第3回 EMを医療に活用しているタイ国の現状



 前回は家庭内でのEMの活用による病気予防の方法について簡単に説明しましたが、EMは、医療・健康問題を根本から解決する力があります。その力の基本的な作用はEMが産生する多様な抗酸化物質と生理活性物質によるものですが、EMの中の光合成細菌のレベルが高くなると非イオン化作用と同時に放射能や紫外線などの有害なエネルギーを無害化したり、有用なエネルギー(励気エネルギー)に転換する現象が認められてます。すなわちEMのキーワードは抗酸化、非イオン、エネルギー転換ということになります。


 キーワードの個々の作用については機会を改めて詳しく説明したいと思いますが、EMの効果が現れる場合はキーワードの三つの作用が臨界点に達した時点で明確となります。 一口に農業生産や環境や健康と言っても、そのバックグラウンドは各々異なっており、一律に数量や時間を決めてやる従来の方法でEMを活用すると、その真価を発揮することはできません。


 EMは生き物であり、その密度が高まるような使い方をすれば、やがて臨界点に達し劇的な効果発揮するというプロセスをたどります。すなわち、「効果が出るまで使い続ける」ことがEM活用の極意となります。 そのために安く大量に増やす方法を公開しており、タイ国をはじめ多くの国々で多大な成果を上げています。


 タイ国へのEMの導入は1986年に始まりましたが本格的な普及は1989年にコンケン大学で行われたEMの国際会議後のことです。 当初は農業と環境分野の活用から始まりましたが、エイズの発症予防や消化系の疾患に顕著な効果があることが明らかになるにつれ、民間の病気の予防や治療法としても活用されるようになりました。


 その効果に驚いた厚生省の関係者は医療関係者からなるEMの活用検討会や研究会を自主的に発足させ、私の訪タイに合わせEMの安全性や効果のメカニズムについて意見を交換し、様々な実証を行いました。


 その結果、「EMは臨界点に達すると必ず効果が出る」「大腸菌や有害微生物の活動を抑制し、塩素消毒や高熱殺菌と同等以上の効果がある」「副作用はまったくない」「二次汚染は全くなく、EM活用を続けると院内感染はもとより衛生問題も同時に解決する」等々の結果が明らかとなり、病院関係者がEMを積極的に使うようになり、国もそのことを容認したのです。


 この背景にはタイ国の医療制度の破綻という非常時と合致し、他の国ではあり得なかった大きな状況の変化と重なっています。すなわち、エイズ対策による医療費の限界と1997年にタイ国を直撃したアジア通貨危機に起因しています。この対応に国王は金融経済に左右されない自給自足的な「足るを知る経済」を生活化すると同時に命は平等であり、あらゆる人々が安心して病院に行けるように公的な病院はすべて無料化すべきという指導を行いました。


 当初は1回30バーツ(90円)を徴収していましたがすぐに3バーツ(9円)となり4〜5年前から患者負担はゼロとなっています。病院では当初の予算が決まっておりその範囲で住民の健康を守るということになっており、高額の治療は私立病院での自己負担となっています。端的に言えば、病人が来ない病院ほど経営が良くなるという仕組みになっています。


 そのため病院は予防医学に力をいれ、人々の衛生や健康管理を自己責原則に基いた指導を行っています。具体的には患者が病院に来ると病気の種類を問わず病院で作ったEM薬草飲料を飲ませます。手術の消毒や手術器具の消毒をはじめ、病院の衛生管理はすべてEMで行っています。食事もEMを添加して作り、洗濯やシャワーなどあらゆる場面でEMを徹底して使っています。地方の病院では病院の生ごみや廃水をEMで処理し、野菜栽培にも活用しています。


 入院中の患者や来院者にはEMの増やし方やEM薬草飲料の作り方トイレや水処理、生ごみ等のEMによる衛生対策と自給野菜の作り方を指導し住民が健康で病気にならず、経済的にも潤うという生活指導を着実に行っています。


 当初はチャイナート県立のワツトシン病院がモデルになりましたが、今ではその成果は地方の県立病院へかなり広がっており、自己責任を前提とした予防医学が着実な成果を上げており、鳥インフルエンザ対策にも応用の可能性が確認されています。



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