第168回 中国水産科学研究院淡水漁業研究センターにおけるEMの成果



本誌第140回~143回で、EM研究機構は「社会公益、生態公益、経済公益の向上を目的とし、中国国内での水産養殖技術にEM技術を用いて、主に水産物の品質、収量、生存率、FCRの向上、有機廃棄物や抗生物質や化学物質に起因する排水汚染問題の解決を目指す」ことを目的に、中国水産科学研究院淡水漁業研究センターと覚書を交わし、本格的な国家プロジェクトがスタートしたことを明らかにした。

当初は、水産養殖の現場の問題を解決するとともに、農業や都市による水質汚染対策等々、国家プロジェクトに向け両者で年1回の検討会を予定していたが、新型コロナの影響で延び延びとなっている。

(図1 EMを上海ガニの養殖に使用した論文)
この間に、中国側の上海ガニの養殖に関するEMの応用は着々と進み、研究成果が公式に発表された。

要約は次の通りである。
本論文においては、細部にわたるEMの効果について検討が行われており、結論として、 「有用微生物群は、養殖池の全窒素と全リンの含有量を減らし、水質を改善することができました。また、カニの成長に対して少しだが促進効果があった。EMは、食用組織の総脂質含量を改善し、雌では有益な脂肪酸(C20:3)レベルを増加させ、雄では筋肉質のアミノ酸の栄養価を向上させることで、栄養組成を最適化した。また、特定の遊離アミノ酸(特にAla)の含有量が減少することで甘味が損なわれるものの、AMP、GMP、IMPといったうま味や甘味の要因が増加し、HxやHxRといったオフフレーバーの要因が減少しました。このように、雌のカニの食用組織の全体的な味の質は、EMによって大きく改善されました。本研究では、EMがカニの養殖に与える複数の影響を明らかにし、上海蟹(E. sinensis)の養殖にEMを使用することを推奨する。」 となっている。

これまでも上海ガニに対するEMの活用は数千haに及んでいるが、その成果を明確に裏付けしたものである。政府組織である中国水産科学院が出した論文であり、EM普及のインパクトは多大なものがあるが、EMを使い続けると、その累積効果は年々増大し、養殖場のまわりの水環境も劇的に改善するため、今後が楽しみである。

【中国水産養殖プロジェクト-中国-】





【100%自然循環式水浄化システムによるエビ養殖-タイ-】






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