第11回 グアテマラのEMによる都市汚染の浄化
これまで中南米におけるEMの普及活動について各々の国におけるモデルケースを紹介してきましたが今回からは環境汚染対策に即戦力となる、EMによる都市全体の汚水処理や石油汚染対策、大型のジュース工場の廃産物の資源化の例を述べたいと思います。
EMによる都市汚染の浄化をシステム的に普及し始めたグアテマラ。 グアテマラの首都グワラスラ市は人口が数百万人に急増したにもかかわらず、都市部から排出される汚水は1本の川に集まり、その汚水はかつて風光明媚な観光地であったアマテトラン湖に流れ込んでいます。
グアテマラ政府はアマテトラン湖全体が汚染されるのを防ぐ為に汚水が流入する河川の上の部分に堤防を築き、その一部分は保全したものの、残りの1800haは完全なドブの湖となり、周年悪臭を発し、アオコに覆われ陸地と錯覚するくらいにひどい状況になっていたとの事です。
2007年の10月に中米3カ国(グアテマラ、パナマ、コロンビア)の指導のためにグアテマラを訪ねましたが深夜に到着したにもかかわらず、環境省で早朝の記者会見となりました。大臣は海外出張中との事で、汚水浄化を担当している局長が同席し、アマテトラン湖の浄化にEMを活用し始めて9ヶ月でかなりきれいになったことを発表したのです。テレビ、ラジオ、新聞などグアテマラ全マスコミが参加したとの事ですが、局長の説明に驚きの質問が多数発せられましたが、口々に奇跡だという言葉とともに信じられないとのコメントもありました。
:9ヶ月できれいになったアマテトラン湖(1) 事のいきさつを全く知らなかった私は記者会見のやり取りでグアテマラの都市汚水処理問題をEMで革命的に解決したプロセスを聞かされ、EMについてのコメントを求められたのです。出されたデーターもEMの側に立てば納得いくものですが一般には全く信じられない数値なのです。
私は先ずEMの安全性について「タイ国では医療や健康飲料として政府公認で活用されている事例を説明しました。また、個々に活用されている微生物は食品加工等に活用され、歴史的にも科学的にも安全性が確認された種類であり、過去25年間において一度も問題を発してない事も加え、EMを生活化することが環境を浄化するライススタイルである」ことを強調しました。
その次に「一般的な常識として人工的に大量培養した微生物を投入し続けると自然界の微生物の生態系を乱すのではという懸念があります。EMは嫌気的な性格が強いため、環境が浄化され酸素が多くなると増殖が抑制されます。したがって自然界ではメジャーになれないという特徴があります。酵母や乳酸菌や光合成細菌は、雑菌が入らないように人間がていねいに管理しない限り自然界では常にマイナーな存在です。したがってEMの投入を中止すると自然に元の状態に戻ってしまいます。この26年間、EMを大量に投入した場合でも良い結果になっても悪いことは1件も発生していません。」
:9ヶ月できれいになったアマテトラン湖(2) 「EMを投入し続けると元々自然界に存在していた抗酸化機能を持つ有利な微生物も共存的に増殖するため、微生物の生態系は質の高い豊かな状況へと変化します。そのため、結果的に自然生態系も豊かになり魚貝類も増えることになります。」
「魚が全く釣れなくなったアマテトラン湖でこの数ヶ月で魚がよく釣れるようになったとのことですがEMは自然界のあらゆる有機物を発酵分解します。またEMの中の光合成細菌はメタンや硫化水素、アンモニア等を基質(エサ)にして、アミノ酸や糖類を作ります。それらの成分は動植物プランクトンのエサになり食物連鎖の最も重要な底辺部分を強化し健全化する力となります。逆説的に言えば汚染の分だけ魚貝類が多く取れることになります。」
多分に理解できなかったと思いますが次の日の新聞では、日本の微生物技術でアマテトラン湖がきれいになってきたことが報じられており、環境局長はテレビ等で一躍時の人となってしまいました。
記者会見後、現場を見せてもらいましたが、すべて納得のいくものでした。浄化のシステムは汚水を4つに区切られた大型のラグーン(20ha〜25ha)に導入し、最初のラグーンに臭気が消えるレベルのEMを投入するという簡単なものです。滞留時間は流入から4〜5日で放流していますがこの時点で水道の原水に使える程に浄化されています。ラグーンからの放流水は水生植物の自然浄化を経てアマテトラン湖へ流入するようになっていますが、EMを活用するとこのシステムは不要となります。更に浄化を強化するため河口ダムを作り、ごみ等を回収できるシステムにしていましたがそのオーバーフロー水は飲めるくらいに浄化されています。
:汚水をラグーンに導入し、EM処理 このシステムは、スペイン政府の援助によるものですがEMを活用することで理想的に機能しています。EMの投入量を増やすとラグーンだけの設置で十分ですのでコストは10分の1以下となります。
グアテマラ政府はこの成果を基に全国の汚水処理、EM投入のラグーンシステムにすることに決定しました。昨年グアテマラは政権が交替し人事の総入れ替えが行われましたが、EM関係者はすべて留任となったという報告がありました。このような前例はないとの事ですが汚水処理のみならず、EMはグアテマラの農業に深く根を下しており、国全体がEMによる有機農業への転換を目指すようになっています。
これもすでに述べたコスタリカのアース大学の卒業生会のシステム的なEM普及活動の成果であり各々の国の卒業生がいい意味でライバルとなっています。
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