産学官連携に新しい風を吹かせたい(4)
−第5回産学官連携推進会議(6月10〜11日、京都国際会館)について−
まずはご支援いただいた皆さんにげますお礼を申し上げます。
まずは、第5回産学官連携推進会議が数多くの方々の参加とご協力を得て、盛会のうちに2日間の日程を終了することができたことを深く感謝申し上げます。皆さんの熱心なご参加によって、産学官連携活動のそれぞれの側面において、今後の活動について共有できる目標や問題解決の出口の方向が見えてきたように思います。
会議には、2日間で内部関係者をのぞき、実数で3,924名の方々にご参加いただきました。前年に比べて687名も多くの方にご参加いただいたことになります。当日登録された方の分591名は、未だ分析できていませんが、事前登録いただいた方々の内訳をみると(括弧内、前年の数)、産業界から737名(632名)、大学等から1,573名(1,653名)、公的機関等から938名(887名)、技術移転機関から85名(45名)にご参加いただきました。産業界からの参加は、他の分野に比べて少ないながら、分かっている範囲で見ただけでも、今年は大きく増えました。ここ数年、「中小企業の参加が少ない」とのご批判があったことから、中小企業庁を始めとする中小企業関係機関に会議のPRをしていただいたおかげではないかと思います。なお、会議の中で「今年も中小企業の参加が少ないのではないか」とのご発言がありましたが、数字を見る限り、昨年よりは大幅に改善しています。
また、226団体(208団体)から373のブースに展示をいただくことができました。
なお、主催者、後援機関、出展機関の関係者がこの外に約600名参加していますので、京都国際会館には4,500名を越える産学官連携関係者が結集していたことになります。
まさに、産学官連携の夏の祭典ともいえるような会合になりました。
「内閣府は、その会議に何を仕組んだか。」
「ダビンチ・コード」ばりのタイトルをつけて、メルマガで産学官連携推進会議の特集を組んでいただきましたが、今回の産学官連携会議で企画段階から意識したことは、これまでの連載「産学官連携に新しい風を吹かせたい」の中で触れたように、「イノベーションの種とそれを支える人材を創出する『共有の場』を、産学官が腰を据えて作りあげていくことが、今後の産学官連携が目指すべき進化の方向ではないか」という問題提起を行い、参加者の方々に議論していただくことでした。
古川先生の所感にあるように、「国際化、地域、中小企業の3つ・・・で『イノベーション加速に総力結集』が議論・提言できたのかは、いささかの懸念」とのご指摘はあるものの、イノベーションを種から実へと育て上げる重要な仕組の一つである産学官連携活動の今後のあり方について、活動の国際化、地域、中小企業の役割の3つの重要な切り口を通して、@産学官連携が量から質が問われる時代に入ったこと、A世界や社会の変化に応じた産学官の各セクターにおける改革が必要となっていること、B人材育成面での産学官連携や、国際的・長期的な視点に立った基盤の整備が重要であること等の認識が参加者間で共有されたことは、一つの成果だったと思います。
ダビンチ・コードほどの暗号も呪文も「仕組」んではいませんが、一連の議論の中で上記のような3つの認識が自然に浮かび上がってきたのは、企画に携わったものとしてうれしい思いでした。こうした認識は当たり前の認識であったのかもしれませんけれど・・・。
また、今年、初めて企画した第5分科会「データから見る産学官連携の現状と課題」といった、どちらかと言えば地味なトピックスの分科会が、思いがけなく好評で、会場に座りきれないほど盛況だったのはうれしい誤算でした。こうしたファクト・データをもとに産学官連携の成功や失敗の要因をきちんと分析して、産学官連携の今後のあり方について検討するということに大きな関心を払う我が国の産学官連携活動の健全さを見た気がします。これに関連することとして、産学官連携の効果を含め、イノベーション創出戦略の効果を計測・評価する手法の開発が必要との指摘がありました。この指摘は、来年のこの会議または関連の学会において真剣に議論されるべき一つのテーマであると思います。
このほかにも来年に向けての課題は、大小とりまぜて山ほどありますが、登壇者について言えば次の二つ。今回は、フランスから国家研究庁の長官や在日英国大使館の科学参事官に会議本体にご参加いただいた外、元南アフリカ共和国の科学技術大臣で現駐日南ア大使や、ドイツ大使館、スウェーデンのイノベーション・システム庁の関係者も参加されていましたが、国際化の問題を議論するために、もっと多くの国々から幅広い分野の方々の参加を検討すること。これが第一の課題。
第二は、公的研究機関の方々の声を出していただくような機会をもっとつくることと考えています。最後の特別講演で吉川先生に、我が国の産学官連携の進化の中で公的研究機関が果たしていくべき役割について、深い思索と5年間にわたる産業技術総合研究所での改革に取り組まれた経験をもとに具体的な提言をいただきましたが、気がついてみれば、それ以外にプログラム全体の中で公的研究機関の方々の出番がありませんでした。
最後に、これは意識的に「仕組ん」で、その効果を感じたことを報告します。それは、出口さんのメルマガを会議のPRに使わせていただいたことです。参加者数が増えたのも、それが最大の要因ではなかったかと思っています。さすがに、大学発ベンチャーNO.1のサイトです。
継続は力
今回の会議では、サイドイベントの充実ぶりにも目を見張るものがありました。1日目のお昼に開催された4つのワークショップは、どこも人が入りきれないほどの盛況でしたし、展示も226機関から出展していただき、あの広いイベントホールが、人息れで一杯になる盛況ぶりでした。内容もそれぞれ充実したもので、特にワークショップは、産学官連携を進める中で参加者が遭遇する切実な疑問や悩みに実践的に応えるように工夫されていました。
このように、この会議も5年目になり、産学官連携関係の恒例のイベントとして定着し、その結果、この機会を利用した自発的な取組や企画が次々と成されるようになっています。
海外から参加した方々は、皆、この産学官連携会議の熱気、内容に目を見張っていました。フランスや南アフリカからの参加者は、特に目を丸くしていましたから、日本に触発されてそのうち似たようなイベントを国内でやるようになりますよ、きっと。
マンネリ化のリスクは常に認識しつつ、その時々のニーズに応えるように工夫しながらこうしたイベントを続けていくことによって、この「継続は、力現象」を日本の財産にしていきたいと思います。
さらに、(出口さんについてはその証拠を押さえていますが、)産学官連携に取組む異分野の関係者が議論し合う、夜の部も京都のあちこちで開かれているようです。誰か、その様子も報告してくれませんか?
出口さんのサイフ
今回、出口編集長にご協力いただき、大学発ベンチャーでは、日本No.1のサイトで今回の会合についての特集企画をしていただいたことに深く感謝します。ただ、恩返しも少ししましたよね。出口さんの大枚入っているサイフ(中までは見ませんでしたが、厚かったです)が拾得物として届いているアナウンスをするついでに、「デジタル・ニュー・ディール(DND)」の名前もあの大勢集まった交流会の席で宣伝しておきましたから・・・・。
チーム山田
また、この場をお借りして少しだけ身内の話をするのをお許しいただけますか?会議の運営では、もちろんプロのイベント会社に助けていただきましたが、会議の企画、運営の指揮監督の実質的な中心となったのは、「チーム山田」という総勢5人の小所帯です。最後の数日は不眠不休でがんばってくれました。
言い訳になりますが、裏方が極めて小所帯であったこともあり、会議では様々な面でご不便、ご迷惑をおかけしたことが多々あったと思います。せっかくお出でいただいたのに、会場が満杯で入れなかった方々や、いろいろなところでお待たせしてしまった方々には本当にご迷惑をおかけしました。この場をお借りしてお詫び申し上げます。
ご不満を含め、アンケートを通じて皆さんからいただいたご意見やご感想は、来年の要改善点に向けた反省材料として活用させていただきます。
本当にご協力ありがとうございました。
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