夢
今の環境問題に見られるように、人間社会は予想していなかった危機に襲われる。二千年もの間、安心し切って費って来た石油・石炭が大量の炭酸ガスを発生して何時の間にか大きな危険を予知させるまでに肥大していようとは誰もが予想していなかったことである。 今漸く科学者を先頭に対応の為の動きが始まっている。しかし、これはほんの一例にすぎない。次から次へと平和な人間社会を脅かす。戦争・殺人と云う前世紀からの引きずりばかりでなく、O157、SARS、炭疽菌と個人レベルにまで浸透した危険を我々は迎えつつある。 これは正に二十一世紀の暗い一面である。これらに次々と科学者が防ぎの手を打ってゆかなければならない。熱い人間への愛に基づいた叡智の科学者が必要な時である。「世界中の人がひとり残らず幸福にならなければ、個人の幸福はあり得ない。」のだ。
志
夢ロマンとしての愛に基づいて宮澤賢治は農学に志した。凶作の秋に売られてゆく農村の乙女達、嫁入りの出来た幸福な姉妹を恨むでもなく、悲しい運命に弄ばれた乙女達の涙が賢治に冷害に強い品種や栽培法を実現しようと決心させた。身を捨てて火山を噴火させ噴煙の温室効果によって冷害を防ごうと考えたグスコーブドリの伝記を創作する。魯迅と同じ啓蒙活動をも志したのだ。 自分の専門分野の中で、一切の不都合を発生させまいという責任感がなければ、次々と襲って来る危機危険を我々人類は切り抜けていくことは困難なのでないだろうか。 科学は実証が原則である。しかし、これからの思いも掛けぬ危機の襲来は予知されなければならないが、実証させてはならないのである。実証すなわち死を意味するからである。最高の叡智をとことん活用して、一般人の知らぬ間に回避していなければならぬ。
仲間
今の日本の社会には自己の周囲を包む社会に対する配慮がない。本来、自己周囲を包む社会の死は、自己個人の死を意味するのだが善き隣人の死の訪れの方が早いので、権力と金の亡者になった人間には、どうでもよいことと写っている。結局は自己の破局をも早めていることに気付いた頃には時既に遅いのだが、亡者には、その日が来るまで判らない。 この信ずべき他人の居なくなった今の社会に、責任感のある信ずべき人達と連繋することは千万の味方を得た喜びとなる。いい加減な烏合の衆でないグループは全く効果的に力を発揮することが出来る。何度も自裁を思った筆者を救ってくれたのは、何時も、共に追求し、共に励んだ昔の協力者だった。 忘れていた様な人達まで起ち上がって思いも掛けぬ道を走らせてくれた。今再びこれらの老若を問わぬ昔の仲間が、私の仕事を展開させてくれている。この信頼に報いねばならぬ。人類の危機を避けるために。
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