第22回 食と健康、環境を守る農業の未来像(2)



 前回は、食の安全性は食を生産する人の常識であり、義務であり、それをふまえた食の機能性が重要であり、農の本質を正しく評価する必要性を強調した。とは言え農業も経済行為であり、経済性が成立しなければ衰退する一方であり、その根本的な対策は農業に産業としての付加価値をつけ、その派生的な社会的貢献度も対価として評価して農業の未来を切り開く必要がある。


 農林水産省生産局農業環境対策課から出された平成22年度予算概算決定の概要は主として次の三点となっている。1、農業生産における地球温暖化対策の推進 2、有機農業の推進 3、環境保全型農業の推進となっている。かつての、化学肥料、農業、大型機械による環境破壊型農業から環境保全型農業への歴史的な大転換を推進しつつあり、食の安全性や地球温暖化に対する積極的な姿勢は、それなりに高く評価すべきものである。と同時に、従来の技術では、これが限界かと思われる部分も多く、EM技術を活用するとそれらの限界をことごとく突破することも可能である。


 先ずは、「農業生産における地球温暖化対策」についてである。日本の農地の大半を占める水田に関し、地球温暖化を加速する要因は大型機械を中心にする燃料と、化学肥料や農業に使われる石油由来のエネルギー、水田から派生するメタンガスである。


 EM技術を活用するとイナワラを水田に戻すだけで化学肥料や農薬を使用した従来法よりも増収することが可能であり、メタンガスの発生は、ほぼ完全に抑制することも可能である。


 群馬県伊勢崎市で水田約5haにEMを活用し、米麦二毛作を行っている兼業農家がある。10a当り年間500〜1000LのEM活性液を5〜10回に分けて水口から流入させ、イナワラやムギワラを全量水田に戻す単純な方法である。農薬や化学肥料を全く使用せず、深耕せず表層代騒を数回ていねいに行うだけで除草剤を全く使用せず、米は10俵、麦は6俵の成果を上げている。


 EMの中心的役割をはたしている光合成細菌を更に活性化すれば米は15〜20俵、麦は10俵にすることも可能であるが、現在の年間10a当り16俵という数値でも食料の自給率という観点からすれば革命的であるが、この技術の温暖化対策は、以下の通り数値化することが可能である。化学肥料農薬にかかわるCO2がゼロ、メタンガス発生の抑制による温暖化対策(一般的な水田から発生するメタンガスを算出しCO2×20〜30として換算)と一酸化二窒素の抑制量(CO2×500として換算)、および農業機械の年間省エネ等は30%以下となる筈である。


 その上に、穀類として固定されたCO2の総量を上乗せすれば膨大なCO2取引枠が生まれることになる。まさかと思われる話ではなく、現にオーストラリアのマカイ市を中心にしたEM栽培のサトウキビは、このような試算を加え、下水や製糖工場の廃棄物を高度に利用し、30〜50%の増収となっており、その増収分がCO2取引枠として認められているのである。


 EM技術がシステム的に整備されれば二毛作でなくても、秋の緑肥栽培で有機質量を増やし、EMで発酵合成型の土壌にすれば、10a当り15〜20俵という数値も困難ではない。同時に、食の安全性の観点から進めている水田のカドミウムの問題も解決するのである。


 したがって、日本のCO2を大量に排出している企業は、海外のCO2取引枠にお金を支払うことなく、国内の農業振興に大きく貢献することになり、農業も産業的に大きな付加価値をつけることになる。


 第2番目の「有機農業の推進」については、コスト的にもあらゆる面で化学肥料や化学合成農薬を使用した結果よりも、はるかに秀でた成果が多数あり、20〜30haの大規模農園においても、その成果が確認されている。この場合は、EMを活用した畜産と連動すると更に効果的である。


 牛のゲップはもとより、畜産の廃棄物から発生するメタン対策は、バイオマスの活用以外は決定的な決め手がないため、その制御は困難とされている。しかしながらEMを家畜の飲料に添加したり、飲水に混和して活用すると悪臭はもとよりメタンガスの発生を抑えることが容易であり、これもCO2取引枠として活用できる可能性がある。


 すでに述べたように水田の大半は外部から肥料を加える必要は殆んどなくなるため畜産の廃棄物をEM処理し畑作でスラリー状で活用すれば堆肥を作る必要がない。


 有機栽培の推進でネックとなっているのは堆肥にかかわるコストである。そのため規模の拡大は困難と思われているがEMを添加し悪臭の発生をおさえた液状の有機肥料の活用はこの問題を根本から解決する力がある。


 また、EMを使って堆肥化する場合でも切り返しは数回で済むため、従来の堆肥を作る労力の5分の1〜10分の1となる。その上、生ごみ等の飼料化や堆肥化も焼却処分よりもかなり安いコストで行えるようになっている。畑作における雑草や病害虫対策も除草剤や化学合成農薬を活用するよりも、はるかに勝れた方法も、すでに確立されており、要はシステム的に実行するのみである。


 第3番目の「環境保全型農業の推進」は、化学肥料を減らし、地域の未利用・低利用資源を肥料として活用することと、カドミウムの低減を目標とする土壌環境復元対策となっている。この項目で納得し難いことは、土壌環境をはじめ、河川の生態系を壊滅的に破壊している除草剤を含む化学合成農薬の低減に対する対応が欠如していることである。


 エコファーマー制度で化学合成農薬の低減は実行済みという感覚では、農業に付加価値をつけることは困難である。


 当然のことながら、EMは自然発生的な、あらゆる有機物を機能性の高い有機肥料にすることが可能であり、下水や生ごみの資源化もお手のものである。カドミウムについても、日本の基準はWHOが示した0.3ppmよりはるかにゆるく、0.5ppmとなっている。何の対策もされないまま、我が国がWHOの基準を受け入れると、かなりの米がその対象となるためにm本格的な取り組みに着手したことは喜ばしい限りであるが、化学肥料や除草剤や化学合成農薬を多用し、水田を乾燥させる現在の技術体系では、構造的にカドミウムの含量が増える仕組みとなっている。


 すなわち、土壌が化学物質で酸性化すると金属として固定されていたカドミウムはたやすく溶けてお米に吸収され、人体に入ることになる。土壌の有機物含量を高めたり、水を張りっぱなしにして還元状態を保てば、カドミウムの溶出を防ぐことが出来るが、このようなことをすると、イモチ病に弱くなり、秋落ちとなり、収量は激減しまずい米となる。


 そのため、現在の稲作は後半から田植直前まで乾田にする技術体系となっており、現実問題としては、EMの活用以外に方法はないといえる。すなわち、イモチ病の発生や秋落ちの間接的な犯人はメタンガスである。EMはメタンを糖分に転換する力があり、抗酸化力や非イオン化力を強化する力があるため、結果的にカドミウムを金属に戻し、吸収させない状態にすることが出来、水田を乾かさなくても、病害虫の発生も少なく多収高品質になる仕組を持っている。


 以上、農水省生産局農業環境対策課の施策に対するEM技術からの見地を述べたが農業に対する総合的な付加価値の付け方については次回に説明したい。



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