第65回 福島におけるEMによる放射能汚染対策に関するフォーラム(4)



 前回までは福島や栃木における現場の実績について紹介を行ったが今回はチェルノブイリ原発事故の風下で大々的に被災した、ベラルーシの国立放射線生物学研究所の研究成果である。発表者はアレキサンダー・ニキティン博士である。


EMが土壌に含まれる放射性セシウムの植物への移行を抑制する作用の研究

ベラルーシ共和国 国立放射線生物学研究所 アレクサンダー・ニキティン氏
:ベラルーシ共和国 国立放射線生物学研究所
アレクサンダー・ニキティン氏

 「まず最初に、昨年の東日本大震災で被災された日本国および日本の皆さまに、心より哀悼の意を表します。

 原発事故ではまず、放射性ヨウ素やセシウム等の放射性元素が大量に放出されました。放射性セシウムより放射性ヨウ素の方が体に強い影響を与えますが、放射性ヨウ素の半減期は短いため、福島における現在の放射線の状況は、主にセシウム137と134に由来するものです。放射性セシウムによる土壌の高濃度の汚染は安全な農作物の生産を、非常に難しくします。

 ベラルーシもチェルノブイリ原発事故の後、同じ状況に直面しました。今までの研究で、表土の剥離や、カリウム肥料の施用、石灰による酸性土壌の中性化、水環境の最適化等により作物への放射性セシウムの移行が抑制されることがわかってきましたが、このセシウム移行抑制の手段として、微生物を使うという研究は、まだまだ乏しい状況です。

 汚染された土地におけるEM技術の可能性については、比嘉教授の提案により、10年以上前に、私どもの研究所で研究が始まりました。これまでの研究でいろいろな前向きな結果が得られました。しかしセシウムの移行抑制に、EMがどのように影響しているのかについてのメカニズムの研究はまだ十分ではありません。私どもの研究目的はEMが放射性セシウムを含む土壌で、放射性セシウムの植物への移行にどのように影響を与えるのかについて明らかにすることです。ベラルーシと日本の皆さんが一緒に努力すれば、必ずや放射線の問題を克服できると強く信じています。」










 本年、福島県農林水産部からEM発酵堆肥により土壌中の放射性セシウムのコマツナへの移行が抑制されたという試験結果が報告されたが、移行抑制メ カニズムとしてはEM発酵堆肥に含まれる可溶性カリウムの効果であると考察されていた。しかしながら、今回紹介したベラルーシでの研究成果では、EMの効 果は可溶性カリウムによるものでなく、EMが放射性セシウムを植物の根が吸収しにくい形に変えていることによるものであることが明らかにされた。


 ベラルーシでの研究において、カリウム肥料の施用では移行抑制が難しい、放射性ストロンチウムについても、EMにより移行が抑制されることが明らかにされ ている。この事実はEMによる放射性セシウムの移行抑制メカニズムは堆肥由来の可溶性カリウムによるものではなく、EMによる抗酸化、非イオン効果による ものであることを示している。



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