア活動である「災害復興支援プロジェクト」に頼っているのが現状です。
 この「災害復興支援プロジェクト」は、すでに50件近くとなり、年々希望者は増え続け、休止する例は殆どなく着実に広がっています。
 第2回の今回のフォーラムは、昨年の成果を踏まえ、経年的にどのような結果になったのかという放射能汚染の根本を意識し、昨年度に発表いただいた方々の報告を中心に、その後の、新知見やベラルーシ国立放射線生物化学研究所のEMやEM・Xゴールドによる研究成果を報告してもらうことになっています。
 EMのコンセプトは、すべてのものに対し「安全で快適」「低コストで高品質」「善循環的持続可能」となっており、この力は放射能汚染地帯においても無限なる力を発揮してくれます。
 最後に、本フォーラム開催にあたって、ご協力いただいた関係者の皆様に心から感謝申し上げると同時に、福島県が「うつくしまEMパラダイス」になることを期待しています。」

2013年におけるEMによる放射能汚染対策の成果については、本DNDの第74回と75回でも述べたが、今回は、その他のEM研究機構の成果と、屋敷内の放射能低減効果の事例を紹介したい。


1.EM研究機構の2013結果報告
 福島第1原子力発電所の事故から2年8カ月が経とうとしているが、放射性物質で汚染された農地の除染は、一部の地域が完了したものの、仮置き場の確保の問題から当初の計画より大幅に遅れている。表土を除去せずに放射能を低減する技術が開発、確立されれば福島県の農業復興に大きく寄与できる。
 放射能汚染対策に有用微生物群(EM)を用いる研究は、1990年代後半にベラルーシ共和国にて実施され、EM散布により土壌中の放射性物質の農作物への移行が抑制される効果が報告された。また、EM散布した農地では放射線線量が減少したという事例も認められた。
 このような経験を基に、我々は平成23年5月より福島県にて、EM栽培農家の農作物や土壌中の放射性Cs濃度の調査、EMによる農作物への放射性Csの移行抑制試験及び汚染農地における放射能汚染の低減化試験を実施している。1年目の成果については昨年の事例集で報告したが、以下にその後の経過を報告する。


1)農地における放射能汚染低減化試験及び調査
 EMによる放射能汚染の低減化を検証するため、飯館村のブルーベリー農園(約20a)にてEM活性液を定期的に散布し試験を行った。試験開始直後の土壌の放射性Cs濃度は、土壌1kg当たり約20,000Bqであったが、2か月後には約5,000Bqまで減少し、約75%の低下が認められた。この時、深さ15−30cmの土壌の放射性Cs濃度は約250Bq/kgであり、降雨による土壌深部への浸透・流出による低下ではないと考えられた。一方で、本試験ではEM処理区に隣接した対照区でも放射性Cs濃度が低下した理由は現在でも検討中である。しかしながら、自然放置して土壌中の放射性Csが短期間で75%も減少する事象はこれまで報告されてないこと、15年以上に渡りEMやEM発酵堆肥を活用し土づくりを行ってきた農家(果樹園、畑作、水田)の土壌の放射性Cs濃度の推移の調査結果(図1)でも、理論上の減衰値よりも放射性Csの低下していることから、我々は土壌中の有用微生物の活性が放射性Csの低減になんらかの影響を及ぼしていると考えている。
 飯館村の試験圃場では平成24年も春から秋まで試験を継続したが、放射性Cs濃度の増減はあったものの5,000-8,000Bq/kg付近で推移した。 平成25年は、飯館村で政府による本格的な除染が開始されたことから、同試験圃場におけるEM活性液の散布と測定を休止している。


 

2)EM施用による放射性物質の移行抑制試験
 平成23年に福島県農林水産部が実施した実証試験事業において、EMオーガアグリシステム標準堆肥施用区は、無処理区、対照区(塩化カリウム)と比較して放射性Csのコマツナへの移行が有意に抑制されたことが報告された。同報告書では移行抑制の機序として、堆肥による土壌中の交換性カリウム含量の増加が原因ではないかと考察されていた。我々は堆肥由来の交換性カリウムの効果とは別に、微生物の働きも放射性Csの移行抑制に影響を及ぼしていると考え、プランターに汚染土(134Cs+137Cs:12,000Bq/kg)を入れ、堆肥を用いずコマツナを栽培し、EM施用が放射性Csの農作物への移行抑制に及ぼす効果を検証した(図2)EM区はEM活性液1%希釈液を、対照区は水を適時灌水した。 コマツナから検出された放射性Csは、対照区が37.0Bq/kgに対しEM区は14.5Bq/kgで、放射性Csの移行が有意に抑制された。移行係数で比較しても対照区の0.00313に対し、EM区は0.00118で、放射性Csの移行が62%抑制された(図3)。材料として用いたEMのカリウム含量は0.1〜0.2%とわずかであることから、EMによる放射性Cs移行抑制機序はEM中の水溶性カリウムの効果ではなく、別の機序が存在することが示された。
 ベラルーシ国立放射線生物学研究所との共同研究では、EMボカシの施用により、水溶態Cs、イオン交換態Csなどの根から吸収容易なCsの割合が減少し、有機物結合態Cs、粘土鉱物結合態Cs等の根から吸収困難なCsの割合が増加することを認めた。従って、EMによる土壌改良は、根から吸収容易な放射性Csの割合を減少させる作用があり、その結果、農作物に移行する放射性Csが減少したといえる。



2、内部被曝対策と敷地内の放射線量の低減
 本件についても結論的な結果となり、広く一般に知らせ、EMの活用をより積極的に行うべきであるというコメントとなった。
 下の図は栃木県、那須塩原のホットスポット地帯でEMを散布している柴田氏宅の放射量の経時的変化である。


柴田氏宅の放射線量の経時的変化


昨年一部報告をしてもらった、いわき市の久呉氏宅の放射線量の変化は下記の通りで著しい減少効果が認められている。




その他2.3Sv/h(3月)→1.2Sv/h(7月)の高線量区域での成果も得られたため、新たに3件の取り組みが始まっている。



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