DNDメディア局の出口です。やる、と言ってやらない。やる、やる、と繰り返して少しもやる気をみせない。やれないことを、やる、といって詭弁を弄しているだけなのだろうか。しかし、まあ、冷静に考えると、やらないのではなく、また、やれないのでもないことがわかってきた。つまり、やっちゃいけないことだったのではないか。だから、あれも、これも、みんなひっくり返して散らかし放題の惨状を生んでいるのです。
雪が舞う群馬・八ツ場ダムは、新任の大臣がきて来年の秋には議論を…といって鬼が笑う間もなく問責決議ですものね。言う事も、やることも、その場しのぎのそしりをまぬがれない。何をどうしたいのですか。その道筋や合意はとり付けられるのでしょうか。再びお聞きしますが、どうされるおつもりですか、と、事情を聴いてみたい。村の人々は、先行き不透明な年の瀬をどんな思いで迎えるのだろうか。
とんでもない話といえば、沖縄県民を見捨てた普天間基地問題、これも歴史に残る汚点でした。知事選にだって候補を見送って逃げちゃうのですから、呆れかえります。野放図な天下りを許し、口先だけの独法潰し、煮え切らない高速無料化、上げたり下げたりの子ども手当、それにもめる政治とカネ問題、尖閣ビデオや北方領土で右往左往するばかり、国会では、暴力装置といった放言や失言でこんらんしました。
いやはや、この機に至って、まだ有言実行を掲げる。パロディーじゃないかしら。有言実行なんていう響きすらもはや虚ろです。コメントする気力もない。責任は取らないし、覚悟も感じられない。なんというか、誤解を恐れず言わせてもらえば、この内閣の中核をなす団塊の世代の一番悪いところが、噴出しているように映ってしょうがない。職場にそんな先輩がいっぱいいた。人柄はそんなに悪くないのです。が、仕事を仕切り始めると、うまく回らないのです。
最初のうちは、威勢がいい。が、計画性に欠けている。思い込みが激しいから一度決めたら方向を変えられないで突進に次ぐ突進、一面突破全面展開を呪文のように唱えて、ごり押しする傾向が、ある。行き詰ると、人のせいにする。それで後始末をしない。そんなやっかいなサバイバル世代なのです。ある意味、仕分けは、さしずめ壊し屋の本領発揮というプログラムの範疇なのかもしれません。
■若い歌舞伎役者の神妙な"口上"に感心
こう見ていくと、酒の席の暴力沙汰とはいえ、若い歌舞伎役者の神妙な"口上"の方が、はるかに好感がもてたし、90分に及ぶ会見は立派でした。過ちを悔いて反省し、深々と陳謝し、無期限の謹慎に身をゆだねることに躊躇しませんでした。あっぱれ、ですね。浅草公会堂恒例の若手による新春歌舞伎で、新之助当時から馴染みでした。顔が命の役者ですもの、土下座じゃなくうずくまって頭を抱えて顔を守ったのでしょう。「死ぬかと思った」というくだりは、「殺される」との認識だったようだ。想像するだけで恐ろしく痛々しい。テレビで見た表情にやや陰りがあったが、端正な顔立ちにひとまず胸をなでおろした。
さて、この政権の危うさは、スタート当初からだれもが心のどこかにひっかかっていた。専門家は見抜き警鐘を鳴らしていた。わずか1年余りで、こんなにも状況が悪化するものだろうか。ご存じの通り支持率は危険水域に突入という。もはや有権者に嫌われている。有権者のあきっぽさも困りものですが、支持する、という動機が軽いから右に左に揺れる世論の流れが掴み切れないのかもしれません。
それならば、支持率の動向をうかがう必要はあるが、それによって一喜一憂してジタバタすることはない。しかし、「たとえ1%に落ち込んでもやめない」という発言は、これまた唐突で感心しません。誰に向かって言い放った言葉なのでしょうか。残念ながらこれが権力への妄執なのだろうか。
「政権交代」を「政権後退」と揶揄し、国政の桟敷を包むのは「金返せ」の怒号だが、世の流れの速さを思えば、「時を返せ」かもしれない‐と皮肉るのは7日付の「天声人語」でした。
■新規採用の道ふさぐな!絶望の就職難
北風が身にしみる年の瀬、遠のく学生の就職事情は深刻です。青森、沖縄の求人が恐ろしいほど激減した。埼玉県の大卒の就職率が28.6%にまで落ち込んだ。28.6じゃなくて、71.4%があぶれている、という裏返しです。7割以上の学生が、職に就けず途方に暮れている。政治家は、与野党問わずこの事態に責任を持たねばなりません。国会で、公務員削減策を問われて、地方の出先局の新規採用を2300人切った、との答弁があった。オイオイ、切るのは60歳前後の高給取りだって、新規採用の道を塞いだら、いくら公務員削減とて雇用重視の政策の軸が鈍るでしょう。若手を採用しないと、将来の人員策に響きませんか。何を、やっているのでしょうか。
わが国のこの1年は後退続きでした。いっぱい税金を使って何が変わったのか。かえって何もしない方が、よかったのではないか、と疑いたくなります。ちょっと前は、政治から目が離せなかった。が、今は、政治に目を向けているヒマはない、というのが、ベンチャーを含めた多くの経営者の正直な心情です。法人税の減税の動きも芝居っぽい。財源云々に加えてその次のおとし前が怖い。
■超党派の新しいリーダー誕生で国難を超えよ!
新年早々の通常国会の雲行きは波乱含みらしい。衆院解散か、大連立への再編か、いずれにしてもグローバルの大津波が容赦なく襲うのですから、思想信条や好き嫌いは後回しにして、現実的な課題にスピーディな答えを導き出す政治運営を望みたい。己のメンツや懐具合を考えるから、おかしくなる。簡単な話し、そんな最低限可能な道筋を手繰ればいいだけです。誰なら、いいのさ、ということ。超党派で候補を幾人か挙げてそれを選ぶしか、ない。無用な争いは、時間の無駄です。与党も野党もない。若い世代の尊い未来を踏みにじらないでください。分断は悪です。統合への構図を急がなくてはいけません。この国難に立ち向かえるリーダーの資質があるなら、その人に日本のかじ取りを託してみてはどうか。多少脛に傷があってもいいじゃないか、堂々と、党是となる政治主導のダイナミズムをこの辺でみせてもらいましょう。
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■400号達成!ご記憶にあるメルマガ募集
今年をふり返るのには少し早いが、この1年は10年分の出来事が一挙に押し寄せてきたかのような印象です。驚天動地の様相というのが実感です。皆様にとって、どんな1年だったでしょうか。おかしなことや、あやしいことは、おおよその目星がつくのだが、それを裏切るような信じられないこと、予想しなかったことが次から次と起こった奇妙で不思議な年でした。人の誠意や良心の裏をかいて都合よく貶める野蛮な輩が、巷間、ウヨウヨ徘徊しています。どうぞ、ご用心ください。時期を見て、鬼退治が必要になってくるかもしれません。
さて、メルマガは今回で400回となります。年末には、今年のメルマガランキング100を一挙掲載というのを考えています。皆様のご記憶に残ったメルマガをいくつか、ご推奨くだされば幸いです。
※12月22日までメールにてご返信下さい。複数のご回答もOKです。
>deguchi-shunichi@dndi.jp
■日韓併合100年の節目、風祭元氏の論文『朝鮮半島の精神医学』
◇DNDのメルマガVol.246号『韓国近代医学史に刻む、佐藤剛蔵氏の足跡を訪 ねて(後編)』(http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm071017.html)を読んだユーザーから、論文でメルマガ記事を参照したい、とか、佐々木氏の履歴を調べている、などといまだに問い合わせが相次ぐ。歴史の狭間で揺れる、日韓併合から今年で100年の節目です。この度は、元精神科医で三鷹市在住の風祭元さんからオフィスに直接お電話を頂戴した。風祭さんは、先日、学会誌「精神医学史研究」で、「太平洋戦争終結以前の朝鮮半島の精神医学」と題する論文を寄稿した旨をお知らせいただきました。そして郵便でその貴重な一冊が送られてきました。「何かの機会にご紹介ください」とのメッセージがありました。
「精神医学史研究」は、日本精神医学史学会(理事長、松下正明元東大教授)の機関誌で、風祭さんの論文は、朝鮮半島における近代精神医学の導入と、精神医学の教育、診療についてその概要をまとめていらっしゃる力作で、これまで日本以外のアジアや周辺地域での精神医学研究や医療に触れた論文はなかった、という極めて貴重な資料と位置付けられます。
それによると、≪1910年に朝鮮総督府技師の水津信治が、朝鮮総督府医院で精神科医として初めて診療を行い、京城医学専門学校教授として1924年まで精神病学の講義を行った。1926年に京城帝国大学医学部が設立され、水津の後任の京城医専教授の久保喜代二が帝大精神科教授となった。彼は、インスリン療法、マラリア熱療法などを精神科治療に導入し、また朝鮮での麻薬中毒診療の豊富な経験を日本に紹介した。1941年に久保に代わって渡辺道雄が第2代目教授に就任し、1945年まで在任した。京城帝大に勤務した日本人精神科医は、杉原満次郎、服部六郎、伊藤高麗夫らがおり、韓国人には明柱完がいる≫というように実名を丹念に調べ上げた内容になっています。
私たちが、韓国近代医学史における佐藤剛蔵氏に関心をもったのは、当時、日本学術会議会長の立場にあった黒川清氏の呼びかけが発端でした。詳しくは省きますが、韓国近代医学教育史の研究で大きな成果を収めている医師の石田純郎さん、佐藤剛蔵のお孫さんの佐々木定さんらと、黒川氏のご案内でソウルを訪れて、ソウル在住の佐藤剛蔵氏の教え子、といってもすでに80歳を過ぎた高齢なのだが、その彼らと情報交換し、友好を深めたのです。その交流はまだ続いています。
◇黒川清氏「Global Agenda Council ,Dubaiから」
■【コラム】黒川清氏のブログとリンクした『学術の風』からは、最新の6日のコラムで、「Global Agenda Council ,Dubaiから」です。ドバイで意義深い会議が開かれていたのですね。日本側の顔ぶれも錚々たる方々でした。注目は、Global Risk Responseに対応する「Network」構想でしょうか。以下は、その抜粋です。
≪11月27日からWorld Economic ForumのGlobal Agenda Council (資料1)でDubaiに。大半の方達は別のCouncilのメンバーでしたが、竹中平蔵さん、田中明彦さん、石倉洋子さん (資料1)ら20名ほどの方が日本から参加しました。延べ4日間で丸3日間の予定ですが、今回のプログラム構成は、各Councilに分かれた議論が中心で、プログラムの進め方がいつもと違って、かなり細かく決まっていることと、最終的には世界にいろいろ存在する、起こりうるGlobal Risk Responseに対応する「Network」構想の提案も視野に入れているので、結構タイトなスケジュール。私はといえば「Japan Council」のChairという役を振り当てられていたので目いっぱいスケジュールが詰まっていて、Chairは一日早く到着して全体構想のbriefingなどがあり、全体の自由時間もなく、全体の動き、システムの動かし方、Briefing sessionなどなど、また他の大事なCouncilへ出かけるとか、結構大変でした。特に北朝鮮の問題などもあるタイミングでしたので、気の使いようもあって、とても疲れた感じがしました≫
お疲れ様です。
■石黒憲彦氏の『スマートフォンのもたらすもの』
【連載】経済産業省商務情報政策局長、石黒憲彦氏『志本主義のススメ』第155回は「スマートフォンのもたらすもの」です。感心したことは、お二人のお嬢さんがこのところ携帯電話をスマートフォンに切り替えて使いこなしている点を見逃さず、「アップル社のiPhoneが走りですが、その後グーグル社のオープンなアンドロイドOS搭載の様々なスマートフォンが登場して、日本では全く新たな段階、本格的普及期に入った」ことを強調していた点です。ぜひ、お嬢様らとご一緒に石黒さんもスマートフォンの利用をおススメします。
どこにどんなアプリがあって、どうすればさらに便利で楽しいか、お嬢さんたちは、その遊びのツボを心得てお友達と情報を交換しているのでしょう。私事で恐縮ですが、先日、乗り合いのマイクロバスで移動中、桧家住宅社長の近藤昭さんと若手の部長と3人で、それぞれiPhoneをいじりながらひとしきり情報交換に花を咲かせました。カレンダーの手帳機能のRefilleは、近藤さんの勧めでした。これで年の暮れに銀座の伊東屋に行かなくて済む、というのが共通の感想でした。iPhoneビデオを撮り、それをYouTubeにその場でアップしたのも近藤さんでした。Radikoも、駅.lockyも、ねこいじりも教えてもらってインストールした。日常の写真や動画をFacebookにアップするのがいまの私の趣味になっています。私は、そういったユーザーからの感想ですが、石黒さんは、お立場柄、政策的なアプローチです。
≪「情報経済革新戦略」において、スマートフォン、電子書籍、PC、TV、ゲーム端末、カーナビ、デジタルサイネージ(電子看板)といった様々な情報通信端末に、新聞、雑誌、書籍、マンガ、アニメ、映画、個人のつぶやき、個人作成動画、口コミ、観光情報などが配信されるハード、ソフト、サービスが複合的に提供される新産業が生まれるということを書いたのですが、早速それが一大市場になるとともに、情報通信端末でもやはり主役はタブレット型PCよりもスマートフォンかなという気がして来ました≫
う〜む、ご託宣の通りです。そしてスマートフォンの普及による、部品、部材が企業経営者への余波や影響を読み解きながら、国内の携帯電話メーカーのあり方に触れて、「スマートフォン普及の流れの中で、膨大な開発費をかけながら、今のまま国内市場に甘んじてはやっていけないでしょう。事業統合も視野に入れて世界市場を目指すか、或いはこの際撤退するか、判断のしどころです」と、一石を投じて各メーカーが今後、さらに難しい選択を迫られる可能性があることを示唆しています。
■氏家豊氏「技術プラス―大学機能の新展開」
【連載】SBFコンサルティング代表、氏家豊氏の『大学発ベンチャーの底力』は第8回「産学連携のフロンティア‐大学機能の新展開‐」です。
氏家さんが最近、ヒシヒシと実感する、と指摘するのは、「産業界が潜在的に求めているのが技術レベルを前提にした、製品・事業開発アイディアである」という点でした。それをクリステンセン教授の『破壊的な技術』で指摘された具体的事例を参考にしながら、「技術がいいのはわかるが、それをどう自社の既存製品開発・サービスラインに取り込んだらいいのか、そこが見えないといい技術として認められない」というような経験を踏まえた論を進めます。それが、今回の論文の主題である大学での技術研究開発における技術、それにみにとどまらないプラス部分が重要だというのです。
それが、製品・サービス開発コンセプト立案と社会システムデザイン立案のプラス機能だと指摘しています。これを実際に運用するために不可欠な対策や仕組みについても言及しています。
【一押しイベント】
勢いづく全国コーディネート活動ネットワークの中部地域第3回会議が12月22日午後、名古屋大学の東山キャンパス、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー3階ベンチャーホールで開催します。日頃、産学連携に尽力している方々を中心に報告や講演を行う。
主な参加者は、この会の中心的役割を果たす前田裕子さん、(全国イノベーション推進機関ネットワークプロジェクト統括)、宮田隆司氏(名古屋大学理事、副総長、産学官連携推進本部長)、池田貴城氏(文部科学省・産業連携課長)、進藤秀夫氏(経済産業省・大学連携推進課長)、金子靖氏(名古屋大学・産学官連携推進室特任講師)で、私も少しお話をする予定になっています。
中部エリアでご関心のある方は、ご参加ください。
http://www.sangakukanrenkei.jp/chiiki_c.html
参加費無料、交流会3000円です。