第73回  7年目を迎えた日本橋川EM浄化プロジェクトの成果(2)



3.喜ばしい異変が次々と現れてきた東京湾
 数年前から東京湾に喜ばしい異変が次々と起こっている。今年に入ってNHKは、東京湾の海底に巨大な海草やサンゴの密林の存在を放映し、船橋のあたらいのアサリ漁等々の改善事例を紹介した。5月4日の読売新聞は「多摩川河口域でシジミが急増」と題して以下のように報じている。


 「東京、神奈川の都県境に位置する多摩川河口域でシジミが増え、市民によるシジミ採りが盛んになっている。近年の水質改善のためだが、乱獲の恐れもあり、東京都は、シジミ漁の漁業権を半世紀ぶりに復活させることを決定。1日から漁を希望する漁協を募集している。
 神奈川県などによると、多摩川は、1960年代から流域人口が急増して、下水道の整備が追いつかず、汚染が深刻化。シジミは次第に減り、漁業権は63年を最後に更新されなくなった。その後、下水道の整備や住民の清掃活動などで水質が改善、シジミの生息数が回復したとみられる。
 市民にも「穴場」と口コミで広がり、シジミ採りに訪れる市民が5、6年前から急増した。この機にシジミ漁参入を目指す川崎河川漁業協同組合の井口文夫組合長(82)は「船で乗り付け、大量に採る人もいる。せっかく回復したシジミが乱獲で姿を消しかねない」と心配する。」
この件に関しては、みのもんたの朝ズバでもその一部が放映された。


 7月14日、海の日の前日に、テレビ朝日は、奇跡の地球物語で、多摩川〜よみがえった清流〜を放映し、約30年前にはほとんど見られなかった鮎の遡上が昨年は、1194万匹と驚異的に増えており、その秘密は川をきれいにし、魚道を整備し、源流の禿山に植林した結果、緑が戻り、水源が保護されるようになったという結論になっている。


 7月15日海の日にNHKは、「東京50年ぶりの海開き」と題して江戸川の海岸で海水浴ができるようになったと報じている。その他、朝日新聞や多くのマスコミで東京湾がきれいになり、生態系が豊かになり、大勢の人々が潮干狩りをしている状況が報じられている。その成果は、住民を含め行政が水を綺麗にしたからだ、ということになっている。はたして、そうだろうか? 結論的なことを言えば、EMの大量投入なしには起こり得ない現象である。


以下の調査は前回紹介した(NPO)地球環境・共生ネットワークの専門研究員である星野豊氏によるレポートである。


4.多摩川河口・京浜運河の生物調査 2013.5.25
 2006年より外濠・神田川・日本橋川へのEM資材が毎週10トン本格投入されるようになり、微生物・酵素の増殖の速さ、地場の有用微生物の活性化により、生物の多様化と復活で悪臭とヘドロなどが減少し、小石、砂地が見られる。生態系は、生き物のつながりや自然の摂理で成り立っている。EM投入後は、年々基質(栄養塩、エサ)が豊富になり、魚介類のサイズも大型化し、生産性も回復している。トンボや渡り鳥も増加している。隅田川の東側の河川や東京湾のお台場、浜離宮、京浜運河・中央海浜公園などの調査で水の浄化を担う貝、フナムシ、カニ、小魚や植物など多用な生き物が見られるようになってきた。また、2010年から多摩川にアユ、マルタウグイや鮭が多く遡上するようになり、ハマグリの50年ぶり復活などが新聞やニュースが流れている。


 5/4/2013の朝日新聞「多摩川河口域でシジミが急増」を受け、東京都はシジミ漁の漁業権を半世紀ぶりに復活させることを決定。漁を希望する漁協を募集している。


 5/25/2013 満月の大潮 干潮10:58,23:22 ;満潮4:05、17:48

 

 5/25大潮の満月、京浜運河や羽田沖、多摩川河口の潮干狩りの視察に行ってきました。インターネットでは見ていましたが、潮干狩りをする人の多さにびっくりです。砂地は、2年前までは、ややぬるぬるしていましたが、今年は、運動靴で20m〜30mほど沖まで歩けるほど砂地が綺麗で、悪臭もなく改善が進んでいました。多摩川河口の砂地には、シジミが多く、また、スナガニの小さな穴が無数に見られ、生物の多様化が生態系の修復を促進させています。


 シジミをとってる人の中には、他にクルマエビをとった人もいました。テナガエビやアナジャコやモクズガニも取れるそうです。


釣り人の話では、ハゼも順調に育っているようです。


 羽田空港沖干潟から海老取川河口を散策 5/23,25/2013  5月の連休中は、干潟を埋め尽くすほどの潮干狩り客があり、乱獲でシジミは少ないと言っていたが、籠にいっぱいシジミをとっていた。中には、スナガニやクルマエビをとっている人もいた。


多摩川河口羽田川

対岸の川崎側の潮干狩り

干潮時の羽田沖

対岸の川崎側でも潮干狩り


多摩川・海老取川の河口の砂泥にはシジミが多いが、東京湾よりの砂泥地には、アサリ、ハマグリ、ホンビノスガイ、シオフキが捕れるが搬出が大変なので潮干狩り客は少ない。


6/4/2013若潮の干潮時にもモノレールより潮干狩りをしている人たちが見られた。


写真7枚

潮干狩りを楽しむ家族連れ

捨てられたシオフキガイ

ミズクラゲとカニの巣穴


シジミの他にクルマエビを捕まえている テナガエビ、アナジャコもとれる

海老取川の名があるように、昔は干潟が豊かでエビ、カニが沢山いたのでしょう!


弁天橋と赤鳥居

海老取川の河口


 海老取川は、都内でワーストbPの新呑川と合流することで1970年代〜ゴミや悪臭の酷い川であった。現在も、雨が降ると汚れがひどく赤潮など見られるが生き物は生き延びている。


海老取川 干潮では砂泥地が見られるが、発酵膨化したヘドロが覆っている。


ここでは、シジミの貝殻は見られるが、臭気があるせいか、貝を捕っている人は見られない。


貝捕り用のレイキ

海老取川 砂泥地の穴の側にはオサガニやコメツキガニが多い

浅瀬に沢山の小魚の群れ

ハゼの群れ


京浜運河大井ふ頭中央海浜公園

満潮時 夕やけなぎさのコンクリート護岸の先にゴロタ石(天然石)

大潮の干潮時 夕やけなぎさ ゴロタ石前の砂地でホンビノスガイ捕りの人たち

野鳥観察場 サギ、カワウ

巻貝のタマビキが多くなる


お台場に多く見られたタマビキが、ゴロタ石に多く見られるようになる。

京浜運河 大井ふ頭海浜公園

勝島橋よりコンクリートに石を埋め込んだ護岸

夕やけなぎさ ゴロタ石前の貝殻混じりの砂地で採集されたホンビノスガイ

バランスト水で移入されたホンビノスガイ、サルボウガイ(殻が放射筋)


 この人は、3時間ほどで20Kgほどの網袋を2個採集していた。天王洲アイル〜大井競馬場駅の京浜運河の砂地でホンビノスガイ、サルボウガイが沢山捕れるが、形が良くて臭気がなく美味しい貝は、魚介類、カニフナムシが多いゴロタ石護岸の夕やけなぎさ前が良いと言っていた。多用な生物が住める場は、食べ物も安全でおいしい。お台場のアサリも身が厚く、コクがあり美味しかった。
ホンビノスガイは、米国東海岸でクラムチャウダーとして人気のある食材。


カキ、フナムシの群れ

小魚の群れ 波紋が多数見られる

京浜運河 大潮の干潮時から2時間後

釣られたハゼ


東京湾と流入河川の生物の多様化促進効果
 テレビや新聞などのニュースでは、国や東京都の下水道の整備やゴミ拾いなど清掃活動などで多摩川や東京湾の水質浄化が進み、1965年以後見られなくなっていたアユ、サケ、マルタウグイ、シジミ、アサリ、ハマグリ、モクズガニなどが復活し、生き物が多くなったとしている。


2006年から日本橋川、神田川、外濠へのEM資材の継続投入効果
 東京都の下水処理施設(再生センター)は、1922年〜2001年の間に18ヶ所の処理場が建設されている。しかし、下水が合流式や塩素殺菌処理水のため、都市河川では生き物が多様化できなかった。合成洗剤、殺菌・消毒剤の使用や物理化学的処理などを用いる現代生活では、生活意識が変わらない限り、生き物が多様化するのは難しいとされてきた。


 EM資材の投入後、急速に東京湾の生き物の種類が増加している。また、微生物(酵素)は、増殖力の速さと多様化を繰り返すことにより基質(エサ)が豊富になると魚介類、藻や植物など生き物のサイズが大型化する。東京湾にもこの傾向が明確に現れている。生き物の多様化により、自浄作用が高まる仕組みが出来ると国が掲げている「持続可能な循環型社会の構築」をも可能にするものである。


5.現今の水処理法の構造的欠陥を補うEM技術
 では本当に水をきれいにしたら、生態系が復活し、魚貝類が最近の東京湾のように大増殖するのだろうか。答は否である。瀬戸内海地域では、下水を整備し河川もきれいにした結果、水はきれいになったが海はやせ細って、魚貝類が少なくなったと嘆いている漁協や自治体は、枚挙にいとまがない限りである。


 魚貝類が大増殖するポイントは次の二点である。すなわち、水質がある一定レベル以上にあることと、エサが豊富にあることである。今の水処理技術の殆どが、汚水からエサの基となる有機物をほぼ完全に取り除いて、消毒した後に河川や海に放流するシステムとなっている。ろ過のレベルを高め、消毒しない水処理法もあるが、いずれにせよ、水はきれいになっても、栄養的には貧弱で、生態系の基本をなす微生物相を破壊し、水圏を砂漠化する構造的な欠陥をもっている。


 その上、現在の下水処理システムは大雨が降った際に、下水に流れ込む汚水は処理できず、そのまま放流しているのが大半である。また、家庭や農地や都市部で使われている様々な化学物質の流入に対し、全く無力であり、大都市ほど、その傾向は顕著である。東京都の水処理もこのレベルである。かつての、日本橋川や神田川は、その代表格で夏になると魚が浮き、悪臭に対する苦情が絶えない死んだ川であった。


 その日本橋川に、前号で示したように、大量のEM活性液とEMダンゴが投入されたのである。半年で悪臭に対する苦情がなくなり、1年でほぼきれいな川に変わり、魚貝類が棲める川に変身し、2年目にはアユも戻り、3〜4年でシャケを放流することが出来るようになったのである。


 EMの中心的役割を果たしている光合成細菌は、嫌気性で酸素が嫌いな細菌である。その最も特徴的な機能は、ドブなどで発生するメタンやアンモニア、硫化水素などの悪臭を発する還元物質を基質(エサ)として動物プランクトンのエサとなるアミノ酸や糖類を作る力がある。また、ダイオキシン等々の有機塩素も他の微生物の力を借りて飼化する能力がある。


 同時に有害な化学物質を分解したり、無害化する力もあり、様々な抗酸化物質を産生する力をもっているが、その能力は伴随菌(共生する菌)次第である。


 その一方で、EMの主要菌である乳酸菌や酵母は嫌気的条件で有機物を発酵分解し、糖やアミノ酸、その他、多数の生理活性物質を産生するが、好気的条件では、有機物を強烈に酸化分解する力を持っている。その上、光合成細菌とは、極めて相性が良く、光合成細菌の働きを阻害する微生物を抑制する上に、大腸菌や腐敗菌の増殖を顕著に抑制する機能を併せ持っている。


 このような力を持つ微生物群が、水圏で大勢を占めるようになると水質は良くなり、有用な動植物性プランクトンが大増殖し、魚貝類が増え、生物の浄化力によってきれいで豊かな河川や沼や海に変身するのである。


6.EMできれいで豊かな海に変身し始めた東京湾
 微生物の世界は、人間界と同じように多勢に無勢の世界である。したがって、EMのように蘇生的な機能を持つ有用な微生物群を人工的に大量に投入し続ければ、自然界の微生物相は、時間の経過とともに蘇生的な状況に変化するようになる。


 現今の、東京湾の喜ばしい異変は、まさに、その象徴的な現象である。本DNDの第18回で「EMできれいで豊かな海に甦った三河湾」について紹介したが、愛知県の三河湾は、かつては全国で、最も汚れた湾で殆どの地域が遊泳禁止となっていった。10数年の本格的なEMボランティア活動によって全国トップレベルの漁場となり、かつて、遊泳禁止となっていた海水浴場は、すべてオープンできるまでになってきた。


 EMの大腸菌や腐敗菌の抑制効果は想像を絶するものがある。江戸川区の海水浴場もその恩恵の一例である。前回にも紹介したように江戸川区の左近川や新水緑道等々に5年前から、かなりの量のEMが投入され続けているのである。
 大腸菌は腐敗性有機物を基質(エサ)とする腐敗性細菌の代表格である。すなわち、大腸菌の数は、食品や水の腐敗性(有害微生物数)を示すバロメーターである。そのため、食品や水の安全基準の指標となっており、1cc当り30個以下が水泳可能な限界である。かつての日本橋川の大腸菌は1cc当り数千万個もあったが半年後、数百個レベルに下がり、1年後には30個以下のレベルになったのである。


 もちろん、大雨が降り、下水から溢れた汚水が流入すると、その限りではないが、数日もすると30個以下となる。すでに述べたように、EMの主要構成菌である乳酸菌や酵母は、大腸菌の基質(エサ)となる腐敗性の有機物を水中で発酵分解し、有用なプランクトンのエサに転換する機能を持っている。


 その結果、大腸菌の基質(エサ)がなくなり腐敗性の微生物は増殖することが出来なくなり激減するのである。ヘドロが消失するのも同じ原理であり、時間の経過とともに、地表面に砂が現れるようになる。


 このレベルに達すると、どこでも魚貝類が増えるが、EMを本格的に投入すると、シジミは半年後、アサリは1年後ぐらいで大発生し海藻が目立つようになってくる。


 このような状況を踏まえ、EM活性液投入による日本橋川浄化活動の余得は、以下の通りである。
すなわち、日本橋川に投入されたEMは、神田川にも逆流し両河川を浄化し、隅田川に流れ、隅田川を浄化しつつ、その水流は浜松町のモノレール沿線の河川(古川、目黒川、立合川、海老取川)も浄化し京浜運河を経て東京港を逆流し東京湾に出るが、その一部は海老取川の河口を抜けて、多摩川の河口域に流れ出ているのである。


 これまでの経験では、EMを本格的に投入すると、1〜2年後にその効果は明確に現われ、3〜4年ではかなり広域にその力が広がるようになる。そのことは本DNDの第16回でも詳しく述べたが、冒頭の読売新聞の記事のように多摩川河口域のシジミも5〜6年前に急増したと述べている。その他の記事も、すべて6年前以降から東京湾の喜ばしい異変が起こったと述べているのである。


 その象徴的な現象が昭和58年から東京都が行っている多摩川に遡上したアユの数の調査結果である。


 東京都は、本年(H25)の遡上数が昨年よりも少なくなったのは降水量の減少などによるものであるが依然として高水準となっており、その成果は河川の環境の改善によるものであると強調しているが、はたしてそうなのだろうか?。簡単な判定方法は、東京湾に河口のある江戸川、荒川、鶴見川を調べれば解かることである。「昨年4月11日ごろから荒川上流の明戸・六堰の魚道で稚アユの遡上の多い日に当ると魚道の中が稚アユで真っ黒になる程の数を観察した」という情報が発信されており(deepriver.naturum.ne.jp/e995712.html)江戸川でも鶴見川でもアユが急増しているという情報も得られている。結論を言えば前号冒頭のコメントの最後の部分である。「要は東京都や千葉県がこの事実を受け止め、荒川、江戸川はもとより、東京湾に流入する下水処理場や全河川をEMで浄化すれば、新たな海浜レジャーや水産振興が期待できるものである。」 EMのコストは従来法よりもはるかに安く安全である。今、東京湾に起きている諸々の喜ばしい異変は、すべてボランティアの成果であり、公は1円も負担していないのである。




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