第111回 EMと畜産2



 前回は畜産部野におけるEM活用の重要性と養豚におけるその代表例を紹介したが、人間の健康との関わりに関し、畜産分野で解決すべき問題が多々、残されている。その代表例が投薬であり、その中でも抗生物質の多用による問題は極めて深刻である。
 世界有機農業運動連盟(IFOAM)では、畜産における抗生物質の使用を禁止するばかりでなく、抗生物質を使った畜産糞尿を有機農業に使用することも禁じている。EUも、成長促進を目的とする抗生物質の使用を禁止するようになったが、抗生物質は、容易に分解されないため、家畜の糞尿は、農業でも敬遠され、行き場を失い、大きな環境問題ともなっている。
 畜産分野における抗生物質の本質的な問題は、今年の8月末に出版されたアランナ・コリン著「あなたの体は9割が細菌」(河出書房新社)に詳しく述べられている。この本は、最新の「ヒトマイクロバイオーム・プロジェクト」の成果を踏まえ、抗生物質や日常的に使われている化学合成物質等々が微生物の生態系を破壊したため、難治の病気が多発すると同時に、肥満も、アレルギーも、うつ病等々も体内微生物相(マイクロバイオータ)が悪玉化した結果であると述べている。
 その解決策については、抗生物質や化学合成物質の使い過ぎを止めること、食物繊維を多くとり、腸内微生物相を善玉菌に変えること、乳幼児に望ましいマイクロバイオータを形成するという月並みのものである。
 これまでの事例で言えば、飼育のすべての段階で、EMを空気や水の如く使えば、抗生物質は不要となり、畜産のすべての問題と、それに代わる健康問題等々は容易に解決し得るものである。今回紹介する宮崎県延岡市柚木の株式会社 吉玉畜産は、抗生物質等の薬品を全く使用していない養豚の例である。
 更に特筆すべきは、自衛隊のパイロットであった一人息子が、将来の最良の選択として家業を継いだことである。真に消費者の健康を守ることは、国を守ることでもある。畜産農家の後継者問題は、深刻な状況にあるが、EMの本格的な活用は、この難問にも対応できる力があることも加味したい。



 以下の報告は、吉玉畜産の吉玉千代子氏がUネットの善循環の輪の集いで発表したものである(日向市、平成28年8月20日)。



人生を変えたEM
 42年前になりますが、私が21歳のときに養豚農家に嫁ぎました。この時は、『お腹いっぱい豚肉が食べられるぞー』っという思いでした。
 それから14-15年過ぎた頃でしょうか、『自分達で育てた豚肉を、地元の方々に食べてもらいたい』と思い、平成元年1月から生産直売という形で精肉の販売をスタートしました。

 



 当時は、出荷前の約2ヶ月間は休薬飼料を使うように指導を受けていました。※休薬飼料とは薬の入っていないエサの事ですね-。
 でも、『もし薬が肉の中に残留していたら、それを食べる私達の体にも良くないって事?』『ほんなら念のために3ヶ月くらい前から抜いてしまわにゃ心配じゃがー』と言う思いでしたから、出荷する3-4ヶ月前から休薬飼料(無薬のエサ)を与えていました。
 そのお陰からか、最初からお肉の味もまぁまぁ良かったようです。これは当時から現在まで27年間毎週のようにお肉を買いに来て下さっているお客様の声です。
 それからのちにですね-平成5年、長女が17歳の時でした。40度の熱と湿疹におかされ苦しんでいるのに、その症状を抑える薬がなかなかみつからなかったんです。結局、免疫力低下・原因不明の病気で『膠原病』と診断されました。医師の言われるままに、ステロイドホルモン剤・塗り薬・痛み止め・吐き気止め・胃薬・抗がん剤など、たくさんの薬を飲みながら入退院を繰り返す高校生活でした。


 

 薬の副作用からでしょうか、食欲もなく、たいして食べれないのに、時にはもどしたり、全身の怠さと痛みに耐える毎日でとても可哀想でした。それ見た実家の母が、『こげんな強い薬を続けたらちょったら体はやくせんごつなっどー』『薬の害を消さにゃぼくじゃがー』っと言って薬草と無農薬野菜を青汁にして毎日飲ませてくれました。
 続けているうちに、食欲も出て気分も良くなったりもしましたが、時には熱が出たり、体の不調はありましたので、なかなか薬は減らしてもらえませんでした。
 そんなある日、母は『薬は毒じゃから先生に黙って様子みながら一錠ずつ減らしてみろーや』『そん代わり青汁を毎日飲めば絶対大丈夫じゃがー』と言ったんです。娘はばあちゃん先生の言う事を聞きました。
 それから検査をするたびに肝臓の数値などが良くなっていき、主治医の先生から『調子が良いようですから薬の量を減らしますねー』と言われた時には、すでにずいぶん減らしていたんです。
 結果的に、2-30年かかるだろうと言われていた病気も、丸3年で全く薬を飲むこともなく、検査の必要もなくなり、完治したと言えるほどになりました。
 この経験からですねー『薬って怖いんだなー。自然の力ってすごいんだなー』っと思ったんです。


 話は変わりますが、うちは県道沿いにあるんですが、オリンピアロードと言う名前もついていて、旭化成のマラソンランナーの練習コースになっています。また、たくさんの人が健康のためにジョギングやウォーキングをしています。
 ある日の事、『ちょっと臭いですねー』といきなり来られたのが、EM菌の普及活動をされていた橋本さんという方でした。話を聞かせていただくと、自然界にいる有用微生物の集合体ということが分かり、『私の求めていたものはこれだー!これこそ自然だー!』と思ったので『早速使ってみたいです!』と言いました。
 当時、悪臭対策に色んな業者さんが持ってくるものをあれこれ使っていましたがなかなか成果が出ず頭を抱えていた主人も、とにかく使ってみようと半信半疑でしたが、1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月となるうちに、色んな人から『近頃はあんまり臭いがせんごつなったなー』言われるようになり、EM菌のすごさを実感しました。
 主人は、ボカシや活性液を一生懸命作りました。与え方としては、飼料全体にトンあたり3%を、飼料が届いたらすぐにトラックに入れてもらい、ウチの飼料タンクに入ります。活性液は、農場全体に噴霧したり、出入口の踏込み槽に使ったり、農場に出入りする車両にも噴霧します。
 そして、全ての飼料に含まれている薬を抜いてもらうように飼料会社の担当の方に相談しました。するとびっくりされて頭をひねりながら『一番最初の餌付けの人工乳から全ての薬を抜くのは無茶ですよ・・・前例の無い事ですからねー』と言われました。
 でも私の考えは変わりません。いくら飼料安全法に基づき決められた量の薬であっても、病気を治すはずの薬のせいで副作用に苦しむ娘を見て来たので、どうしても薬は使いたくなかったんです。


 こうして、うちに産まれた豚ちゃんたちに薬を食べさせることなく出荷する。その代り、ボカシをエサに混ぜ与える事を徹底しています。どうせこだわるなら、ここまで徹底しなければEM豚とは言えないと思ったからです。
 その後、東京のある会社に肉質の分析を依頼したところ、9項目の検査結果すべてにおいてありがたい言葉をいただき、総合的にも『銘柄豚平均を上回る肉であると示唆される』と評価されました。
 おかげさまで今では県内外からたくさんのご注文がはいるようになりました。注文を受けるFAX用紙には、『いつも美味しい豚肉をありがとうございます』とか『これからも体に気を付けて美味しい豚肉を作って下さいねー』など、遠く離れた顔も見たことのないお客様からの感謝の気持ちや、微笑んだ顔が見えてくるんですよねー。本当に嬉しいです。



 EM豚にして一番嬉しかったのが、ウチには一人息子がおります。小さいころからよく手伝いをしてくれていましたが、『家業は継がなくても、お前の人生だからお前のやりたい事をやればいいからね』とずっと言ってきました。息子は自衛隊の道を選び、パイロットとして訓練に励んでいましたが、12年前、私が病に倒れたのをきっかけに帰ってきました。『親がここまでこだわってEM豚作ったし、普通の豚屋さんなら分からんけんどん、お客さんもいっぱいついちょるし、ここで終わらせたらもったいねぇわー。何も心配すんな。オレ帰るからね!』と言って今では一緒に働いています。



 まだあります。延岡市内に住む高橋弥生ちゃんという子が、重度のアレルギーをもっています。どんな肉・加工品・添加物の入ったお菓子等も体が受け付けないのですが、EM豚は平気で食べることが出来ます。『やよいちゃんの為に無添加でウインナーを作りたい』そう思い、色々調べてみましたが、商品化するとなると無理なんです。
 例えば、私が作って、私の飲食店で食べて頂くのはOKなんですが、店頭販売が出来ないんです。仕方なく我が家で育てたEM豚をナンチクで加工していただきました。それは会社の規定内で添加物は入っているのですが、弥生ちゃんが思い切って食べてみたら平気だったんです。それって添加物よりEM豚が勝ってるって事ですよねー?それで自信をもって売らせていただくようになりました。その事も、『EM菌ってすごいなー』と思いました。



 EM菌の活躍も、畜産部門だけにとどまらず、家庭でも、私の場合は液体石鹸作りをマスターし、液体石鹸にして、洗濯石鹸・台所洗剤・トイレ掃除・風呂掃除・頭のシャンプーからボディソープ。家中の洗剤はこれひとつです。環境に優しく、とっても安上がりですよねー。
 実は熊本にいる娘の子供が体が「かゆいかゆい」と言ってグッスリ眠れなかったそうです。そこで液体石鹸を送ってあげた所、その日からグッスリ寝れるようになったそうです。
泡切れが速く仕上がりもすごくやわらかいので娘も気に入って今では友達と一緒に作っています。



 活性液もあれこれ試しているととても楽しいです。セットローションや化粧水・芳香剤になったり除菌にも使います。痛み止めやかぶれにも効きます。EM菌は優れものです。

 去年の夏、草切りをしていたら、手を3ヶ所もハチに刺されたんです。痛くてたまらなかったので病院に行こうと思ったのですが、山下浩先生に相談した所、『大丈夫、大丈夫。病院なんか行かんでよかよー』『活性液をつけたらいいがねー』とおっしゃいました。ちょっとトーンがちがいますね。
 そこで『ヨモギとドクダミで作った活性液があったわー』と思い出し、スプレーに入れてシュッシュッとやったら、本当に何分もかからず痛みが取れたんです。ハチに刺されてありがたかったです。だってまた一つ事例発表のネタが増えたーっと思いました。
 今年の出来事として長年住んでた家を建て替える事になりました、あこがれのEMハウスです。EMハウスとはEM活性液やセラミックス、炭などを家のあらゆるとこに使い、体に害のない快適な暮らしができるよう先生方にご指導を受けながら完成した家です。



 こうしてEM菌に出会えたことや、EM友との交流を深めるほど楽しくて、人生を前向きに過ごさせて頂いております。
 これからも真の安心・安全を目指して、一生懸命励みたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!ご清聴ありがとうございました!









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