第72回  7年目を迎えた日本橋川EM浄化プロジェクトの成果(1)



 「日本橋川にEMを投入し始めて満6年が経過した。投入当初の数年間で劇的な効果が現れ、公共水域の環境評価基準で類型指定「C」からAに改善された。その後は現状維持を目的にEM活性液の投入が続けられており、項目により多少の変動は認められるが、引き続き年々改善傾向を示している。したがって現状維持を目標にするならば投入量は50%減でも十分である。


 余剰下水や降雨排水機能を主とした日本橋川は、殆ど無視された状態にあったが、その水質改善の結果、昨年より遊覧船も周遊できるようになり、観光にも大きく貢献するようになったが、注目すべきは日本橋から流れ出たEMが神田川、隅田川はもとより東京港全域を浄化し、下流の南側に位置する古川、目黒川、立会川、呑川、蛯取川を浄化し、外側の東京湾の生態系も大きく改善していることである。


 三河湾の事例を挙げるまでもなく、EMを投入され続けていた海域は、アサリ等をはじめ様々な魚貝類が劇的に増え、数年後からアユの大群が登るようになってくる。多摩川でもアユがEM投入2年後までは20万〜30万匹、3年目から倍増、5年目には200万匹、昨年は1000万匹以上が遡上してきている。


 これまで投入されたEMの活性液は3,000トン余となっており、この量は、15年余で三河湾に投入された総量を上まわっている。かつて、悪臭のひどかった東京港の面するすべての河川の、潮が到達する地域は、劇的に浄化されており、各地の人工浜でもアサリが大量にとれるようになっている。


 要は、東京都や千葉県がこの事実を受け止め、荒川、江戸川はもとより東京湾に流入する下水処理場や全河川をEMで浄化すれば、新たな海浜レジャーや水産振興の展開が期待できるものである。」


 上記のコメントは今年の1月末に、日本橋川の水質改善効果について行った、2012年の「日本橋川環境評価」の調査報告書に対する私の総評である。EMによる日本橋川や関連する外濠の浄化については、本DND第15回から17回の3回にわたって、その成果を報告したが、関係者を除くと、その大半が信じられないとか誇張ではないかという程度のものであった。


 それから3年余、その成果は上記のコメントの通りであるが、このすべての成果は生態系の基本を支える食物連鎖がEMにより望ましい状況に改善された結果である。この件については次回に詳しく述べるが、今回は、これまでのEM関連資材の投入量と日本橋川浄化に関連する派生プロジェクトを紹介したい。


1、平成18年12月〜平成24年12月までに
日本橋川・神田川・外濠に投入されたEM活性液及びEM団子の投入数量
【EM団子の投入数】
○名橋「保存会」投入団子数:103,500個
○日本橋川・神田川に清流を取り戻す会投入団子数:257,890個
【提供EM団子 総数】【361,390個】


【EM団子の投入場所及び総数】
○日本橋川:155,500個(2005/7より)
○神田川:50,890個(2008/4より)
○外濠:155,000個(2007/7より)
【投入総数】【361,390個】


【EM活性液の提供量】
○名橋「保存会」及び日本橋川・神田川に清流をとりもどす会:3,060t(堀留橋プラントにて製造)
○大阪漁協より 日本橋に投入:10t
○緑の会より 外濠に投入:26t
【提供EM活性液 総量】【3,096t】


【EM活性液の投入場所及び総量】
○日本橋川:2,564t(2006/11より)
○外濠:532t(2007/7より)
【投入総量】【3,096t】


 この数量はEMできれいで豊かな海に甦った三河湾(愛知県)(DND第18回〜19回にて報告済み)に投入された数量を上回っており、次回に述べる東京港や東京湾の成果の原動力となっている。日本橋川浄化のためのEM活性液の投入は、現在も続けられているが、東京湾の東入口に当る千葉県館山市の認定NPO安房の海を守り育む会でも、平成14年から毎週1トン、平成17年まで毎週2トン、平成23年8月から毎週5トンのEM活性液の投入が行われており、東京湾の大きな変化はその相乗効果によるものである。


2、EMによる日本橋川浄化関連プロジェクト


本報告書は(NPO)地球環境共生ネットワークの専門研究員である星野豊氏による調査結果である。


外濠『市谷濠〜牛込濠へのEM資材の継続投入効果』
 外濠はEM資材の大量投入を実施した結果、悪臭やヘドロが激減し、市谷濠の西角で底の砂、小石、粘土層や湧き水の流れが見られるようになる。アオコ・群体の汚染源が浄化源になり、2010年の異常な猛暑でも外濠全体がEM発酵槽化され、群体の神田川超流回数が少なくなった。また、窒素やリンが抑制されたことで飯田橋の排水口では、群体が見られたが神田川や日本橋川でのアオコ・群体の増殖は減少した。


11/2/2010市谷濠西角ヘドロが減少

雨水と湧き水の流れが見える

西角は砂が見えるようになる

砂の上に下りて、東側を撮影、カモ飛来

3/13/2012市谷濠西角 底の粘土層が見える

ヒキガエルが産卵に来ている


 外濠から神田川への排水口は、ヘドロとアオコの群体が堆積し悪臭を発していたが2010年には悪臭がなくなり、底には小石や砂が見えるようになってきた。また、コンクリート護岸もきれいになり、大きなコイやカメが多く、5月になると小魚の大群やコサギが良く見られる。


3/10/2012干潮時外濠から神田川への排水口

3/12/2012干潮〜満潮時の排水口


 外濠は、雨になると市谷濠に神田川より生汚泥が流入するため、ゴミと悪臭が絶えなかったが、EM活性液の継続投入によりヘドロが激減している。下流の牛込濠では、桟橋付近で底が見えるようになる。さらに、雨後の水質改善効果が高まり、短時間で悪臭や透明度が改善されるようになってきた。


 また、外濠がEMの巨大な発酵槽となり、神田川への排水口や日本橋川の護岸・高水堤が綺麗になり、底質にはゴカイ、ミミズ、貝、アオノリが発生し、小魚の群れやサギ、カモが見られる。また、東京湾の浄化も進み、潮の干満で各河川の河口は浄化された海水が流入し、水質、透明度が高まり小魚や鳥類が多く生物の多様化が進んでいる。


《参考写真》市谷濠へのEM大量投入前の状況

10/3/2006 市谷濠 西角

10/14/2008 市谷濠 西角 アオコの群体

10/20/2009 市谷濠 西角 汚泥やスカムの流入と浮上で悪臭がする



日本橋川へのサケの放流
 3/10/2012 雪のち小雨 中潮 干潮 12:16 満潮18:28
 前日からの雨で飯田橋周辺は、ゴミとスカムが浮き水の色は灰緑色であったが、日本橋付近は、EM資材の5年間の継続投入効果で下水・生汚泥の改善が促進され、透明度も比較的よく、臭気もほとんど感じられない状況の中で5〜10cmほどに久慈川の水で育てられたサケの稚魚が船着場から子供達の手で放流された。(本件は昨年のことで2013年の2月には25,000匹のサケの稚魚が放流された。この行事はこれからも続ける予定である。)


3/10/2012 16時30分 日本橋船着場からサケの稚魚を放流


長時間の輸送で疲れた稚魚

日本橋川の水にならす試験

訓化試験:日本橋川の水に元気な稚魚を入れ観察、特に異常な現象はなかった。


弱った稚魚:EM活性液3滴添加 30分後 左:川の水、右:EM添加で泳ぎだす



3/13/2012 カワニナの放流
江戸川区『一之江ひだまり公園の池』でホタルを飛ばしたいとの希望があり、茨城県鉾田市のホタル発生地より分けていただいた、ホタルの幼虫がいる可能性があるカワニナ1000匹ほどをEM活性液にてEM化した池に放流した。(1ヶ月おきに20L投入×3回)。

 この池では、公園地下の雨水貯留槽の水を循環しており、ヒキガエルの卵やクロメダカが見られ、夏には、ヨシ、ガマ、セリやザリガニ、トンボなどの発生・生育が見られる。


 第三係の今泉さん立会いの下で恒川さん、岩井さんにて放流された。

 お子さん連れのお母さんたちにEMの働きとホタルが見られる環境づくりの説明を行い、夏に近所の皆さんとホタルの観察をして頂けるようにお願いした。近くでホタルが見えたらうれしいね!と子供達に話していた。


一之江ひだまり公園の池

EM活性液 20L投入(3回目)

稚貝〜18mmに育ったカワニナ

水路と池全体にカワニナを放す

水路や池全体に植物と土壌、金網フェンスがあり、ホタルの発生可能


3/29/2012 恒川さん、EM活性液1トン調整後、カワニナの生育状況を確認した




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