第60回 乳牛の内部被曝対策について



 EM飲料による人間の内部被曝対策については2002年にチェルノブイリ原発事故の被災国であるベラルーシの子供達を対象に行ったEM飲料実験の結果、30〜40日で内部被曝を完全に解消し、その後、EM飲料を飲まなくて、汚染された食物を取り続けても、半年〜1年以上も再被曝が起こらず、その結果はかなり長期にわたることを明らかにした。


 この現象の解釈として、当初は、EMの効果の本質である抗酸化作用と非イオン化作用による体外排出促進によるものと判断された。しかし、EM飲料中止後、汚染された地域に戻り、再び汚染された食物を食べるようになっても12ヶ月以上も内部被曝が起こらない現象については、これまでの常識では説明不可能であり、測定も12ヶ月で終了したため、EM飲料の内部被曝抑制効果の持続性の原理についての最終確認は未定のままであった。


 EM飲料を飲まなかった子供達は、汚染地帯に戻ると3〜4ヶ月程度で被曝量が増大し、再被曝が起こっていた点を考慮するとEM飲料を活用した子供達に、1年も再被曝が起こらなかったという事実は、体内元素転換が予測される側面がある。


 もしも、そのような仮説が成立するとなれば、EMを家畜に飲ませ、飼料に添加する方法を基本に、放射能で汚染された牧草を与えても類似の効果が期待できる可能性がある。


 これまで、EMの活用によって、放射性元素の完全なる吸収抑制や放射能汚染有機物の低線量化について、現場における活用事例の成果から、多くの農家が実施するようになったが、畜産については協力相手が見つからず、遅々とした状況にあったが5月から試験を開始した。


 以下はその試験結果の概要である。


EM技術を活用した乳牛の放射性物質体外排出促進試験
  −復興支援プロジェクト−

目的:
放射性セシウムで汚染された牧草を与えている乳牛にEM資材を給与することで、牛乳中に含まれる放射性セシウムが低減するかどうかを調査することでEM技術による放射性物質の体外排出促進効果を検証する。

実施概要: ○実施場所
福島県南相馬市 酪農家牛舎
○対象
自家牧草を給与し牛乳から放射性セシウムが検出されている牛1頭
○実施期間
2012年5月〜 2ヶ月間


写真1



写真2


試験概要:
放射性セシウム62〜65Bq/kg(水分80%換算の値)の自家牧草(イタリアンライグラスとエン麦の混播)を以下の量給餌

・EM給与牛1頭:1日16kg給与
・その他の牛27頭:1日6kg給与

EM給与方法(1日2回に分けて全てエサにかけて使用)
・EMボカシ(EMフィード):100g/日
・EM・1:500ml/日
・EMXGOLD:25ml/日

分析:
原乳2Lを採取してボトルにいれ、(株)同位体研究所に依頼してゲルマニウム半導体検出器にて分析




今後の予定:
@詳細な追試をベラルーシ国立放射線生物学研究所に依頼して実施
A南相馬市酪農家においては、EMの効果や可能性を実感してもらったことから、全面的なEMの導入と経時的な調査を継続実施

 以上の結果を考慮すると以下のような見方が可能である。バルク乳とは全く汚染されていない購入牧草に62〜65Bq/kgの汚染牧草を1日6kg給与している牛27頭の牛乳を混合したもので出荷基準を5ベクレル以下にするために行われている飼料設計であり、その目的は十分に達成されている結果となっている。


 それに対しEM区は、約3倍弱の汚染牧草が与えられており、第4週目の結果を見ると原乳に含まれる放射性セシウムの量はバルク乳平均の3倍弱となり、理論値通りである。


 常識的には、その数値に変化が生じることはないと言えるが、その常識に反し、第8週目にはバルク乳の3.5ベクレルに対しEM区は2.4ベクレルとなり、理解し難い結果となっている。


 第9週と第10週の結果は、バルク乳平均より高いとはいえ、理論値よりもはるかに低くなっており、第10週目には理論値の50%以下となっている。その後の継続的な調査でも、この傾向は続いている。一般に乳の放射性物質は、汗や尿に出て来る放射性物質と類似のメカニズムすなわち、体外への排泄作用によるものと見なされている。


 確かに、EM給与4週までは、その通りであるが、8週目から一転して、その理論に反する結果を示している。第8週目の2.4ベクレルについては分析過程での何らかのエラーも考えられるが、9週と10週は信頼できる数値である。この結果の意味することは、すでに述べた体内元素転換を予測させるものであるが、本件については、今後の検討課題である。いずれにせよ、牛乳の放射性物質を5ベクレル以下を目標とすれば、これまで使用していた自家牧草を3倍弱も使えることは、農家にとっては大きな朗報であり、実施農家は、すでにEM活用に積極的となっている。


 EMは、畜産用のA飼料として国の認可を受けており、畜産のあらゆる分野に活用されている微生物資材である。すでに、宮崎や韓国で、その実績が明らかとなった口蹄疫はもとより、トリインフルエンザを含むウイルス疾患には決定的な予防効果を発揮する。同時に乳房炎の予防や治療、飼料効果の向上(10%〜15%)消化系を含めた各種疾病予防はもとより、乳質や肉質の向上にも顕著な効果が認められている。


 その上、畜舎の悪臭対策はもとより、ハエやカやダニの発生を完全に抑制することも可能である。更に重要なことは、EMで飼育された家畜の糞尿は極めて良質な有機肥料となる。EMの密度の高いEM発酵堆肥の放射性物質の作物への吸収抑制効果はすでに福島県も認めており、本DND第57回でも明らかなように、EMを処理された有機物の放射性セシウムの減少効果と併せて考えると、EMを活用した畜産との連動による福島県における農業の未来像が確たるものになり始めていると言っても過言ではない。



記事一覧へ