第47回 宮城県におけるEMによる除塩対策の成果


→english


 本DND第39回と第41回と第43回で、津波の海水やヘドロ等で汚染された水田の除塩や浄化について述べたが、諸々の事情が重なり、実行できたのは、限られた範囲である。それでも、JA宮城やJA石巻では、EMの除塩および汚染対策に注目し、NPO法人地球環境共生ネットワーク(U-ネット)が協力して行っている試験に着目し、積極的な協力を行っている。


 この背景には、農水省や専門家の予測では、3〜4年間は作物を作ることは困難という見解であり、また、ヘドロの除去や除塩に多大なコストがかかるのに対し、EMを活用すれば、特に大がかりなヘドロの除去や除塩をすることなく、普通通りに田植えが出来るという、私の提案とのギャップがある。


 EMで、そんなに簡単に除塩やヘドロ対策が出来るのであれば、その方がいいし、U-ネットがボランティアで協力してもらえるのであれば、という考え方は、もとより、この非常時、可能なことは何でも実行し、将来の展望につなげたいという気持ちもあり、JA宮城やJA石巻もu-ネットの提案を受け入れたのである。


 1件は、仙台市、宮城野区の農家で、震災直後に津波やヘドロで汚染された水田をEMで浄化し、作付けしたいと質問を寄せた鈴木有機農園である。もともと、EMを活用し、その成果は、モデル的なものであり、水田に水さえ来れば、対策は容易と思われたが、国や県の指導で、水田への水の供給が全面的に禁止になり、田植えが出来ない状況となっていた。


 それでも、鈴木さんは、300m以上も離れた、近くの小川から水を引いて、田植えをしたいとして準備を始めたが、小川の水も、かなり汚染されており、また、水量にも不安があったため、U-ネットと共同研究という形で、当方で本格的な井戸を掘り、田植えを実行したのである。その面積は1.5ha余、除塩やヘドロの汚染対策試験としては十分な面積である。


 鈴木さんの質問に対する私の答は、EM資材を投入し、代かきした後に、排水せずに、1〜2週間おいて、臭気がなくなったら、そのまま田植えをするということであった。しかし、鈴木さんは、万全を期すため、2回も代かきを行い、排水をくり返していたため、その後の生育は、予想以上のものとなっている。


 鈴木さんには、契約してる多数の消費者がある。津波にあって、ひどい状態になっても、消費者との約束を守りたいという、プロの有機農業農家の信念であり、絶対に失敗は出来ないという立場で2回代かきを行ったのである。



 それに対し、JA石巻では、私の提案通り、EMを投入し、そのまま田植えを行ったのである。この乱暴なやり方に、一緒に立ち会った鈴木さんも「これで本当に大丈夫か」と不安にかられたとの事である。当初はイネミズゾウムシの発生も見られたが、すぐにEMを散布したため、その被害はおさまり、河北新報(7月9日)の記事のように、望ましい成果となっている。


 まだ中間段階であるが、EMを活用することによって、水田が浄化され臭気もなくなり、ヘドロは分解され、地力となり、同時に水田の生態系が甦っている。EMを活用していない、他の水田も、これまで、私が主張してきたように、「日本は雨が多く、梅雨で自然に除塩されるため、すぐに田植えすべき」という当方の提案の正しさを裏付けるものである。要は、EMを使ってない水田は、臭気が十分にとれていないため、秋落ち(土壌中にメタンや硫化水素等の有害物質が発生し、秋に入ると生育が急激に落ち込む現象)となる心配がある。今からでも10a当り、EM活性液を50L〜100L程度追加すれば、この問題も容易に解決することが可能であり、8月中に施用できれば並年作は可能である。


 臭気の残っている水田は、まずい米となることは、水田農家なら誰でも知っていることである。秋落ちの予防と同時に、おいしい米の収穫を望むなら、これからでも、EMを施用すべきである。そのことは、今年の対策のみならず、来年度にむけて、更によい成果とつながるからである。


 河北新報の記事に出ている千葉さんの「津波を機に殺虫剤や化学肥料を使わずEM菌で発酵させた、ぼかしを使った有機米作りに挑戦し、反転攻勢に出たい」という談話は、これからの石巻の稲作の未来像であり、被災した水田農家の大きな励みになるものである。JA石巻が、この成果を広く活用することを期待するものである。



記事一覧へ