第109回 新たにスタートした、岡山県児島湖の浄化プロジェクト



 EMによる海の浄化については、これまで、三河湾、東京湾、英虞湾等々の成功事例について述べたが、有明海や瀬戸内海、伊勢湾、大阪湾の外に、気仙沼等を中心とする東北の湾岸でも多くのNPOのEM活動が続けられている。
 今年も海の日を中心に、第107回の終わりに記したように、全国でEMダンゴ100万個、EM活性液1,000トンが投入されることになり、その大半は、すでに達成しており、日本の海の浄化に対する多大な貢献事業として定着したと言っても過言ではない。
 この運動は、2008年、マレーシアのペナン州(島)の海を浄化するため、100万個のEMダンゴと1,000トンのEM活性液を投入し、たちまちにして、海を甦えらせたという事例に注目した三重県と愛知県のEMボランティアから、EMの本家、日本でも、世界に範を示す必要があるという提案がなされたのである。
 とりあえず、EMボランティアの海の日の行事として、2009年から三重県と愛知県でスタートし、その成果が上がったために、2011年から全国規模で行うことになり、EMボランティアの楽しい催しとなっている。
 数年前から海だけでなく、湖もということになり、琵琶湖の西湖がきれいになり、昨年から、諏訪湖プロジェクトに県の助成金が付き、茅野市から流れ込む落水川の河口域のヘドロが消え、望ましい生態系が復活し始めている。
 諏訪湖のプロジェクトは、数年内に漁業を復活させ、泳げるようにするというプロセスに始まり、最終的には、諏訪湖を源流とした天竜川を浄化し、静岡県の浜松市の沿岸の浄化を視野に入れたものである。
 諏訪湖は、諏訪市や岡谷市、茅野市の排(廃)水が流れ込む、典型的な大きな汚染湖であり、これまでの手法では、予算の見当がつけられない状況となっている。その汚染源化した湖を、EM技術によって善玉菌が優占する微生物相(マイクロバイオーム)に変え、水産業や観光振興の新たな展望を開こうというものである。
 岡山県の児島湖は、湾岸を仕切った国内最大の人口湖であるが、汚染の構造は、諏訪湖と類似し、その浄化に困難を極めている。岡山県は、ライオンズクラブ等の多大な協力によって、EMによる学校のプール清掃は全国一である。
 その他にも、多数のEMボランティアが池や河川の浄化に取り組んでいるが、多くの関係者の理解が得られ、別紙のような児島湖の水質浄化大作戦がスタートしたのである。今回は海の日の前日に200人余の参加を得て、倉敷川の下流域にEMダンゴが10,000個余投入された。その後は、随時、各河川の浄化を進め、結果的に諏訪湖と同じように水産の振興や、新しい観光資源開発を目指し、更には、瀬戸内海の浄化と漁業振興も、もくろんでいる。



『環境省としては、EMが水質浄化に効果があるとの科学的な検証データーを承知しておりません』

 今年の2月25日の衆議院予算委員会第6分科会の政府答弁である。EMは35年余の実績があり、世界中で既に定着した実用技術であり、今更データーを必要としない微生物資材である。法的には、安全性が確認されている微生物資材は、自由に活用して良いということになっており、EMもその範疇にあり、効果の有無は、使い方と浄化の成果そのものがデーターである。
 下記の文献は、Aquacultureという水産養殖の学術誌に掲載された中国及びベルギーの研究者らによる研究論文である。本論文では、中国でのEMの活用について、「長年の使用実績において、EMは、中国の農業分野で大きな役割を果たしていると思われます。1年間のEM生産量は、おそらく10,000トンにまで達しました。水産分野では、EMは、淡水および海水養殖で使用され、エビ、カメ、コイ、ウナギ、アワビ等の様々な種類の養殖に使われて来ました。多くの研究は、EMの有益な効果を支持しています。」と報告されている。
 このように、中国で最も多く使われ、成果が上がっている微生物資材がEMである。中国の河海大学(水に関する専門の大学)や、韓国の海洋大学等々にも、EMの水質浄化に効果ありとの査読論文が多数あるので、これらの論文に目を通して頂き、EMには水質浄化の科学的エビデンスがあるということを再認識して欲しいものである。





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