第37回 韓国の口蹄疫に対するEMの活用


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 前回の冒頭でトリインフルエンザや人インフルエンザ予防に対するEMの活用について述べたが、深刻化している韓国の口蹄疫についても言及した。12月の時点での殺処分は40万頭程度であったが、1月には190万頭を超える勢いである。特に1月の16日は1日で21万2274頭が埋却処分されたとのことである。一般的には、殺処分をして、その後に埋却するが、韓国の場合は、あまりにも数が多いため、殺処分が間に合わず、生きたまま埋却しているとのことである。


 1998〜2000年にかけ英国ではBSEと口蹄疫が同時に広がり、処分された牛は500万頭余ににぼり、軍隊が出動し、大々的な焼却処分を行なったが、農村地帯は石油まじりの焼肉の臭いに覆われていた。当時、私はチャールズ皇太子が名誉学長である世界で最も歴史の古い、王立農業大学で行なわれたEMセミナーで、BSEと口蹄疫対策はEMの活用で可能であると述べたが、誰にも信じてもらえない状況にあった。王立農業大学は、主として有機農業農家の人材育成に当たっているが、今でも、EMの研究を行なっており、近い将来、イギリスのEM普及拠点となる可能性が見え始めている。


 昨年の、宮崎県におけるEMによる口蹄疫の感染拡大防止の成果は、韓国のEM関係者にも正式に伝えられたが、大半が半信半疑であり、年末から年始にかけ数件の問い合わせがあり、あわてて、EMを使い始めている。私は、3年前までは、毎年1回韓国で行なわれたEMの普及会議や講演会で、畜産公害の対策や有機農業の推進のために畜産で、EMを使うべきであることを強調し、同時に、EMは口蹄疫やトリインフルエンザ対策にも有効であると述べたが、公的には、全く信用してもらえない話として受け取られていた。


 今でも、日本においても、EMによるトリインフルエンザや口蹄疫の対策は、公的に認められておらず、畜産農家の自己責任として行なわれているに過ぎず、専門家の殆んどが、宮崎におけるEMの効果を信じていない、といっても過言ではない。韓国では、過去にH5N1型の強毒のトリインフルエンザ対策にEMを活用し、顕著な成果を上げた例もあるが、一顧だにされなかった事がある。ことのいきさつは、4〜5年前、韓国からH5N1型が流行し、一部感染しているアヒル農家があるが、EMで対策が可能かという問い合わせがあった。私は過去の事例から、可能であると答えたため次の日からEMを使い始め、大半のアヒルは元気になった。そのため、農家は役所の処分命令に実力で抗し、処分をまぬがれたとのことである。


 このような背景から、EMの様々な効果を認めた韓国の畜産農家の中には、EMを飼育管理に使っている例も多く、今回の壊滅的な口蹄疫の感染拡大に対しても、以下に紹介するように驚異的な成果を上げている。


以下はハンギョレ・サラバンの2011年1月19日のインターネットの日本語版ブログである。その他、韓国の複数のブログでもEMの効果を報じたものもある。


ハンギョレ・サランバン


2011年01月19日

[現場から] 「鼻の先まで迫った口蹄疫、有用微生物(EM)で防ぎましたよ」


京畿道漣川郡の農家の予防法 目を引く

自分で消毒もワクチン接種も

発酵液を分けて使った農家も無事


 慶北安東発の口蹄疫が17日で発生50日目に入り、相変らず鎮静の兆しが見られない中で、口蹄疫が近隣にまで迫ったのに韓牛150頭が感染していない京畿道漣川郡のある畜産農家の口蹄疫予防・遮断方法が関心を引いている。

 非武装地帯(DMZ)と隣接する漣川郡百鶴面チョンドン里の農民ミョン・イング(58)氏は「有用微生物(EM)」を飼料に混ぜて牛に食べさせ水に溶かして畜舎周辺に撒くことで一日を始め、一日を終えるそうだ。 14日午後、ミョン氏が噴霧器を背負い畜舎運動場でEMを溶かした水を撒き始めると、日向ぼっこをしていた牛が一頭二頭と集まってきた。 母牛も小牛もみんな頭を突き合わせて押し合いながら、小雨のようなEM発酵液でしっとりと体を湿らせた。長い舌を出して鼻に付いた発酵液をなめる牛もいた。



 ミョン氏の農場は昨年12月15日、京畿北部地域で初めて口蹄疫が広がった漣川郡百鶴面老谷里と連接した村にあり、彼の農場から200m先の農場まで口蹄疫が広がった「危険地域」に入っている。しかも今回の口蹄疫が初めて発生した慶北安東地域に行ってきた畜産糞尿処理業者の職員がミョン氏の農場にも寄ったため、一時は殺処分の危機に瀕した。「防疫当局から四回も調査に来ましたけど自信がありました。 どの牛でも選んで血液を採取して検査してみて下さいと言いました」 そうしてかろうじて殺処分危機を乗り越えた。ミョン氏は彼の農場がまだ口蹄疫感染を免れている理由として「EMを活用した牛の健康管理」を先ず挙げた。


 彼がEMに関心を持つようになったのは、4年前に牛2頭をプルセラで失ってからだ。 300万ウォンで買ったEM生産機械に原菌3リットル(約1万2000ウォン)、砂糖10s(1万5000ウォン)、クエン酸8s(1万6000ウォン)を混ぜて入れれば5日後にはEM発酵液160リットルが生産される。 この分量で牛150頭に10日間ほど使う。 ミョン氏は楊州・坡州の農家6ヶ所にも無料で分けているが、それらの農家も今回の「口蹄疫の津波」を現在までは免れている。


 40年間一筋に牛を育ててきたというミョン氏は、政府の防疫対策に頼ってばかりはいないと語った。消毒薬を買い農場進入路に撒き、先月26日には予防ワクチン接種も自ら行った。 7万余uの野に放たれているミョン氏の牛は零下の酷寒でも元気に育っているようだった。


 一方、口蹄疫で埋没処分された家畜が16日一日だけで21万2274頭も増え、今回の口蹄疫事態で埋没対象の家畜は豚174万頭余りなど188万頭余りに達した。被害農家も4053世帯に増えた。

鳥インフルエンザ(AI)も16日京畿道利川市、雪星面の種鶏農場でまた発生した。

漣川/文・写真パク・ギョンマン記者 mania@hani.co.kr

原文: http://www.hani.co.kr/arti/society/area/459003.html 訳J.S


 この記事は、英語版ですでに全世界に発信されており、宮崎におけるEMの口蹄疫対策の成果を裏付けるものである。世界の畜産業を脅かしている口蹄疫やトリインフルエンザもEMの活用によって、近い将来、天然痘のように過去の病気になる可能性があり、時間の問題といえる。しかも、天然痘のように膨大な予算を使うこともなく、農家に負担をかけることもない。EMを活用した安全で快適、低コストで高品質で持続可能な畜産と、それに連動する有機農業の発展は本連載のタイトル「甦れ!食と健康と地球環境」の意図に叶うものである。



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