第18回 EMできれいで豊な海に甦った三河湾



 第15回〜17回までEMによる日本橋川や神田川および東京都内の外濠の浄化活動とその成果を紹介したが、その後の調査でもEMが撹散する地域は更に広がり、東京港の浄化は着実に進んでいる。それが断言できるようになった背景には、愛知県の三河湾の実績があるからである。

 三河湾は中部国際空港の東北部に隣接し知多半島と渥美半島に抱きかかえられるような形をした閉鎖水域で我が国では最も汚染度の高い湾であった。汚染は極めて深刻な状況となり世界最少のイルカで国際保護動物に指定されているスナメリも姿を消し絶滅したのではないかと危惧されていた。


 平成9年に一色町の環境ボランティアの関係者から、「三河湾を守るために、いろいろな活動を行ってきたが、効果は全く上がらず、年々悪くなっている。このようなひどい状況の広大な三河湾をEMで浄化することができますか」という質問を受けた。私が一色町の海岸の埋立地でEMを使って有機農業を行っているある農園の見学に行った時である。


 私は広々と、しかもかなり汚染が進んでいる三河湾を見ながら「汚染した場所にEMを入れ続ければ自然ときれいになり魚貝類も短期間に大幅に増えるが、最も効果的な方法は汚染源にEMを入れ、EMが増えるような管理を行って浄化源として放流すれば、安定的な効果が得られますよ。」という返事をした。

 相手は半信半疑、本当かという顔をしたが、でも、私の返事を信用してくれたのである。何故ならばEMを使った農場からの排水が流れ出た砂浜はきれいになり、これまで姿を消したと思われたアサリが多量に獲れ始めていたからである。この事実は一色町の漁業関係者も認め、その人々はアサリの漁場にEMを撒くようになり、着実な成果を上げられるようになってきた。平成10年のことである。


 以来、無数のボランティアが様々な形でEMによる水質浄化活動に取り組むことになり、平成14年NPO法人三河湾浄化市民塾が発足し、三河川に流入する多数の水系でEMの投入や水質汚染源の浄化活動が展開された。その結果平成16年には大量のアユが矢作川に遡上し、赤字をかかえていた内水面漁協が2年で黒字になったという成果を得た。


 それらの活動状況は平成17年の愛知万博で1週間にわたって各地の活動報告が行われ大盛況であった。


 以下は、平成17年の愛知万博で発表された成果の一端である

市民塾の報告「よみがえる三河湾(愛知県)」その1 
市民塾の報告「よみがえる三河湾(愛知県)」その2


 平成21年、三河湾の浄化は更に進みスナメリも群をなして回遊するようになった。またこれまで年間7〜8千トン台であったアサリの漁獲高が1万3千トンを越えるようになりダントツの全国一の生産を誇るようになった。アユを含め、三河湾領域の漁業は大幅な成果を上げるようになっている。

 この三河湾の活動は隣の伊勢湾にも波及し、中部国際空港海域もかなりきれいになっている。次年度は伊勢湾にEMダンゴを200万個投入する計画もありEMを活用している伊勢湾や三河湾の河川は当然の如くアユがつれる川に変身しているのである。


 このような成果は国や県の従来の方法では1000億円以上かけても実現することは不可能であるが、EMを汚染源で増やして、浄化源にすれば、実に簡単な話である。幸にして、国土交通省における下水道事業費が地方に運用が任されることになったが、EMを活用すれば、大がかりな施設は不要であり、ボランティアの協力も得られコストは大幅に削減することが可能であることを認識する必要がある。



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