第7回 革新的なエクアドルのEMのエビの養殖とバナナ栽培



 前回は中南米のEMの普及の中核となっているアース大学を紹介しましたが第5回で述べたペルーのようにエクアドルでもアース大学の卒業生会の活躍は目を見張るものがあります。


 エクアドルでもいろいろな形でEMが活用されていますが特筆すべきは大規模なエビ養殖への応用と日本向けに栽培されているEMバナナといえます。


 太平洋に面するエクアドルのグワヤキル市の沿岸には巨大なマングローブの林が広がり、その面積は数百万haもあり、世界最大といわれています。マングローブの林を切り開いてエビ養殖を大々的に行ったタイ国を中心とするアジアの国では時間の経過とともにホワイトスポットウイルスやエローヘッドウイルスが蔓延し、多量の抗生物質を使うようになりました。薬剤で病害対策が不可能になると新しくマングローブの林を切り開いて、元の養殖場は放置する為広大なマングローブの林が破壊されるというジレンマに陥ってしまいました。


 その上、抗生物質に対する耐性菌の問題が明確になるにつれてEUや米国などの先進国の大半は抗生物質を使ったエビの輸入を禁止したり、抗生物質の使用量を厳しく制限するようになりました。


 エクアドルを新天地としてエビ養殖を始めたのは東南アジアで行き詰った養殖業者でしたが10年もたたずして同じ結果になってしまいました。4〜5万人もいたエビ関係者の大半が失業し、収量も10分の1程度に減少し、更にエビの価格の下落が追い討ちをかけた最悪の状態となってしまったのです。


 EMを活用し抗生物質等を使わないエビ養殖は、1990年代の後半にはタイ、インドネシア、インド等で小規模ながら広がっていましたが、当時は薬品に対する法的制限もなく、専門家のEMの知識も十分ではありませんでした。EMは本シリーズの第3、4回で述べたようにきわめて強い抗ウイルス作用と有害な微生物の繁殖条件を抑制する力があります。


 またヘドロ等はEMで発酵分解され動植物プランクトンのエサになるため水質の浄化とともに魚介類も増え、生態系も急速に豊かになります。ヘドロの量と病気の発生レベルは常にリンクしていますので養殖場でのヘドロ対策は最重要課題となっています。


 そのためエビの出荷後にヘドロを取り除き底質を乾燥させ砂を敷いたり、土壌消毒の要領で塩素剤で徹底して殺菌する方法がとられています。抗生物質や土壌消毒剤に対する耐性菌はいまや世界中に広がっており、当初のように連続的に効率よく養殖池を使うことが出来なくなっています。


 アース大学のセミナーでEMによるタイのエビ養殖の成功事例を確認したエクアドルのアース大学の卒業生会では農業や環境分野の外にエビ養殖におけるホワイトスポットウイルス対策に挑戦したのです。


 当初はなかなか信じてもらえず、小規模の池から試験的にスタートしましたが今では数万haにも広がり失業していた大半の人々が職場復帰できるような成果を上げています。


EM散布の様子。
:EM散布の様子。

 方法は極めて簡単で、出荷後に池を乾燥させる間にヘドロの全層にEMが浸透するように数回散布し、エサの一部をEMで発酵させ数パーセント混和し与え、後は月に2回水量の1万分の1程度のEMを投入するだけです。


 EMは活性化して使いますので原液を1000〜10000倍に増やすことも容易ですのでシステムさえしかり組めばコストは従来の10分の1〜30分の1となってしまいます。エクアドルにおけるシステム的なEMを活用した大規模なエビ養殖の成功はこれまで放置された養殖池の再利用問題を解決した為、従来のように新しくマングローブ林を切り開いてエビ養殖場を作る必要もなくなってしまいました。


 マングローブ森の保護は世界的な課題となっていますがEMの活用により確実な成果を上げつつあります。



日本に輸出し始めたEMバナナ

 アース大学の卒業生会の活動と連動してエクアドルのバナナのプランテーションにもEMが入るようになりました。その情報をいち早く活用したのが日本からマニラアサ栽培のためにエクアドルへ移住した田辺さんです。数年前に田辺農園を訪ねたことがありますが全園にEMが自動的に施用できるようにスプリンクラー等を設置していました。


バナナ園。
:バナナ園。

 私は、もともとは熱帯果樹の専門家です。田辺農園のEMバナナはこの私をして絶句と言わせるほどのすばらしいバナナになっていました。当時は200haでしたが田辺さんの筆舌に値する努力でEMバナナが日本へ輸入できるようになりました。最近の情報では田辺さん同様にマニラアサ栽培で移住した日系の方々もバナナの栽培面積を増やし、EM化し、今では田辺さんを中心に1000ha以上のEMバナナグループに発展しているとのことです。


 ブラジルやアルゼンチン、ペルーなど多くの国々の日系の人々がEMを活用し、EM普及の先導的な役割を果たし、日本人の心意気を示していますが田辺グループは、その代表的な事例といえます。


 バナナの栄養価のバランスや機能性については改めて述べるまでもありませんが最大の欠点は農薬が想像を絶するくらいに多量に使われていることが欠点です。EMを活用すると農薬を今の5〜10分の1以下、アース大学のように時間をかければ完全無農薬にすることも可能です。


 エクアドルのEMバナナはバナナアレルギー(農薬)の人でも全く反応しませんので安心ですし、食の内容を更に高める為のニューフェースともいえるものです。



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