第16回 EMで甦った東京の日本橋川(2)



きれいになった日本橋川
:きれいになった日本橋川

 日本橋川へ毎週10トンのEM活性液を投入した結果、1年で目を見張るような成果を得たが、ほぼ2年を経過した時点でその成果を総括するために2008年10月27日に三越日本橋本店の三越劇場で環境フォーラム「"よみがえれ!日本橋川"」が開催された。このフォーラムではEMで甦った全国の河川や海の代表的な事例の報告もあり、大規模な例として愛知県の三河湾がきれいで豊な海に変わったという事例等は刮目すべき成果である。


 その後、日本橋川の浄化活動の成果が詳しく公開されたがこのフォーラムはすべてDVDにおさめられ、名橋「日本橋保存会」(03-3274-6263)とNPO地球環境・共生ネットワーク(03-5427-2348)で入手できるようになっている。日本橋川の水質調査は毎月1回3地点で行なっており、それらのデータをもとに私は次のような総括を行った。


 「日本橋川へEMを投入し続けて約2年が経過した。環境省告示の公共水域環境評価基準によると、日本橋川は類型指定Cに所属し、コイやフナがかろうじて棲める水産3級の水質であった。EM投入1年後は限りなくAに近いBとなり、降雨による汚染物の流入がない場合は水道2級(沈殿ろ過等による通常の浄水作用で使える水)水産一級(ヤマメ、イワナ等が棲める水)以上となり、糞便性大腸菌も1cc30個以下となり水泳可のレベルに達するまでに浄化された。同時にゴカイやミミズ等の底性生物が多様化し、ハゼ、ボラ、スズキをはじめ多様な魚群も観察されるようになった。


きれいになった日本橋川2
:きれいになった日本橋川2


 2年目も1年目と同様な傾向で進みケイソウ、スジアオノリが発生し、カニやエビ類も多数観察されるようになり、生態系の多様化は着実に改善されている。それらの結果から判断すると集中豪雨時の下水流入がない場合は類型Aに属し清流といえるほどのかなりきれいな川となっている。


 2年目の大きな特徴は集中豪雨が頻繁に起っても、以前のように悪臭を発することがなく貧酸素状態で一時的に底性生物が極端に減少しても、極めて短い期間(3〜4日)で回復し、生態系の多様性が安定的に保たれているということである。


 しかしながら底質の硫化物のORP(酸化還元電位)を見ると下流域の底質にはまだかなりの有機物が残っており、併せて集中豪雨時の汚濁の流入による負荷増大等の問題を解決する必要がある。


 そのためにはこれまで同様にEMを継続的に投入し、日本橋川全体の浄化能力を更に高めるとともに、降雨時の下水流入防止対策を講ずれば、更に効果的な成果を得ることも可能である。」



 日本橋川と神田川にアユが戻ってきた!


アユがみつかった小石川橋
:アユがみつかった小石川橋

 EM投入が始まって3年目に入り、日本橋川の浄化能力は更に強化されると同時に日本橋川とつながっている小石川橋付近から下流の神田川まできれいになったのである。EMの投入地点は日本橋川上流の堀留橋の横に位置するが、この地点から神田川の本流までは500m内外である。神田川と日本橋川はともに隅田川に合流するが日本橋川は下流に位置する為、東京港の満潮時には、日本橋川の逆流が神田川に流れ込むようになっている。


きれいになった神田川1
:きれいになった神田川1

 したがって、投入されたEMの10%〜15%はその逆流に乗って神田川に入り、神田川をきれいにしたのである。


 広島市の太田川の経験から、私は当初からこの逆流によって神田川もきれいになると断言したが、予測通り、神田川もEM投入1年目に悪臭は消え例年多発していた住民からの臭いに対するクレームは全くなくなったのである。


 

 4〜5年前から広島市を訪れる人々から広島市の川がきれいになったとか川岸の住民からの苦情が皆無になっている。広島市の市内を流れる6〜7本の河川はすべて太田川の分流である。この成果に関しても広島市は1円も負担してなく、すべてEM関係のボランティアによるものである。


 すなわち、太田川でシジミを取っている広島市の内水面漁協から、この悪臭を発するヘドロだらけの川をEMで何とかならないかということからEMボランティアの協力が始まったのが7年前である。広島駅に近い京橋川のヘドロが盛り上がった場所に毎週1トンのEM活性液を注入したのである。その結果数ヶ月で悪臭が消え、半年後にはアサリの漁獲量が2倍になったのである。この効果に納得した内水面漁協では今でも週に1トンのEM活性液を投入し続けており、アサリの漁獲量も当初の4倍以上となり品質も格段に良くなったのである。


 投入から3年後、広島市内の他の川もきれいになり始め、気がつくと市内の太田川の分流はすべてきれいになっていたのである。内水面漁協の関係者の話によると投入されたEMは満潮時に逆流し、太田川の本流に到達し、その水が各支流に流れ込むためであり、まさにEM様々ということであった。


 広島市は、そのおかげで膨大な河川管理の費用が節減され市内の川の殆どがきれいになり河口周辺の漁獲量が大幅に増えたことを全く認識しておらず、大阪市同様に元々、市内の川はきれいであったと思っている。担当者が変われば以前のことはすべて忘れ去られるのである。


 私は昨年の日本橋川フォーラムの現地見学会でアユを確認したが誰も信じてくれなかったが後になって魚に詳しい数人の人から日本橋川にアユがいたという情報が寄せられた。「EMを本格的に投入すると、どこでも2〜3年でアユが戻ってくる」このことは今やEM関係者の常識となり始めている。


きれいになった神田川2
:きれいになった神田川2

 去る9月11日、アユの確認のため日本橋川をていねいに調べた結果、数ヶ所で藻(ケイソウ)を食んでいる魚群が見つかった。アユ特有の行動パターンである。特に日本橋川と神田川の合流地点の小石川橋あたりは群が多く観察しやすい場所である。EMを投入する以前は、この辺りはアユのエサになるケイソウ等の藻は全くなく悪臭を放っていたのである。この地点のアユの存在はNHKテレビでも神田川にアユがいたという確認情報が9月の中旬に放映されたのである。


 私は当初から日本橋川と神田川でアユ釣りが出来るようになると断言したが信じるものは皆無であった。EM投入後の日本橋川の水質はすでにヤマメやイワナが棲めるレベルになっておりアユがいても当たり前の話である。



 EMで東京港がきれいになり始めた。


きれいになり始めた海浜公園1
:きれいになり始めた海浜公園1

 日本橋川へEMの投入が始まって1年後、私は1人で隅田川の遊覧船に乗って東京港の南側を調べたことがある。その時点で神田川と日本橋川の間の築地市場寄りは、川の臭気が減少し、きれいになっていることが確認された。浜離宮の水も水面にさざ波が打ちEMの顔になっていた。浜松町の港付近もかなりきれいになっており、御台場やレインボーブリッジの北岸の海浜公園もEMを処理した初期症状が現れていた。



 2年後の今年に入ってこの傾向は顕著になり日本橋川から出た水が隅田川の水に押されるように流入する東京港の南側に位置する浜離宮や浜松町沿岸、芝浦運河等々が見違えるほどきれいになってきた。東京モノレールから見える運河や河川はすべてきれいになっており、以前にくらべ釣りをする人々が激増しているのである。



きれいになり始めた海浜公園2
:きれいになり始めた海浜公園2

 9月28日、このことを確かめるために船をチャーターして調べた結果、茶褐色の隅田川や東京港の水が日本橋川に入ると透明度が2〜3mのきれいな水になり大腸菌も激減し、泳げるような水に変わるのである。すなわち、潮の干満に合せて日本橋川が東京港の南側の浄化装置として機能していたのである。また1m以上もあった河口の亀島橋付近のヘドロの大半も消失しており浚渫が不要な状態となっていた。



 浜松町から芝浦運河を流れたEMは昭和島の横から羽田空港の第2ターミナルの滑走路の海岸に出て、その一部は東京港の満ち潮によって御台場の方へ逆流し海浜公園一帯がきれいになり始めているのである。これらの現実を踏まえて、下水処理場等でEMを使えばコストは3分の1以下となり、海浜公園は泳げるようになり、東京湾をきれいにすることは極めて簡単なことといえる。


きれいになっ浜離宮
:きれいになった浜離宮


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