第51回 EM技術による大震災廃棄物の処理
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本来なら瓦礫の処理と書くべきかも知れないが大震災で発生した正真正銘の瓦礫は、わずかなもので、単なる瓦礫であれば道路の路盤や陥没地の埋め立てなど、活用も容易である。現在、困り果てているのは、瓦礫以外の大震災廃棄物である。
何故困り果てているのかといえば、その廃棄物の中には多量のプラスチック、化学物質、アスベスト等を含み、同時に様々な有機廃棄物が混在し、腐敗しているからである。このような廃棄物を野焼き状に焼却すると、大量のダイオキシンやその他の有害な化学物質が発生し、残った焼却灰にもダイオキシン等々も含まれるからである。
そのためには、ダイオキシンが全く発生しない溶融炉または、高温焼却炉で焼却する必要があり、その数は限られている。その上、焼却炉の寿命は焼却した絶対量と使用年数によって決まり、その焼却灰の処理も埋め立てや路盤への利用等、システム的に対応する必要がある。
ある意味では、この問題も放射能除染対策と同根のものを持っている。すなわちダイオキシンは、放射性物質に勝るとも劣らない、やっかいな有害化学物質であり、過去に放出されたダイオキシン問題は、今だ解決されていない状況のままである。
各自治体が、大震災の廃棄物の処理に二の足を踏むのは、このような背景の外に、その廃棄物に放射性物質が含まれており、その対応に苦慮しているからである。東京都のように埋立地がいくらでもあり、地域に住民がいない場所を持っている自治体は例外的存在である。
- 大震災廃棄物の自然発火、悪臭、アスベスト、放射能対策 -
見通しの立たない大量の大震災廃棄物を放置すると、悪臭はもとより、メタン等の発生が原因となる自然発火が多発する。いずれも、腐敗のプロセスで大量の還元物質(メタン、硫化水素、アンモニア等々)が発生し、アルカリ化するためである。
このような状態にEMを散布すると、EMに含まれる有機酸がアルカリを中和するため、瞬時に悪臭が消えるが、そのレベルは酢や木酢液を散布する臭気対策と同じものである。この場合、中和以上の還元物質が発生した場合は、お手上げで、一般の消臭剤と同じように、くり返し散布する必要がある。
EMの場合の臭気対策は、初段階の中和に引き続いて、第2段階では、光合成細菌が働く仕組みになっている。これまでも、本シリーズで、すでに述べたように、光合成細菌はメタンやアンモニア、硫化水素などの悪臭の原因となっている還元物質の水素を切り離し、光合成の水素源として活用する力を持っている。同時に、その悪臭物質を、酵母や乳酸菌と連動して、アルコールやアミノ酸、低分子のタンパク質等を合成する機能も有している。
EMを散布すると、悪臭の抑制には、極めて即効的であると同時に、その後の悪臭が全く発生しないのは、EM1号のPHが3.5以下で保持され、光合成細菌と乳酸菌と酵母等との共生関係が連動している為である。その結果として、自然発火も完全に防止することも可能となる。
また、大震災の廃棄物には、古い建築物が多いため、かなりの量のアスベストが含まれている。そのため、廃棄物が乾燥するとアスベストは微粉塵となって、空中に飛散し、様々な健康被害の原因物質となる。本DND第42回でもEMによるアスベストを含む微粉塵対策について、すでに述べたが、今後の大量の震災廃棄物の処理において、この問題は特に留意する必要がある。
また、東京電力福島第一原子力発電所の事故は、今でも、連続的に放射性物質を発生し続けており、微量とはいえ、すでに全世界を駆け巡っている。その間に、稲ワラは、もとより、牧草地や震災廃棄物にも、かなりの量の放射性物質(主としてセシウム137)が集積し、当初の予想を超えるものとなっている。
震災廃棄物の協力に二の足を踏んでいる自治体も、この放射能対策もネックとなっている。それらの問題については、これまで何回も本シリーズで述べてきたように、EMを臭気が無くなるレベルまたは、放射能が基準値以下になるように散布するだけで、すべて解決するものである。
- EM技術によるダイオキシン対策 -
EMには、一般に、まだ知られていない多様な機能性がある。放射能が減少するのは、その最たるものであるが、低温完全燃焼も、その一例である。プラスチックや紙、塩分を含む生ごみ等々を800℃以上の高温で焼却すると完全燃焼となり、ダイオキシン等の有害化学物質の発生は完全に抑えることが可能である。EMを処理すれば500℃以下でも完全燃焼となる
溶融炉でなく、一般の焼却炉では、800℃以上にすると使用されている耐熱性のレンガの劣化が早くなり、結果的に焼却炉の寿命がかなり短くなってくる。そのため、最終的に極めて高価な製鉄所並の溶融炉を作らざるを得ず、溶融炉はいつの間にか、ごみ焼却場の主役となっている。と同時に、ダイオキシンの問題が原因で勝手にごみを燃やすことは、法的に規制され、ごみは、すべて政府の認めた焼却炉で燃やすことが義務付けられている。
今回の、大震災廃棄物の処理の難しさは、焼却処分を前提にしており、しかも、その焼却炉の数と能力が限られており、更に被災地から、かなり遠隔の地に存在していることである。この問題の解決は、現地でダイオキシンを発生させない安価なEM焼却炉を多数作り、その焼却灰も現地で活用するという以外に方法はないということになる。
1990年代、ダイオキシン問題の解決のため、EMの様々な活用法が試みられた。その一つが、焼却灰に含まれるダイオキシンの分解である。焼却灰に米ヌカ等の有機物を混和し、EMを散布する方法である。今でも、この方法はかつて、ダイオキシンを含む焼却灰が放棄された場所のダイオキシン対策に使われている。
もう一方の方法は、EMの低温完全燃焼機能の活用である。この方法は、極めて簡単で焼却するごみにEMとEMセラミックスパウダーを散布すると同時に、炉内の耐熱レンガにEMセラミックス等を活用するだけである。完全燃焼の確認は素人でも判断できる簡単な方法がある。すなわち燃やすごみにEMとEMセラミックスパウダーを散布し、乾燥させた後に燃やしてみると、煙は全く出ず、焼却灰が極端に少なくなることである。
EMとEMセラミックスパウダーを混和したコンクリートで簡単な焼却炉を作り、その焼却炉でEMとEMセラミックスパウダーを散布し乾燥させた後に、ごみを燃やすと、ダイオキシンは全く発生しないか発生しても、すべて法令の規制値以下となる。この方法の応用は、沖縄県の旧具志川市、埼玉県の和光市の焼却炉で実証され、地方の、すでに耐用年数をはるかに過ぎた焼却炉でも応用され続けている。
放射能同様、ダイオキシンも実験すれば、すぐわかることである。早急に大震災廃棄物を処理したい場合、先ず木材部分を分別し、堆肥、その他に再利用できるものは資源リサイクルとする。チョッパーにかけた後に、EMを散布し、フレコンに入れ、積んでおくだけである。時間とともに良質の堆肥となるが、オガ養豚や畜産の敷料としても良質のものとなる。
プラスチックが混在している木材は、EMとEMセラミックスパウダーを混和し、表面が濡れる程度に散布した後に、乾いた時点で野焼きとする。このような方法を行なえば、大震災で発生した大量の廃棄物は、またたく間に処理が可能となる。
極端なことを言えば、大震災廃棄物の山にEMとEMセラミックスパウダーを十分に散布し、そのまま野焼きにしてもダイオキシンは発生せず、焼却灰も著しく少なくなり、その焼却灰には有害物質は全く含まれない状況となる。この焼却灰は埋め立て用はもとより、土壌改良資材としても機能性を発揮するようになる。
現今では、ダイオキシンの分析は比較的容易であり、検証するのに多額の経費がかかるものではない。関係者の英断を期待したい。
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