第12回 EMで石油汚染対策を実用化したニカラグア



 ニカラグアは数々の環境汚染が顕在化している国です。首都のマナグワ市からの都市排水で汚染されたマナグワ湖はビワ湖の5〜6倍もの巨大な湖ですが、世界で最も汚染されておりJICAから派遣された日本を代表する環境学者をして100年でもきれいにすることは不可能と言わしめたほどです。


 このマナグワ湖の浄化計画は先に述べたグアテマラのアマテトラン湖の方式で進められていますので10年後は元のきれいな湖にすることも可能です。また、深刻化していたごみ問題もEMでかなりリサイクルされるようになり農業分野でのEMも官民一体となって広がっていますがパイプライン損傷による大規模な石油汚染が発生し手のうちようがない状況になっていました。


 3年前にコスタリカのアース大学の卒業生からこの石油汚染対策に対するEMの活用法について助言を求められました。簡単に言えば畜産廃棄物等の家畜の糞尿にEMを加え、臭気が完全に消失したレベルで土壌全体にしみ込むようにEMを散布する。1〜2ヶ月たって効果が十分でない場合は再処理を行い、一般には2〜3回処理で十分な効果が期待できるが、それでもだめなら更に施用量を増やすというものです。


 この案はすぐに実行に移され、数回の施用で石油汚染は完全に解消したとの事で、今では国の石油汚染対策のマニュアルになっています。EMが油脂類の分解に著効がある事を確認したのは偶然の結果です。ブラジルのある食肉センターの廃水池の悪臭対策にEMを活用したところ、悪臭はもとより1m以上ものヘドロも消失し、おまけに池の表面に固まって30p以上も層をなしていた油も分解したのです。動植物性の油脂の分解はEMの性質からして十分に察しのつくものでしたが、その下にあったエンジンオイル等の廃油まで分解していたのです。


 当初はこの現象を見てもなかなか信じることができませんでしたが、EMのモデル農場に隣接する自動車修理工場で同じような現象を確認した段階でEMは鉱物油も分解できると断言するようになりました。


 今では当たり前の話ですが、その修理工場は意識的にEMを使ったのではありません。その工場は毎年のようにブラジルを訪ねEMのモデル農場を指導してしていましたが、農場入口の修理工場の廃油はたれ流しで排水溝によどんだままでしたのでいつも気になっていました。


 ある日、園主と工場関係者から地下水が汚染されているのでEMで対策は可能かという質問に月に1回井戸の水量の1000分の1のEMを投入することを目安に、効果が出ない場合は2〜3倍に増量することというアドバイスを行いました。 打ち込みのパイプの場合はタンクに水をため、EMが1000分の1になるように投入する方法も説明しました。


 その工場の水源は井戸でしたので月に1回1000分の1ずつEMを投入したとの事です。数日で臭気が消え2ヶ月で飲料に使えるようになったとの事ですが次の年に現場を見たときに私は排水溝の廃油が全てなくなっていることに気付いたのです。この件に関し工場関係者に問い合わせたら、何もやっていないが工場の洗浄にはEMを投入した井戸の水を使っているだけという返事が返ってきました。


 私は工場の責任者とも現場を再確認しましたが工場の責任者は廃油が消失している事を全く知らずに驚いていました。時間が経てばEMを投入した水だけで廃油が消えるならタンカーによる汚染事故対策にも使えるのではないかと考えるようになりました。


 その後、しばらくして福井県沖の日本海でロシアのナホトカ号による重油汚染事故が発生しました。EMのボランティアが100m程度の長さの海岸にEMボカシとEM活性液を散布したのです。数ヶ月で重油は分解され、この場所だけが次の年に生態系は復元し魚貝類も復活したという嬉しい報告を受けましたが誰も信じてくれませんでした。データーがないという奇妙な言い分です。


 EMの効果はすべて生物現象の結果ですので、結果が全てデーターであり計量的、統計的判断は不可能です。結果は全てイエスかノーだけです。イエスとなった場合はEMの密度が高くなり、十分な酵素活性作用が現れた場合であり、結果がノーならば量が足りなかったかEMの繁殖条件が悪かっただけであり、追加処理によって必ず解決できるという背景を持っております。


 EMによる放射能対策やダイオキシン対策も全く同じものであり、ある程度のガイドラインはあっても、効果が出なければ出るまで使うという扱い方の問題であって、化学物質などの生命のない物件を扱う場合とは根本的に異なっています。EMにはデーターがないという風評は全くの濡れ衣であり、これまで現れた結果がすべてデーターであるという視点が必要です。  パキスタンでは処理に困っていた製油所のスラッジをEMと有機物を加え分解し有機肥料として活用しています。様々な分析結果から特に問題はないとの事ですが公園の樹木や食料にしない分野での活用が無難といえます。この件に関しては国連工業発展機関の石油産業分野のホームページに出したこともあります。


 また数年前におこったパキスタンのカラチ海岸で起ったタンカー事故の汚染対策にもEMが使われており、EMは石油汚染対策の国際基準になり始めています。


 



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