第119回 農薬の代替資材としての塩の活用




 現代の農業は、合法的に毒物を撒き散らす特異的な恐ろしい産業である。厳しい見方をすれば、合法と言え、毒物を撒き散らすのは犯罪行為である。
 ましてや、生態系や生物多様性を守る観点からすれば、滅亡の加速であり、現在の農業体系が人類に対する本質的な危機ともなっていることを再認識する必要がある。
 農薬は、原子力発電と同じように、必要悪的に考えられているが、必要悪は本質的に悪であり、犯罪である。ユニバーサルビレッジ国際会議の根底には、 本質的な悪の問題を根本から解決するという真理がある。この真理の応用は、 従来の技術の延長線上では不可能であり、次元の異なる解決法が必要となってくる。
 次元が異なるといえば、前回までに述べたように、微生物による原子転換力の応用であり、量子力学的レベルの解決策ということになる。ユニバーサルビレッジ国際会議の目標の一つとして、人間が健康に生き、他の生物の多様性を守るためには、化学肥料や農薬に置き換わる資材や農法の確立が上げられている。
 この命題に従って、前回は、EMの原子転換力を活用すれば、塩を肥料化し、従来の化学肥料に比較して、はるかに安価で、生産物の量や質が限界突破的になることを明らかにした。
 この技術は、すでに実用化しており、全世界に広がるのも時間の問題である。 EMと塩を併用すると、人糞尿やあらゆる畜産廃棄物や汚染源となるあらゆる有機物は、肥料資源にすることは極めて容易である。すなわち、海水なみの塩分を加えたり、海水にそれらの悪臭を発する腐敗物を入れ、EMを処理すれば、臭気は発生せず、良質な液肥に変身するのである。堆肥を作る必要もなく、曝気して浄化する必要もなく、極めて機能的な肥料として永久に持続可能となる。
 この段階に達すれば、現在の環境問題や健康問題の大半は解決することが可能であり、将来の食料問題も生じないという命題の解となる。特に新たな施設や設備は不要で、「集めて EM と塩を入れ、農地に循環させる」という単純なものである。


病害虫対策
 近代農業における農薬の守備範囲は、病害虫と雑草対策である。すなわち、病害虫対策は、地上部の生態系を壊滅させ、除草剤は、地下部の生態系を破壊していると言っても過言ではない。
 すでに明らかなように、栽培環境の微生物相(マイクロバイオーム)をEMのような善玉菌が優占すれば、病害虫の発生は極端に減少することが明らかとなっている。この原理と塩の持つ殺菌、殺虫力を上手に活用すると、病害虫対策の農薬は全く不要となる。
 すなわち、海水で培養した EM 活性液を10-20倍にして、数日から5-6 日毎に散布するのみである。この方法は、病害虫の抑制に効果的であるばかりでなく、光合成能力を高めるため、増収と品質向上にも著しい効果が認められている。
 それでも、病害虫が発生する場合は、海水培養のEM活性液の原液を散布し、15-20分後に水で軽く洗い流す方法をとれば、万全を期すことが可能である。
 例えば、晩春から初夏に発生するハウス栽培のネギ類の大敵は、スリップスである。この時期は、かなり強い農薬を丁寧に、頻繁に散布しても完全に抑制することは困難である。写真 1 は、このような状況下にあるワケギに、上記の方法で処理した結果、成虫を 100%抑制することが可能になった例である。産卵から成虫になるまでのサイクルが 1 週間程度であることを考えると、5-6日に1回のローテーションで散布した場合は、農薬以上の効果が認められている。



:写真1

:写真2

 写真 2 は、モンシロチョウの被害甚大となったキャベツに、海水培養のEM活性液の原液を散布し、水で流さなかった状況である。キャベツは水を強くはじく性質があるため、特に洗い流す必要はなく、水稲、小麦等も同様である。
 一般的に、無農薬のイチゴは 1-2 番花が中心となり、3 番花の途中からダニ、カイガラムシ、アブラムシの外に、ウドンコ病、スス病、サビ病等々が多発し、農薬による対応でも困難となり、あきらめざるを得ない状況になる。例年、このようなことを繰り返していたイチゴに、海水培養 EM 活性液と、EM の整流技術を施行した結果、3 月下旬には、3 番花が正常に育ち、これまでの 1-2 番花の合計程度の収穫となり、糖度も高くなり、店持ちもよく、大好評となった事例が写真 3-6 である。

この場合、注目すべきは、ウドンコ病等々の病虫害の被害が著しい箇所に、 海水培養の EM 活性液の原液を散布し、2 時間後に軽く水を散布したとのことである。その結果は、パーフェクトで、いかなる農薬よりも著効があり、現在、無農薬で絶対不可能とされる 4 番花に挑戦中である。
 収量、品質はもとより、安全性やコスト、持続可能、生態系や生物多様性を積極的に守るという観点から判断すると、本技術は病害虫対策の究極であり、絶対的な力を持っている。



:写真3

:写真4

:写真5

:写真6

雑草対策
 一般的には、植付け準備が完了した時点で、10a当り100Kgの塩または100Kg相当の海水(3-4 トン)を均等に散布した後、数日後にEM活性液(海水培養) を100-200倍にして、10a 当り 4-5 トン散布し、塩分をうすめた後に播種、定植する。

 この方法は、塩の肥料効果と土壌の病害虫抑制効果も顕著であり、連作障害対策にも絶対的な力を持っている。
 また、家庭菜園や花壇などで追肥的に写真7や8のように塩をおくと、雑草は極端に少なくなる。草取りの労苦は、過去の話となり、草が少なくなった分以上に生育が良くなり、花も鮮やかになる。同時に、いつの間にかカタツムリやナメクジも姿を消し、土壌もホクホクとなり、降雨後の土のはね返りもなく、植物はすべてきれいである。


:写真7

:写真8

 塩を除草剤的に使用する場合は、お湯で20%ぐらいの高い塩分液を作り、散布すると写真9のような対策が可能である。散布する塩水の温度を 50-60°Cにすれば、塩分は5%でも著効があり、農地のまわりや、一般の除草剤的な活用も容易である。
 塩除草は、降雨があると、極端に効果が下がるため、雨天を避け、日中の暑い時間帯に散布 するが、効果が十分でないとき は、4-5日以内に再散布すれば望ましい結果となる。
 除草剤による土壌生態系の 壊滅的破壊に対する解決法は、 既述の塩除草以外に選択肢は 無いと考えるべきである。


:写真9


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