第13回 EMで砂漠化防止と砂漠の生産緑地化に取り組むエジプト



 新型インフルエンザがとうとうパンデミックとなってしまいました。EMを活用したインフルエンザ対策については、この連載で2回にわたって説明しました。流行のひどい沖縄でも「EM生活」をしている人々の殆どが新型インフルエンザとは無縁の日常を過ごしています。パンデミックの根本的な対策は「EM生活」しかありません。


 これまでは主に中米でのEMの普及状況について紹介しましたが、人類は環境問題にリンクした様々な問題を抱えています。森林の破壊と砂漠化の問題も深刻化していることは今や常識化しています。日本のように温暖で湿潤な国々の人々は、この問題の関心は低く、地球温暖化問題の陰で完全に忘れ去られています。


 地球温暖化についてはこれまでの努力と地球全体の生態系の変動と安定に関する時間軸でみるといずれ落ち着くものであり、広大な寒冷地で農業ができるようになればマイナス面ばかりを強調する必要はありません。


 人類にとって本当の危機は人口増大にともなう食糧の問題、化学物質や様々な汚染による健康問題や遺伝子損傷問題、耐性菌の増大と微生物の汚染、電磁波や放射能等々の有害な波動汚染による健康被害であることを忘れてはなりません。EM技術はその問題をすべて解決できる力がありますが旧来のエントロピーの法則に従った理論や汚染放出型の社会のシステムでは時間がかかってしまいます。



 EMで砂漠化防止と砂漠の生産緑地化に取り組むエジプト


現農業省最高顧問 Drワリヨー元農相副首相
:現農業省最高顧問 Drワリヨー元農相副首相

 1995年11月に早稲田大学の教授の紹介ということでエジプトの農業副大臣が東京の私の事務所を訪ねて来ました。農業大学のワルヨー博士(元カイロ大学学長、副首相)の指示によるもので砂漠の塩類集積問題と緑化と汚水とごみ処理等の環境問題に対するEM技術の指導を依頼されたのです。


 96年3月、現地を訪ねた私は長期戦を覚悟でエジプト政府農業省と合意書を交わし農業省の研修センター内にEMの工場を立ち上げ、技術者のトレーニングとモデル事業を支援することになりました。


 農業についてはカイロ市の郊外で塩分がアスファルト状に集積し塩害が発生しているオリーブ、リンゴ、ブドウ、オレンジ畑にEMの活性液を潅水に5000〜10000分の1くらい加えて点滴する方法を指導しました。
水処理についてはサダト市の日量3〜4万トンの都市廃水の浄化し砂漠緑化の水資源として活用すること、ごみについてはカイロ市から出る日量8000トンの悪臭対策と生ごみの有機肥料化です。


 97年に再度現地を訪ねた私はEMの力が期待通りに発揮している現実を確認し安心した訳ですが、この原理を関係の研究者に理解させるのに更に長い時間が必要となり、政府の方針として取り組むまでに10年余りの年月がかかってしまいました。
 担当した研究者は、EMの力をすぐに理解し、データーも次々に出してくるのですが他の学者がそれを信用しないというジレンマです。アスファルトを敷いたようなひどい塩類が集積した畑は次の年に塩分の大半は消失し半分枯れかかったリンゴやオレンジやブドウが緑豊かにたわわに実っていました。


オレンジ園
:オレンジ園

マンゴー園
:マンゴー園

 私は関係者にEMと有機物(液体の糞尿が望ましい)を塩類集積地に施用するとEMの触媒作用と有機物の発酵分解作用が連動し、塩分は非イオン化しEMによって低分子化した有機物と結合し植物の栄養源となる。またカルシウムやマグネシウム、鉄などの微量元素も可溶化し、植物に吸収されるようになる。すなわち砂漠化の原因となる塩分は肥料に変わるため塩分は跡形なく消え、豊かな生産緑地となるという説明をしました。


 今でもこの説を信じられる学者はEM関係者を除けば皆無の状況です。エジプトでも多くの学者がこの現実をつきつけられて困惑し、その内、問題が起るのではないかと心配し、大々的な普及は控えたような状態が続いていました。


開会式
:開会式

 その間に農業省から環境省が独立し初代の環境大臣に農業副大臣であったDrリヤドが就任し、環境省と農業省がEMの主導権をめぐり望ましいライバル関係になりEMは現場優先的に広がり、13年が経過しました。その結果両省ともEMを本気で取り組むことを決定し、EM技術の中東・アフリカ会議を開催するまでになりました。


 今年の6月30日久々に農業省を訪ねましたが待遇がまるで違い、かつては遠くから私を見ていた技術者の殆どが積極的に言葉を交わし、EMでエジプトの農業革命を推進する旨を次々と話してきたのです。この会議では9カ国が参加、各々の国のEM普及状況と将来のビジョン等々目を見張るような成果が発表されましたが、皆当然のことのように聞いていました。


塩害が発生しないブドウ園
:塩害が発生しないブドウ園

 農業省はかなりの研究者を動員し塩類が消え肥料化する現実を確認したため、今では誰も否定する学者はいなくなったとの事です。次の日の現地見学会が行われましたが今では塩害の問題は根本から解決できるようになり見事なブドウ、マンゴー、リンゴ、オリーブ、バナナ園を見ることができました。


EMステーション
:EMステーション

 またEMの工場も拡大し立派に整備されており、カイロとアレキサンドリ間の高速道路には5つのEMのステーションがあり、農業関係者は誰でもEMを入手できるような体制も整っていました。


 エジプトはこの10年余りで人口が1200万人以上も増え食料の問題は近い将来かなり厳しくなる状況にあります。中東地域では類似の状況にある国々も多く、この問題は砂漠の生産緑地化以外に解決策はありません。会議の間に本件に関する相談が数件ありましたが都市の廃水の浄化と水質浄化、EMによる空中湿度の活用法など色々なアドバイスを行いました。いずれもすぐに実行できるレベルにありますので中東諸国の食料生産会議に提案したいとのことでした。アスワンハイダムを管理している農業省の頭痛の種はダムの汚染が深刻になっていることでEMによる浄化の打診もありました。


 答はOKなのですが要は浄化システムの組み方です。環境省で行われた私の講演会で、コロンビアの大規模なエビ養殖場のEM増殖システムのスライドを見た農業省の関係者は、この方式ならアスワンハイダムをきれいにすることが可能であり、具体的な取り組みを始めたいという話になりました。(以下次回)




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