第128回 中国におけるEMの水産分野での活用と心得
旧聞になるが、昨年の9月に中国湖南省水産学会と湖南省水産科学研究所発行の、「現代水産」誌に私のインタビュー記事が載っている。EMは、中国水産界で年間1万トン余も使われている微生物資材であり、その使用量は群を抜いている。
本シリーズでも江蘇省における1000haの上海ガニの例も紹介したが(第87回)、EMの増やし方も公表しているため、偽物も無数に存在し、正しく使われなかった場合は、期待した結果が得られるはずはない。
そのため、EMの正しい認識と使い方の普及に協力し続けているが、湖南省では、EM活用に対する諸情報を、直接、私に対するインタビュー記事として公開することになったのである。
本誌では、雑誌の表紙とインタビューの冒頭を原文で紹介し、後は、その内容を日本語に訳したが、中国におけるEMの病原菌抑制効果や生存率や生産量向上効果も示されている。我が国においても、養殖関係者がEM活性液やEMダンゴ等々を活用し、それなりに海の浄化に貢献しているが、今後の展開を考えると、このインタビュー記事を参考にすべきである。
Q1. EM (有用微生物) は光合成菌や酵母、乳酸菌を混合した有用微生物群です。EMの発明者として、先生はEM をどう定義されるでしようか?
合成機能や発酵機能を持った好気的、嫌気的、強酸強アルカリ等々の性質の全く異なる微生物を共生的に機能させる微生物群のことで自然界の微生物相を蘇生化(善玉菌)する目的で活用されています。
Q2. EMは1982年に発明され、EM関係商品は(株)EM研究機構が開発し、産業や農業、畜産、環境分野において広く応用され、特に農業分野でよく活用されていますが、水産分野において、まだ普及の歴史は浅いです。水産分野において、どのようにEM が活用されていますか? これらのEM は水産業のどの段階に着目しているでしようか?
EMは水質浄化に顕著な効果があり同時に水系の生態系を豊にし、生物多様化を守る理想的な機能を持っています。水産分野にEMを活用すると抗生物質も不要になりヘドロもプランクトンのエサとして循環します。その結果、人間の健康にとって望ましい水産物となり、その排水は近隣の水系も浄化してくれます。漁具の劣化も防止します。EMは現在の養殖のかかえる環境や病害虫、水産物の品質等の諸問題を解決すると同時にコストがかかり成果の少ないこれまでの水質環境の改善法にかわって根本的な役割をはたしてくれます。環境汚染対策は人類の義務です。
Q3. 世界各国で、特にどの国で水産分野にEMが活用されていますか?
タイでは、1990年中頃からエビ養殖のブラックタイガーのホワイトスポット対策としてEMが活用されています。2015年よりEMRO現地法人のEMROASIAが30haの養殖池でエビ養殖事業に取り組んでいます。エクアドルでは、1997年にEMが導入され、1999年のホワイトスポットが大流行をきっかけに、その対策として本格的に広がっています。また近年ではEMSというビブリオ菌が原因の病気も流行りをみせており、その対策としても活用されています。EMは水質やエビの免疫力を向上させる目的として活用されています。ベトナムではEM・1売上の70%がエビ養殖に活用されています。
一方日本では、復活が不可能と言われた三河湾や東京湾等々、すばらしい漁業が展開され、泳げなかった海も、今ではどこでも泳げるようになっています。
Q4. 中国においてEMを製造・販売する会社いっぱいあります、それは(株) EM研究機構のEMとどんな区別があります。
EMを効率よく使えるように簡略なEMの増やし方を公開したため、ニセモノが沢山出まわっています。簡略な増やし方では一次活性液は、それなりに効果がありますが二次三次になると雑菌が入りEMの性質が失われ、長期におくと変質し、EMとは全く異なる有害な微生物になってしまいます。そのため被害者が続出したためEMの正しい普及を目的にEM研究機構で作成した正真正銘のEMにEM研究機構のマークをつけて区別しています。
Q5. 農業と比べて、水産業のマーケットはある程度狭いですが、どうして水産分野にも EM商品を開発・普及したいでしょうか?
EMは商売を目的に普及しておりません。水産分野にEMが普及することによって人々(生産者、消費者)の健康を守り水系の生態系を豊にし、生物多様化を守ることを主目的としています。水系の汚染源となっている養殖場が浄化源として機能すれば養殖業が同時に水系環境の浄化機能をはたすことになり、未来の養殖業の理想の姿となります。
Q6. 微生物商品は本物と偽物との区別が難しいですが、EMの発明者として、本物EMのあり方はどんなものとお考えでしようか?偽物とはどのように区別すればいいでしょうか?
前述したようにEM研究機構のマークのついているものを使えば偽物と区別することが容易です。EM研究機構は、その本物を使う人々のみをサポートします。
Q7. 2015年、星野忠儀という日本微生物資材業界の方と話し合う機会をいただきましたが、(株) EM研究機構の元研究員であると自己紹介した星野様はEMは商品よりも一つの技術だとおっしゃいましたが、先生は如何お考えでしようか?
市販されているのはすべて商品といえますが、EMは人々の健康や環境を守るため、その増やし方を公開し安価に問題を解決する方法を提案しています。一般的な商品は増やし方を教えてくれませんし、相手が増やし方を覚えたら、商品として売れなくなります。
そのためEMを商品として仕事をするのではなく、EMを使ってすばらしい農業や養殖業や環境衛生等々の事業を行うことをすすめています。
Q8. 近年以来、中国の水産分野においてEMを普及し始めています(EMROCHINA以外のメーカーを含めて) が、業界からの評判が様々です。「EMは世界中最も広く応用される微生物技術として、普通の微生物資材と比べて、複雑な仕組み、安定した性能、広い有用性を持ち、高い技術レベルを見せている以上、政府の許認可を取得するはずです」という見方がありますが、先生は如何お考えですか? これらの異なった見解が出る原因は何でしょうか?
すでに述べた偽物が原因です。必要であれば政府の認可をとりたいと思いますがEMは増やして使うため現在の微生物認可の考え方と方法が根本的に異なっています。
したがって、商品として広く流通させるよりもプロジェクト的に普及する方が中国のためと考えています。本物のEMを使いたい方々は、EM研究機構と御相談下さい。
Q9. 先生は微生物資材業界の専門家として、「EMの親」と言われていますが、微生物資材業界の現状について、如何お考えでしようか?水産業の微生物資材の将来について、如何お考えでしようか?
私の社会的公約として、農業(食料、一次産業)と環境、健康、資源エネルギー問題を安全、快適、低コスト、高品質、善循環的持続可能な地球を作ることをかかげています。この公約に添ってEMが中国で正しく使われるならば、中国の諸問題の大半は解決し、人類のかかえる未来の不安を解消できると確信しています。
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