第117回 本格的に始まったEMの原子転換力の応用




 前3回(第114回-第116回)は、福島における実用レベルの放射能の消滅に対するEMの効果を述べたが、それらの現象は、本連載やウェブエコピュア等で説明した通りEMの原子転換力によるものである。
 微生物による原子転換は、1960年代には既に明らかとなっているが、この説がエセ科学の代表的な事例となっているのは、再現性や、その応用が現実的でないためである。
 当初は、EMの不思議な万能性について、従来の知見を踏まえ、抗酸化作用や非イオン化作用や三次元の整流機能によるものとの説明を行っていたが、放射能の消滅や塩分が肥料に変わる現実に直面すると、原子転換が起っているという以外の選択肢はないということになったのである。
 科学や技術の本質は、再現性と安全性である。一流の国際誌に載った論文でも、再現性がなければエセであり、安全性が明確でなければ一般化することは不可能である。したがって、EMの原子転換力がエセ科学でないと証明するためには、再現性と安全性の実用化を示すことにある。前3回の連載で、放射能の消滅に対するEM技術の活用は再現性と安全性は確認され、すでに実用技術になっていることを明らかにした。
 それでも承服できない、検証しないエセ科学者が無数におり、当方が多勢に無勢気味のため、放射能とは別に植物を中心に生物圏で起っている原子転換の応用例を示す必要がある。すなわち、これまで何回となく言及したように、塩をEMの力で原子転換し、肥料として活用する方法である。
 ユニバーサルビレッジ国際会議での第1項目の目標は、化学肥料や農薬等の化学物質に依拠しない栽培法と農業資材の開発である。本件に関しては、正木博士は、比嘉博士の微生物による方法で解決が可能であると述べている。
 人間や家畜の排泄物や農業や緑地の管理で発生する残渣をEM処理し、システム的に活用するだけでも現状維持は可能であるが、要は人口が90億や100億になった場合の対応である。
 当方の答えは、これまでエジプトやパキスタン、中国等で広く活用されている塩害発生地におけるEMの原子転換的活用で十分に対応することが可能であるということである。(図1)

図1:中国吉林省でのアルカリ土壌修復試験

 とは言え、常識的には、現実は図2のような国連大学ウェブマガジンの通り厳しい現実がある。
[https://ourworld.unu.edu/jp/](より引用転載)


図2:国連大学ウェブマガジン記

この解決には、コストを覚悟したうえで関連産業や流通を含めた根気強い取り組みが必要とされているが、多くの自己矛盾を増幅するため、根本的な答えには、なり得ないのである。

一般的な塩害のメカニズムは、

  1. 土壌中に塩分が過剰に存在すると、土壌溶液の浸透圧が増加して、植物の根の吸水機能、吸肥機能の低下や、植物体外への水分流出が起こり、水分不足(生育障害)となって植物が枯死。
  2. 塩分が土壌の単粒化や緊硬度を高め、土壌の透水性が著しく低下する。その結果、排水不良による作物の根腐れが発生。

等であるが、一方、日本では昔から塩を肥料の補助的活用や病害虫対策、品質、収量対策として活用されてきたことも事実である。このような活用事例をまとめると、下記のように極めて注目すべき内容にも関わらず、塩の活用は上記の塩害が先行し、専門家にとっては極めて不評である。

図3:塩害のメカニズム


図4:植物栽培で期待される海水・塩の施用効果
(北野 雅治 農業における塩の利用ー美味しい野菜づくりより引用転載)

 とは言え、我が国における農業への利用記録を見ると、「日本農業全書」に次のような事例がある。(以下、「日本農業全書」および「現代農業」の事例は、北野 雅治 農業における塩の利用-美味しい野菜づくりより引用転載)



また、我が国の農家のバイブル誌ともいえる「現代農業」にもかなりの量の塩を使っている例も報告されている。




 また、佐賀新聞のホームページのように、長年の実績に裏付けられた事例も多く、国連大学ウェブマガジンと全く逆の現実がある。
 それらの報告事例の中には、10a当りに換算すると、1作で50-150Kgの塩を使っている例もあり、ミネラル補給的な量をはるかに超え、通常の化学肥料の施用量に達しているものもある。また、同じような量を使って塩害が発生し、失敗したという情報もあるが、当初は4分の1-2分の1でスタートし、その後、生育に応じて塩の量を増やしても失敗しないことも明らかとなっている。生ゴミに含まれる塩分を問題にする専門家がいる一方で、現場で定着している塩の活用事例には、大きなギャップがある。


図5:佐賀新聞

 この極端な差異は、結論的には微生物による原子転換に依拠しているといえる。すなわち、日本のように雨が多く、土壌に還元される有機物の量が比較的多い条件下では、様々な微生物が存在し、その機能性を発揮できる状態にある。フランスのケルブランは、嫌気性的な微生物を中心に、自然界では多様な原子転換が行われていると明言し、多数の状況証拠と分析結果を発表しているのである。この説に素直に従えば、江戸時代から脈々と伝わっている塩の農業への活用は、土壌中の微生物による原子転換機能によって、塩が肥料に変わったと言うことは正解である。
 EMの活用は、それらの微生物に援軍を送り、その機能性を強化しているのである。その証拠に、EMを活用し、海水塩を中心とした塩のみの栽培を行っても、既述の一般的な概念である塩害は発生せず、多収、高品質となり、土壌は膨軟になり、不耕起栽培も容易である。
 その上、塩を上手に活用すると、既述の施用効果とは別に、超一級の除草剤としての活用も可能である。除草剤による深刻な土壌生態系や自然破壊は、塩の活用によって逆転し得ることは論を待つまでもない。
 塩分を含む人糞尿が使われなくなってから土壌の劣化が著しく、作物の生育や栄養価が低下したと言われる主張も正しいということになる。

参考文献
北野雅治 2007年 農業における塩の利用-美味しい野菜づくり
ソルト・サ イエンス・シンポジウム2007「塩の味と健康」講演要旨




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