第176回 EMの海外トピックス 2例について



1980年に、様々な偶然が重なり、複合微生物資材としてのEMの実用化の目途が立ち、1982年から実践的普及が始まった。その成果は、1990年に通年シリーズとして現代農業でも紹介され、1991年拙著「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)として出版された。この本は、まだ現役を続けており、戦後の農学書としては最長記録を更新し、累計で15万部を突破という、大ベストセラーでもある。

30年も経過した今日、EMを極められたと思われる人々から、「結論的なことは、すべてこの本に書かれている」とか、「EMを使い続け、時々その本を見ると様々な応用の可能性が見えてきた」等々の反応があり、EMのバイブル的存在となりつつある。

このポイントは、土壌中にある程度の有機物を施用し、EMを使い続けるとEMはもとより、自然界にいる様々な有用な微生物の密度が高まり、最終的には発酵合成型の土壌となるということである。

土壌が発酵合成型になると、生の有機物を施用しても発酵分解が起こり、そのエネルギーは直に作物に利用され、有害菌の密度が低下するため、堆肥を作る必要がなく、同時に、合成型の微生物の働きで、インプットよりもアウトプットが多くなるということである。

EMを安価に誰でも大量に増やせる方法は、すでに公開されており、有機物を表面に敷いて、潅水時にEMを100~500倍くらいに薄めて使い続けるか、EMボカシ(EMで米ヌカや有機物を発酵させたもので、水分がなくてもEMの密度を高めることができる)を施用し続け、効果が出るまで使い続けることである。
※EMを使う量と回数に極めて高い相関があり、初期には多量に施す方が効果が早く安定する。要は使う人のレベル次第である。

効果が出始めると、その後のEMの施用は量子的なEMの重ね効果が現われ、これまでの常識を超える様々な限界突破、すなわち、奇蹟的な多収高品質や、農地の生態系が強化され、気象変動に対する環境保全力も年々強化される仕組みが成立するようになる。

すなわち、世界中の農業がEM化すれば、温暖化や気象変動対策はもとより、人口増大に伴う食糧問題もすべて解決するものである。


先ずはタイ国のゴムの例です。

タイから小正路です。
写真の真ん中の方は、サエムさんで、ゴム園で長くEMを活用されています。
ゴムの木に牛ふんを入れ、EMを散布しています。ゴムの木の病気もありませんし、収量も減ることなく長く取れています。もう21年もEMを活用しています。以前、比嘉先生がウボンラチャタニを訪問したときに、雨水バンクの紹介をしたコウビットさんのご友人です。
EMを使ってから、ゴムの木から出る量が多いこと、木を切ったあとの回復が綺麗であること、病気も全くありません。ゴムの取引価格の上下に関わらず、経済的であることにたいへん喜んでいます。

サエムさんから連絡があり、EM開発した比嘉先生のことを慕っており、是非ご報告くださいとの熱いメッセージがありましたのでご報告いたします。
現在、サエムさんはインターネット映像で取り組みを配信しており、約10万人の方が登録して視聴しています。[https://www.youtube.com/watch?v=uPx9yTof6ig]


この写真の右側の方がタイ国軍の組織にEM活用を定着させ、貧困地域の農家の自立のためのEMトレーニングシステムを確立したピチェット大将です。EMで管理されたゴム園は、地力を向上させ、地下水の浸透力を高め、空気を浄化し、自然災害を著しく軽減する効果もあります。タイ国では多くの果樹園でもEMが使われており、森林に準ずる機能的余得も広がっています。


次は、「有用微生物群-なぜ私たちが小さなヘルパーを使うのか-ADRADeutschland eV」(2022年1月10日記事)を紹介します。

ラインラントプファルツ州とノルトラインヴェストファーレン州の洪水被害は、2021年の夏に壊滅的な被害をもたらしました。180人以上が命を落とし、数千人が持ち家を失いました。大惨事の直後、ADRA Deutschland eVは、アライアンスAktion Deutschland Hilft内で、災害救援を提供し始めました。復興のための私たちの助けの構成要素は、EM、いわゆる有用微生物群です。

有用微生物群(EM)は、さまざまな細菌と真菌の液体混合物です。それらは、例えば、(有機)農業、化粧品、および家庭で使用されます。洪水、洪水災害、津波の後でも、EMは腐敗、カビ、(糞便)臭いを防ぎます。

2013年にエルベ川、サーレ川、その他の川が洪水に見舞われた後、被害を受けた人々にEMが活用されました。ここでは、その経験について報告します:http://www.youtube.com/watch?v=V-fkbUgY6K4

有用微生物には、安価で持続可能で生態学的に無害であるという利点があります。それらは化学成分を含まないので、それらの使用による健康上の有害な副作用はありません。EMの使用は、災害を受けた人々からも報告されているように、浸水した部屋の臭いやカビに効果を発揮します。

災害救援における効果の科学的証拠は不十分ですが、EMの使用が役に立たないという意味ではありません。しかしそれどころか、国際的な災害救援に30年以上の経験を持つ支援機関として、EMの使用により、病気の予防、土壌の再生、臭いやカビの減少など、多くのプラスの効果が見られました。

ADRA Germany eVは、80を超えるプロジェクトで洪水救援に積極的に取り組んでいます。これまでに730万ユーロの協力を行っています。有用微生物群は洪水被害救助の一部であり、被害を受けた人々は無料で利用できます。プロジェクトの費用は、寄せられた救助の65,795ユーロ(0.9%)に相当します。

参考までに、2013年のエルベ川洪水後のEMによる土壌の再生を紹介します。植生のない裸地は、EMを施用しなかった場所で、緑の部分はEMが散布され、その差は明瞭です。
アプリケーションに関する質問については、ADRA Germany eVは、洪水地域にいる2人のEMコンサルタントが対応します。情報イベントもデジタルで提供し、使い方の情報も提供しています。コンサルタントの1人であるErnst Hammesは、有用微生物群の使用について説明しています(3:33分)。

原文はADRAページ参照(ドイツ語)
[https://adra.de/aktuelles/effektive-mikroorganismen-warum-wir-die-kleinen-helfer-einsetzen/]



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