今回、6月3~8日に米国のコロラド州立大学で開催された The 21st INTERNATIONAL CONFERENCE FOR CONDENSED MATTER NUCLEAR SCIENCE (第21回国際常温核融合会議)に参加し、ベラルーシ放射線生物学研究所(IRB)との共同研究の成果を発表しました。
国際常温核融合会議は、国際常温核融合学会により開催される常温核融合分野の国際的な会議で、一般的には、ICCF(アイ・シー・シー・エフ)の呼称で呼ばれています。国際常温核融合学会は、常温核融合の理解の促進と実用化を支援することを目的に1989年に設立された非営利組織です。
今回の国際会議への参加者は、米国の研究者を中心に、欧米、日本からの参加者を含め約200名でした。
2日目の Transmutation(核変換)のセッションで、Impact of Effective Microorganisms on the Activity of 137Cs in Soil from the Exclusion Zone of Chernobyl NPP(チェルノブイリ原子力発電所立ち入り禁止区域の土壌中のセシウム137に有用性物群(EM)が及ぼす影響)という演題で、共同研究の成果をIRBのNikitin博士が代表して発表しました。
発表が終わった後、5人の方から質問がありました。主に測定方法や土壌試料の扱い方法についての質問が多かったですが、NASAでのアストロバイオロジーの研究に関係している方からも質問がありました。放射線に強い微生物について関心があるそうです。
本国際常温核融合会議の中でも、微生物による原子転換はとてもマイナーな分野で、発表は私たち含め2題でした。その1つが微生物による原子転換を長年研究されている、ウクライナのヴィソツキー(Vysotskii)博士の発表です。ヴィソツキー博士は、ケルヴラン的な研究を現在進行形で行っている研究者で、MCTという特殊な微生物集合体触媒を用いて研究されています。単一微生物種の触媒は、原子転換の効率が悪く、多種多様な菌が共生関係にある微生物集合体では転換効率が良いそうです。また、syntheticな微生物が原子転換の効率が良いとも話されていました。
日本の大学から参加されていた先生からは、私たちの研究について、閉鎖的実験方法の改良、原子転換されていることを証明するためにも、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いてセシウム137が何に転換されたかを明らかにする必要があること、複数の研究機関により再現性が確認される必要があるとの前向きなアドバイスをもらいました。アドバイスがあったICP-MSを用いた分析は、IRBで行うEMの研究計画に入っています。
本国際会議は、微生物による原子転換について発表しても、拒絶的な反応はなく、物理や放射線物理学の専門の方からの意見やアドバイスがいただけること、またICCF自体の情報発信力も大きいので、本国際会議で発表してゆくことは、EMによる原子転換を世界に発信してゆくのに良い場所であると考えます。