第107回 EMによる海の浄化のシステムを確立した英虞湾



 伊勢志摩サミットやオバマ大統領の広島訪問等々で息を飲むほどきれいな英虞湾やきれいな広島市の太田川は、NHKはもとより、民放でも何回となく放映されている。
 太田川については、前号に書いた通り、正真正銘、EMのボランティアと太田川内水面漁協のEM活性液やEMダンゴの投入によるものである。
 平成10年頃は、全国の海は汚れに汚れ、それ以前にとられた対策もことごとく失敗し、漁業の死活問題となっていた。EMによる下水や水質浄化は平成5年頃から実用化され、各地に広がったが、その象徴的な出来事は、平成12年前後に起こった有明海の海苔の色落ち現象である。  この時点までに、EMによる海の浄化と生態系の復活は確立していたため、EM研究機構は、海苔養殖やEMボランティアの人々の協力を得て、熊本、福岡、佐賀などで「EMジャブジャブ大作戦」を展開したのである。
 このいきさつについては、平成12-14年頃のエコピュア誌に詳しく述べたが、同じようなことを広島EM普及協会の協力を得て、太田川はもとより、三原湾や福山市の内海町、呉市の安浦をはじめ、広島の瀬戸内海の汚染された海の浄化に取り組んだのである。
 この成果は、エコピュア誌に記されているが、この実績に注目したのが三重県である。当時、三重県は、英虞湾の汚染が深刻で、真珠の養殖も、このままでは立ち行かないという状況にあった。
 県議会も広島の実績に対し、議員研修を行い、大半の議員がその実績を認め、EMを活用すべきという方向で種々の予備的な実証試験にも予算をつけるようになったのである。
 当時の知事の北川さんは、EMの効果は良く解ったが、何しろ、三重県は貧乏県である。ボランティア等や今の県の予算では限界があるので、何とか知恵をということになったのである。
 それなら成功払いでどうですか、という当方の提案となり、そうしてもらえればありがたいということになったのである。知事室での直談判である。その後、知事は、この件に関し、議会の了解を得て、EMによる英虞湾の浄化プロジェクトが始まったのである。


その当時の英虞湾は錆びだらけの海であった
 私は何度も現地に足を運び、英虞湾の奥の神明地区と、ちょうど伊勢志摩サミットの行われた賢島の橋の内側の片田地区(長田浦)に、合計週10トンの海水培養によるEM培養放流システムを設置した。当時の英虞湾は、透明度も悪く、よどんだ感じでヘドロが30cm以上も積もっている場所が多く、海草が全くない状況であった。投入されたEM活性液の総量は1,800トンである。
 干潮時には、赤茶げた錆びだらけの海岸線がむき出しになり、真珠も病気がちで奇形も多く、漁貝も錆びだらけという状況であった。
 EM投入1年後、ヘドロが徐々に消え、大量のアマモが発生してきた。2年目には、マメダワラ、後半にはホンダワラも発生し、3年目には湾の入口付近にテングサ等を含め多様な海草が群生するようになった。
 賢島にかかっている橋の上から見下ろすと、まるで沖縄のきれいな海のようになり、多様な海草が繁り生態系が復活したのである。当初は、投入区域を中心に、このような顕著な効果が現われたが、その効果は、時間とともに英虞湾全体に広がっていったのである。
 赤茶げた海岸線の錆はいつの間にか消え、これまでに経験したことがないような素晴らしい真珠が獲れるようになったである。北川さんは、このようなことを確認したか否か定かではないが、プロジェクトの途中で早稲田大学に転出し、数千万かけた当方の努力は、回収不可能となったのである。
 あれから15年余、このシステムは東京湾をきれいにするシステムとして引き継がれているが、壊滅状態にあった当時の英虞湾の様子を知る人は少なくなり、広島の太田川同様に、昔からきれいであったと思っている人々に世代は移り変わっている。マスコミ関係者も、もともときれいであったと思っているのである。


日本における水圏浄化のEMボランティア
 平成12年に始まった、大々的なEMによる水圏浄化活動は今も続いている。本DNDでも断片的にその成果を公開してきたが、今では、平成19年からスタートしたEMボランティアによる海の日の記念活動に引き継がれている。すなわち、EMダンゴ100万個、EM活性液1000トンの投入事業である。この量は、三河湾をきれいにするくらいのレベルにあり、1年間の活動総計では、EM活性液は数千トン、EMダンゴも150万個以上投入されているのである。
 一次産業分野でのEM活用や、学校のプール清掃や各地の災害時の衛生対策へのEM活用は年々増え、万トンレベルの活性液に匹敵するEMが使われるようになってきた。これまで汚れて悪臭を発していた河川や湖沼、海などが何もしなかったのにいつの間にかきれいになり、生態系が回復し、昔のようなレベルに戻ってきたという話は、全国いたるところに山ほどあるが、EMを使っている地域には、当然のように現れる現象である。しかしながら、一般の人々は、自然に回復したという根拠のない自然力という誤解に埋れているのである。専門家もマスコミも然りである。









:片田養殖場(三重県志摩郡志摩町片田の真珠養殖場)


:片田養殖場で確認されたアマモ場


:片田養殖場で確認されたアマモ、マメタワラ混生場



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