第10回 EMで国造りを目指すコロンビア(2)
前回はコロンビアにおけるEM導入の背景とEMの研究普及体制について述べましたが、今回はその代表的な事例を紹介します。
1、EMによるバイオアルコール革命 コロンビアの南に位置するカリは、麻薬犯罪にまつわる様々な歴史で有名をはせていましたが、このカリ地域がEMによって変わり始めています。カリはサトウキビの大産地で10a当りの平均収量も10トン以上、新植の場合は15トン内外で世界のサトウキビの平均収量の2倍以上に達し、単位面積当りの収量は世界一となっています。
:EM添加アルコール廃液をサトウキビ畑に注入 5〜6年前からブラジルに習ってサトウキビからバイオ燃料アルコールの製造が始まりましたが粗放的となり、株出し栽培の収量が著しく低下し、アルコール工場から出る膨大な廃液が河川や湖沼を汚染し工場の半径数キロメートルはその悪臭で悩まされており、大きな社会問題になっていました。
この件についてM&D財団から相談を受けた私は、アルコール廃液が60℃以下になった時点で、EM活性液を500〜100分の1添加しサトウキビ畑に戻すだけで問題の大半は解決すると答え、工場の水を使う あらゆる工程にもEMを活用するように助言しました。
:10a当り15−20トンに生長したサトウキビ 答えは次の年に返ってきました。10a当り10トン前後で低迷していた10年以上の株出しの圃場で15トン以上の収量となり、新植と同様のレベルとなった。EMを施用すると収穫後に大量に発生する残渣(枯葉)が急速に分解し有機肥料化するため、肥料が30%〜70%節減できた。毎日のように悪臭と河川の汚染に対する苦情の電話があったが、EMが全面的に使われるようになってからは、この種の電話は全くなくなったとのことです。
アルコール廃液はたんぱく質やアミノ酸、有機酸などの含量が高く、栄養的には家畜のエサにできるレベルにありますが、数日で腐ってしまいます。酪酸発酵が中心になりますので、その悪臭は一般の畜産公害の比ではなく、汚染された河川や湖沼は悪臭を発し生態系は完全に破壊され、魚貝類の住めない環境となり、人々の結構被害を無視できないくらい大きなものとなっていました。
このような最悪の状態になっても環境中にEMの密度を高めると数週間で悪臭は消え、数ヶ月でヘドロがへり分解され、動植物プランクトンが増え、イトミミズやミジンコが大量に発生し6〜12ヶ月で豊かな生態系が復活します。EMはこれまで製糖工場やアルコール工場に関する様々な汚染対策に完全な答えを出してきましたが、コロンビアのカリのように地域全体にシステム的にEMが活用されている例はなく、その規模も世界最大となっています。
この成果は農業が大幅にCO2を固定した場合の排出権取引の対象ともなります。すなわち、これまで化学肥料や農薬を使い大量の枯葉を焼却していたサトウキビ栽培が化学肥料や農薬を極端に減らし、枯れ葉も焼却せず収量が1,5〜2倍になる上に土壌中の腐食(土中におけるCO2固定)も増えるからです。
このような実績はすでにオーストラリアのサトウキビで確認され今年からCO2排出権取引の対象として認められています。現在のブラジルのような粗放なバイオアルコール産業とは似ていても非なるものでレベルが段違いということになり、中南米各国のバイオアルコール関係者のカリ詣でが始まっています。
2、世界最高水準のエビ養殖 EMのエビ養殖については前々回のエクアドルにおけるホワイトスポットウイルス対策におけるEMの革新的な事例を紹介しましたが、集約度とシステムから見るとコロンビアのカルタヘナにあるエビ養殖場はダントツの世界一です。
:850aのEMえび養殖場 約1000haのエビ養殖場は週に最大600トンのEM活性液を投入できるシステムになっています。 このシステムはタンクの連結のみで1000トンや10,000トンに増やす事ができますので大型のタンカー事故による大規模な海洋汚染にも簡単に対応できるシステムとなっています。
一般のエビ養殖はエアレーションなしの場合は1ha当り1トン、エアレーションを行った場合は2〜3トン、これ以上になると病気の問題もあり4トンを越えることは困難です。カルタヘナは旧市街全体が世界遺産となっている美しい古風の歴史的な都市でカリブ海に面していますがボゴタ川からの汚染で海の色は黒茶色に染まっており特にエビ養殖場あたりの海はヘドロがまき上がるひどい海域となっています。
このような条件下でEMを活用しhaあたり4〜6トンのエビの収量を上げ、長年にわたって維持しています。エビ養殖場の排水は流入水よりもきれいなため、排水の放流口の海域はきれいになり無数の魚が群り、海鳥が乱舞しています。養殖場の排水が海をきれいにし豊かにするという奇跡はEMの真骨頂といえるものです。
3、世界一のゴミリサイクルシステム ボゴタ市の川の汚染やごみ問題は解決が不可能ではないかと思われていましたが、アース大学の卒業生会や、M&D財団のモデル事業のお陰で、生ごみや有機ごみの大半がEM処理により有機肥料として広く活用されるようになっています。この件に関しては政府も積極的に支援しており、地域ごとに分散して効率よくリサイクルされています。
:生ごみリサイクル堆肥ヤード それと同時に他のごみのリサイクル率も高まっており、ボゴタ市は年々「きれいなまち」に変わっており、全国の都市にも波及効果が見られるようになりました。都の生ごみにEMを活用して堆肥化すると無数のヘラクレス(大型カブトムシ)が発生するため、カブトムシビジネスにもEMは引っぱりだこです。
4、世界一の有機の花
:世界一の有機の花の出荷調整状況 この件については前回にも触れましたが、ボゴタ市のみならずメラリン市など多くの地域でEMによる有機の花が栽培され世界中に輸出されています。この場合、収穫残渣をEM処理し土壌にすきこむ方法をEMによる各種の発酵葉面散布剤による病害虫対策、EM生ごみ堆肥等の併用など数々のノウハウが積み上げられています。
5、その他 現在進行中のものでEM医学の応用、EMを土木建築への活用など、タイ国を上まわる数々の優良モデル事例が出来つつあり、EMを空気や水のごとく全ての場面に活用するための数々のチャレンジが行われています。
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