前回は、ベラルーシの国立放射線生物学研究所の再度の実験結果でもEMによって放射性セシウム137が消滅することが統計的にも極めて有意という結果を紹介した。 2011年3月の原発事故直後からEMによる放射能対策の情報を発信し続け、5月から現地入りして様々な実験を行い2ヶ月後にはEMによる放射能対策が可能であるという結論を得た。 その結果を福島県の各地で公開し、希望者にはEM活性液の散布システムを無償貸与する体制を整えた。 当初13グループから始まったが年々その数は増え、今では50余の地域に広がっている。年々、放射能値が著しく低下しており、時間とともに加速度的に効果が現れている。 このような現実を踏まえ、今年は南相馬地区など、多くの地域でボランティアの協力を得ながら広げることになったが、いずれもこれまでの実績が確たるものであるという確信に立脚したものである。 今回紹介するEM研究機構の奥本氏の研究は、その裏付けとなるものであり、現地の対応に関する極めて重要な成果である。
私たちは、2011年5月より福島県内でEMを活用している農家の農作物や土壌中の放射性Cs濃度を調査してきました。また、EMによる土壌中の放射性Csの農作物への移行抑制効果の、検討試験及び放射能汚染の低減化試験を実施してきました。 今回は、EMによる放射能汚染低減化に関する研究のうち、室内で行った研究結果についてご報告します。 先ず、室内試験に至るまでの背景についてご説明します。 原発事故直後、EMによる放射能汚染の低減化を検証するため、飯舘村のブルーベリー農園にて実験を行いました。試験開始時の土壌中の放射性セシウム濃度は、約20,000Bq/Kgでしたが、2ヶ月後には約5,000Bq/kgまで減少しました。 この時、放射性セシウムの降雨による土壌深部への浸透・流失による低下は認められませんでした。対照区においても、放射性セシウム濃度の減少が認められましたが、自然に放射性セシウムが大幅に減少することは考え難いことから、我々は土壌中の微生物が何らかの関与を及ぼしているのではないかと考えました。 南相馬市の瀧澤牧場での調査においても、本グラフで示されているように牧草地土壌の放射性セシウム濃度について見ると、EM牛糞堆肥やEMスラリーを施用したEM区では、化成区と比較して土壌中の放射性セシウム濃度が毎年減少しています。 田村市都路町のコズモファームでは、国による除染を辞退し、家やその周囲の植栽、農園にEMを継続的に散布することによる線量低下を試みました。 このグラフは、コズモファームと近隣の住宅地、神社、山林の除染前と除染後の空間線量の変化を示したものです。このデータは環境省のモニタリング調査結果から転載したものです。コズモファームでは、国による除染を行った他の場所よりも低いレベルとなっていました。 このように、EMが活用された農地では、土壌中の放射性セシウムが理論上の減衰値よりも大きく低下しており、EMの施用が放射性セシウムの低減に何らかの影響を及ぼしていると考えられます。 そこで、放射性セシウムに対するEMの直接的な影響を評価していく必要があると考え、様々な実験を試みています。 本日は、気象など制御出来ない要因を排除した閉鎖的な条件下において、EMによる放射性セシウム低減化の可能性を検証した研究成果についてご報告します。 尚、本実験は、閉鎖的な条件を作るため、室内で放射能分析用の容量100mlのU8容器を使用して行いました。 実験方法をご説明します。 先ず、実験土壌の前処理として、放射性セシウムを含む汚染土壌を風乾し、1.5mmメッシュのフルイで篩掛けした後、よく撹拌しました。その土壌をU8容器に詰めながら、ちょうど80gになるように精密天秤で秤量し、試料としました。 試料の数は処理区と反復数に合わせて準備しました。 そして、ヨウ化ナトリウム・シンチレーションスペクトロメータを用いて、其々の試料における実験処理前のセシウム134とセシウム137の測定を行いました。 設定した処理区は、対照区として何も添加しない無処理区、水を添加した区、EM活性液25%、50%、75%、100%を添加した区の全部で6処理区です。 この時、EMを添加した区では、微生物の活性を高めるために糖蜜を添加しました。 また、各処理区は統計解析ができるように3反復準備しました。 実験期間は、2013年12月18日〜2015年11月7日までの690日間です。その期間の間、其々の処理区において、水やEM活性液を6回追加で添加しました。 U8容器はフタをした後に、ビニール袋で包み、発泡スチロール容器に入れ、室温下で保管しました。 セシウム134とセシウム137の測定を行う際は、試料中の水分を乾燥機内で蒸発させ、水分による影響を排除しました。 その後、それぞれの試料のセシウム134とセシウム137について測定を行いました。 結果の評価は、セシウム134とセシウム137について、処理区間における減少率を比較することにより行いました。 セシウム134の半減期は2.065年、セシウム137の半減期は30,04年です。そのため、この式で表わされるように、時間の経過とともに、放射能量は減衰していきます。 理論的には、実験開始前のベクレル値と比較して、実験期間690日後のセシウム134は47%、セシウム137は4.3%減衰します。この数値を少し頭の片隅に入れておいてください。 実験の結果に移ります。 このグラフは、各処理区の実験前及び690日後のセシウム134のベクレル値を表したものです。 青が実験前で、赤が690日後のセシウム134の測定値です。 御覧のように、実験前と60日後の値を比較すると差があることが分かります。 そこで、実験前と690日後の測定結果から処理区ごとの減少率を求めました。 このグラフは、各処理区におけるセシウム134の減少率を示したものです。 無処理区を見てください。減少率が46.5%と、セシウム134の690日後の理論的減衰率である47.0%に近い数値になっています。したがって、実験が正確に機能しているものと考えます。 他の処理区の減少率を見ると、水では47.3%、EM25%では52.4%、EM50%では54.8%、EM75%では57%、EM100%では56.7%の減少率でした。 これらの減少率を無処理区と比較したところ、全てのEM処理区において、統計的に有意な差が認められました。また、EMの濃度に比例して減少率が増加する傾向も認められました。 本結果は、EM処理により土壌中のセシウム134が理論的減衰率よりも明らかに減少したことを示しています。 このグラフは、半減期が30.04年と長いセシウム137の実験前及び690日後のベクレル値を示したものです。 青が実験前で、赤が690日後のセシウム137の測定値です。 御覧のように実験前と690日後の値を比較すると差があることが分かります。 そこで、実験前と690日後の測定値から処理区ごとの減少率を求めました。 このグラフは、各処理区におけるセシウム137の減少率を示したものです。 無処理区を見てください。減少率が3.4%と、セシウム137の690日後の理論的減衰率である4.3%に近い数値になっています。したがって、実験が正確に機能しているものと考えます。 他の処理区の減少率を見ると、水では8.4%、EM処理区ではそれぞれ9.1%、12.0%、13.4%、14.8%の減少率でした。 これらの処理区を無処理区と比較したところ、全てのEM処理区において、統計的に有意な差が認められました。また、EMの濃度に比例して、減少率が増加する傾向も認められました。 本結果は、EM処理により土壌中のセシウム137が理論的減衰率よりも明らかに減少したことを示しています。 考察です。 EM処理区では無処理区と比較して、土壌中のセシウム134とセシウム137が有意に減少しました。 また、セシウム134とセシウム137の減少率はEMの添加濃度に比例して増加する傾向を認めました。 これまでの野外における調査結果と本実験の結果から、土壌にEMを施用することにより放射性Csが何らかのメカニズムにより減少したと考えられます。 以上、簡単ですが、EMによる放射性Csの低減効果について、ご報告させて頂きました。 ご清聴ありがとうございました。
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